ホビアニ系TCG世界にTS転生したので、いっちょラスボスを目指してみる   作:どくいも

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10 流石王様、なんでも無理が通る

──前回、レーゲスがいい国といったが、あれは煽りや嫌味ではない。

文字通りの言葉の意味で言ったつもりである。

 

というのも、レーゲスにはいくつかの特徴的な素晴らしい点のある国だからだ。

 

まず第一に、景観がいい。

 

石と木によって構築されたゴシック調の建造物。

石畳の廊下に、苔むした庭、黒い尖塔に重々しい古城。

それだけなら普通のゴシック調だが、それに空飛ぶ馬車や魔法陣、鎧を着た騎士までもが加わると話は変わってくる。

さながら、中世風や魔法の異世界にやってきたようで、見ているだけでも心が躍ってくる情景がレーゲスには広がっているのだ。

 

第二に、文化がいい。

先ほど紹介した景観だが、これらの建物や施設には、当然多くのカード由来の奇跡が使われている。

どうやらレーゲスは、奇跡を魔法として発展させた歴史を持つらしく、街のいたるところで魔法という名でカード技術が使われていた。

それこそ、官僚たちの行う通信魔法から警官騎士の札神招集、一般市民の行うポーション売りまで。

さまざまなカード技術と文化が調和しているのが、レーゲス流だ。

 

第三に、社会構造がいい。

レーゲスの政治構造は、絶対王政から立憲君主制への移行時期である。

いわば、王や貴族、札使い達が高い政治主導権を持ちながら、民衆の代表である下院もそこそこ発言権があるという政治体制なのだ。

元現代人としては、この政治構造は大変ためになるものであり、いずれ独裁制から民主制への移行の際、見習いたいと思えるほどだ。

 

そして、第四。

それが最も大事であり、最重要。

さきほど、レーゲスは絶対王政から立憲君主制への移行時期といったが、それはすなわち、未だにレーゲスには王がいるという意味である。

この世界では基本、王とは対戦(セレドミ)が強い者であり、レーゲスもその例に漏れなかったらしい。

 

そう、レーゲスという国が気に入っている一番の理由、それはレーゲスの王がとても対戦(セレドミ)に強いという点である。

 

 

 

 

「ボクは奇跡カード【風弾】を発動!対象はプレイヤー!

 さらに!場にいる札神【疾風戦士ブレイククロ―】でダイレクトアタック!!疾風爪!!」

 

「ぐああああぁぁぁぁああああ!!!!!」

 

 

……それこそ、私が負けてしまうくらいには、だ。

 

 

「ああああぁぁぁぁあ!!!まげだぁああああああ!!!!

 ぐやじぃぃぃぃいいいいい!!!!!!」

 

さて、現在私はレーゲスの王と勝負(セレドミ)をしていたわけだが、僅かな差ではあるものの、ついに黒星を付けられてしまった。

負けた悔しさから、思わず涙が出る。

敗北感が全身を襲い、勝負(セレドミ)に負けたペナルティとして心の力が抜けていった。

確かに私は常々負けるくらいの強敵と真剣勝負(セレドミ)がしたいとは思っていた。

しかしそれでも私は負けたことに対して、素直に喜べるわけではない。

むしろ、そんな強敵と出会えたのに負けてしまった己の不甲斐なさで頭がいっぱいだ。

 

「はははははは!わるいねぇ!!

 でもこれが勝負の世界の理。

 それじゃぁ、勝者の特権を行使させてもらいますか!」

 

彼女はゆっくりとこちらに手を伸ばし、静かにアンティを品定めした。

 

「へ~、これは……特別製のカードスリーブかな?

 手触りとフィット感は問題なし。

 ガラもないし、透明感も嫌みがないと。

 とりあえず、これを1000枚いただこうかな」

 

ぐあああぁぁあああ!!私の特製カードスリーブがぁああ!!!

入れればカードのダメージが回復し、札神や奇跡の力を微妙に強化させる効果があり、並のカードの数十倍製作コストがかかる、私の最高級手作りスリーブがぁあああ!!!

 

「スリーブ職人にでも転職したら?

 じゃぁ次は……ほ~、これがオオミヤの最新のプレイマットねぇ。

 わが国のは魔法陣形式だから珍しい……って、おおお!!??

 これ、置くだけでこんなにカード情報が出るの!!??

 立体化にもほとんど魔力消費しないし、いいじゃんいいじゃん!!」

 

ううううぅ!!!私のプレイマットがぁぁあああ!!!

札研と共同開発した、超親切低燃費プレイマットが~~!!

だれでも高位の札使いの気持ちが味わえるようにと思ってつくったら、結局お値段的に高位札使いでもないと買えなくなった、曰く付きの最高級プレイマットが~~!!

 

「なんという本末転倒、でもそういうのあるよね~。

 でも、この分だとこっちのデッキケースにもなんかあるでしょ~。

 こっちのカード辞典も気になるなぁ。

 おおぉ!こっちには神界の金属まで!

 あぁ~~迷うな~~どうせなら全部貰っちゃおうかな~~?」

 

くそっぉおおおおおお!!

この王は自分が勝ったのをいいことに、此方が持ち込んだアンティを極限まで搾り取るつもりだ!

くそぉ!このままでは一回の負けで全部が取られてしまう!!

この、鬼、悪魔、鬼畜!サディスト!!

トップデッカー!!!!

 

「流石にその暴言はライン越えじゃないか!?

 速攻デッキの使用を許可していて、トップデッキで責め立てるのはマナー違反だと思うの。

 それにやっと久々に勝てたんだから、もう少しくらい煽らせてくれてもいいんじゃないかなぁ???」

 

なお、彼女としてはラインを守っていたつもりらしい。

久々の勝利だからね、ちかたないね。

 

「もう一戦!もう一戦やろう!!

 次は勝つから!!」

 

「え、やだ。

 というか、今日はもうおしまい!!

 今日ぐらいは勝ちの余韻に浸った状態で帰らせてくれよ」

 

この後、しばらくリベンジを試みたが結局かなわず。

でも、代わりに感想戦は大いに盛り上がったとさ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

さて、というわけであのレーゲス電撃訪問から早数か月後、現在私はレーゲスの若き女王[エリシア=ハルクセンダル]と会談中である。

初めてこの国に訪問した時は、もしかしたらまた暗殺勝負(セレドミ)が始まるかと期待したが、蓋を取ったら、女王自らが挨拶と謝罪をしてくれ、そのままずるずるとプライベートな勝負(セレドミ)をする仲に。

そして今では頻繁にこの国に訪れ、外交+プライベートな勝負(セレドミ)をする仲となった。

 

なお、彼女エリシアは年齢も自分より少し上と非常に若いが、この大国の女王らしく、文武両道で思慮深く、勝負(セレドミ)だってかなりの腕だ。

実際あってから少なからず勝負(セレドミ)しているが、何度か負けの経験をしているほどだ。

もっとも、未だお互い真剣勝負(セレドミ)ではない、構築済みデッキを使った試合、すなわち限定勝負(セレドミ)しかしたことがないので、デッキ構築を含めた真の実力は不明。

おそらく、評判や限定勝負(セレドミ)の腕前的に弱いということはないだろう。

なので、此方としては、そろそろ互いのオリジナルデッキを用いて真剣勝負(セレドミ)をしてみたいというのが本音だ。

 

「というわけで、【占術玉】をただであげるからさ~。

 互いに真剣勝負(セレドミ)しようよ~。

 別に、二軍デッキでも三軍デッキでも文句言わないからさ~」

 

「はいはい、戯言はいいのでさっさと外交の続きをしましょうね~」

 

う~~んイケず。

でも、ここでごね続けても後にやる限定勝負(セレドミ)の時間が削られるだけなので、おとなしく交渉を続ける。

一応、名目上は私もこの国にお仕事できている。

内容はラルズ戦後の後処理を通した両国間の外交だ。

もっとも、事前にお互い未来予知レベルで情報や判断を固めてきているため、割とこの場の交渉自体は確認作業程度に過ぎないので、手早く終わるのだ。

 

「じゃぁ、此方でそちらに返還できそうな元ラルズの官僚をリストアップしたから。

 できれば、この場で確認をよろしく」

 

「まったく、無茶を言う……。

 うん、でもまぁそうだね。これでいいと思うよ。

 報酬としては此方で集めておいたラルズに侵入していた他国のスパイ、その情報の残りでいいね?」

 

「もちろん。

 だけど、そのカードを今渡さずに、一戦私と真剣勝負(セレドミ)してくれるんなら、それだけでも構わないのだけど」

 

「はいはい、それじゃ、この書類に書いておいたからね。

 イイ感じに有効活用してね~」

 

あぁん、イケズゥ。

なお、このようにエリシアちゃんとそこそこ実りある外交を続けてるのだが、こと真剣勝負(セレドミ)については全然ダメ。

一向に真剣勝負(セレドミ)を受けてくれる気配がない。

 

一応このエリシアちゃん、私同様に勝負(セレドミ)が大好きであり、なればこそ真剣勝負(セレドミ)も嫌いではないだろうと確信はしているのだが……。

一応、一度なぜ好きなのにやらないのかと尋ねてみたところ、もしも自分たちのような両国トップがガチデッキで真剣勝負(セレドミ)をしてしまったら、勝っても負けても双方軍事バランスが大きく乱されてしまう。

だから、一国の王として、自分の快楽のために、互いの国の民に迷惑をかけるわけにはいかないと返されてしまった。

う~~ん、我欲と国の安全を天秤にかけて、きちんと後者を選べるいい名君ですねこれは。

名主気取りのタンカスがよぉ。

しかし、まぁ、それはそれでもいい。

なればこそ、ラスボスたる私が挑むのにふさわしい相手といえるだろうし。

 

それに彼女の意見には致命的な穴がある。

それは、国民に軍事バランスを乱す以上の利益がある場合は、彼女は真剣勝負(セレドミ)を受けてくれると言ってるのに等しいからだ。

そして、私はレーゲス国民が望んで止まない餌を持っている。

だからこそ、彼女が国民感情を読んでその言葉を言う機会をただゆっくりと待っていた。

 

そうして、その時は来た。

 

「ふぅ、今回も有意義な会談だったね。

 所で……先のラルズ制圧戦、その時、ちょっと珍しい物を手に入れなかったかい?

 そう、例えば……【カードベンダー】なんかを、さ」

 

その言葉がようやく彼女の口から出た時、私は思わず笑みを浮かべてしまうのであった。

 

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