究極の救済、そのニセモノ 作:Dr.パックマン
重夢が所属するCR。
それは衛生省により聖都大学附属病院の地下に密かに建造された、対バグスターウイルス・ゲーム病専門の医療施設。
兼、仮面ライダーとしてヴィランに対抗するために重夢の事務所にもなっている。
正確には、
衛生省ではない別の、ヒーローを統括する組織から、だが。
エグゼイドの力が強力であるが故に、ヒーローとして活動させたかったのだろう。
重夢自身は事務所についてはどうだっていいが、それで一人でも多くの命を守れるなら、と大人しくヒーロー活動をしている。
ちなみにCRとはCyberbrain Roomの訳である。
CRの存在はバグスターウイルスの大量感染の時に公にするしかなくなってしまい、バグスターウイルスの件も含めて全て公表されている。
無論、仮面ライダークロニクルでゲームオーバーになれば消滅するということも。
そのCRだが、バグスターウイルス感染によるパンデミック、いわゆるゼロデイ発生時に設立されたもの。
最初は仮面ライダーが自分しかいなかったため、重夢は殆ど全てバグスターウイルスに関しては関わってると言えるだろう。
だからこそ、今度は消滅者を出さないために。死者を出さないために仮面ライダーとして活動していたのだ。
結局、個性ある世界でヴィランと戦える力でもあるため、仮面ライダークロニクルで
そして重夢自身は記者会見を開いたこともあり、田舎でもない限りちょっとした有名人だ。
データは命と呼べるのか。
現代医療に突きつけられる命題とも言える。
閑話休題。
そんなCRだが、所属は重夢だけではない。
仮面ライダーに変身はしないが外部の協力者は居るし、CRにだって。
「あ、エム!お疲れ様ー!」
明るい声で出迎えてくれたのはピンク髪にゲームのキャラのようなイエローのコスチュームにカラフルなドッド柄のスカートの格好をした女の子。
仮面ライダーのナビゲートで、ヒーローとしてはサイドキックという扱いになる。
彼女の名前はポッピーピポパポ。
ドレミファビートのキャラであり、その正体はドレミファビートから生まれたバグスターだ。普段は普通の人間と変わらない姿になっていたりもするが、個性社会なのもあってそのまんまの姿の場合が多い。
ちなみに彼女も仮面ライダーの一人である。
ゲムデウスとの戦いでパンデミックを防ぐため一度消滅した彼女だが、重夢の個性が無意識下に発動し、パラドと同じく消滅を免れたという経緯もあったりする。
---あの時はポッピーが本当に消滅したと思ったっけ。
もう過去となった話だが、ふと思い出した重夢はそうならなかったことに改めて良かったと思った。
ただ同時に思い出したこともあり、未だに謎なことがひとつある。
重夢には原初のバグスターウイルス、すなわちガシャットを新たに生成する能力が備わっているが、ドクターマイティ
じゃあ他に誰が居るのか、と言われたら分からないとしか言えなかった。あれはゲムデウスに対してワクチンとしての効果がある。対ゲムデウス専用ガシャットとも呼べるもの。戦闘においては実際に重夢が使ったことはないものの、そうなるとグラファイトのようにゲムデウスウイルスを培養しなければならないはずなのだ。
しかしあの時は殆ど重夢一人で戦ってたためそんな時間はなかったし、いくら原初のバグスターウイルスを持っていようがワクチンのような力は持っていない。
ポッピー曰く、ゲームのノイズのように姿がブレて見えない誰かに渡されたらしいが。
やりそうな人物といえば、重夢の頭の中にはやはり檀黎斗の姿が浮かび上がる。
本人は消滅する寸前に自分は
「難しい顔してどうしたの?」
「ごめん、なんでもない」
どちらにせよ、分からないことを考えてる暇があるなら重夢は患者のことを考えることにしている。
ヒーローとして両立するのは大変だが、一時期に比べればまだマシになった方。
「もしかして体調悪いんじゃない!?最近エムずっとドクターの仕事以外にもヒーロー活動たくさんしてたよね?ドクターは体が資本だよ!ちゃんと休まなきゃ!」
「分かってます。でも僕も出来る限りはやらなくちゃいけないから。本当にやばくなる前には休みますよ」
「ホントに…?」
そう、オールマイトの秘密を知って二ヶ月ほど。
重夢は以前に比べてヒーロー活動の機会が増えている。
というのもプライベートの時間を減らしただけで仕事はそのまんま続けてるのだが。
患者と向き合う以上、ドクターである重夢が体調不良なんて以ての外。しかし逆に言えばオールマイトの状態を知って無視出来るような人間でもない。
強引にでも辞めさせたい気持ちはあるが、出来ないために少しでも負担を減らせれば、と思って活動しているだけだ。
一介の研修医でしかない重夢は平和の象徴より発言力が低い。それこそ重夢の活躍が全て公にでもならない限り。
せいぜいエグゼイドがバグスターウイルスに対抗出来るヒーローという存在くらいの認識しかされていないのだ。
レベル
ただ重夢としては別にポッピーを不安にさせたいわけではないため、そんな表情を浮かべる彼女にどう安心させたらいいのだろう、と思考を張り巡らせる。
重夢はポッピーには笑顔が似合うと思っている。
仲間という仲間が居ない中、唯一仲間でいてくれた存在。それにどれだけ助けられたか。
一時期バグスター側について敵対した時もあったが、その時は本当に孤独だった。仲間という存在の大切さをそこで改めて知ったとも言える。
もちろん重夢はこんなこと他の誰かに言うつもりもないし言ったこともない。
その瞬間、重夢の体から赤と青の粒子、バグスターウイルスが噴き出し空中で大量のバグスターウイルスが混ざり合うと人の形を作った。
「心配するな、ポッピー。重夢が倒れるようなことは俺が絶対にさせない」
「パラド……うん、お願い」
パラドはポッピーとは違いゲームのキャラではない。
もう一人の重夢とも呼べる存在。
重夢から生まれたバグスターであり、今となっては唯一無二の相棒となった存在だ。
そして命の大切さを学び、かつて仮面ライダークロニクルを作り出した一端を担ってる者として自身の罪を認識して贖罪中でもある。
「僕そんな信用ないかな……」
「ああっ!そんなことないよ!?ただこう、エムって真っ直ぐすぎるというか……っ!と、とにかく無茶はダメだよ、エム!」
「まぁ……気をつけます」
かつては独りでやるしかなくて戦いに身を置いていたが、もしかしたらその時のように無茶をすると思われてるのかもしれない。
特に恭太郎先生がバグスターウイルスに感染した時は他のヒーローの協力要請すら跳ね除けてソロで攻略しようとしたことがある。
今度は自分が治さなくちゃならないと。
そのせいでヴィランやグラファイト、バグスターと戦うことになってゲームオーバーになりかけたこともあった。
結局はドクターとしてもチーム信頼関係の大切さ。自分1人の力を過信しないことを恭太郎に教えられ、ヒーローと手を組んでレベル5を制御して無事にゲームクリア出来たが。
「でも最近大量の突発性ヴィランの他に改造ヴィランの存在もあって増えてますからね。ここにも緊急通報が来ますし」
「だよね!ほんっとに急だもんね」
「悪い予感が当たらなければいいんですけど……」
「悪い予感?」
「はい。今はヴィランが暴れるだけで済んでるのでそんな被害はありません。レベル2でも十分対処出来る相手ばかりですし…ただもし大きな収容所を狙うような計画ある事件が起きようものなら大変なことになります。救助に撃破、ひとつ増えるだけでも手が足りなくなりますから」
「ああ、それに間違いなく手を引いてる奴がいるだろうな。鳴羽田ばかりってのが…何らかの実験と言われたっておかしくない。だんだんと規模も大きくなってるし今度は派手な行動に出る可能性だってある」
そう、突発性ヴィランなんてそう何度も生まれるわけもなければ改造ヴィランが出てる時点で誰かが悪意を持って何かを行おうとしているのは確実。
改造の理由までは分からないが、ロクでもない実験をしていることは間違いない。
バグスターウイルスが関わって無さそうだとはいえ、放置出来る問題じゃないだろう。
「じゃあこのままだと大きな事件になっちゃうってコト!?」
「確証はありませんけどね。そうなる前に手を打てたらいいんですけど、黒幕らしい黒幕は探っても見つかりませんでした。もしかしたら本人は安全なところにいて、人を使ってる可能性が高いかもしれない」
いくら制圧したって黒幕に辿り着かなければ同じことを繰り返すだけだ。
改造ヴィランを倒したあとに探ったこともあったが、それらしき存在はいなかった。
もし大きな事件を起こすとして、どこか狙われそうな場所といえば東京スカイエッグだろうか。
まぁ場所を予想したところでいつ、どうやって、どの規模のものか分からない時点で護衛として着くことは出来ない。
だからこそ、後手に回ってしまう。
ヴィランからすればどこでも暴れたらいいが、ヒーローはその場所に居なければ守ることも出来ないのだ。
もし予想が違えば無駄な時間を過ごし、その間に別のところが大きな被害が出るかもしれない。
せいぜい出来るのは通報があったらすぐに出動出来るようにしておくだけだろうか。
まぁ確か今日はイベントがあるため多くのヒーローが居るはずなので、重夢の出番はないだろう。
「ううーん……そうならないと一番いいよね」
「そうですね。結局僕らに出来ることはそう多くないですし、今は対処出来ることからやるべきかと」
「にしたってヒーローが大勢居る割には全然平和にならないもんだな」
「仕方ないよ。個性は強力な力だ。それだけじゃなく個性によっては差別とかあるし、今でも異形型に対する当たりが強い場所とかあるみたいだから。それもあってヒーローだけじゃなくヴィランになる人も多い。個性社会が産んだ柵というか……」
「ただ日本はマシだけどね。それもオールマイトさんが抑止力になってる間だけだ」
「もし個性がなければ平和になってたのかな?」
「どうでしょう。少なくとも個性がなければ外宇宙に生息領域を広げるまでに科学を発展させていたとは言われてましたけど」
「いつかエムも戦わなくていい日が来たらいいね」
「…そうですね。そうなればきっと、患者も少しは減るはずですから」
いつかの未来。
平和になる日が来れば仮面ライダーは必要なくなってしまうだろう。
ヒーローがいらなくなる日は来ないとは思うが、自分が居なくても何も問題が無くなった時は重夢はヒーローを辞めるつもりでいた。
そもそもエグゼイドの力はヴィランに対抗すべき力ではなく、正確にはバグスターに対抗する力だ。
大ショッカーなど仮面ライダーが必要な敵は例外として、だが。
本来ならば既に役目を終えたはずのエグゼイドは必要とされないべきなのだ。
それでも世界がエグゼイド、重夢を逃がさない。
例え長きに渡った決着を着け、仮面ライダークロニクルを終わらせようとも全知全能の神を打ち破ろうと---。
そんな中、受話器から音が鳴り響く。
近くに居たポッピーが電話を取り、CRだということを伝えると。
「ええ〜ッ!?」
突如甲高い叫び声に重夢とパラドは思わず耳を塞いだ。
「え、エムエムエムゥー!!」
「ど、どうかしました?」
「スカイエッグ!スカイエッグが爆発してるって!ヒナタ審議官から!」
「なっ…!?確か今日はキャプテン・セレブリティのお別れイベントが開催されてるって…!」
「重夢!」
「ポッピー、僕はすぐに行ってくる!パラド!」
「ああ」
拳を突き出し、合わせるようにパラドの拳がぶつかった瞬間赤と青の螺旋状の光が重夢の体を覆い尽くし、重夢はすぐに走っていく。
「エム、気をつけて!」
手を挙げて返事し、当たって欲しくない予感が当たったことに内心で歯噛みするが、今はスカイエッグをなんとかすべきだというパラドの声に同意し、すぐに病院を出た。
(
ゲーマードライバーに触れ、新しいガシャットを取り出す。
ガシャットに小さなエグゼイドが飾り付けられた太めの銀色のガシャット。
重夢は走りながら起動スイッチを押す。
『MAXICIMAM MIGHTY X!』
大きなロボットのようなマキシマムゲーマに乗ったマイティのグラフィックとタイトルロゴが背後へ浮かび上がり、重夢が口上を呟き。
『マックス大変身!!』
変身と同時に風の如き高速スピードで街中を巨体が走り抜けた。
この後滅茶苦茶ダリラガーン、ダゴズバーンした。