仮面ライダーシャーマン   作:ボルメテウスさん

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一つになった力と二つが合わさる力

アデルの視線は、最後まで崩れなかった。

苛立ちを隠しきれないのに、それでもまだこちらを測る余裕を残している。あの男にとって、今の戦いもまだ“計算の内側”にあるつもりなのだろう。

 

「何が出来ると言うんだ」

 

吐き捨てるようなその一言と同時に、目の前のガンマイザーがこちらへ飛び込んでくる。

蕾のように閉じた赤い頭部が脈動し、触手とエネルギーが絡み合いながら真っ直ぐ突っ込んでくる様子は、未完成のくせに妙に完成されていて、腹が立つほど厄介だった。

 

だが、さっきの一撃で分かったこともある。

強い。重い。正面から噛み合えば押し切られる。だから、同じ土俵に立つ必要はない。

 

「故に私がやる事は既に決まっています」

 

ココロワヒメの声が、内側で静かに響く。

その声に合わせて、俺は迷わず片手を地面についた。

 

「何をするかと思えば、それで何をっ」

 

アデルの嘲りは、最後まで続かなかった。

 

地面が光る。

術式円のように広がった青い光の中から、無数の武器が突き上がるように現れた。タケルが振るうガンガンセイバーの各モード。マコトが扱うガンガンキャッチャーの各モード。見覚えのあるはずの武器が、数え切れないほどの本数でガンマイザーを囲むように地へ突き刺さっている。

 

「何が」

 

「言ったはずです。私達は2人で1人と」

 

その言葉が終わる頃には、俺の身体はもう反転していた。

青の静けさがほどけ、赤い羽衣が背を打つ。視界の輪郭が鋭く変わり、重く張っていた空気が一気に軽くなる。

 

紅装。サクナヒメ。

 

「行くぞ!」

 

一歩で距離を潰す。

ガンマイザーのすぐ近くに突き立っていたガンガンセイバーを掴み、続けざまにもう片方の手でガンガンキャッチャーを引き抜く。二つの武器を左右から同時に叩き込むと、ガンマイザーは即座に触手を広げて防御へ回った。

 

「っ!」

 

だが、それでいい。

防いだ時点で、もう遅い。

 

二つの武器をそのまま手放す。

赤い羽衣が翻り、次の瞬間には手の中にサングラスラッシャーとディープスラッシャーが銃モードで収まっていた。躊躇なく引き金を引く。連続した閃光が、ガンマイザーの防御の隙間を縫うように撃ち込まれる。

 

「これは」

 

戸惑いが、初めてあの蕾の動きに滲んだ。

サクナヒメの最も特徴的な速さ。踏み込み、離脱、持ち替え、追撃。その全部が、今のこの身体では呼吸みたいに繋がる。敵が防いだと思った瞬間には、もう別の角度から別の武器が牙を剥いている。

 

「小賢しい!」

 

苛立ったように、ガンマイザーが両腕を広げる。

閉じた花弁の隙間から濁った光が膨れ上がり、巨大なエネルギー波となってこちらへ吐き出された。空間そのものを押し潰すような圧が迫る。

 

けれど、その時にはもう、俺は別の姿へ切り替わっている。

 

『蒼装転換!智、起動!』

 

赤が反転し、巨大な歯車が背後で唸りを上げる。

攻めの熱が、研ぎ澄まされた静けさへ変わる。

 

「それは既に見えています」

 

ココロワヒメの言葉と共に、俺は眼前へガンガンキャッチャーを構えた。

飛来したエネルギー波を、そのまま掴む。捕らえた衝撃が腕へ重くのしかかる。だが、そこで止める。止めた力を、歯車の演算で一気に逆転させる。

 

「返す!」

 

青白い光が反転し、掴んだエネルギー波がそのままガンマイザーへ跳ね返る。

蕾の頭部が初めて大きくぶれた。

 

「なっ」

 

「サクナ様!」

 

「うむ!」

 

呼び声と同時に、再び紅が弾ける。

視界の中央に、もう敵しかいない。

 

『「チョーダイカイガン!ゴッドオメガドライブ!サクナ!』』

 

音声が鳴り響く。

羽衣が大きく開き、その全てが蹴り足へ集束していく。アポロンの直線、ケットの軽さ、ヘラクレスの重み、ビャッコの鋭さ。サクナヒメを核に束ねられた“武”の力が、一点へ重なる。

 

「はあああああっ!」

 

真っ直ぐ蹴り抜く。

一瞬、抵抗があった。だが、それだけだった。

必殺の一撃が蕾の中心を貫いた瞬間、閉じていた花弁がひび割れ、その内側から濁った光が四散する。未完成のまま無理やり一つになっていた存在が、耐えきれず崩れていく。

 

轟音。

光の粒が夜へ散る。

 

戦いは、それで終わった。

 

しばらくして、残光の向こうからアデルの声だけが落ちてくる。

 

「・・・どうやら、本当に厄介なようだな」

 

その言葉を最後に、黒い軍服の影は闇へ溶けるように退いた。

追わない。今は、その必要がない。

 

俺はゆっくりと息を吐く。

肩の力が抜けると同時に、内側から二つの気配が静かに寄り添ってくるのが分かった。

 

「やったね、サクナヒメとココロワヒメ」

 

「うむ」

 

「えぇ」

 

短い返事なのに、不思議とそれだけで十分だった。

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