ホビアニ系TCG世界にTS転生したので、いっちょラスボスを目指してみる 作:どくいも
「というわけで、あの壺、いや、札神カードは私がその教団にプレゼントしたものよ。
見たことがない札神だし、警戒はするだろうけど、そんなに監視する必要はないわ」
さて、あの教団接待()事件から早数か月。
現在私は玉座風執務室において、秘書のリコへあの時教団で起こったことを改めて説明していた。
「なるほど……。
つまり話をまとめると、盟主様は神のカードをお借りする代わりに、件の札神を教団へと貸し出し。
そして、その結果教団が大いに復興した、という話でよろしいですね」
「そう、相違ないわ」
なお、なぜ今頃改めて説明するかといえば、事態が思ったよりも大事化したからだ。
元々教団関連は、現地で小競り合いがあってその結果神入りカードをもらったとしか秘書には話していなかった。が、あの後、なんと教団が急激にその勢力を拡大。
あの元人間札神の力を使い、地元農業や畜産業の復活、工場の誘致。
さらにはいくつかの闇の組織を根絶したとのことで、オオミヤ国内でもそこそこ有名になり、これは異変ではと彼女は疑ったので、私が解説している次第である。
「つまり、あの壺の札神は……元人間なので特に強い力を持っていないし、どこかの組織の秘神でもない。
ただの具現化しやすいという特性を持っているだけという認識でよろしいんですね?」
「そう。
札神として
まぁ、立場上厳しいでしょうね」
一応、あのカードは教団員でも気軽に具現化できるように、教団員限定で共鳴率がバカ高いという特性を持たせた。
が、いくらあのカードと共鳴しようにも、札神自体が元人間なこともあり、奇跡カードの現実化はほぼ無理。
出来るように修行しようにも、手足もないし、しゃべることもできないと札神としてはかなり残念な仕様である。
「あと言ってないことは……。
具現化するときに、人の形の範囲であれば、ある程度好きな形にできるとか。
痛めつけると水を噴き出すとか、触れれば壺の記憶を読みとることができる、とかかな?
まぁ、どれもたわいもない特性よ」
「……割と十分やばい気もしますが。
盟主様が言うなら、大丈夫なのでしょう」
なぜか言い方に棘を感じるがまあいい。
一応、教団側には、その元若者の壺カードは教団復興のために存分に活用してくれと言って押し付けた。
真面目に言えば、あの教団は力ある若者グループが抜け、神様入りのカードもないと、復興に苦労しそうな状況であった。
なので、あんなカードとはいえ仮にも札神、無尽蔵に水を出す壺ともなれば多少は役に立つはずだ。
受け取る瞬間はすごい嫌な顔をしていたので活用してくれるか不安だったが、杞憂だったようだ。
え?転売や紛失の危険性?
それに関しては、もしそんなことをしたら、此方に預けた神のカードにも同じ目に遭わせると脅しておいたので。
「では、かの教団が日替わりで女体の卑猥な壺を名札と解説資料付きで晒し物にして人を集めているのは、盟主様の指示ではないとわかりました。
それに関しては、注意を入れときます」
アイツら何やってんの?????
いや、確かにあの壺は基本教団復興のためならば、どんな使い方をしてもいいとは言った。
でも、そういう使い方は色々予想できないし、それで人を集めても、正直碌な人が来ないと思うの。
「……まぁ、盟主様に許される範囲で復讐を成し遂げたいという思いでしょうね。
現に、盟主様がカード化しなかった件の暴漢関係者は、みな悲惨な制裁を受けていますので。
ああ、一応どれもちゃんと最後には通報してくださってるので、ご安心を」
ホビアニの邪教こわい!!!!
あの壺達が人間に戻れるのは恐らく相当先のことになるだろう。
なにせ、あの壺札達が人間に戻る条件は教団員のほとんどから許される事なのだ。
下手したら、数十年……いや、私が生きてる間には厳しいかもしれん。
すまん、未来ある若者よ、ワンチャン他のラスボスの介入を期待したほうがいいかもしれん。
「にしても、盟主様は流石ですね。
こんなにはやくあの計画をつぶすとは……」
教団の事を説明し終わった後、リコが意味深なことを言いはじめた。
なんだと聞いたら、実はつい先日まで、水面下ではテロ組織主導の国家盟主暗殺……つまりは自分への暗殺
なんだって!暗殺
私も盟主なりかけだったころは、このイベントが頻発し、大いに楽しませてもらったものだ。
最近は久しく
「いえ、だからその計画は頓挫しましたよ」
なんでじゃ!!!
「彼らがひそかに国に運び入れた必殺のメタカードが、何の意味も持たない事が事前に判明してしまったからですね。
しかも、失敗すれば名前や経歴、さらには組織自体まで開示されるというリスクが判明しましたので」
クソが!!!!!
どうやら、先日のやけにレアリティの高い【スライム族封印の瓶】は暗殺計画経由での密輸品だったらしい。
こんなことなら、あの若者を無理にでも野放しにすればよかったという後悔と、でも放置したら人身売買をするようなクズ野郎が国内に野放しになるし即対処だろという理性が喧嘩を起こす。
ならせめて、この暗殺計画に加担しようとした関係者はどこだと聞く。
そこを切り口にして、この暗殺関係者たちに殴り込みに行く算段だ。
「え~~とその……。
なくはないのですが……。
今現在唯一関与が確認できている国は、レーゲスなんですよねぇ……」
レーゲスか。
たしか、レーゲスは元ラルズの宗主国であり、ラルズとは浅くない関係にあった国だ。
あのギルナちゃんの所属国でもあり、確か今の国連でもTOP3に入るほど強大な国。
さらに
「つまり、歯ごたえのある勝負ができる相手がそろってる国……ってことよね!」
「やっぱり、盟主様ならそういう反応になりますよね~。
わかってる、わかってはいたんですが……」
実に物分かりがいい秘書に感謝しつつ、より詳しい情報を聞くことにする。
どうやら、今回の暗殺計画は複数の国の関与が疑われるが、早期に計画がとん挫したせいでどこの国も決定的な証拠を残す前に早めに逃げることに成功したそうだ。
その中で唯一証拠を残したのがレーゲスだが、レーゲスは軍事力だけではなく、諜報能力の高さでも有名な国家であり、おそらく、レーゲスが証拠を残したのはわざとと考えられるそうな。
「つまりは、それってレーゲスから誘われてるか、なめられてる。
そういう認識でいいのよね?」
「いや、まぁ、そうなんですが……。
私個人としては、今かの国を相手するのは厳しいかなと。
まだ完全に、ラルズ復興が終わったわけではないですし、国力の差も気になります」
秘書のリコが非常に歯切れの悪い返事をする。
いやまぁそうだろう、我が国は、つい先日ようやく世界的には小国であるラルズをなんとか開発し終えたのだ。
そこで次に喧嘩を売るのが大国レーゲスというのは、人口差などを考えればちょっと無謀が過ぎるかもしれない。
「でも、
「Oh……」
リコが頭を抱えこんでしまい、少し可哀そうに思う。
が、そもそもの話、今回の一件では一応は私が暗殺されかけたのだ。
今回は偶然、私相手に暗殺計画を練ってくれたが、今度は秘書のように他の人を狙われるかもしれない。
だからこそ、この件はある意味きっちり制裁したいのに、その唯一の手掛かりをもった大国を国力差で接触を避けるのは、あまりにも弱気が過ぎるというもの。
せめてここで一つでも抗議しなくては、私だけではなく、国そのものが軽んじられる可能性もあるわけだ。
だから、私はこの国の盟主として、国民の安全と尊厳を守るためにも、断固としてかの国へ圧力を掛けなければならない!
「そ、そんな!私たちのことまで考えてくださるとは……!!
……わかりました、盟主様!私も覚悟を決めます!
部下にも、いざという時の準備をするよう言って回りますので、これで失礼します!」
流石私の秘書、これには我が相棒ミミクリウスもニッコリしている。
かくして私はやけに気合の入った秘書を見送りながら、単身レーゲスへと直接交渉しにいったのであった。
なお、数日後。
「ただいま〜。
いや~、レーゲスはなかなかに面白い所だったわね!
しかも、あの国の国王も話してみたら、話のわかるいい国だったわよ。
取り敢えず、いくつかの口約束をし、数日後には外交官もくるからよろしくね♪」
「……!!そんな、盟主様が戦争を仕掛けてないだなんて……!!
医療班、解析班!!早く!
洗脳が疑われますので、至急盟主様に精神鑑定を!!」
「なんで???」
日頃の態度って大事だなって思いました。
さもあらん。