仮面ライダーシャーマン   作:ボルメテウスさん

98 / 115
蕾の完全

アデルはゆっくりと視線を巡らせ、俺の姿――そしてその奥にあるものを見透かすように口を開く。

 

「・・・本当に天空寺タケルもそうだが、想定外な事ばかり」

 

その声音には苛立ちではなく、計算の狂いを修正しようとする冷たさがあった。

直後、片手を軽く上げる。

 

それだけで十分だった。

 

周囲に散らばっていたガンマイザーたちが、まるで一つの意志に引かれるように動き出す。白い影が重なり、溶け、形を失いながら中央へと収束していく。

 

「……来るか」

 

思わず低く呟いた瞬間、空気の密度が変わった。

収束したそれは、やがて一つの形を取る。

 

人の輪郭を保ちながら、その頭部だけが異様だった。

花弁のような装甲が閉じたまま重なり合い、赤く脈打つ。開こうとして、しかし開ききらない。内側から光が滲み、外殻を押し上げようとしている。

 

「・・・また姿が変わったか」

 

「ふっ、お前達を習った。それだけの事」

 

アデルの声が響くと同時に、その存在――不完全な“花”が動いた。

 

踏み込む気配もないまま、距離が消える。

 

「っ!」

 

反射で身体をずらす。

直前まで立っていた場所を、無数の触手が貫いた。空間そのものを裂くような速度で伸びたそれが、地面を抉り、石を巻き上げる。

 

一瞬でも遅れていれば、終わっていた。

 

「よく見ろよ、その動き!」

 

返すように踏み込み、ガンガンタマフを振るう。

赤い軌跡が空を裂き、そのまま“蕾”の胴体へ叩き込まれる――はずだった。

 

鈍い衝撃が、腕に返る。

 

「止めた……?」

 

刃は確かに当たっている。だが、斬れていない。

触手の一部が絡みつくようにして受け止め、さらにその奥で、別の層が支えている。

 

「これは」

 

「お前達では出来なかった一体化!二つに分けるしか出来なかったお前達ではなな!」

 

言葉が歪む。

一つの声ではない。複数の声が重なり、微妙にずれて響いている。

 

次の瞬間、触手が弾けた。

 

視界が一気に遠ざかる。

身体が後方へ吹き飛び、地面を転がる。衝撃が背中から胸へ抜け、息が一瞬止まった。

 

「っ……!」

 

体を起こしながら、目の前の存在を見据える。

確かに、やっている。俺たちが出来なかったことを。

 

別々のまま連携するのではなく、

一つにまとめて、力を束ねる。

 

あれは、未完成だ。

だが未完成だからこそ、無理やりにでも繋がっている。

 

それでも――

 

「二つに別けるんじゃない、別々だからこそ出来る事がある」

 

立ち上がる。

足裏に力が戻ると同時に、背の奥で二つの気配が重なる。

 

赤と青。

武と智。

 

混ざらない。だからこそ、干渉し合える。

 

「行けるな、サクナヒメ、ココロワヒメ」

 

返ってくるのは、迷いのない気配だった。

前へ出る衝動と、全てを見通す静けさ。その両方が、今は同じ方向を向いている。

 

目の前の“蕾”が、わずかに軋んだ。

閉じた花弁の隙間から、光が強く漏れ出す。開こうとしている。だが、何かがそれを止めている。

 

完全ではない。

 

だからこそ――崩せる。

 

俺は静かに構え直した。

次に動くのは、もう決まっている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。