空気が歪むような感覚が、街の奥からじわじわと広がってきた。
アカリの持つ機器が不規則に鳴り、数値が一気に跳ね上がっていく。
俺はその音を聞いた瞬間、さっきまでの静けさがただの前触れだったことを理解した。
「……来るぞ」
視線を上げた先、空間が裂けるように揺れた。
そこから現れたのは、燃え上がる炎をまとった個体と、その背後に現れる異様な影だった。
「ガンマイザー……!」
マコトが低く呟き、すぐに構えを取る。
アランもまた一歩前に出て、警戒を強めた。
シブヤとナリタは思わず息を呑み、カノンは兄の背後に位置を取る。
前方に立つのは、全身を炎に包んだガンマイザー。
その熱は離れていても肌を刺すように伝わり、空気そのものを歪ませていた。
「こいつが……」
言葉を続ける前に、もう一つの気配が動いた。
背後にいた影が、ゆっくりと形を持つ。
それは人型をしているようでいて、どこか歪んでいる。
複数のガンマイザーの特徴が混ざり合い、無理やり一つに押し固められたような異形だった。
腕の一部は刃のように尖り、別の部分は流体のように揺れ、背後には光の輪のような構造が不規則に浮かんでいる。
その姿は一つの存在として安定しているはずなのに、どこかで常に崩れ続けているようにも見えた。
「……あれが、合体している個体か」
ココロワヒメの声が静かに響く。
その分析の裏に、わずかな警戒の強さが滲んでいた。
次の瞬間、その異形の視線がまっすぐこちらに向けられる。
いや、“こちら”ではない。
「……俺か」
完全に狙いを定められている。
他の連中ではなく、神の眼魂を持つ俺を優先しているのがはっきり分かった。
合体ガンマイザーが一歩踏み出す。
その一歩だけで、地面が低く軋んだ。
空気が圧縮されるような重さが押し寄せ、身体の奥まで響く。
マコトがすぐに横へ出る。
「葉、あれは……!」
アランも続いて前に出ようとしたが、俺は手を上げてそれを止めた。
「待て」
二体の敵が、同時に動き出す。
炎のガンマイザーは周囲へ熱を撒き散らしながら前進し、合体個体はまっすぐ俺へ向かってくる。
このまま全員で突っ込めば、確実に崩れる。
頭の中で一瞬だけ状況を組み立てる。
距離、位置、攻撃範囲。
二体同時に相手をすれば、誰かが確実に巻き込まれる。
「2体を同時に倒すのは無理だ!」
そのまま声を張る。
「俺がこいつの相手をしているから、そっちのガンマイザーを頼む!」
一瞬だけ、空気が止まる。
御成が何か言いかけるが、言葉にならない。
シブヤとナリタも戸惑いを隠せず、視線が揺れる。
マコトが俺を見る。
その視線は鋭く、それでも迷いを含んでいた。
「……一人でやるつもりか」
「分断しないと全員やられる」
短く返す。
アランが低く息を吐き、視線を炎のガンマイザーへ移した。
「……分かった。こちらは任せろ」
カノンが小さく頷き、マコトも構え直す。
迷いは消えきっていないが、それでも全員が動く覚悟を決めた。
御成が叫ぶ。
「どうか、ご無事で……!」
俺は振り返らなかった。
炎のガンマイザーへ向かって、マコトたちが駆け出す。
その動きと同時に、合体ガンマイザーの気配が一気に膨れ上がった。
逃げ場はない。
こいつは最初から、俺だけを潰しに来ている。
俺はゆっくりとドライバーに手を当てた。
「……来い」
『カイガン!シャーマン!宿すは神!守りしは魂!』
光が弾け、装甲が身体を包み込む。
変身と同時に、合体ガンマイザーが動いた。
一瞬で間合いを詰められる。
速いだけじゃない、質量そのものがぶつかってくるような圧だ。
腕を上げて受ける。
衝撃が全身を貫き、足元の地面が砕けた。
「っ……!」
一撃で理解する。
強いとか、そういう次元じゃない。
これまで戦ってきたガンマイザーとは、明らかに格が違う。
それでも、退くわけにはいかない。
視線を上げる。
目の前の異形が、ゆっくりとこちらを見下ろしていた。
その姿は不安定でありながら、確実に一つの意思としてまとまっている。
俺は足を踏み込み、構えを取る。
「……相手してやるよ」