夜の空気は、戦いの余熱をまだ引きずっていた。
地面には焼けた跡が残り、風が吹くたびに灰がわずかに舞い上がる。
その中心に、タケルが立っている。
さっきまでの戦いが嘘みたいに、静かだった。
「……すげぇな」
思わず漏れた言葉に、誰も否定しなかった。
あの合体ガンマイザーを押し切った力。
今までとは明らかに違う。
マコトが腕を組み、視線を逸らさずに言う。
「確かに強い。だが……」
その言葉の続きを、アカリが引き取る。
「負担が大きすぎるわ。
エネルギーの消費量が、今までの比じゃない」
タケルは何も言わない。
ただ、静かに呼吸を整えている。
その肩が、わずかに上下していた。
「……無理してるだろ」
声をかけると、少しだけ笑った。
「大丈夫だ。まだ、戦える」
即答だった。
でも、その“間”が短すぎる。
サクナヒメが内側でぼそりと呟く。
「……あやつ、無理を押し込んでおるな」
ココロワヒメも続ける。
「持続戦闘には不向きです。
現状のままでは、いずれ限界が来るでしょう」
つまり――
このままじゃ続かない。
アランがゆっくりと歩み寄る。
その手には、見慣れない装置があった。
「ならば、別の手段を考える必要がある」
差し出されたそれを見て、思わず目を細める。
「……それ、何だ?」
見たことがない形状だった。
ゴーストドライバーとも違う。
もっと大きく、どこか儀式的な印象を持つ装置。
そして――
その中心にある“眼魂”。
「……でかくないか?」
普通の眼魂とは明らかに違う。
サイズも、存在感も。
ただそこにあるだけで、空気が少し重くなる。
アランが淡々と答える。
「アイコンドライバーG。
そして、それに対応する眼魂だ」
「……G?」
聞き慣れない単語に、思わず眉をひそめる。
「15人の英雄の力を、一つに束ねるためのものだ」
その一言で、場の空気がわずかに変わった。
マコトが視線を上げる。
「英雄を……束ねる?」
アカリも興味を抑えきれない様子で近づく。
「それって、理論的には複数の魂を同時に扱うってこと?」
「そういうことになる」
アランは短く肯定する。
「個の力ではなく、集合としての力。
それが、あれの本質だ」
視線が自然と、その巨大な眼魂へ向く。
複数の力を、一つに。
その言葉が、頭の中でゆっくりと形になる。
サクナヒメが、小さく息を呑む。
「……ほう」
そして、少しだけ楽しそうに続けた。
「面白いではないか」
ココロワヒメの声が、いつもよりわずかに熱を帯びる。
「葉様」
静かに呼ばれる。
「今の話を応用すれば――」
一拍、間を置く。
「私達のような“神の力”を束ねた眼魂も、理論上は構築可能です」
その言葉が落ちた瞬間、
空気がほんの少しだけ変わった。
可能性。
まだ形になっていない、未来の輪郭。
「……神の力を、まとめる?」
自分の口から出た言葉に、少しだけ実感が伴わない。
だが、ココロワヒメは迷いなく続ける。
「はい。
サクナヒメ様、そして他の神性存在の力を統合することで――」
「今までとは別次元の出力が期待できます」
サクナヒメが笑う。
「ふふん、つまりはわしらをまとめて振るう、ということじゃな」
軽く言っているが、やっていることはとんでもない。
「そんなの……出来るのかよ」
思わず漏れた言葉に、ココロワヒメは静かに答える。
「容易ではありません。
ですが――不可能ではありません」
その言葉に、迷いはなかった。
タケルがこちらを見る。
「葉も、戦うんだろ」
問いじゃない。
確認だ。
「……ああ」
短く返す。
タケルが前を向く。
「なら、俺もやる。
どんな形でも、この戦いを終わらせる」
その背中を見ながら、
俺はもう一度、巨大な眼魂へ視線を向けた。
複数の力を束ねる。
英雄だけじゃない。
神ですら、まとめることができるなら――
「……やるしかないか」
小さく呟く。
まだ形はない。
方法も見えていない。
それでも、確かに見えたものがある。
今のままじゃ足りない。
だから、次へ進む。
そのための――
“切り札”の気配が、確かにそこにあった。