仮面ライダーシャーマン   作:ボルメテウスさん

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最期の眼魂

猫の像が並ぶ小さな神社の境内に駆け込むと、背後から地面を叩く衝撃が追ってきた。振り返るまでもなく分かる。さっきの眼魔だ。ヘラクレス眼魂の力に呑まれたまま、暴走する怪力で街を壊しながら追ってきている。

 

「ここまで来れば、人通りは少ないな……」

 

周囲を見回す。住宅街から少し離れた場所にある神社で、夕方のこの時間にはほとんど人影がない。境内の奥には猫の石像が並び、静かな空気が広がっている。暴れさせるなら、ここが限界だ。

 

背後で瓦礫が砕ける音がした。眼魔が鳥居を破壊しながら境内へ踏み込んでくる。巨大な腕を振り上げ、そのまま一直線に突進してくる姿はまるで暴れ牛だ。

 

「よし……ここでやるか」

 

ケット眼魂をシャーマンドライバーに装填する。

光が弾け、猫の紋様が浮かび上がる。

 

『カイガン!ケット!キャット!ワイルド!夜の妖精!』

 

茶色とオレンジの光が身体を包み、装甲が変形していく。背後にしなやかな尾のようなエネルギーが揺れ、指先には鋭い爪が伸びる。地面を踏んだ瞬間、身体が驚くほど軽く感じた。

 

「……なるほど、猫ってこういう感じか」

 

軽く踏み込むだけで身体が跳ねる。試すように地面を蹴ると、一瞬で眼魔の背後へ回り込んでいた。視界が広がり、周囲の気配が細かく感じ取れる。猫の身体能力というのは、どうやら想像以上らしい。

 

「うおっ!?」

 

次の瞬間、眼魔の拳が地面を叩いた。さっきまで立っていた場所が砕け、石畳が粉々になる。まともに受ければただでは済まない威力だ。

 

「やっぱり正面からは無理だな」

 

その場から大きく跳び、社殿の屋根へ着地する。眼魔が俺を追って視線を上げた瞬間、再び跳躍する。猫のような動きで柱から柱へと飛び移り、わざと目立つ位置へ移動した。

 

「こっちだ!」

 

わざと声を出すと、眼魔は怒ったように地面を踏み鳴らす。その動きは単純だが、とにかく速くて重い。だが今の身体なら、その突進を紙一重で避け続けられる。

 

境内の奥、さらに人の気配がない空き地へと誘導しながら、俺は爪を構えた。

 

「この爪、どこまで切れるんだろうな」

 

接近してきた瞬間を狙い、腕を振り抜く。爪が眼魔の胸装甲を引き裂き、火花が散った。思った以上に鋭い。しかも、一度引っ掻いた後は爪のエネルギーが強くなっている感覚がある。

 

「おっ、これ……引っ掻くほど強くなるのか」

 

眼魔が怒りのままに腕を振り回す。だが、その大振りの攻撃は猫の動きには追いつかない。俺は背後へ回り込み、さらに爪を叩き込む。二度、三度と斬りつけるうちに、装甲の奥で光るものが見えた。

 

「見えた……あれだな」

 

胸の奥に、黄金色の光。ヘラクレス眼魂だ。

 

だが、そこへ手を伸ばした瞬間、眼魔が大きく腕を振り払った。凄まじい衝撃波が走り、俺は後ろへ飛ばされる。

 

「っと……危ないな」

 

地面に着地しながら、ガンガンタマフを呼び出す。さらにマウスヘッドホンを装着すると、武器の先端が変形して細長い棒状になった。

 

猫じゃらしモード。

 

「さて、猫らしくいくか」

 

棒を振ると、先端のエネルギーが揺れて光る。それを見た瞬間、眼魔の視線がわずかにそちらへ引き寄せられた。巨大な身体が無意識に動き、攻撃の軌道が変わる。

 

「よし、引っかかった」

 

わざと武器を振りながら、眼魔の動きを誘導する。攻撃の向きが少しずれるたびに、隙が生まれる。そこへ飛び込み、爪を叩き込む。

 

何度目かの斬撃で、胸装甲が完全に裂けた。

 

「今だ!」

 

腕を突っ込み、光る球体を引き抜く。手の中で強い光が脈打つ。ヘラクレス眼魂だ。

 

眼魔はその瞬間、力を失ったように膝をついた。暴走していた怪力が一気に消え、身体が崩れ落ちる。

 

俺は着地しながら眼魂を見つめ、小さく息を吐いた。

 

「……よし、回収成功」

 

掌の中でヘラクレス眼魂が重く脈打つ。黄金の光は静かに揺れているが、その奥にまだ荒々しい力が残っているのが分かった。眼魂を引き抜いたことで動きを止めたはずの眼魔の身体が、地面の上でわずかに震える。次の瞬間、膝をついていた巨体がゆっくりと持ち上がった。

 

「……まだ動くのかよ」

 

完全に力を失ったと思っていたが、どうやらそう簡単には終わらないらしい。胸の奥から漏れ出した光が、残り火のように揺れている。ヘラクレス眼魂の力が、わずかに残っているのだろう。眼魔は歪んだ動きで立ち上がると、怒りに任せて腕を振り上げた。さっきまでより弱っているとはいえ、その拳にはまだ十分すぎる破壊力が残っている。

 

「くそっ、最後まで暴れる気か」

 

距離を詰める時間はない。拳が振り下ろされるよりも早く、俺はドライバーへ眼魂を叩き込んだ。黄金の紋章が浮かび上がり、空気が一瞬だけ張り詰める。

 

『カイガン!ヘラクレス!パワー!ライオン!十二の試練!』

 

光が爆発するように広がり、全身を包み込んだ。装甲が再構成され、肩に獅子の毛皮を思わせる重厚な装甲が現れる。腕を握ると、これまでとは比べ物にならない力が指先から溢れた。身体が重くなったわけではないのに、足元の地面が軋む。

 

「……すげぇな、この力」

 

眼魔の拳が振り下ろされる。さっきまでなら避けるしかなかった一撃だ。だが今回は違う。俺はその拳を真正面から受け止めた。衝突の衝撃が腕を伝い、空気が震える。それでも身体は一歩も下がらない。

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