究極の救済、そのニセモノ 作:Dr.パックマン
例のスカイエッグの件は駆けつけたエグゼイドが破壊されたドームを受け止め、軟着させようとしたところでオールマイトが駆けつけた。
そのため二人で協力してエグゼイドが建物を。オールマイトがCCとファンを名乗る人物---灰廻航一が落下していたのでオールマイトが救助したことで被害は出なかった。
その後はその場から離れて変身を解除し、本業たるドクターの仕事---研修医の身なので手伝いが多かったが。
ちなみに最後辺りに襲ってきた超大型爆弾ヴィランは咄嗟に隠れてマキシマムに変身したエグゼイドとオールマイトが一瞬で片付けたので結局被害は出ることはなかった。
とまあ久々にマキシマムに変身することになったこと以外は特に何事もなくレベル2で解決できる事件ばかりだったので大きな出来事はなかった。
それから三年後。
その間に鳴羽田ロックダウンという大きな事件は起きたが、それはある人物の活躍により解決された。
そして重夢は。
悲鳴が上がる。
そこにはヒーローと思われるコスチュームに身を包んだ二人が倒れており、
相当まずい状況でヒーローは息はしているが出血しており、骨が何本か折れているのかもしれない。
今まで観戦したり応援や撮影をしていた人たちもようやく逃げ始めた。
だが恐怖で身動きが取れなくなってる者や転んだ人もいれば、小さな子供に関してはヒーローが負けたからか泣いたり、取り残されてひとりぼっちになってる者すらいる。
混乱が急激に広がり始めた影響で正常な判断が出来ていない。
そしてまさに、ヴィランはヒーローにトドメを指すべく剛腕な拳を叩きつけ---
『レベルアップ!』
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!』
『ガシャコンブレイカー!』
『ジャ・キーン!』
『ぐっ---うおっ…!?』
咄嗟に割り込んだエグゼイドがガシャコンブレイカーの剣モードで縦にすることで防御するが、あまりにもの威力に押し負けて吹き飛ぶ。
その際の衝撃で倒れていたヒーロー二人も吹き飛ぶが、エグゼイドは武器を落として抱き寄せ、自分の体を下敷きにすることでダメージを減らす。
「あ?なんだぁ?またヒーローか!?」
すぐに起き上がり、二人を降ろすと息があることに安堵の息を吐く。
まだ呼吸も安定している。
急げば助かるだろう。
ヴィランに目を向けると、左眼が出血している。
エグゼイドの記憶の中には覚えのあるヒーローだった。
ウォーターホース。水を操る個性を持つヒーローで水害救助で共にしたことがある。
この場に水もあることから交戦中に相打ちになる形でヴィランの眼を削ったのだろう。
「き…み、は…え、エグ…ゼイド……か?」
「み、みんなを……あの、ヴィランは…やばいわ……」
『悪いな、それは出来ない。あんた達には息子さんがいるだろ。だったら生きて会ってやれ!子にとって親は宝物だ。ここは俺が引き受ける!心配すんな、こいつは俺が---』
ノーコンティニューでクリアしてやる!
「っ…すまない……」
「ここ、は…お願い……」
この場に居ても足手まといになると思ったようで、ウォーターホースの二人はゆっくりとだが離れていく。
それをエグゼイドは見送り、ヴィランに目を向けると。
「話は終わりか?もういいよな、なァ!ヒーローォ!!」
『っ!?』
先程よりも上昇した力。
前転して転ぶように避け、ガシャコンブレイカーを拾うと振り向きざまに斬りつける。
大半のヴィランはこれでダメージを受けるのだが、目の前のヴィランには効いてなかった。
『なっ!?』
「んだよあんな見え切っておいてその程度か!?もっと俺を楽しませろよッ!遊ぼうぜ、ヒーロー!!」
『ぶね…!?』
筋肉の肥大化。
明らかに個性。
増強型な上に肥大化によって攻撃範囲まで上昇する。
反撃を身を逸らして避けるが、当たってもいないのに凄まじい風圧が襲いかかってくる。
すぐに右腕で振り下ろしてきたため、エグゼイドはヴィランの腹を蹴って宙返り。
距離を稼ぎつつ回避すると、あまり効いてはないようだが自身の危機も回避した。
(なんて硬さだ。筋繊維の影響で斬撃が通らねえか。こいつは今まで会ってきたヴィランの中でもかなり強い……!ウォーターホースの二人じゃ勝てないわけだ!)
昔ならいざ知らず、今となってはエグゼイドのレベル2は並のプロヒーローを優に超えるスペックを持つ。
それが通じないということは、相手はチンピラでもなく真に実力のあるヴィランということだ。
「いい動きだ。お前、結構強いヒーローだな?いいねいいねいいなァ!もっと俺と精一杯遊ぼうぜぇ!!」
『グラファイトとは別の意味の戦闘狂かよ。いや…グラファイトに失礼だな』
《同感だ。けど下手なやつより厄介だぞ。重夢、油断すんなよ》
『分かってる』
「一人でごちゃごちゃ、作戦会議はおしまいかァ!!」
『おかげさまで……な!!』
腕だけでなく足にも可能らしく、瞬発力を上げて加速。
遅れてエグゼイドも加速し、ガシャコンブレイカーに備わっているボタン、刀身に一番近い白いボタンを押す。
『バ・コーン!』
『ハァッ!!』
右腕による正面からの攻撃。
それに対し、エグゼイドは両手でハンマーを持ってバットのように叩きつける。
ハンマーによる衝撃と筋繊維によって強化された拳がぶつかり合い、地面を抉って互いを吹き飛ばす。
ヴィランは数歩下がり、エグゼイドは転がるように吹き飛ぶ。
互角のように見えるが、どちらの威力の方が高いのか明白だ。
「は、ハハハ!ますますおもしれぇ!次は本気で行くからな!死ぬなよ!死んでくれるなよなァ!!」
『!!』
今度は全身が肥大化し、まるで筋肉の塊のようになったヴィランが弾丸の如く駆け出す。
予想以上の速さに驚きながらエグゼイドはガシャコンブレイカーを盾にするが、武器越しに拳が腹部に突き刺さり一気に吹き飛ぶ。
ガードレールに背中を強打し、ライダーゲージが一発で三割も削られてしまう。
『チッ……!』
ライダーゲージの消費音で胸を見ると三割削れてることに舌打ちすると追撃を避けるために横に転がる。
すると筋肉の塊はガードレールを破壊し、建物の中に突っ込んで倒壊させていた。
『だったらこれだ!!』
『ガシャット!』
『キメワザ!』
『マッスル化!』
「次はどんな手段を使うんだ、ヒーローォ!!」
『MIGHTY CRITICAL FINISH!!』
ガシャットをスロットに挿し込み、トリガーを押して必殺技を発動させる。
エナジーアイテムによる強化と必殺技による最大火力。
これに対し危機感を覚えたのかヴィランは冷や汗を掻き、突き出した両手を中心に筋繊維で全身を覆っていた。
そして二人の一撃がぶつかり合い、アスファルトが砕け、周囲の建物にヒビが入り---
『うわぁああああっ!?』
エグゼイドが押し負けた。
エナジーアイテムの効力が消え、殴り飛ばされる。
地面を何度もバウンドし、うつ伏せに倒れると再びライダーゲージの減少音。
残り半分以下にまで持っていかれ、両手を地面に着きながら起き上がっていた。
(これでもダメか!こいつ、威力だけならオールマイトに近いパワーだ…!!)
本気でぶつかって押し負けた。
しかも威力を上げるエナジーアイテムを取得してなお、だ。
その威力はエグゼイドを超えるということを意味している。
それに互いに高威力でぶつかったというのにたったの一発でゲージが一気に減ったことから防御力を貫通するほどの力。
はっきり言って勝ち目はない。
「おいおい…まじか、マジかよ!!これを食らって生きてるってか!ここまで本気でやって生きてるやつはてめえが初めてだぜ!血ぃ見れねえのは残念だが、お前を殺せば見れるよなァ!?」
『そうだな……お前は強いよ、俺が会ってきた中でもかなり強いヴィランだ』
エグゼイドがゆっくりと立ち上がり、顔を挙げる。
仮面を被っていても分かる。
その闘志は何一つ消えてないことに。
それだけではない。
エグゼイドの手の中には、一本のガシャットが握られていた。
『この力を使うのを久しぶりだな。お前をぶっ倒してゲームクリアだ!』
「何をするつもりか分からねぇが---」
両手も足も、全部が筋繊維に覆われて肥大化しているヴィランは先程と同じ速度で加速する。
それを見ながらもエグゼイドはガシャットを起動させた。
「死ねェエエエエエ!!」
『ゲキトツロボッツ!』
その瞬間。
握られている赤いガシャットの起動音が鳴り、後ろにロボットに身を包んだマイティが二人描かれ、対峙しているロゴと『GEKITOTSU ROBOTS』のタイトルが描かれたゲームタイトル画面が表示され、赤と白を基調とした小さなロボットがヴィランに突進して軌道を逸らした。
軌道が外れ、エグゼイドの真横を通り過ぎる。
それを見ることなく、エグゼイドはアクションレバーを閉じる。
『ガッチャーン!』
そして一番スロットである右側の方に入っているマイティアクションXの隣、左側の二番スロットに起動したゲキトツロボッツガシャットを挿し込んだ。
『ガシャット!』
『大・大・大変身!!』
右腕を大きく二度振り回し、三度目に行く前にアクションレバーを掴んで再び開く。
『ガッチャーン! レベルアップ!』
すると普段とは違い、ガシャットの基板柄がふたつ生み出される。
手前がゲキトツロボッツの赤。奥がマイティアクションXのピンク。
それらをロボットゲーマが吸い込む。
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!』
そしてなんと、エグゼイドを頭からぱくりと食べた。
自滅にしか見えない光景だが、エグゼイドは何一つ焦っておらず、ロボットゲーマが光って変形。
『アガッチャ!』
『ぶっ飛ばせ!突撃!ゲキトツパンチ!ゲキトツロボッツ!』
頭部はロボットのような意匠となり、V字を描いている。現代で言うとボクシングなどに使われるヘッドギアだろう。
さらに胸から肩にかけてまではロボットそのものである鎧を着込み、突飛すべきは左腕に装着されたロケットアーム。
この姿こそ、エグゼイドがレベルアップした新しい姿。
ロボットアクションゲーマーレベル3。
「あ?なんだぁ?姿が変わっただと……?」
『これでフィニッシュだ!』
『ガシャット!キメワザ!』
ゲキトツロボッツのガシャットを抜き取り、キメワザスロットホルダーに装填。
「ハッ、何をしようとも変わんねぇよ!血を撒き散らして死ねや---ッ!!」
トドメを刺そうとヴィランが両手だけでなく、両足を含め全身に膨張した筋繊維を纏い、接近して殴りかかってきた。
それに対し、エグゼイドはロケットアームであっさりと受け止めた。
「は?」
さっきと打って変わり、威力が段違いにも程がある力にヴィランが理解が出来ずに固まる。その隙を逃さず、エグゼイドはロケットアームを振り抜くとヴィランを後退させ、困惑するのを無視して頭上のエナジーアイテムを取得。
着地と同時にボタンを二度押して必殺技を発動させた。
『分身!』
『GEKITOTSU CRITICAL STRIKE!』
『『『『『『『ハァアアア……』』』』』』』
エグゼイドの瞳が光り、引き絞られたロボットアームが赤い灼熱のようなエフェクトと極彩色を纏う。
そしてヴィランを囲むように七人のエグゼイドが生まれ、一斉にロケットアームを射出した。
『『『『『『『ハアッ!』』』』』』』
「これは、やべえっ…!?」
今日一番の危機感を覚えたヴィランは倒すのではなく防御を選んだようで筋肉の鎧を作ることで七つのロケットアームを防御した。
ヴィランが取れる手段としては最適だろう。
エグゼイドが全て本物なのか偽者なのか分からない以上一体倒したところで他から攻撃を受ける可能性。
全部が偽者の可能性。
全部が本物の可能性。
どちらも有り得るもので、正解は後者だった。
威力はかなりものだが、防げないほどではない。
笑みを濃くしたヴィランは---
「は、はは。ビビったじゃねぇかよ。防いでやった……ッ!?」
『『『『『『『うぉおおおおおおお!!』』』』』』』
顔を出して視界を確保した瞬間。
まさに絶望的な光景が目に入ってきた。
ロケットアームはそのままエンジンを吹かして未だに筋肉の鎧を七方向から押さえ込んでおり、そこに七人のエグゼイドが一斉に走ってきたのだ。
「ま、さか---」
『『『『『『『オラァ!!』』』』』』』
PERFECT!!
同時にロボットアームに追撃のパンチを繰り出すことで威力を高めたパンチが叩き込まれた。
いわゆるパイルバンカーの要領だ。
「な、んだよ……そ、れ……。てめえは、いったい……」
あまりにもの威力に筋肉の鎧が貫通し、必殺の一撃がヴィランの意識を刈り取る。
白目を剥き、気絶するヴィランに聞こえているかは分からないが、エグゼイドは答えた。
『
分身していたエグゼイドが一人に戻り、エグゼイドは倒れているヴィランを見下ろした。
強敵ではあった。
何しろゲキトツロボッツはパワーだけならばエグゼイドが持つガシャットの中でも上位に位置する力を持っている。
それをしなければ勝てないと思わせるほどの相手だ。
もしこのヴィランがオールマイト並だったならば、少なくともスカイエッグの時に使ったマキシマムは必要不可欠だっただろう。
そもそも自分が居なければウォーターホースは死んでいた。
間に合ったことへの安堵。そして他の誰かが対峙しなかったことには心底良かったと思わざるを得ない。
この強さ。この個性。
間違いなくタルタロスに収容されるほどの人物のはず。
とにかく意識が目覚めるよりも早く、このヴィランは警察に渡すべきだとエグゼイドは判断して---
《重夢!!》
『な…っ!?』
すぐにエグゼイドはヴィランを掴もうとして、背筋が凍るような感覚に襲われた。
長年の戦闘経験がエグゼイドを動かす。
ロケットアームを頭上に掲げ、同時に
地盤沈下。
小さなクレーターが生み出される。
ロケットアームで防いでいると、炎と雷が突如として消失し、耐えきったエグゼイドが跳躍してヴィランを探す。
しかし、さっき倒したはずのヴィランは何処にも居なかった。
だが不可解な部分が浮き出ている。
果たして偶然か?
いいや、あまりにも
まるで。
『誰かに、邪魔された……?俺の戦闘が見られてたのか…?』
そう、誰かがこの戦闘を見ていたかのようだ。
しかも威力こそエグゼイドなら防げる程度だったが、並のヒーローならば死に直面しかねないほどに威力の高い一撃だった。
少なくともエグゼイドが知る中で、これほどの属性攻撃を出せるのはタドルクエストのバグスターであるアランブラ、もしくはゲムデウスのみである。
『一体、何者なんだ……』
考えても分からないことだが、そう呟かずには居られなかった。
自分が知らない中で、底知れない悪意が潜んでいる。
それだけが唯一、エグゼイドにも分かる事だった---。
それ以降は謎の相手は姿を現すこともエグゼイドの邪魔をすることも一度もなく、ゲートのようなものも生まれることはなかった。
気になりはするが気にしても仕方がないため、重夢は普段通りヒーローの活動を。
その時に
そして。
『重夢くん。突然すまない。君にはどうしても伝えておくべきだと思ってね。見つけたよ』
『私の跡を継ぐに相応しい---次代の後継者を』
数週間後、オールマイトからそんな連絡が来た。
プロローグ:終