究極の救済、そのニセモノ 作:Dr.パックマン
7月下旬。
すっかりと真夏となってしまい、暑くなってきた頃。
今年の気温は高く、聖都大学附属病院に所属する小児科、鳳生重夢は忙しかった。
冬の時期は風邪など体調不良が多く忙しいが、夏は夏で熱中症が多く発生してしまう。
軽症、中等症、重症の三つに分けられ、病院に入院することを勧めることになるのは中等症からだ。
しかし軽症だからといって油断していれば悪化するか、まず改善しない場合もある。
それはこの超常社会でも変わりはなかった。
どんな場所、どんな世界、どんなに優れていようと世の中から病院が必要なくなることは無いということの証明でもあろう。
閑話休題。
もちろんのことだが、熱中症だけではない。
小児科でも夏風邪や子供の病気、怪我など診なければならない。もちろん老若男女問わず仕事をすることは多いが、メインは子供。
夏休みであり、ヒーローという職業が脚光を浴びてる影響か怪我人は意外と多いのだ。
重夢自身の正体は子供は知らないのが多数のようだが、エグゼイドの話は重夢自身も何度も耳にしたことがあり、さぞ本人が目の前にいるとは想像もついてないだろうな、と内心で苦笑いする他なかった。
そしてなにより、渡我被身子との出会い以降、ある程度の個性カウンセリングも重夢は受け持つことになったため、仕事が増えたのもあって多忙を極めていた。
こればかりは自己責任でしかないが、一度出会ってしまったならば同じような目に遭っている子供も少なくないはずで、放っておけないのが鳳生重夢だ
そんなこんなで、医者としての業務で精一杯でよほど大きな事件でも起きない限りはヒーロー活動が当社比で控えめになりつつある頃、一つのメッセージが飛んできていた。
仕事を終えているため重夢はスマホを点けてメッセージを見ると、そこには。
『助けてくれ、重夢くん! 困ったことになった!! 空いている日を教えてくれないか!?』
--あのNo.1ヒーロー、オールマイトから協力要請が来ていた。
予想外の人物に少し固まってしまったが、あの人が苦戦するような相手が現れたならもっとニュースになっているはず……。そう考えるのが自然で重夢は怪訝そうな顔を作ったが、ここで考えても分かることではない。
というかオールマイトが苦戦するならば、他のヒーローじゃ勝てないだろう。
ほぼ単体でクロノスやゲムデウスクロノス、ゲムデウスを打ち倒した経験を持つ重夢ですらマキシマムを使わなければならないレベルだ。
重夢は大人しく、いつ空いているか確認してその日ならば問題ない、とオールマイトに送っておくと助かるという言葉と感謝の言葉が返ってきて、後日写真を送るとのこと。
全ての用事を放り出さなければならないほどの緊急性はないようだった。
ますます分からなくなってしまった。
とにかくその日が来れば分かるだろう、と重夢はCRに戻る。
夏休みなのもあって雄英も休みなのだろう。
相変わらず居座っている渡我被身子が重夢と視線が合った。
「あ、お疲れ様です鳳生先生!」
「うん、ありがとう被身子ちゃん。高校生だから分かってると思うけど、ちゃんと帰るんだよ」
「はぁーい。それまで居ても大丈夫ですか? 可能でしたら仕事もみたいです!」
「居るのはいいけど、そこは鏡院長に聞かないと分からないかな。でも面白いものじゃないよ」
「やっぱり経験って大切かなと思いまして! 勉学だけじゃ分からないこともあると思うんです。何より仕事をしている時の鳳生先生が見たいのです!」
後半の方が意味合いが強そうだが、目をキラキラと輝かせている。
「それはまあ、そうだろうけれど……。もし許可されたとしても無理はしないようにね。場合によっては酷い怪我とか見ることもある。僕も何度か見たことがあるし。あと仕事してるからって僕の事見ても変わらないよ」
解ってるかはさておき、元気よく返事する渡我に重夢は頬を綻ばせる。
この元気が無くなっていた可能性すらあったと考えれば、今こうして心から楽しそうにしているのは嬉しいもので、だからこそ強く言えないというものある。
それに重夢が言った通り、この個性社会である以上、ヴィランが暴れるということは凶器を持つより怖い。
巻き添えで欠損になる危険性もあれば、普通に大怪我。火傷やら霜焼け等など様々な状態で運ばれるし、その人が扱う個性に侵される可能性もある。
毒などがいい例だろう。本人の意識を奪えば戻るタイプならまだしも、距離を離れようとも意識を奪おうとも永続的に続くタイプは厄介だ。
チンピラ程度のヴィランにその力は無いとは思うが、重夢が先日倒したマスキュラーとやらといったネームドにはそれほどの力が秘められている。
ヒーローになるには当然訓練し、試験を突破する必要がある。そんなヒーローを殺せるということはそれほどの力を誇るという証明にもなるのだ。実際にエグゼイドの命を奪おうとしたヴィランは数が知れない。
名を挙げたいものほど、表や裏でも有名人なオールマイトや裏の世界では有名人な仮面ライダーを狙うものは多い。
特にエグゼイドは仮面ライダークロニクルの回収の際に裏の世界で目立ってしまったのもあるだろう。
他の相手ならばショッカーの怪人だろうか。
奴らに関してはエグゼイドを含む仮面ライダーたちですら油断出来ない相手。
エグゼイド自身も『超スーパーヒーロー大戦』の時に苦戦させられた。
「子供扱いしすぎですよ〜。私なら全然大丈夫なので! 血を見るのも全然!」
「子供なのは変わらないでしょ。成人しないうちはまだ子供だと思う」
「むう……心は大人なのです」
「人が生きられる中で子供の時期の方が遥かに短いんだ。今はちゃんと子供らしく居た方がいいんじゃないかな。早く大人になりたいって思う気持ちは少し分かるけどね」
そう言ってから、重夢はふと自分のプロフィールが頭に浮かんだ。
鳳生重夢。28歳。誕生日を迎えれば29歳。小児科医。趣味、ゲーム。血液型:AB型。DT。
あと10年以上もすれば子供であった時より半分生きていることになる。いや、前世というものがある時点で重夢は見た目よりも遥かに年齢を重ねており、精神的には最低でもあと10歳はプラスされてもおかしくは無い。
もしかしたら前世の自分は10歳にも満たない可能性もある。
最後に残っている記憶から言葉を正確に理解していたので超えているとは思うが、残念ながら記憶がないので不明だ。
どちらにせよ、もうすぐ三十路である。
思い出して悲しくなった重夢は頭を振って記憶から消した。
ゲームが好きで何が悪いのか。夢を叶えてる真っ最中なので他のことなどどうでもいいんだと、そう心に強く思って。
そんな重夢の突然の奇行に渡我は目をぱちくりと瞬きさせるが、すぐに優しい目を向けた。
「先生にもあったんですか?」
「僕?」
「はい、そういう時期があったのかなって」
「そうだね……僕にもあったかな。恭太郎先生のようになりたいって思ってたし」
自暴自棄になってたこともあったっけ。
僕じゃ医者にはなれないんだって。
まぁそれは僕の中でパラドが育ってたから、それが原因でもあったみたいだけど。
なんてすっかりと昔となった出来事が思い起こされる。
少なくともあの日があったからこそ、ニセモノだとわかった自分でも”誰かを救いたい“と”患者が笑顔にならないと意味が無い“との信念を抱き続けられたのだろうと重夢はずっと思っていた。
「先生を助けてくれた人ですよね」
「うん。恭太郎先生が居たから今の僕がいる。あの出会いが無ければ生きてても僕はドクターを目指すことはなかっただろうね」
「じゃあ……私も感謝しなくちゃ、です」
「被身子ちゃんも?」
「先生がお医者さんで、私と会ってくれたから我慢しなくて良くなりました。先生にとってその人が人生を変えるキッカケになったなら私は先生と出会ったから人生を変えるキッカケを貰ったことになります。ですので、私からも感謝です!」
「……そっか。確かに今の被身子ちゃんは心から笑顔になれてるって分かるよ。力になれたなら良かった」
「はい!」
もし彼女と会わない未来があったなら、どうなっていただろうか。
異なる未来を観測する力を持たない重夢には分からないが、出会っていい方向へと向かったならば動いて正解だったということだろう。
重夢の在り方は変わらない。
バグスターとの戦いは終わったとしても、まだまだ終わってないことは山積みなのだ。
「は、あぁ〜っ! ピヨる〜!!」
「わわ、明日菜さん。大丈夫ですか!?」
「……飲み物持ってきますね」
そうこう話してる間に帰ってきたようで、滑り込むようにして机に身を任せるポッピーこと仮野明日菜。
今はバグスターではなく人としての姿だ。
まるでゲームの”こんらん“のように頭の上でひよこがぐるぐると回ってることから大変だったのが見て取れる。
重夢は彼女を心配しながら飲み物を持ってくることにした。
---諦めた方がいいね。
超常社会。世界の総人口の八割が何らかの個性を持つとされ、超常が日常となった世界。
緑谷出久はそんな個性社会の中において残る二割に該当する個性無しの人間、”無個性“として生まれ落ちた。
周囲が次々に何らかの個性に目覚めるなか、一人“無個性”の烙印を押された少年の心境は計り知れない。
しかし、それでも少年は憧憬を諦める事は出来なかった。
ヒーロー
己が個性という武器で戦い、あらゆる脅威から人々を守り、救う正義の味方。恐れを知らず脅威に立ち向かい、笑顔で誰かを救うその姿に………少年はどうしようもなく憧れた。
無個性の自分と、ヒーローに憧れる自分。夢見がちだと笑われ、虐げられてきた少年は一時はその夢を諦めた方が楽になると、心が折れ掛けた時があった。
自分じゃ憧れたヒーローに、オールマイトのようになることすら出来ない。何も持たないからこそ、何の力もないからこそ、ヒーローになれないんだと。
そう”無個性“だからと言い訳をして、身体を鍛えることすらせず。
そんな少年を変えた、一人のヒーローが居た。
初めてだった。
”無個性“でもいいと言われた気がしたのは。
テレビで観た、あるヒーローの対談動画。
そこに医者でありながらヒーローをしていて、何度もオールマイトと共闘したことがあり、サイドキックなのではと幾度も噂されていた男の人が話していた。
---”未来に希望を持つこと“。
希望があるから人は何処までも頑張れる。どこまでも強くなれる。笑顔になることが出来るんだと、僕は思っています。ただ足踏みしてるだけじゃ何も変えることは出来ません。転んだっていい。泣いたっていい。いつかその全てが糧となり、未来の自分を支える大事なものになるはずです。
僕はヒーローとしてはもちろん、ドクターとして日々過ごしていますが、諦めることはしていません。どんな時も希望を持ち続け、必ず患者を救うと自分を信じて過ごしています。ほんの少しでもいい。自分の可能性を信じて、将来のために何をすべきか考えて行動して欲しい。未来を諦めることはしないで欲しい。
行動すればどんな運命だってきっと変えられる。人には運命を変えられる力があることを僕は一番知っている。
……最後にですか?
そうですね、オールマイトさんと違ってこういったことは得意ではないので僕の発言が力になれたかは自信がありませんしありたきりの言葉で申し訳ないんですけど、ヒーローを目指すなら頑張ってください。信じる力は必ず力になる。
僕に言えるのはそれくらいですね。
落ち込んだ時、諦めそうになった時、いつも見るようになった。
そうして少年は、走り出したのだ。
”いつかの未来“を。
希望を持って、自分を信じて。
そのために体を鍛えて、母親にも力になってもらって。
そうしてその頑張りが--
--君は、ヒーローになれる
憧れの人に出会うきっかけと、憧れの人に認めて貰う未来に繋がった。
何の力も持たない無個性の自分が人のために我武者羅に走っただけで、何かを出来たわけでもないのに。
脳裏に今までのことが過ぎっていく。
周りが個性に目覚めていく中、一向に目覚めることのなかった自分。
病院で確認しようと初めて無個性だと診断された時のショック。
泣きながら謝る母の姿。
憧れを捨てきれない自分。
目が釘付けになった、あるヒーローの対談動画。
そこから体を鍛え始め、周りからバカにされたり何を言われようとも虐げられても”希望“を抱き続けた日々。
憧れの人の、オールマイトに言われた言葉。
誰かに言って欲しかった言葉。
「君なら私の”力“。受け継ぐに値する!」
「……へ?」
こうして無個性でしなかった少年は、義勇の心が紡がれた力の結晶たる
休みを取った重夢はバイクを走らせていた。
休日にこそゲームをしたいところだが、オールマイトが相談したいと言うほどなら力になるしかなかった。
彼の秘密を知っているものは少なく、かくいう自分も全く知らなかったのだ。
治すことは不可能だが怪我の様子を見ることやこれ以上の悪化を防ぐくらいならば重夢でも十分出来る。
暫く走らせていると多古場海浜公園に辿り着いた。
漂着物と不法投棄で荒れ果ていることで有名だったはずだが、だいぶ片付いてるように見える。
誰かが掃除したのだろうか。
早朝なのもあり、人は全然居ない。
バイクから降りて停止させ、重夢は目的地に向かって歩いていくと一人の緑髪の少年とマッスルフォームになっているオールマイトが立っていた。
オールマイトがスマホを見ていて、誰かを待っているかのようだ。
重夢は待たせていると察すると駆け足で向かっていき、声を掛けた。
「オールマイトさん。お待たせしました」
「! いや、こっちの方こそ忙しいのにごめんね」
「いえ……それで」
重夢の視線がオールマイトの横にいる緑髪の少年へと移される。
まだ中学生くらいの男の子。
体は鍛えられているが、どうにも様子がおかしい。
「こんにちは。君が緑谷出久くん……で合ってるかな? 僕は--」
「え……え、、エグゼイドォオオオオオオオ!?」
ひとまず自己紹介をしようとしたところで、叫び声を挙げて物凄い速さで後退りながら尻もちをつく少年、緑谷出久に重夢は流石に驚いた。
あまりの大声に少し耳が劈く。
それに変身出来ることは知られてはいるが、あっさりと重夢がエグゼイドだと当ててみせた。
こればかりは意外なことで珍しいことだったのもあるだろう。
エグゼイドの姿は有名でも、重夢はヒーローの中では知名度が低い。敢えてそうしているのだが、ドクターとしてはCRのドクターというのと記者会見に出たことがあるので有名なのだ。
「大丈夫?」
重夢が手を伸ばすと緑谷はその手を取って起き上がる。
そして。
「は、はい……。ありがとうございます……じゃなくって!!どっ、どっどっどうして!? た、確かにオールマイトは知り合いのヒーローが来るとは言っていましたけど、その人物が数年前世界中を混乱させたバグスターウイルスに対抗し、幾度も人々を守り救ってきたヒーロー、エグゼイドだなんて! 数々の姿に変化し、多彩の戦略を持ちつつその高い戦闘力からオールマイトとも何度も共闘し、強力なヴィランやバグスターに勝利して多くの貢献を残した人物……! 最近となって活動自体は少なくなってきたものの、どれもこれも解決する事件はトップヒーローでなければ不可能だとさえ言われた事件ばかりで、実績だけならば誰よりもNo.1に近いとされているとネット上でも数多く囁かれている……! それだけじゃなく、バグスターはプロヒーローが複数人居なければ対処出来ないとされているのにも関わらず一人で何度も対処し、あの仮面ライダークロニクルの被害を減らした功労者--」
「お、オールマイトさん? これ……聞こえてませんよね?」
「ストップストップ! 緑谷少年ストーップ!!」
「……はっ!?」
ぶつぶつ、と文字が浮かび上がってきそうな勢いで独り言を呟く緑谷をオールマイトが肩を揺らして現実に引き戻すと、緑谷は恥ずかしげに頬を赤めて、慌てて鞄を探る。
「あ、あの! サインください!」
「え? う、うん。僕ので良ければ」
「やった……!」
恥ずかしがったかと思えば慌てて、次に喜んで、となんだか忙しい子だな、と重夢は苦笑いしながら貰ったノートを受け取ると、空いているページに書けばいいかな、なんて思いながらページを開いていく。
するとたまたま目に入ったページを見ると、エグゼイドのページが書かれていた。
マイティアクションXはもちろんのこと、あまり変身したことがない姿や、かつてパックマンを救うべく変身した
流石に
それでもマニアでしか知らないであろうエグゼイドの形態が書かれているのは驚きだ。
例えば、パックアドベンチャーだろうか。
これに関して幽霊の個性を持つヴィランに対して使ったことがあるもので一度しか使ったことがない。
「あ、あの……?」
「あ、ごめんね。はい、これでいいかな」
「わあああぁ! ありがとうございます! 家宝にします! 絶対に大事に保管します!」
まるで宝物を貰ったかのように大喜びし、大事に抱えている。
”僕のサインにそこまでの価値ってあるかなぁ……“なんて目の前にいるNo.1と比べるが、大事にされて悪い気はしない。
実際にはエグゼイドはすぐ現場から現場へと移動するため、レアというのと活躍度から考えればオールマイトと同等の価値はあるのだが、重夢はそのことを全く知らなかった。
だがサインのためにここに来たわけではないため、重夢は一つ咳を入れる。
「それより本題に入っていいかな? 僕には時間が限られているから何日もここに来れるわけじゃない。早い方がいいだろうからね」
「あ、は、はい。すみません……そ、それでその……どうしてエグゼイドがここに--」
「その前に改めて自己紹介しようか。あまりヒーロー名で呼ばれると騒ぎになる可能性もあるから。僕は鳳生重夢。CRのドクターで普段は聖都大学附属病院で小児科医と最近は個性カウンセリングをしてる」
「あっ……ぼ、僕は緑谷出久です! よろしくお願いします!」
「うん、よろしく出久くん」
「はっ、はい!」
ガチガチに緊張している出久と自然体の重夢。
それも仕方ないことで、重夢は知らないことだが緑谷出久は重夢の言葉に救われた身であり、オールマイトの次にファンなのだ。
そのガチ勢っぷりは半端なく、なんとエグゼイドの商品が部屋中にあるほど。オールマイト六割エグゼイド四割である。
新しく出たものはチェックを怠ったことはなく、抽選なども狙っているほど。
それとオタクと揶揄される緑谷と重夢は大勢の人と話す職ということもあるが。
「そ、それで……鳳生先生ほどの人から話とは、一体……?」
「そのことなんだけど、出久くん。君はオールマイトさんと
「っ!? どっ、どどどどうしてそれを!?」
あからさまな反応に重夢はオールマイトを見たが、あっちゃあ……と言いたそうに額を抑えていた。
その反応を見てか遅れて緑谷もハッ!と口を両手で抑えたが、手遅れである。
ここで突出すべきところは重夢は
「心配ないよ緑谷少年。重夢くんには私の全てを話してある。当然、OFAの件もね」
「うん、安心して。カマをかけただけだから」
「そ、そうですか……よかった……」
「ただ気を付けなくちゃならないよ。今回は僕だったからよかったけど、君はオールマイトさんから個性を授かった。そう言うだけなら大したことじゃないけれど、君は”最強“の力を貰ったんだ。レベル100のキャラだけが着けられる装備をレベル1のキャラが着けている状態。これが知られれば君はあらゆるヴィランから狙われることにもなるし、オールマイトさんの秘密が世間に広がっていくかもしれない」
「その力はそれほどまでに大きな力だ。特に勘の鋭い人なら全く同じとは思うことは無いと思うけど、オールマイトさんに似ているって思うだろうし」
「は、はい……ごめんなさい……」
「気にしないで。こういうのは一度経験させておくべきだと思ってただけだから」
初見で言われてしまえばさっきみたいになってしまう可能性はあるが、二度目は一度目よりかは酷くはならない。
事を重たく感じているなら当然だ。
緑谷も地頭は良く、だから試したのか、と理解していた。
そもそもこれは重夢の経験談でもある。
こう言っちゃアレだが、重夢の生身はそんな強くない。
だから重夢はかつて変身アイテムを狙われたことがある。
無論、世界で初めてのバグスターウイルスを持つ重夢は例外だがバグスターウイルスに”適合“しなければ変身は出来ない。
そういった方面で安全だが、中には強大な力を手にするためならあらゆる手段を取るものもいる。
なぜなら絶対的な力があれば誰も止めることが出来ないからだ。
事実、もしOFAが悪意持つ物に渡ってしまえば、止められるのはオールマイトと重夢だけである。
狙われた時に関してはまあ、生身でガシャコンブレイカーを使って自分を守りつつ変身して返り討ちにしたので全く問題はなかったが。
そんな強くは無いがヒーロー視点からであって一般人よりかは強いのだ。
「話を戻すと、僕がここにいるのはオールマイトさんに呼ばれたからなんだ。ちょっと待ってね」
「オールマイトが……?」
白衣からスマホを取り出すと、メッセージから送られてきた画像を表示する。
そこは緑谷が意識を失っている画像で。
右腕が酷く損傷している。折れて血だらけになり、腫れている片腕。医者である重夢に見せるべきと思ってオールマイトが慌てて撮ったのだろう。ブレてる。
それを緑谷に向けながら口を開いた。
「この怪我。OFAの出力に体が耐え切れずに負傷したんだって?」
「あ……はい。僕の体だと100%は耐えきれないみたいで……その、入試当日に判明した訳じゃないのはよかったんですけど……」
「それはそうでしょ。出久くんの体とオールマイトさんの体は見て違うって分かる。オールマイトさんと同じ出力を放てば体は壊れるよ」
「おっしゃる通りです……」
「あの、重夢くん。私は別にずっと100%ってわけじゃあ……」
「分かってますよ。そんなことしてたら貴方が災害起こす立場になるでしょ。じゃあどうやって制御してます?」
「それはあれさ、こう程よくいい感じにだね……」
「……とまあ、こんな感じだったみたいだからね。この人は脳筋すぎる。頼れないから僕が来たんだ」
「ああ……」
「緑谷少年!? え、重夢くんまでそんな言わなくても……」
「感覚派の人はそこで黙って大人しくしててください。そもそもこのような怪我を本来させちゃならないんですよ。メッセージでも言いましたが一度や二度なら出久くんの若さなら回復出来るとはいえ何度もやっていたらそのうち腕が使い物にならなくなります。本当ならまず一度だってこうなることは避けさせなければならない。
未来ある子供にそんなことを大人である僕たちが、それも人を守る立場であるヒーローがやらせていいわけありません。オールマイトさんが後継を選ぶのは別に好きにすればいいですが、それなら貴方には師匠として本来果たすべき義務がある。だと言うのに怪我をさせてどうするんですか。彼がヒーローになる前に貴方は彼のヒーローとしての道を閉ざさせるつもりですか? 雄英に入試するとのことで当日に使わせなかったことは正しいとは思いますが、出久くんの体の成長具合を見てから少しずつ出力を上げていくべきだった。なのにいきなり全力で使わせたとメッセージを見た時は正気かこの人と思いましたからね? 普通に考えれば耐え切れないことなんて分かるでしょう。長年ヒーローしていたら危険かどうかなんてわかるでしょ。僕の力とは全然違うけど頼れるのが僕しか居ないって言うから僕が時間を作って来たんです。いいですか、出久くんは貴方じゃないんですよ。まだ中学生で体だって仕上がっていない。貴方の世代で一気に強くなった力なんて貴方が継承した時とは状況が全く違うんです」
「は……はい……ごめんなさい…………」
重夢の容赦のない口撃が放たれる度にオールマイトの体にHIT!HIT!HIT!と文字が生まれ、GREAT!と胸を抑え、最後の一撃はPERFECT!と大ダメージを負ったオールマイトは謝ると縮まって地面に指で丸を書き始めた。
どんよりとした空気を纏っていて、なんだかオールマイトの頭上にだけは雨が降っている。
平和の象徴とすらされているほどの人物の心がBreakしたようだ。
ついでにトゥルーフォームに戻っている。
「あ、あの……」
「気にしないで。この人が悪いから。僕はドクターとして直接言わなきゃダメだったし」
現No.1をあっさりと撃沈させられるのは恐らく重夢だけだろう。
緑谷は重夢は『優しい人』だと思ってたため、優しい人ほど怒らせるのは怖いんだと実感した。
緑谷は絶対に怒らせないようにしようと決意した。
何より目が怖い。怒ってるわけでも睨んでるわけでもないのに。なんなら顔に感情がなかったのが怖かった。
オールマイトの巨体が言われてる時にガクガクと震えていたほどだ。
「出久くん。僕は君にヒーローとして、ドクターとして言わなくちゃならないことがある」
「はっ、はい!?」
ただならない圧に緑谷の背筋が伸びる。
あれを見たあとだと何を言われるのか分からず心臓がバクバクと非常にうるさい。
そして。
「緑谷出久くん。
君はヒーローにはなれない--」
次の発言に。
自分を創ってくれた、道を示してくれたはずの人が今度は自分の”夢“を否定して。
「……え?」
全身から血の気が引いたかのように、見えていた光景が真っ黒に染まって。
激しい動悸と共に息が苦しくなって。
信じたくもない現実に緑谷の頭は、真っ白に染まった--
レジェンドライダーは?
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冬映画的な感じ
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先行登場的な感じ
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短編(ドライブやゴーストの特別編的な)
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単話
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お祭り的な感じ(春映画)
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エグゼイドのみ(なし)