仮面ライダーシャーマン   作:ボルメテウスさん

87 / 115
蛇の目線

磐座の前で、息を整える。

掌の中の眼魂は黒と緑の光を帯び、蛇の瞳のように脈打っていた。境内の石像が微かに軋む。遠くで槍が回転する音。眼魔ウルティマがぎこちなく腕を上げ、空中の槍がゆっくりと傾いた。

 

「……来るな」

 

葉は眼魂をドライバーへ装填する。

 

『カイガン!メデューサ!スネーク!ストーン!恐怖の石化!』

 

紫の光が弾ける。

装甲が再構成され、背後に蛇のようなエネルギーが揺れる。視界がわずかに変わった。空気の流れ、石の匂い、敵の動きが静かに浮かび上がる。

 

「なんというか、不気味な感じがするな、この姿」

 

サクナヒメがすぐに声を上げた。

「うぅ、その姿でこっちを見ないでくれないか。大龍を思い出してしまう」

 

「まぁ蛇だからねって」

 

言い終わる前に、槍が消えた。

次の瞬間、真正面から突撃してくる。これまでと同じ速度。だが葉は避けなかった。腕を上げ、顔の前にフクロウゴーグルを装着する。

 

衝突。

 

金属音。

槍の穂先がバイザーに当たり、激しく火花を散らす。しかしメドゥーサ装甲はびくともしない。衝撃が装甲の奥で鈍く止まる。

 

「これは梟の眼鏡? こいつで見れば――」

 

視線を向けた瞬間、槍の先端が鈍く光った。

石化の光が走る。

 

「うわぁっと!? 見つめた先が石になったと」

 

穂先の一部が硬化する。

葉の背後で蛇のエネルギーが伸びた。紫と緑の影が空中を這い、槍へ絡みつく。

 

「これが蛇の力」

 

蛇が締め上げる。

槍の動きが止まる。

 

同時にウルティマが突撃してきた。操られた身体がぎこちなく振り上げられる。葉は一歩踏み込み、脚を振り上げた。装甲が石化し、重量が増す。

 

蹴り上げる。

 

鈍い衝撃。

ウルティマの身体が宙に浮き、そのまま地面へ叩きつけられる。石化した脚の一撃が、完全に動きを止めた。

 

「とりあえず、こっちはこいつで終わりだなっと」

 

サクナヒメが低く呟く。

「やはり、前回の弓のようにこっちが本体のようじゃな」

 

ウルティマの背後で、槍が震える。

蛇の拘束を振りほどき、空中へ跳ね上がる。回転速度が増し、境内の上空を高速で旋回し始めた。黒緑の光が残像を残す。

 

「葉様」

 

ココロワヒメの声。

 

槍が四方から突撃する。

だが葉は動かない。視線が軌道を追う。回転の間隔、速度、戻る位置。さっきまで見えなかった癖が、はっきりと浮かぶ。

 

「大丈夫、既に見切った!」

 

葉は腕を広げる。

背後から無数の蛇が現れた。紫の影が空中を走り、迫る槍へ絡みつく。蛇が締め上げるたび、槍の表面が石色に変わる。

 

『ダイカイガン!オメガモーニングスター!』

 

蛇が一斉に引く。

槍が石化しながら引き寄せられ、そのまま振り上げられる。重い軌道を描き、地面へ叩きつけた。

 

轟音。

 

石畳が割れる。

槍は完全に動きを止め、黒緑の光が消えた。

 

沈黙。

 

境内の空気がゆっくり戻る。

葉は装甲の手を下ろし、砕けた槍を見下ろした。

 

「どうやら、倒せたようじゃな」

 

「あぁ、これで結構眼魂が集まったな」

 

ココロワヒメが静かに続ける。

「けれど、眼魔が手に入れている可能性もあります。油断はしないように」

 

葉は頷く。

「分かっている」

 

風が吹く。

蛇の磐座の影が静かに伸びた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。