究極の救済、そのニセモノ 作:Dr.パックマン
超常社会。その事の始まりは、中国のとある病院にて発光する赤子が生まれたというニュースだった。
以降、世界各地にて超常的な能力を有する人間が発見され、その原因は不明とされつつも時は過ぎ、いつしか超常は日常へと浸透され、夢は現実のモノへと変化していく。
世界総人口の約八割が、何らかの特異体質となった超人社会は現在、混乱渦巻く世の中にて誰もが空想して憧れた一つの“職業”が脚光を浴びていた。
『ヒーロー』
超常たる能力を有する個人が起こす事件事故に対抗するべく、有志の人々が立ち上がった事を機に世界から認められた超人気職業。
悪意と暴力を振り撒く敵、ヴィランから人々を守る---警察とは全く別形態の法の力を持つ彼等の存在は、人々に認められる形として超常の能力を持つ“個性社会”と同時に、世界に浸透していった。
「せんせー!診てくれてありがとー!」
「帰りも気をつけてね。あまり夜遅くまで残ってちゃダメだよ」
『はーい!』
子供たちを見送り、ようやく一息つけた青年は軽く息を吐く。
子供たちは信じられないほどに元気だ。
大人しい子もいれば活発な子もいる。逆に中間くらいの子も居て、”個性“という特殊な力がある関係上、怪我をする機会の方が多かった。
そのため、度々治療することが多くなってしまう。
軽傷ならば自分の手でやれるが、大きなものとなってしまうと”個性“による治療の方が良くなる。
ある意味では医者殺しの世界だ。
それでも青年は医術に関して手を抜かなかった。
”個性“を使わず様々な人を治したとされるアメリカにいる天才外科医と謳われた人から学び、独立した今となっても未だに勉強は欠かさない。
まぁ子供相手なので、だいたいは軽い治療で済んでしまうのだが田舎というのもあり、青年の存在は大きかった。
若い者ならまだしも、老人にとって遠出は厳しい。腰を痛めたり風邪を引いたり何らかの症状が出たり、とそういったことに対処出来る誰かが居るだけでも変わるものである。
しかしそれとは別で青年には大切な趣味があった。
スマホを取り出すと、ちょうどスタミナ回復の知らせが来ている。片手間に処理しながらパソコンでSNSに目を通す。
ユーザー名『M』
様々なゲームで優勝を果たし、トップランカーに位置するどころかランキング1位を常にキープする正真正銘の天才ゲーマー。彼がプレイしたゲームは必ず1位に君臨するという、ある種のゲーマーにとっての伝説の存在でもあった。
ある事件においても医療行為として使う時があったため、VRの方にも力を入れていたりする。
「お……そろそろタイムアタックの時期か。あー…でもこの日は仕事じゃん…幻夢の社長に呼ばれてるんだよね。新作ゲームの方もやりたいし……でもまだ更新出来そうなんだよな」
『だよな。俺も同じこと思ってたぜ。TAは俺がやってもいいか?』
「僕仕事で出来ないし、いいよ。ただ差が付きそうだな、僕も練習しなくちゃ」
『はは、その割には空いた時間でやってるだろ?』
「
『おいおいシラケること言うなよ。お前は俺、俺はお前だ。相棒が困ったとき誰か力になれるやつが居なきゃどうすんだよ?それにこっちもこっちで面白いからな。ヒーローってやつにも興味はあるし、お前と居た方がゲームも楽しいしな』
「ありがとう。話し相手がいるだけでも助かるし、僕もゲームの相手は欲しいから。ヒーロー活動に関してはない方がいいんだけどね……その方が怪我する人もいないし。少なくともバグスターのみんなは落ち着いたみたいだけどね」
史上最悪の事件から2年の月日が経った。
ゲムデウスが遺した被害はもうほぼ復元され、超人社会なのもあって戦場跡地は少ない。
何よりゲムデウスの討伐後、バグスターウイルスによる症状はなくなり、備えのためにワクチンの開発こそしているが、”心“を取り戻したバグスターたちは協力してくれたため、新薬の開発が進んでいる。
この二年間、新しいバグスターが生まれることもなかった。
緊急通報があれば知らせてくれるサポートアイテムも今ではお守りにしかなっていない。
むしろそれでいい、とすら思う。
バグスターウイルスによる感染はヴィランに襲われる恐怖とはまた違った怖さがある。
徐々に消えていくような感覚。自分が自分でなくなっていき、体の不調を訴えかけてくる。
高熱など様々な症状だ。何よりストレスで悪化する以上、患者の心に深く寄り添わなければ
体は救えても、心を救えなければ意味無いのだから。
だが、バグスターウイルスとはウイルスである。世の中から病を治療する方法こそ見つかれど根絶することは叶わないように、バグスターウイルスも根絶できたわけではない。
だが共存の道はないわけじゃないのだ。
患者だけではない。
バグスターも笑顔にする。
そのために、これからもやることは変わらない。
ゲムデウスを倒した際に落とした、仮面ライダークロニクルというゲーム攻略のトロフィー。
ガシャットのような形をしたものを握りしめ、今度こそはバグスターの神が安らかに眠られるようにと青年は白衣に仕舞った。
「さて…そろそろ時間かな。話によるとこの時間帯に活動してるらしいし……もうひとつの仕事に戻らないとね」
立ち上がった青年は腰部にベルトを出現させて、黄色のガシャットを取り出した。
”バイク“を運転するキャラクターが描かれたラベル。
起動スイッチを押すと同時に、青年の背面にゲームタイトルが表示されていた。
爆走バイク
期待外れだった。
この街に変わったヒーローがやってくると話が学校の中で広がり、初めて知った時はそれはもう大喜びしたものだ。
ヒーロー飽和社会と言われてるだけあり、ヒーローは多く存在する。
しかしこの街にはヒーローは誰も居なかった。
一体どんなヒーローなんだろう。
どんなことをするんだろう。
わくわくとして出迎えたら、ヒーローじゃなかった。
気弱っぽさがありつつも誰にも親切で優しく、接しやすい性格をしていた成人男性。しかし服装は明らかにヒーローではなく、白衣を着ていた。
上司らしきもう一人の人は完全に医者だったし。
でも、もしかしたら”個性“の関係上着てるコスチュームなのかもしれない。
そんな期待はその人の行動で簡単に裏切られてしまった。
様子のおかしい老人を見かけて駆け寄った彼は話を聞き、聴診器を使って確認したかと思えばテキパキと医療行為を行って安静にすることを伝えていた。
それだけではない。
転んだ友人。重い物を運ぶ老女を助けたり、体調の優れないOLにお世話を焼いたり。
ヒーローというよりもただの親切な医者だ。
これのどこがヒーローなのか。
初めて来た時は友人共々話し合っていたというのに、今となっては誰もヒーローとは思っておらず医者としか思っていない。
ヒーローなら捕まえないのかよ、と言ってもパトロールはしてる、と返ってくるだけ。
嘘だ。
ヴィランを倒さずして何がヒーローなのか。
ヒーローが居ないということはヴィランが居ないということ、すなわち平和であることの証明でもある。
悪く言えばヴィランが暴れる必要性も感じないほどの辺鄙なド田舎。
だからこそ憧れのヒーローに会えると思ってたのに。
蓋を開けたら、これだ。
オールマイト…までとは言わないが、体はそれほど鍛えられてるとは思えないし普通の人と変わらない体格。
それどころかヒーローではない上司らしき医者の人の方が強そうに見える。
ヒーローであるならもっと筋肉とかあるのでは、と思うのも仕方ないことだろう。
肉体派の個性じゃない可能性もあるからそこはまだいい。
一番酷いのは、大人のくせに
一度なら偶然だが、それを何度も見れば思うことがあるのだ。
”なんだ、この頼りがいのないヒーロー……“と。
ドジという言葉はこいつのためにあるんだろうなと子供ながらに思うほど。
正直ヒーローと言われてなければ信じられない。攻撃されたり躓くならまだしも、何も無いのに転ぶなんて信じられない。
休んでる姿を目撃したこともあるが、
しかも見たことないような機器。
いわゆる”ワンダースワン“なのだが、それは今の子供たちは知り得ないものだろう。
もっと、それこそ自分たちもやってる今となっては世界的大人気となった幻夢コーポレーションのゲームをしたらいいのにとすら思った。
どんなゲームをしてるのかなんて別に文句を言えるものではないが、とにかく少年にとって来たヒーローは全然ヒーローではなかったのだ。
---こんなことならもっと別のヒーローが来てくれたら良かったのに。
自分の中に僅かに残っていた応援しようという思いすら消えつつある中で、今日も今日とてそのヒーローは外で遊ぶ自分を含めた子供達の見守りをする程度だった。
全然ヒーローじゃない。
かっこよくもない。地味だ。
本人はヴィラン退治よりも災害救助が主な活動だと言っていたのを聞いたことはあるが、それも今となっては信じられない。
いつまで居座る気なのか。
もう少しかな、とは言っていたが早くそうなって欲しいとすら思う。
そうすればきっと、もっとちゃんとしたかっこいいヒーローが来てくれるはず。
そう願い続けて、すっかりと暗くなった塾の帰りに友人と少し遊んだ少年は帰り道を歩いていた。
そういえば”夜遅くに一人でで歩いちゃダメだよ“と言ってたっけ、と今更ながら思い出す。
どうせ親が言ってくるようなことと同じことだろう。
低学年ならまだしも、もう中間を過ぎている。
悪い人と良い人の区別なんてつくし、だいたいヒーローらしくないやつの言葉なんて聞いたって無駄だ。
もう信じてなんて、自分以外ほぼいない。
明日も居るだろう。
期待なんてしないが、とっとと役目を果たして居なくなって欲しいものだ、と石ころを蹴りながら歩いていた少年はゴツン、と何かにぶつかった。
「うわっ!」
俯いてたとはいえ、ぶつかった際に尻もちを着いてしまう。
咄嗟に着いた手の痛みに顔を顰めながら少年は謝るために口を開いて---
「ご、ごめんなさ……ひぃっ…!?」
目の前にある、
珍しくはない。友達にもいるから差別なんてしない。
ならば、なぜ悲鳴を挙げたか。
それは目だ。
口元は歪み、まるで捕食者を見つけたかのような目。
「おっ、最近全然人を殺せてなくてよぉ。探してたんだぜ。なんでもこの街にヒーローが来たんだってな。だったら子供の一人や二人、殺したらヒーローが来るかな。来るよな?なあ?この俺にぶつかっておいてタダで済むと思ってるわけじゃねえよなぁ?」
子供ながら理解する。
この男はただのチンピラではなく、本物の悪意。
ヴィランだと。
偽者でもなければ、演技でも撮影でもない。
本気の殺意。
恐怖のあまり体が震え、歯が音を立てる。
---ヒーロー、ヒーローに助けを。
ダメだ、と否定が入る。
異形型の男、ウニと鬼が合わさったかのような外見を持つ男に対して、あんな頼りにならないヒーローが役に立つわけもない。
むしろすぐ殺されて終わりだ。
呼んだって意味が無い。
なら。
なら。
「っ!!」
「おっと」
咄嗟に持っていたカバンを投げる。
持っていたであろう刀で切り裂かれ、あっさりと中身がぶちまけられるが関係なかった。
殺される。
殺される!
本能で理解した子供はすぐさま逃げの一手だった。
あのヒーローは使えない。
なら誰か、頼りになる大人に。
力のある大人に助けを求めないと。
齢10歳にしては正しく、正解とも言える選択だった。
むしろ最適解といってもいい。
相手が刀を持ってるとはいえ、相手はヴィラン。
到底子供が立ち向かえる相手でもなければ、じっとしていても待つ未来は死ぬ未来のみ。
動けただけでも十分凄いといってもいい。
いくら無意識下の行動とはいえ、走った。
全力で、後先を考えず。
しかし---
「まぁ待てって」
ただの子供が立ち向かえるならば、ヒーローという存在は必要ないのだ。
圧倒的な身体能力。
回り込まれた少年は逆方向に逃げようとして、足が縺れて転んでしまった。
「いっ……っ」
転んだ。
転んでしまった。
何も無かったのに。
大事な時なのに。
何が大人のくせにだ。
何が転んで情けないだ。
自分だってあのヒーローと同じではないか、と今考えるべきではないのにこの街に来たヒーローのことを考えてしまったのは、唯一この街にいるヒーローだからだろうか。
「おーおー、可哀想だなぁ。血ぃ、出てんぜ?」
言われて足を動かせば、擦り傷が生まれていた。
痛い。痛い。
にやにやとして笑みを浮かべ、地面に擦られる刀から火花を起こしながら近づいてくる男に恐怖心が煽られ、”じわっ“と下半身から生温い感触とともに水たまりが出来上がる。
「小便まで漏らしてよお、心配すんなって、その恐怖も痛みもすぐ無くなるからよ、現実からリタイアって形でなぁ!!」
刀が振り上げられる。
同時に悟った。
ああ、自分は死ぬんだと。
やっぱり嘘つきだ。ヒーローなんていない。彼奴はヒーローなんかじゃなかった。
助けて、なんて言葉も出ないくらい恐怖に呑まれて、数秒後の未来を考えないようにするためか少年の目が閉じられた。
そのお陰か、何かが聞こえた。
ブゥーン、とエンジン音のようなもの。
ついに幻聴まで聴こえてきて、やはり自分は死ぬのだろうと少年は絶望した。
そして、振り下ろされた刀は少年の体を斬り裂き、鮮血を撒き散らす---
「うおぉ!?」
はずだった。
容赦なく突進してきたバイクにヴィランの男は咄嗟に横に飛ぶと、急ブレーキを掛けられたバイクはスライドしながら停止する。
「なんだ…白衣…?医者か?医者がなんの用だァ!」
「お、お前は……なんで……」
近くで聞こえてきた音。
なおかつヴィランの男の言葉から医者というものが聞こえてきて、目を開けた少年は吼え猛る敵の声に怯えながら驚愕する。
それは先程まで自分が文句を言い続け、それどころかとっとと居なくなればいいとすら思っていたヒーローと思えないヒーロー。
そんなヒーローはゆっくりとバイクから降りると、ヘルメットを脱いでバイクに乗せると、ヴィランに背を向けて無視して男の子を安心させるべくか背を合わせて声を掛ける。
「もう大丈夫。君の親御さんから帰ってきてないと言われて、探してない場所を絞るのに時間がかかったんだ。よく頑張ったね…あとは僕に任せて、そこで休んでて」
「あ、あ……あ…っ!」
「大丈夫。確かに僕はオールマイトさんやエンデヴァーさんみたいに強くは見えないと思うけれど---」
僕はドクターであり、ヒーローだから
緊張状態であり上手く言葉を話せない少年を慮ってか、青年は普段と変わらぬ穏やかで優しい笑顔を向ける。
お礼か謝罪か、もしくは別のことなのか。
それは青年には知り得ないことだが、少年にとって普段のドジな青年の姿ばかりを目にして、ヒーローらしい活動を全然してこなかった彼があのヴィランに勝てるという未来が一切想像できなかった。
むしろ出来る方が稀有ともいえる。
だからこそ、助けてくれてありがとう。でもかっこつけてないでお前だけでも逃げろ。
せめて他のみんなが無事に済むように助けを、とそう言いたい少年の心情を知らず、青年は立ち上がってヴィランに対峙した。
その際、ほんの一瞬だけ青年の腰部に何かのベルトが巻かれていた気がしたが、サポートアイテムで勝てるような相手ではないだろう。
このままじゃ、こいつまで殺される。
そう思って口にするより早く。
「医者でヒーローだぁ? なんでもいいや、斬らせてくれるなら誰でもいい!ヒーローなら逃げないよな!俺に斬らせろぉおおおお!」
ヴィランが動く。
異形型らしい身体能力の高さ。
素早く突進してくるヴィランに対し、青年は何らかのゲームソフトを取り出す。
それは少年も見たことがある。
今では有名となった、ゲームソフト。
『ガシャット』と呼ばれるもの。
青年は右手に持つガシャットの起動スイッチを押す。
『MIGHTY ACTION X!!』
有名なゲームタイトルと共にピンクの”マイティ“が描かれたものが背面へ浮かび上がり、そこからゲームエリアとチョコブロックが展開。
ベルトからは『GAME START!』の文字が表示。
突進してきたヴィランがチョコブロックに弾かれて吹き飛ぶ中、青年の髪が靡き、目が赤く一瞬光る。
「心配すんな。ヴィラン退治はこの
そう宣言した青年に少年は僅かに違和感を覚えた。
一人称が違うこと。口調が違うこと。
何より、
青年はガシャットを持つ右腕を大きく左に動かし、即座に右に回すように振りつつ左腕はそれを追うようにしながら顔横でガシャットを持つと後から来た左手を添えるように構える。
「変身!!」
そしてガシャットを右手から左手に持ち替えながらグリップを回すようにして端子部分が下に向くように半回転反せ、上に大きく上げてからふたつある内の右側の差し込み口にセットする。
『ガシャット!』
ベルトの音声が鳴り響き、青年を中心に展開されるキャラ選択パネル。
目の前の”マイティ“を模したパネルを右手でタッチ選択。
『Select!』の表示が生まれ、青年は両腕を胸の前で交差するとゆっくりと開くように降ろしていく。
すると。
『let'sgame! メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』
『I'm a 仮面ライダー』
アイコンが重なるのと同時に青年の姿が輝き、どういったことか明らかに物理現象を無視し、ゆるキャラのようにずんぐりとしたピンク色のトサカにゴーグル、まさしくマイティアクションXに出てくる主人公、”マイティ“を模した姿へと変化する。
そして胴体の左側にはHPを現すライダーゲージが一本。
右側にはコントローラーのボタンを彷彿とさせる四つの十字に配置された丸が備わっている。
この姿こそ、かつて究極生命体、不死者、天使と悪魔のような無敵の怪人、現実世界の存在を消滅させる力を持つ大蜘蛛、時の神や全知全能の神など多くの強敵に勝利した伝説の戦士、仮面ライダーエグゼイド・マイティアクションゲーマーレベル1。
いわゆる、初期中の初期の姿である。
「は、ハハッ!んだよそれは!その見た目で動けるわけねえだろ!ナメてんのかァ!!」
『ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!』
右手を開くように水平にポーズを取り、突進してきたヴィランに対してエグゼイドは両足で地面を蹴る。
すると見た目に反したスピードが発生し、ロケット頭突きがヴィランを吹き飛ばす。
さながらゲームのローリング回避のようにぐるぐると回りながら急接近。
勢いのまま立ち上がって駆けると周囲にピンクの円環が生まれ、エグゼイドのアイコンが回転するとハンマーが生み出される。
『A』と『B』のボタンがあり、叩く箇所は蛍光グリーン。中心にはピンクの、マイティのトサカを思わせる外見のある武器。
それは。
『ガシャコンブレイカー!』
エグゼイドに備わっているメインウェポンである。
「しゃらくせぇ!」
『よっと!』
ハンマーを片手に接近したエグゼイドに、自身の刀に自信があったヴィランは薙ぐ。
しかし、あっさりとハンマーで叩きつけられ、見た目からは考えられない威力によって刃が突如地面にバウンドする。
返し。
下段からの打ち上げに、異形型なりの誇りがあったヴィランは耐える---
「がはっ!?」
『HIT!』
ことは出来ず、あっさりと打ち上げられるとチョコブロックを生成しながらエグゼイドは登っていき、跳躍して傍にあったチョコブロックを破壊。
そこから何らかのメダルと思わしきものが出現すると、疾走するシルエットの絵柄だった。
それを即座に取得する。
『アイテムGET!』
『高速化!』
エグゼイドの体が黄色に光ると、チョコブロックを蹴りながら目視できないほどの凄まじい速さでヴィランに攻撃を加え、その度に『HIT!』の文字が表示されていた。
地面に蹴り飛ばされ、既にボロボロとなったヴィランは両手を着きながら必死に立ち上がると着地したエグゼイドを睨みつけた。
「なんだ、なんなんだこの強さは!トップのヒーローと遜色ねえ!こんなヒーローがここにいるなんて聞いてないぞ!!何者だ…一体なんなんだ…!お前はァアアアアア!」
『さぁ、なんだろうな? もうレベル差には気づいてんだろ?どうする?大人しく警察に捕まるか、それとも……』
「殺す!お前だけは!お前だけは絶対!!」
『そうか……だったら』
フィニッシュは必殺技で決まりだ!
『ガッシューン!』
ガシャットを引き抜き、フッ、とカセットに息を吹き込むようにするとガシャコンブレイカーに備わっている黒いガシャットスロットにライダーガシャットを装填。
『ガシャット!』
『キメワザ!』
ぐるぐると腕を回し、独特のエフェクトが纏わり、エグゼイドはガシャコンブレイカーのトリガーを押し込む。
『MIGHTY CRITICAL FINISH!』
『はあっ!!』
「う、うぉおおおお!!」
跳躍、そして振り下ろし。
刀を横にして防御を計るヴィランの刀が真っ二つに折れ、強力な一撃がヴィランの顔面に叩き込まれた。
『GREAT!』
そして。
あまりに強すぎる衝撃にバウンドしながら回転し、バットを回すようにハンマーを小さく動かしていたエグゼイドは後頭部に向かって勢いよく叩きつける。
『PERFECT!!』
地面に小さなクレーターを生成し、エグゼイドの一撃はヴィランの意識を完全に奪い取った。
構えを解いたエグゼイドはガシャットをベルトに戻しながら振り向く。
「す、げえ……」
少年は誤解していた。
生まれて初めて本物のヒーローを見た気がした。
ヒーローらしくない青年。
ヒーローにしては変わった外見。
しかしその辺のヒーローとは一線を画す強さ。一進一退ではなく、ヴィランをノーダメージで圧倒するほどの強力な力。
エンデヴァーやオールマイトを思わせるような、桁外れた力。
そのヒーローは、まさしく都市伝説として扱われ、子供たちに読み聞かされてきた御伽噺に登場する仮面の騎士のようだ、と。
そこで緊張の糸が切れてしまったのか少年の意識は遠のいていく。
最後に見たのは、先ほどの戦いが嘘のように急いで駆けてくる彼がいつも見てきた青年の姿だった。
それを見て、少年は心から安堵した。
”ああ、やっぱりヒーローだ“と僅かに残っていた想いが最後に再発するのを自覚しながら。
これは”ニセモノ“から”ホンモノ“へと至った英雄の物語。
永遠ともいえる未来へと続く仮面伝説の、究極の救済と称される
実は最初はエグゼイドかガヴで悩んでて映画見てからガヴ書こうかなーと思ってたけど、映画が人の心なさすぎてドン引きしたからやめたという余談。
その場合、こっちと違って最初から一般人のヒトプレスが目の前で大量生産からの主人公だけ無事で絶望から始まってました。
あと学生だった。
ちなみに続くかなんて誰も分からないでしょう。俺も分かんない。誰か書いてくれてもいいですよ