究極の救済、そのニセモノ   作:Dr.パックマン

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1章
1-1


聖都大学附属病院に所属する小児科である鳳生重夢はCRのドクターとして未曾有のウイルス、バグスターウイルスから患者の命を救うべく独りで奔走し戦い抜いた。

数多くの出会い、別れ、傷つき、悩み、そして戦いを経験し、それでも命を救う事を諦めずに命と寄り添い続け、バグスターの脅威は一先ず過ぎ去った。

しかし彼の戦いには決して終わりなど訪れることはない。

世界総人口の約八割が特異体質となった現代社会。

生まれ持った超常的な力“個性”を悪用する犯罪者・(ヴィラン)が増加の一途を辿り、人事的に引き起こされる災害等が未だ途切れることなく日々何処かで起きている。

それに対抗すべく”個性“を用いて人を救い、ヴィランに立ち向かうヒーローとしての職業が脚光を浴びている。

ドクターでありながらも”仮面ライダー“として”ヒーロー“として活動する彼は今日も今日とてドクターとヒーローの活動を両立するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和の象徴にしてNo.1ヒーロー、オールマイト。数多くの事件を解決し、多くの人を救い、犯罪率を一気に減らした生きる伝説。

そんな彼から伝えられた衝撃の真実。

そしてオールマイトを継ぐ新たな後継者が見つかったという連絡を聞いた重夢は聞いた時こそ驚きはしたが、だからといって重夢に何かが起きるわけでも変わるわけでもなかった。

オールマイトが選んだということは悪人ではないのは確かで、元々重夢は秘密を隠すことは守るが、口を出す権利までは存在していない。

なんならそれでオールマイトがゆっくりと引退してくれるなら重夢としても願ったり叶ったりというもの。

これは一介のドクターであり、人として当然のことだ。あのような怪我で活動するなど本来は認める訳にはいかない。

そう出来ないのが、平和の象徴という厄介な立場だ。

変われるなら変わってやりたいとも思うが、仮に重夢の活躍が表になったとしても平和の象徴にはなれない。

平和の象徴はオールマイトしか居らず、せいぜい次のヒーロービルボードチャートJPで1位になれるくらいか。

そうなれば逆にヴィランがオールマイトを嘗めて、重夢を侮って犯罪率が増える危険性もあるため、やはりそれは出来ない。

それはさておき。

今、重夢が何をしてるかと言うと---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『待て!』

 

エグゼイド、マイティアクションゲーマーレベル2。

変身し、レベルアップした姿。

エグゼイドはバイクを動かしながら目の前のヴィランを追っていた。

まるでジェット機のようにエンジンを噴きながら上空を駆け抜けるヴィラン。

 

「ハッハーッ!待てと言われて待つやつがいるかよ!俺の個性はジェット!その程度で追いつけるかよーっ!」

 

速さだけならばかなりのもので、エグゼイドの爆走バイクでも追い付けない。

上空と地上という差があるが、このままでは逃げられる危険性がある。

 

『だったらこれだ!』

 

エグゼイドはバイクに乗ったまま立ち上がると、ハンドルから手を離してアクションレバーを閉じると新しいガシャットを手にした。

オレンジ色のガシャットで、ラベルには顔の着いた戦闘機が描かれているガシャット。

 

 

 

 

 

 

 

『 ジェットコンバット!』

 

『ガッチャーン!』

 

オレンジ色のガシャットの起動音が鳴り、背面に主人公機である丸っぽい顔が描かれた戦闘機。三日月目とギザギザ口がデザインされ、すぐ隣には星とタイトルを囲むロゴ。その中に『JETCOMBT』のタイトルが描かれたゲームタイトル画面が表示され、オレンジと黒を基調としたロケットのような戦闘機が現れ、上空を飛び回る。

ガシャットを反転。

端子を左側の二番スロットに装填。

すぐにアクションレバーを再び開く。

 

『ガシャット!』

『大・大・大変身!!』

『ガッチャーン! レベルアップ!』

 

ガシャットの基盤柄が二つ展開される。

手前が戦闘機のレーダーとコンバットゲーマが描かれたジェットコンバットのオレンジ。奥がマイティアクションXのピンク。

それらをコンバットゲーマが呑み込む。

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!』

 

そしてコンバットゲーマが頭上から降下し、頭から食べるように着陸した。

コンバットゲーマが光って変形。

 

『アガッチャ!』

 

『ジェット!ジェット!イン・ザ・スカイ!ジェット!ジェット!ジェットコンバーット!』

 

両手にはガトリング砲が装着され、胸には飛行ユニットがあり、コクピットも前の部分に存在している。背部の中央の下部分にはコンバットゲーマの顔が存在し、頭部には索敵可能なヘルメット。目にはオレンジ色のスコープ。口には戦闘機のパイロットのようにエアマスクガードが装備された形態。

コンバットアクションゲーマーレベル3。

 

『行くぜ!』

 

コンバットゲーマの顔の下部分からロケット噴出することによって飛行を可能とし、エグゼイドが急加速する。

その速さは音速に到達するほどの速度。

 

「なっ、なんだなんだ!?さっきのヒーローはどこに---」

 

突如消えたエグゼイドにヴィランは周囲を見渡していた。

すると、ふと影が差し込む。

 

『ここだよ、ここ』

「え?」

 

いつの間にか前に居たエグゼイドがヴィランの肩を叩き、気がついたヴィランが顔を向けると既にエグゼイドは隣で飛んでいた。

ヴィランの顔色が一気に青くなり、そして。

 

『そーらッ!』

「ギャッ!」

 

容赦なくエグゼイドはガトリング砲で叩き落とし、意識がなくなったヴィランを地面にぶつかる直前で襟元を掴んでゆっくりと着陸するとそっと地面に降ろす。

そして遅れて警察がやってきた。

 

『怪我は特にないみたいだから、あとは頼んだぜ』

「は、はい!お疲れ様です!」

『ああ、じゃ---』

 

 

 

 

 

 

 

「うわああぁあああああッ!!」

 

『次行かなきゃ行けないみたいだ、任せた!』

 

瞬時に方向転換。

レベル3のまま悲鳴が聞こえた方へ一気に加速していく。

 

「あれがエグゼイド……!凄い…!強いだけでなく色んな姿になれるんだ……!」

「彼が居るだけで事件解決率は凄まじく上がるからな。正直、オールマイトの次にNo.1になるのは彼なんじゃないかと思うよ」

「先輩は知ってるんですか?」

「ああ、お前たちの世代だとまだ学生だったから知らないか……エグゼイドはバグスターウイルスから様々な人々を救いつつヴィランすら退治していたヒーローだ。並大抵のヒーローじゃ勝てないバグスターに一歩も引かずに一人でな」

「あのバグスターに…!?話は聞いたことありますけど…バイクに乗る仮面を被ったヒーローが颯爽と現れることから、”仮面ライダー“の名前が付いたと…」

「あのオールマイトとも幾度とも共闘として戦った戦友だとか!」

「そうだな…鳳生先生は本当に凄い人だよ。なんたって雄英で一度たりとも一位以外を取らずトップ卒業だからな。体育祭の動画は残っているから観とくといいよ」

「ああ、記者会見を開いていた…!雄英でトップって…やばいっすね。気になってきました、どんなふうに戦ってたんだろ?」

「まあ、俺たちの仕事は観る仕事じゃない。プライベートでな。それよりエグゼイドが来たということはもう安心ってことだ。今日もまた次々と連絡が来るぞ、気合い入れてけよ!」

『はい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『JET COMBT CRITICAL STRIKE!』

 

『ハアアアアッ!!』

 

大量の弾丸とミサイルが上空から降り注ぐ火の玉や水の玉、矢や雷を迎撃し、地上への被害を全て空中で防ぎ切る。

 

『ウォオオオ!』

 

そしてガトリング砲を向け、複数人のヴィランが立つ足場を崩した。

足場を失い、地面に転がっていくヴィランに接近して次々と意識を奪っていき、加速して跳躍する。

着地したエグゼイドの目の前には一人の女性が居た。

マイティのぬいぐるみを抱きしめている女の子を人質にして。

 

「あ…え、えぐぜいど…!たっ、たすけて……!」

「チッ、もう来たってのかい…!?せっかくいいところだったってのに!」

『大丈夫、すぐに助けるから!早くその子を返すんだ!』

「部下たちをこうもあっさり制圧するなんて、流石エグゼイドといったところね…でもお断りさ。あたしには復讐しなくちゃならない相手がいる。そのためにもこの人質は必要なんでね!」

『逃がすかっ……うおっ!?』

 

踵を返して逃げる女性をエグゼイドが追おうとすると、足元が突如爆発する。

ダメージは大してないが煙が邪魔になり、すぐに飛び出すと目の前には音符が多く出現していた。

自分は問題ないが、下手に近づけば人質の命が危ない。

 

『くっ、個性か!』

「そうさ。様々な音符を生み出し、音を鳴らす個性…それが本来の個性。これでも名のあるバンドだったんでね、音楽が好きなあたしにはピッタリなものだった。だけどあたしからバンドのメンバーと音楽を奪ったやつらのせいで……あたしの個性が原因で怪我をしたと難癖をつけて追放したやつらのせいで…!

今じゃまともに音楽を聴くことすら出来ない!その時の目が!観客の声が!全部全部思い出しちまう!

震えて、怖くて、鳴らせなくなる!アイツらのことが浮かんだらどうしようもない衝動に、憎しみに囚われる!だから復讐して今度こそ音楽を手にするんだ!無かったことにして!もう一度舞台に返り咲くんだ!みんなでまた一緒に!!」

 

ヴィランに堕ちたということは何かしらの理由があるものだ。

そして彼女は嫉妬から謂れなき非難からこうなるまで堕ちた被害者の一人なのだろう。

 

『復讐…か……』

「ハッ、あんたも復讐はなんの為にもならないってかい?」

『さぁな…俺には復讐をしたい相手なんていない。だから気持ちを分かってやることなんて出来ないな。…けど好きな物に対しての想いなら俺も負けないものがある。復讐して奏でるメロディーに一体何が宿るって言うんだ?」

「っ、そ、れは……あんたなんかに、ヒーローに何が分かるってんだい!?あんたほどの有名人にあたしの気持ちなんかが分かるわけないだろッ!!」

『だろうな。じゃあ聞くが、お前はそれで楽しめるのか?満足に演奏出来るのか?観客を喜ばせることができるのか?思い出せよ、お前が本当にやりたかった音楽は人を傷つけるための音楽だったのか!?』

「煩い……」

『何のために音楽をする!?暴れるためだったのか?復讐するためだったのか?誰かを傷つけるためだったのか?』

「だまれ……だまれ、だまれ……!」

『違うだろ!?本当は楽しいから!笑顔になれるからやるんじゃないのか!?聴いてくれる人の笑顔が!奏でる自分の音楽が!それが好きだったからじゃないのか!?』

「煩い煩い煩いうるさいうるさいうるさい黙れぇぇえええええ!!」

『俺が教えてやるよ、音楽の楽しさってやつを!』

 

癇癪を起こしたように次々と音符が溢れ、エグゼイドに迫っていく。

それに対し、エグゼイドはガシャットを取り出した。

ガシャットの端子部には、DJ風のロボットのような絵とターンテーブルやアンプ、イコライザといった音楽を連想させる絵柄が描かれ、ラベルには黄色い服を着たDJの少年が描かれた蛍光イエローのガシャットを手に持つエグゼイドはプレイングスターターを押す。

 

『ガッチャーン!』

 

『ドレミファビート!』

 

エグゼイドの背面にゲームタイトル画面が表示される。

ゲームのキャラクターと思われるDJの少年と音符マーク。

背景は虹色の円形のノーツとピンク髪のイエローのコスチュームにカラフルなドッド柄のスカートの格好をした女の子のキャラクター。

-GAME START-

- LORD-

-OPTION-

真ん中には『DOREMIFA BEAT』のタイトル名。

さらにヘッドホンを頭に、ターンテーブルを両手に装着し、バイザーで目を覆って背中にスピーカーを背負うデフォルメされたロボのようなものが現れる。

音符を次々と放出し、エグゼイドに迫る音符を次々と迎撃していた。

ガシャットを反転。

端子を左側の二番スロットに装填し、すぐにアクションレバーを再び開く。

 

『ガシャット!』

『力を貸してくれ、ポッピー!大・大・大変身!!』

『ガッチャーン! レベルアップ!』

 

ガシャットの基盤柄が二つ展開される。

手前が音楽を連想される絵が描かれたドレミファビートの蛍光イエロー。奥がマイティアクションXのピンク。

それらをビートゲーマが呑み込む。

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!』

 

そしてビートゲーマが頭上から降下し、頭から食べるように装着された。

ビートゲーマが光って変形。

 

『アガッチャ!』

 

『ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド!OK!ドレミファビート!』

 

右腕にはターンテーブル。

左肩にはスピーカー。

頭部にはヘッドホンとキャップがあり、ピンクのバイザーが目を覆っている。口元にはヘッドホンに付いているマイクが添えられていた。

ビートアクションゲーマーレベル3。

 

『ミュージックスタートだ!』

 

ターンテーブルをスクラッチし、エグゼイドの左肩から音楽が鳴り始める。

 

〜EXCITE〜

 

『よっ!ほっ!ほっ!ヘイ!セイ!』

 

空間を覆う音符の数々をリズムに合わせて踊るように触れていく。

爆発するはずの音符がGLEAT!の文字に変わり、ダメージを与えるどころか無傷のままエグゼイドが少しずつ迫っていく。

 

「この音楽…リズム……ッ!まだ、まだまだあああ!!」

『ヤッ!ヘイヘイ!セイ!ハッ!ヘヘヘイ!セイ!』

 

サビに入るのと同時に激しくなっていく音符の数々。

しかしここに居るのは天才ゲーマーM。数々のゲームで優勝し、ランキング1位に君臨する王者とも言うべき存在。

難易度が鬼だろうがEXTRAだろうがMasterだろうがクリア出来ないならばゲーマーの名折れというもの。

全てGLEATを叩き出し、鮮やかに、それでいて滑らかに。美しさすら感じられるダンスの如き動きでエグゼイドは人質にされていた少女を奪い去り、お姫様抱っこした状態でリズムを取り続ける。

怯えていたはずの女の子が自然と笑顔に染まり、声を挙げながら楽しんでいた。

 

「………!」

『これでフィニッシュだ!』

 

『ガシャット!』

 

『キメワザ!』

 

『DOREMIFA CRITICAL STRIKE!』

 

「そう、だった。これが、音楽。あたしが目指した、本当の音楽…。誰もが笑顔になれるような、幸せになれますようにと、そう願い続けたそんな夢物語のような---」

 

そして音楽が終わりを知らせるように、無数の音符がエグゼイドの虹色のサウンドの音波によって一斉に音符が消え去り、PERFECT!の文字だけが残っていた。

 

『よっ、もう大丈夫だ。すぐに親御さんに会わせてやるからちょっと待ってな』

「うん!」

 

女の子を降ろしたエグゼイドは両膝を着いて戦意が消失している女性の元へと歩みを進める。

 

「……捕まえな。あたしの負けだ」

『…ああ。やったことは正しいとは言えないからな。悪いが見逃すことはしてやれない』

「だろうね。……響いたよ、あんたのメロディー。いいビートだった。思い出したんだ、どうしてあたしが音楽の道に行ったのか。ああ、本当に……何を考えてこんなことしちまったんだろうね……」

『……人は正しいことばかりが出来る存在じゃないからな。誰だって間違える。ただ間違えてもそれが間違いだったと気づくことさえ出来たなら、まだやり直すことは出来る。人は間違えて成長していく…俺はそう思っている。それに被害は出たが誰も死んじゃいない。そう長くはならないはずだ』

 

あくまで街に被害が遭った程度。

はっきり言ってこの世界じゃこの程度の被害はまだ小規模でしかない。それこそエグゼイドが戦ってきた相手なんてもっと酷い被害が起きていたのだから。

人が死んでいたならば、罪はもっと大きくなっていただろう。

 

「……どうしてそこまでするんだい?あんたならあのまま攻撃すれば簡単に捕まえられただろうに」

『それこそ簡単な話だろ?心まで救わなきゃ笑顔にはなれない。だけど観客を楽しませる立場であるあんたが誰かを笑顔にさせたいならまず自分が笑顔にならなくちゃな。俺はドクターとして、ヒーローとして、ただ目の前の患者を救いたかっただけだよ』

「患者か……ふふふ、ヴィランを患者呼ばわりして救うだの…あんた相当なお人好しだね。それにそうか、お医者さんだったか……」

 

 

 

「あーあ…もっと早くお医者さんのとこに行くべきだったな」

 

そういう目の前の女性は両手を後ろについて両足を伸ばしながら何処か晴れやかな顔で空を見上げていた。

エグゼイドはそれを見て、黙ってドレミファビートのガシャットを取り、レベル2に戻りながら警察に場所を伝えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとー!マイティのお兄ちゃん!かっこよかった!」

『そうか?キミはマイティが好きなんだな』

「うん!マイティアクション好きなの!特にマイティがね、可愛くて強くて!やっぱりマイティはヒーローだね!助けてくれたもん!」

『フッ…そりゃ嬉しいな。怪我が無くて良かったよ。もう親御さんに心配かけないようにな』

「はーい!」

「本当にありがとうございました!」

「このご恩は忘れません……!」

『気にすんな、これもヒーローの役目だ。じゃあな』

 

手を振る女の子と頭を下げる両親を一度見て、エグゼイドは爆走バイクに跨って去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

『MIGHTY CRITICAL STRIKE!!』

 

大暴れしていたヴィランが居たので、エグゼイドは無慈悲にも不意打ちでライダーキックをかまして一撃でノックアウトした。

 

「エグゼイド!?」

『ん?バーニンか。悪いな、苦戦してるみたいだったから思わず奪うことになったな』

「ああいや、それは感謝するよ。助かった、エグゼイド。ただ---」

《重夢、出るぞ》

『え?おい、パラド!?』

 

エグゼイドは寒気を感じ取ったが、考えるより早く赤と青の粒子がエグゼイドの体から溢れ出て人の形を作った。

 

「エグゼイドォオオオオオオオ!!」

 

そのタイミングで何かが落ちてきて、土煙が舞う。

まさか、と寒気の正体を理解したエグゼイドが視線を向けると、紅蓮の炎の男はズカズカと歩み寄ってくる。

 

『げっ……』

「俺の管轄で無遠慮な介入は控えろと、以前に言った筈だ」

『偶然だよ、今回はたまたま見つけただけだ。バーニンたちも苦戦してたみたいだし被害が出るより早く解決した方がいいだろ』

「余計なお世話だ。貴様が居なかろうと俺一人で事足りる」

 

目の前の男はNo.2のフレイムヒーロー、エンデヴァー。

事件解決率だけならオールマイト以上であり、名前の通り炎系の個性でヘルフレイムの個性を持つ。

が、エグゼイド…重夢はエンデヴァーが苦手だった。バグスターとの戦いから既に数年経過したが、その時から何故か敵視されているからだ。

ヒーロー稼業は競争率も高いことから他のヒーローをライバル視する事も多々ある。

確かにエグゼイドの偉業はNo.1にすらなれるものではあるが、エンデヴァーからはそれとはまた別の感情が込められているようにも感じられる。

オールマイトは向上心の塊とは言っていたが、流石の重夢もそれだけではないとは思っている…が、深く踏み込んでいないため分かってない。

無論患者として来たならばドクターとして苦手だの言ってられないのでちゃんと対応するが。

何より、苦手な理由がもうひとつ。

それは。

 

「おいおい、自分が遅いからって棚にあげて重夢にそれを言うのは違うんじゃないのか?」

「……なんだと」

「エンデヴァー、お前が早く来ていれば重夢が手を出すことはなかった。他に事件があったからなんて理由になるか?それはこっちも同じだ。それともなんだ、自分は事件があったから遅れましたって言い訳がしたいのか?人にそう言うならまずは自分が対応してみせろよ、だからNo.1に未だになれないんじゃないのか?」

「ちょ、ちょっと。パラド…」

「フン、あの程度なら貴様らが居なくても問題ない。第一サイドキック達には既に指示をしていた。つまり貴様らは必要なかったということだ。とっとと自分たちの家にでも帰るんだな」

「口だけでは何とでも言えるよな」

「今すぐ貴様を焼いてやろうか?」

「いいぜ、あまり俺の心を滾らせるなよ」

 

それは、そう。

パラドとエンデヴァーが頗る相性が悪いからだ。

エンデヴァーは炎を荒れさせ、パラドは既にゲーマドライバーとマキシマムマイティとは別で太めのガシャットではあるが二つのゲームが入ったガシャットを取り出している始末。

しかもゲーマドライバーがあることからパラドのガチさが半端ない。

まさに一触即発。

慌てて既に変身を解除していた重夢が間に入って、二人を引き離すように両手を広げていた。

 

「ま、待って待って!やめて、二人とも!!」

「心配すんなって重夢。俺がコイツをボコボコにするだけだ」

「邪魔だエグゼイド。邪魔をするなら貴様から焼くぞ」

「おい、重夢に手を出させると思ってんのか?しばらく活動休止になっても知らないからな」

「やれるものならやってみろ。その前に貴様が焼け死ぬかもしれんがな」

「上等だ。俺を攻略出来ると本気で思ってるならやってみろよ」

「後悔しても知らんぞ、小僧……!」

「来いよ、万年No.2のヒーロー!」

「だから二人とも落ち着いてって!」

「邪魔だ!」

「うわぁあ!?」

「!エンデヴァー、お前……ッ!」

 

エンデヴァーが重夢を押し退け、今すぐにでも争いそうになるパラドとエンデヴァー。

ついでに重夢はその時に背中から強打してダメージを負っていた。

すぐにでも発展しそうな二人の争いに外野となってしまったエンデヴァーのサイドキックたちが手を出せるはずもなく、全然聞く耳を持たない二人にゆっくり立ち上がった重夢は無言でガシャットを取り出し、プレイングスターターを押した。

 

「………」

 

 

 

 

 

 

『マキシマムマイティX!』

 

『ハイパームテキ!』

 

「二人とも一旦頭を冷やそうか?」

 

それは酷く、ドスの効いた低い声だった、とバーニンやサイドキックたちは後に語った。

空気が一気に重くなったようで、まるで殺気を浴びせられていたかのようだったと。

しかも表情がチベットスナギツネを思わせるような、虚無の表情だったから尚更怖かったと。

普段の優しそうな顔は鳴りを潜め、エンデヴァーすら気圧される程の圧だ。

 

「……重夢に感謝しろよ。今回は引いてやる」

「貴様こそ命拾いしたな。次はどうなっても知らんぞ」

「すみません、パラドがご迷惑おかけして…バーニンさん、このヴィランはお願いします。僕たちはすぐにここから離れるので」

「あ、ああ。ありがとう、色々と……」

「? 行こう、パラド」

 

何故感謝されたのかは分からないが、重夢はガシャットをポケットに戻して頭を1度下げてからパラドと一緒にこの場から離れていく。

 

「…ああ。重夢は大丈夫か?」

「大丈夫だよ、怪我はしてないから」

「そうか…怪我してたら1発は殴ってたところだった」

「相変わらず二人とも仲悪いよね……」

「あいつが重夢に対して感謝することもなく敵意ばかり向けるからだろ」

 

否定しようと思ったが、残念ながら事実だったので否定出来ず重夢はため息を零すと、改めてバイクで帰っていった。

ちなみにだが、重夢に通り魔されたヴィランは目を覚ましていたのだが重夢の重圧を受けてもう一度気絶したというのはエンデヴァーのサイドキックたちだけが見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々とあったがようやくCRに戻ってこられた。

なんだかヴィラン退治してるより疲れた重夢は座って少し休もうと2階に上がった。

すると重夢に気づいたピンク髪の女性---ポッピーが一番最初に気づき、その隣には”雄英“の制服に身を包んだ両サイドにお団子を作った金髪の女の子が居る。

 

「あ!エム!おかえりー!」

「おかえりなさいです、鳳生先生!」

「ただいま、ポッピー。来てたんだね、被身子ちゃん」

「はい、今日もお邪魔してます!」

 

金髪の女の子は渡我被身子で雄英の1年生だ。

悩みごとを抱えていたようで、重夢がパトロールをしていた時にたまたま出会って相談に乗った程度だ。

そうしたら気がつけば病院に来るようになって、いつの間にかCRに入り浸るようになった。

本当は部外者が立ち寄っていい場所ではないのだが、まぁポッピーと仲良くしてるしいいのだろうと諦めた。

一応日向審議官に連絡と事情説明して許可は貰ってるので問題はないのだが。

 

彼女は愛着のある対象の血液に興味を示し、直接口をつけて吸血するなど猟奇的な行動を取っていたため、”異常者“と扱われていたらしい。

彼女の両親は普通であることを押し付けようとしたようだったが、重夢としてはそれでは彼女の幸せにならないと判断した。

確かに重夢にはその気持ちは理解出来ないが、だからと言って押し付けてはいつか溢れ出ることなんて簡単に予想出来ることだ。実際に危うい状態で相談に乗った際に彼女は最後に泣き出してしまうほどに。

 

小児科は子供の相手が多いところである。当然そういった子たちの相手も多くしてきたため、経験が活きたと言える。

そもそも個性があるこの世界で彼女が異常かと言われると、重夢からすれば違うと思っている。

探せば吸血鬼や吸血動物などの個性の人なんて居るだろうし個性に引っ張られることなんて良くあることだ。

ならそれとどう向き合って生きていくのか、それが大切だ。ここは少し、重夢も共感出来た。

バグスターというウイルスとどう向き合い、共存していくのか。命はデータと呼べるかという命題とはまた別の命題と言えるかもしれない。

 

何よりドクターとして彼女の個性は救いの個性とも言える。

多くある血液型ならまだしも、やはり少ない血液型は少ない場合がある。しかし彼女の個性は変身でその人そのものになれるらしく、血液も変化するらしい。

つまりB型の血液だったとして、A型の血液の人がいればA型になるということ。

人を救える良い個性だと重夢は本気で思った。

 

リカバリーガールの個性も素晴らしいものだが、体力がない患者もやはりいるものなのだ。

その点、足りない血液を補給出来る彼女の存在は医者の間では重宝されるだろう。

ここは病院だ。血ならばいくらでもあるし、ポッピーやパラドは少し特殊な存在で危険性があるためドクターとしてもストップせざるを得ない。

そのため結局重夢が吸われることになってしまうが彼女がヴィランになるよりかはマシである。

 

「そういえばそろそろ雄英体育祭だっけ?」

「はい、鳳生先生も雄英でしたよね?」

「うん、まだバグスターウイルスも特に活動してなかった頃だからね。卒業後から本格的に始まったから」

「凄かったんだよ〜エムってば他の子たちの追従を許さない!って感じで一年の頃から三年まで全部一位通過で、次のオールマイトだって言われてたんだから!」

「それは凄いです!流石鳳生先生ですね!」

「褒めても何も出ないよ…」

 

あの頃はまだ重夢自身も”ニセモノ“だとは知らなかった頃だったので、純粋にゲーマーとして負けられなかっただけである。

 

「でも職場体験は大事な経験だから大切にね」

「重夢先生は募集してないんですよね……」

「ごめん。ドクターの仕事があるから1週間も付きっきりは無理で。でも僕以外にもたくさんヒーローはいるから」

「鳳生先生以外ヒーローと思ってないです」

「ハハッ、すっかり懐かれたな重夢」

「流石小児科だね〜」

 

重夢もほぼ単独で動くことが多かったとはいえ、グラファイトなどの強敵は他のヒーローが居なければ厳しかった。

レベル5で暴走することもあった。

だからこそ薦めたが、彼女の認識には苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

 

「あっ、パラドさん!お久しぶりです!」

「ああ、元気そうだな」

「とっても元気です!あれもこれも鳳生先生と出会えたからですけど…」

「良いことだろ。俺も重夢じゃなきゃ今頃ここには居ないしな」

「あの時はほんっとうに衝撃だったな…」

「あはは……」

 

パラドとポッピーが言っていることに心当たりはある。

パラドに”命の大切さ“を教えた時だろう。

 

「とにかく、それでも大切なことだからね。ちゃんと選んで自分の糧にした方がいいよ」

「むう…分かりました……」

 

経験者の言葉をしっかりと呑み込んだのか、はたまた重夢の言葉だから納得したのか渋々といった感じで彼女は身を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 





作者はエグゼイドのドレミファビート似合ってて好き。ジュージューバーガーは絶対何処かで出す。
決まってないけど参考程度にアンケートお願いします。

レジェンドライダーは?

  • 冬映画的な感じ
  • 先行登場的な感じ
  • 短編(ドライブやゴーストの特別編的な)
  • 単話
  • お祭り的な感じ(春映画)
  • エグゼイドのみ(なし)
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