仮面ライダーシャーマン   作:ボルメテウスさん

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武と智

アデルは目を細めたまま、こちらの姿を値踏みするように見ていた。

赤い羽衣を揺らして立つ俺を前にしても、その顔に浮かぶのは警戒より観察に近い色だ。

 

「・・・なるほど、確かに凄まじい力を持っているようだが」

 

その一言に続くように、白い群れが一斉に前へ出た。

同じ顔、同じ声、同じ間。ぞっとするほど揃った動きで、ガンマイザーたちが腕を向ける。

 

「「「消去します」」」

 

次の瞬間、空気が裂けた。

無数の攻撃が、真っ直ぐ俺たちのいた場所を貫く。石畳が弾け、火花が散り、夜気が一気に熱を帯びた。だが、その頃にはもう、俺たちはそこにいない。

 

「よっと!」

 

地面を蹴った感触は、驚くほど軽い。

踏み込んだ瞬間、身体が前へ滑るというより、空気が俺を押し出してくる。赤い羽衣が背で大きく翻り、その勢いのままガンガンタマフを振り抜いた。

 

「っ」

 

刃が一体のガンマイザーを斜めに裂く。

硬い手応えは一瞬だけで、その白い躯は光の粒を散らしながら崩れた。

 

「何っ」

 

アデルの声に混じって、残った個体たちがすぐにこちらを向く。

だが、その視線が追いつくより先に、俺の身体はもう次の間合いへ入っていた。

 

この新しい姿の特徴は、分かりやすい。

難しい理屈なんて後回しでいい。とにかく速い。軽い。そして、踏み込むたびに全身の奥から力が湧き上がる。サクナヒメの持つ身体能力が、ただ強くなったんじゃない。もっと根の部分から、別物みたいに研ぎ澄まされている。

 

「おぉ、これは軽いのぅ!それに湧き上がるのぅ!」

 

「だろうな……こっちも同じだ」

 

思わず口元が上がる。

神の眼魂の中でも、特に身体能力へ寄った力が、サクナヒメを核に束ねられている。その実感が、足裏から肩口まで途切れずに走っていた。

 

「ならば」

 

俺がそう呟いた時には、複数のガンマイザーが半円を描くように散開し、同時に攻撃姿勢へ入っていた。正面だけじゃない。左右も上も塞ぐつもりだ。単純な速さだけで押し切れる配置じゃない。

 

けれど、その動きが見えた瞬間、内側から静かな声が重なる。

 

「葉様」

 

「あぁ、ココロワヒメ!」

 

考えるより早く、指が動いた。

シャーマンドライバーから突き出た眼魂のスイッチを、ためらいなく押し込む。

 

『蒼装転換!智、起動!』

 

音声と同時に、世界の見え方が裏返る。

身に纏っていた紅の装いが、上から剥がれるように反転し、青い光が全身を走った。燃え上がる武の気配は、静かな思考の熱へ変わる。背に浮かぶ巨大な歯車が低く唸り、ひとつ噛み合うたびに空間そのものが整列していく。

 

さっきまでの俺が、前へ斬り込む武士なら。

今の俺は、戦場そのものを組み替える策師だった。

 

「「「消去します」」」

 

同じ声が重なり、攻撃が迫る。

光刃、衝撃波、圧縮された熱。避けるには多すぎる。だが、今は避ける必要がない。

 

俺はその場で手をかざした。

掌の前に集まった空気中のエネルギーが、青白い光を帯びながら瞬時に編み上がる。板ではない。壁でもない。もっと薄く、もっと精密で、それでいて眼前に迫る全てを受け止めるには十分な“答え”がそこに生まれた。

 

轟音が重なる。

だが障壁は砕けない。青い表面に波紋が走り、受け止めた衝撃をそのまま呑み込む。

 

「っ」

 

驚きの気配が、相手の動きに初めて混じった。

その一瞬で十分だった。

 

「返すぞ」

 

指先をわずかに動かす。

障壁の内側で溜め込まれていた力が、今度は逆向きに解放された。迫ってきたはずの攻撃がそのまま跳ね返り、逆流した奔流となってガンマイザーたちへ襲いかかる。

 

白い躯が数体まとめて吹き飛ぶ。

石畳の上を転がり、火花を散らしながら体勢を崩していく。その光景を見たアデルは、さすがに目を見開いていた。

 

「何だこれは」

 

その問いに、内側の声が静かに前へ出る。

俺の口を借りながら、けれどその響きははっきりとココロワヒメのものだった。

 

「私は発明を司る神、今、数多くの神々の力でエネルギーを司り、瞬時に万物を生み出す事が出来ます。故に」

 

そこまで言って、俺は一歩踏み出した。

青い歯車が背後で回り、砕けた光が足元に術式の円を描く。視界の端では、まだ赤い羽衣の余熱が完全には消えていない。武と智は分かれているようでいて、切り離されてはいないのだと、その感覚が教えてくれる。

 

だからこそ、言える。

 

「武のサクナヒメと智のココロワヒメ!2人が揃ったこの時!」

 

背中で二つの気配が重なる。

前へ出る力と、盤面を読み切る力。その両方が、今は俺の中で迷いなく噛み合っていた。

 

「我らに勝てぬ者はなし!」

 

言葉を叩きつけた瞬間、夜の空気がびりりと震えた。

アデルの顔から余裕が消える。白い群れもまた、初めて自分たちが“観測する側”ではなく“追い詰められる側”へ回ったことを理解したように、わずかに動きを鈍らせた。

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