ホビアニ系TCG世界にTS転生したので、いっちょラスボスを目指してみる   作:どくいも

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1 ちょっとラスボス目指してみた

――【TCG世界】

 

――それは、TCGを愛する男の子たちにとって夢のような世界で、TCGの強さによってすべての優劣が決まるような世界である。

 

今晩の晩御飯の献立から、授業の成績。

 

恋の告白、会社の意思決定。

 

明日の天気に、エネルギー問題。

 

果てには戦争の優劣に、歴史の転換期まで、全てがカードゲームによって決まる!

 

そんなカードを愛し、カードに囚われた者達にとって夢のような世界の事だ!

 

 

だからこそ、当初私はこの【戦術記録再編型カードゲーム・セレドミ】の世界に来た時、非常に喜んだ。

生れ卑しく立場も弱いが、そんなものこの世界ではハンデたり得ず、ただひたすらにカードゲームを楽しむことができた。

 

それこそ、ちょっと値段をおまけしてくれと言ったり、寝る場所の確保をしたり。

カード大会に出たり、金稼ぎをしたり。

戸籍や住宅購入権、果てにはメンツをつぶされたヤクザやら、カードゲーム暗殺者まで!

全てがカードゲーム(セレドミ)と関わるので、生きてるだけで無限にカードゲーム(セレドミ)で対戦できる環境。

目に映る全ての人が対戦相手であり、どの人も己の誇りをかけて真面目に対戦してくれるカードゲーマーにとって楽園のような世界だった!

 

だからこそ、私はこのセレドミの世界(楽園)を満喫した。

寝てるときも起きているときも。

日にち問わずカードゲーム(セレドミ)をやり、勝ったり負けたりした。

勝ったり勝ったり負けたり勝ったり勝ったり勝ったり勝ったり勝ったり勝ったりした。

全力でこの世界を楽しんでいた。

 

 

 

――……そう、()()()のだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

新興都市国家【オオミヤ=リコード】。

 

ヤマト帝国の片隅にあり、中央制圧から遠く離れた第八管区の旧・辺境自治区にある。

かつて下界とも揶揄され、無秩序な居住区と密輸港が混在し、電力も治安も保証されず、多くの貧民が生まれ、そこで死んでいた。

 

だが今は様変わりしている。

塔のように立ち並ぶ六属性の召集アリーナ。

空を走るレール。

光を反射する強化ガラスの街路と、ドームに包まれた戦域回廊。

 

「勝利」で自治を勝ち取った都市国家。

カードゲームのルールを唯一の法とし、戦術と構築こそが正義とされる場所。

かつてのスラム街は、今や楽園とまで呼ばれている。

 

そんな都市国家で今、一人の少女が憂いていた。

 

「……で、今日の予定は?」

 

六属性の光が交差する、巨大なドームの中央。

そこの戦域にして玉座にすわりながら、やけに目立つ容姿をした少女――すなわち、自分――が秘書にむかって話しかけた。

 

「本日はこの後、工房連合にて新型召集機の御前説明会があります。

その後、光門の再稼働に関する予備視察。

夜は六属性評議会の月例報告会、後にディナー会が予定されております」

 

内容は簡単なスケジュールについて。

うむ、文字だけでも実にめんどくさそうな行事がてんこ盛りだ。

しかしながら、今の私はここ【オオミヤ=リコード】の盟主でもあるのだ。

立場には最低限の責任と義務というものがあるという。

だからこそ、まぁこの程度なら出席するのはやぶさかではない。

……やぶさかではないのだが……。

 

「うん、わかった。

 ところで、結局あれはいくつ?」

 

「……」

 

自分が秘書に問うも返事がない。

なので、改めて尋ねた。

 

「だから、今日の私の対戦予定の相手は、何人いるか聞いているの。

 噂だと、今日の会合相手はどれも腕利らしいじゃない!

 一人くらい私を楽しませることができる相手はいるかもしれないしね」

 

大げさに外套をなびかせながら、高らかに宣言する。

自分の台詞に呼応するように、室内のいたるところに置かれたカードから、札神が飛び出してきた。

そんな風に、私と札神たちはまだ見ぬ強者の予感に戦意をたぎらせていたのだが……。

 

「本日の戦域戦予定登録者はゼロです」

 

――現実は非情である。

 

「……ちょっと、聞き間違えかな?ゼロって聞こえたんだけど。

 まぁ、誰にでも言い間違いはあるから。

 ほら、遠慮しないで、それに今日対戦あるならそれ用のデッキを持ってかなきゃいけないから」

 

「慈悲深いのは素敵ですが、お返事は変わりません。

 本日の対戦予定はゼロです」

 

返事が変わることを期待して、聞き直すも返答は変わらなかった。

 

「いやちょっとまって?

 昨日の時点だと、2人とは戦う予定だったじゃない?

 そいつらはどうしたの?殺されたの?弔い対戦(セレドミ)や供養対戦(セレドミ)でも開く必要はないかしら?」

 

「大丈夫です、お慈悲をいただいて幸いですが、彼らは生きていますので弔いは不要です。

 本日対戦予定であった2名はそれぞれ【指の筋肉つり】【カードへのインク漏れ】を理由に対戦を辞退なさいました」

 

「……またそれ?

 最近対戦欠席の理由が雑過ぎない?」

 

盟主相手に予約不戦敗とか、不敬すぎる。

それに不戦敗でも負けのペナルティーは変わらず存在するのに、自ら負けを選ぶとか、そんなに私と直接相対するのが怖いのか?

もっとも、いくら不満を言っても現実は変わらず、カードの札神達もしずしずと座へと戻っていく。

 

「……昔は良かったなぁ……」

 

思わず、口からそんな言葉が漏れる。

その言葉に秘書のリコは胡散臭げにこちらを見る、がこれは純粋な自分の本音である。

確かに昔は苦労した。

かつて私は孤児であり、色々な物が足りてなかった。

財布はおろか、水すらまともに飲めず、生き抜くことすら困難だった。

勿論カードも買えず、調べることもできず、某蟹のように拾ったカードで勝負をしなければならないくらいであった。

しかし、その代わりカードゲーム(セレドミ)での対戦相手探しに苦労しなかった。

元々のこの場所の治安が悪かったおかげか、自分が弱そうな見た目なおかげか。

はたまたは手ごろな相手とみられたか、倒し甲斐のある相手とみられたか。

チャンスがあればすぐにカードゲーム(セレドミ)勝負を挑まれたものだ。

実際、数年前までは対戦相手に不足することはなかった。

朝起きては勝負をし、あいさつ代わりに勝負をし、昼飯を買うついでに勝負をし、寝ている時ですら、たたき起こされ勝負をした。

一日中対戦三昧であり、1週間飲まず食わずで勝負を続けるようなこともあった。

無限に戦友でありライバルができていき、相手の種類も素人からプロまで幅広くいた。

思い出すだけで素晴らしい時間であり、この世界に転生できたことを神に感謝したほどだ。

 

「で、今回の勝負は不戦勝では、勝者の権限をどう行使しますか?」

 

「戦わない勝負の勝ちなんてどうでもいいわ。

 適当に、貸し1とでもしておいて」

 

「では、その通りに」

 

だが、今は違う。

例えどんな条件であろうとも、真剣勝負となれば絶対に相手にされないのだ。

たとえそれがハンデ戦でも、好条件をぶら下げても、ひたすらに自分と正面から戦おうとしない。

弱者共は基本的に逃げ出し、強者は挑まず、ずる賢い者はあらかじめ負けてもいい状況を作るために奔走する始末だ。

 

「……はぁ、あの腰抜けども。

 せめて、一人くらいこの生意気なメスガキをわからせてやろうという骨のある相手はいないの?」

 

「そんなに自分を卑下なさらないでください。

 それに聞きますが、盟主様の戦域戦(セレドミ)の現在の勝率を理解しておられますか?」

 

「……約99%。

 でも、それなら100回に1回は勝てる計算でしょ?」

 

「それはあくまで総数であって、直近のデータではありませんよね?

 何せ盟主様は、ここ数年無敗。

 普通の方では勝てると思いませんし、むしろ聡明な方ほど戦いを避けるのは自明の理です」

 

悲しすぎる現実だ。

そうだ、昔はともかく今の自分と対戦(セレドミ)してくれる人はほとんどいないのだ。

理由は、私が強すぎるから。

カードゲーム(セレドミ)の世界において、真剣勝負に負けるというのはそれなりに重いペナルティーを持つ。

なればこそ、確実に負ける勝負などだれもしたがらないのだ。

なお、この意見は聞く人が聞けば非常に傲慢であり、少し話を盛り過ぎだと私自身は思っている。

しかし、それでもカード対戦(セレドミ)一本で都市丸ごと手に入れたという実績と、勝率という目に見えるデータはインパクトとして強すぎるらしい。

おかげで、最近の私の周りは、ひたすらに対戦を回避しようとするものばかりであり、対戦したとしても事前に負けてもいいデッキで対戦を挑んでくるのだ。

おかげで、無駄に高かった勝率はさらに高まってしまうというわけだ。

かなしぃなぁ。

 

「あ~~、真剣勝負がしたい……。

 誇りと魂を賭けたカードゲーム(セレドミ)を繰り広げたい……」

 

「ならばまた生贄用奴隷を用意しますか?

 今度は本人だけではなく、家族にも首輪をつけてあげれば彼らももう少し真剣に戦うようになると思いますが」

 

「そういうのは違う。

 というか、札闘士を生贄やら奴隷っていうのやめてくれる?」

 

物騒な秘書の言動に思わずため息が出る。

おかしいな、自分はただ楽しく対戦(セレドミ)したいだけなのに、なんでこんなことをしているのか?

 

「世界征服を企む悪のカード組織とか、出て来ないかなぁ」

 

「……はぁ?」

 

自分の妄言に、秘書が疑問の声を上げる。

しかし、今の状況に立てば、そんな妄言を吐きたくなる。

何せこの世界は、前世でいうTCG促進販売系ホビーアニメのごとき世界なのだ。

ならば、この世界にふさわしい世界規模な悪役が現れて、カードの力で世界征服とかをほざくのを期待してしまうのもおかしくないはずだ。

 

もし、そんな組織が実際にあったのなら、自分は笑顔でそいつらの基地に突っ込んでいくだろう。

誰よりも先に正面から挑み、全員と笑顔で対戦する。

主人公とか原作の流れなど関係ない、お互いが満足するまで勝負し合うのだ。

 

そんなくだらない妄想をしながら、本日の作業を続ける。

 

……だからこそ、そんな妄想の果てに、私は気が付いてしまった。

 

「……いや、むしろ私がラスボスになる方が早くないか?」

 

――逆転の発想である。

 

今の自分の立場や地位、評判ではまともに対戦(セレドミ)することすらできない。

なぜなら、この世界での真剣勝負(セレドミ)は双方がそれ相応の物を賭けなければいけないからだ。

でも、もし自分がカード(セレドミ)の力で世界征服をすると、悪の総大将的なことを言ったら、周りはどうなるだろうか?

きっとみんな血眼になって止めにくるだろうし、中には強引に突撃してくる人もいるだろう。

仮に世界征服のために侵略を開始したのなら、各国は自国を守るため精鋭のTCG(セレドミ)強者を差し向けてくるかもしれないのだ!

 

さらには、もしここが本当にTCG(セレドミ)販売促進アニメの世界なら、この世界にはしかるべき派手な髪型の主人公がいるのがお約束。

なにをアニメみたいなというかもしれないが、ここが実際にアニメみたいな世界なのだ。

自分が悪の総大将をしたら、そんな主人公な人が義憤に駆られ、自分と対戦(セレドミ)をする……という展開があるやもしれん!

 

「……うん!決まった!

 私、ラスボスになる!!」

 

「盟主様?」

 

「とりあえず、世界征服を宣言するなら、なんかいい感じの理由でも考えるかな。

 世界の状況を憂いて、人類が醜いから……う~んどれもしっくりこない。

 ここは素直に本音をぶちまけるか?

 強いやつと戦いてぇって」

 

「……盟主様、どうやら今日は本格的にお疲れのようですね。

 本日の予定はキャンセルしておきますので、ごゆっくりお休みください」

 

「え、いやちょっと待って。

 私は大丈夫、大丈夫だから」

 

かくして、グダグダな流れの中、本日をもって私はカードの力で世界征服をすることを決意するのであった。

 

 

 

 

 

なお、数日後。

 

「というわけで、ラスボスにふさわしい行動をすべく、つながりのある国と国連加盟国すべてに宣戦布告しといたから」

 

「盟主様!!??」

 

思いついたら吉日としてさっそく行動を開始したら、秘書のリコが泡を吹いて倒れてしまった。

さもあらん。

 




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