ホビアニ系TCG世界にTS転生したので、いっちょラスボスを目指してみる   作:どくいも

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11 俺は札使いじゃねぇ、リアリストなんだよぉ!

――カードベンダー

 

札生成器、タロットギャザーなど、呼び名は様々あれど、効果は単純。

この世界における公式のカードを印刷し、製造するというものだ。

無論、この装置なしでもカード自体は産み出すことはできる。

だが、このカードベンダーは、カード製造効率が段違いなのだ。

それこそ、この装置なしでは、国民全員にカードを配るという選択肢が出ず、レアカードの増産なんてまず無理。

この装置の有無で一流国家かどうかが決まると言っても過言ではないし、この装置の数が国力の高さや国民の豊かさと直結していると言ってもいいぐらいだ。

 

そして、先に占拠したラルズにもこれはあったのだ。

しかも、レーゲス製のカードベンダーであり、今では複製困難な古の強カードが製造できる設定のまま保存されていたのだ。

そりゃまぁ、レーゲスとしては絶対それを取り戻したいだろうし、なんならスパイを放っていた理由もそれ関連であろうと察せられるわけだ。

 

「もちろん、あるわよ?

 旧ラルズ統治領のカード倉庫特別別館、そこの地下施設にあったわ」

 

「……へえ!なるほどなるほど!

 それは、壊れてたりはしてなかったかな?」

 

「問題ないわ。

 保存状態がよかったし、元ラルズ統治官が親切に案内してくれたもの。

 中身や使い方も含めて、綺麗な状態で保管されているわよ」

 

自分の言葉に、エリシアはなんとも言えない顔をした。

なお、自分の台詞に嘘はない。

なにせ、私は旧ギルゼン現ギルナちゃんに真剣勝負(セレドミ)のアンティの一つとして、重要施設の案内を頼んだからだ。

おかげで彼女は表面上は笑顔で快く引き受けてくれ、親切にもパスワードや設定、操作方法まで教えてくれたのだ。

 

その後もエリシアとしばらく会話を続けたところ、やや遠回しな言い方になるが、彼女がカードベンダーを欲していることには間違いないと確信した。

幸い、我が国はカードベンダーの絶対数は足りているし、条件が揃えばこの古いカードベンダーを返すのはやぶさかではないのだ。

 

「……と、いうわけで、旧ラルズ領のカードベンダーの返還のための返還条件として、アナタとの真剣勝負(セレドミ)を要求するわ」

 

しかし、そのためには私と真剣勝負(セレドミ)をしてもらう。

お互いの本気のデッキを使った、純粋な真剣勝負(セレドミ)をだ。

しかし、そのために相手の大切な物を人質にするのは我ながら卑怯な交渉術だとは思うが、此方は悪の枢軸、独裁国家なのだ。

ラスボスを志すならば慣れていかねばならないだろう。

なので、私は悪い顔をしながら、エリシアの返事を待つのであった。

 

 

 

★☆★☆

 

 

 

さて、面倒なことになったぞ。

レーゲスの女王エリシアはそう思った。

 

まず、勘違いしてほしくないのはエリシア個人としてはレアはもちろん、勝負(セレドミ)も嫌いではない事だ。

レアに関しては、TCG(セレドミ)が好き過ぎる危険な国主ではあるが、それでも本人の性格は比較的温厚、その上理知的だ。

勝負(セレドミ)好きという特徴も、国主にはよくあること。

それに、エリシア自体もTCG(セレドミ)が大好きであり、しかも、対戦相手が同等ぐらいの相手との勝負(セレドミ)が好きなのだ。

そういう点では、エリシアはレアと同類であり、弱い者いじめが主流な国主勝負(セレドミ)好き界隈の中では、異端仲間と言えるだろう。

もっとも限定勝負(セレドミ)ではレアの方が少々(?)格上ではある事実は認めざるを得ないが、それでも女王になってから久々に勝ったり負けたりの勝負(セレドミ)ができる相手なのだ。

しかも、レアとは勝負(セレドミ)以外の部分もなんとなく馬が合い、人格は非常に無垢、教養は少し足りないがそれを補う知性がある。

さらに基本優しく会話に不快感もない。

外交(仕事)のテンポもよく、頭の回転が速いのに奇跡で補完もしているなど、まさに癒しと言えるだろう。

どうして、彼女を憎く思えようか?

え?流石にそれは評価が甘すぎるって?

それなら、あの王冠をつけた猿どもや聖書と猥褻誌の区別もつかないインコ達を連日相手にしてみろ。

いかにレアちゃんがいい子だかわかるぞ。

 

……しかし、レーゲスの女王エリシアの立場としては、そうも言ってられない。

なぜなら、オオミヤはめちゃくちゃ迷惑な国であり、その盟主であるレアちゃんはさらに厄介な存在だからだ。

まず、オオミヤは小国である。

実態は何であれ、国土の大きさや歴史、初期の外交結果などからそう思われてもしかたのない国だ。

しかも、盟主レアちゃんは貧民上がりを自称し、それが上に立つのを国民が了承しているのだ。

それこそ、その話だけなら歴史ある大国のレーゲスの女王がわざわざ面会するどころか、挨拶することすら論外と言わざるを得ないだろう。

 

次にレアちゃんは強い。

単純な戦争から暗殺、さらには奇跡混じりの策謀まで強いのだ。

その強さは、民衆のような何も知らない者から、貴族たちのような裏の事情に詳しい者まで、なんとなくではあるが幅広く知れ渡るほどだ。

それゆえに、レーゲス国内で表面上は皆オオミヤをバカにしてるくせに、いざレアちゃんがこの国に電撃襲来した時は、皆がエリシアに縋り付いてなんとかしてくれといってきたほどだ。

さらに言うと、レアちゃんが厄介なのは、レアちゃんは強いと皆がわかっているのに、その強さがどのくらい強いか判明していない点にあるのだ。

それこそ今の彼女に勝っても、やはりレア=ウルトは弱かったで終わり、負けたらレア=ウルトが強いよりも私が大国の国王なのに弱かったせいと言われるのは、目に見えている。

 

そして、最後に厄介な点は、オオミヤの盟主レアちゃんは真の意味で本当に勝負(セレドミ)が好きな点にある。

よくいる一般的な国主達のいうセレドミ(雑魚いじめ)好きではなく、勝つか負けるかわからないタイプの勝負(セレドミ)が好きなのだ。

それこそ、セレドミ(雑魚いじめ)好きの猿やインコ相手なら、適当な接待要員をあてがい、適当な言葉で盛り上げ、最後に餌を上げればそれで喜び、解決することができる。

がオオミヤの盟主はそうはいかない。

なぜなら、彼女が欲するのは真面目な勝負(セレドミ)のみであり、しかも弱者を贄にしても全く喜ばず、接待されたらそれを感じ取れるだけの勝負勘を持っているからだ。

それゆえに、この国でレアちゃんを満足させることができる人物は、レーゲス国家最高防衛力である自分しかいないとはっきり断言できるほどだ。

 

つまりは、今のレアちゃんとの交渉を端的に言うと、国家情勢が不安中、邪険にしにくいのに超危険な相手と真剣勝負(セレドミ)という名の地雷原の上で交渉を続けなければならないということだ。

うん、マジで帰ってくれ。

せめて、あと10年待ってくれ。

ついでにオオミヤの盟主という座を捨てて、真剣勝負(セレドミ)にこだわらない状態で個人的にきてくれたら、泣いて歓迎するから。

 

(……まぁ、そんな現実は甘くないんだけどな~)

 

さて、そんな妄想はおいておき、改めてこの交渉について考える。

議論の的は、カードベンダーについて。

このカードベンダーは元々はレーゲスの物であったが、ラルズを占拠した際にラルズ統治を円滑に行うためにレーゲスがラルズに送った物だ。

ラルズが半独立した際に、旧ラルズ統治政府がごねたのでなかなか回収できなかった物でもある。

そんな良くも悪くも歴史あるカードベンダーだが、エリシア個人としては実はそこまでの思い入れもなく、なんなら今後の両国の良好な関係性のためにオオミヤに上げちゃってもいいと思っている。

 

が、それは彼女個人の感想であり、国民にとってはそうではないのだ。

あんな野蛮な国に我が国の秘宝を奪われたままでいいのか、我が国のカードが他国の侵略に使われたら責任はどうとるのかなど、国際社会もカードも詳しくない新米議員たちが一部貴族たちと一緒になり、こちらに喚いてくるのだ。

一昔前なら、何を馬鹿なことをと切って捨てられたのだが、王権が弱まった今の時代、そうも言ってられない。

なので、エリシアは国家の代表としては、何とかカードベンダーを取り戻すことに関して、前向きな姿勢で挑まなければならないのだ。

そして、幸か不幸かカードベンダーの保存状態は問題なく、交渉もするすると進む。

このままこの交渉を続けていけば、今日中にでもカードベンダー取り戻すことができるだろう。

 

……ただし、それは自分が真剣勝負(セレドミ)すればの話だ。

 

(戦いたくね~……)

 

ぶっちゃけると、今のレア=ウルトと真剣勝負(セレドミ)するのは基本論外である。

なぜなら、レア=ウルトはガチで強いからだ。

基本的なカード(セレドミ)捌きに問題がないのは、限定勝負(セレドミ)で嫌というほどわかっているし、なんなら自分よりも数段上だ。

真剣勝負(セレドミ)や相棒切り札との共鳴率に関しては、未だ直接測れてないが、単身でラルズを制圧できる相手にそんな穴を期待する方が間違っているし、なによりエリシアは元ラルズ統治監のギルゼンの実力もよく知っているのだ。

一応立場やアンティの重さの違いでプレッシャーをかけるという大国国主特有の戦術はあるが、レアちゃんも国主であり、なによりそんなもので怯むほど彼女が甘くないのはここ数回の限定勝負(セレドミ)で嫌というほどわからされたのだ。

むしろ、彼女なら自分が強ければ強いほど燃え上がり、立場が強ければ強いほど嬉々として挑んでくるだろう。

 

アンティに関しても、彼女のカードはまず自分のデッキに入らないし、国土を奪うのも地政学の関係上ほぼ意味がない、むしろマイナス。

一応彼女自身の身柄が欲しいという本音はあるが、それは一回の勝負では奪えないだろう。

 

さらに都合が悪いことに、私の相棒の札神は気位が高い。

そのため、限定勝負(セレドミ)のような他のデッキで遊び、負けたとしても流してくれるが、ガチデッキでの真剣勝負(セレドミ)で負けた場合は著しく共鳴率が下がるのはほぼ確定しているのだ。

なんなら、アンティ次第では相棒札神が奪われてしまうし、それをされなくとももっとひどい目にあわされれば、デッキ自体を握ることが困難になる。

そんなことになれば、レーゲスは終わりだ。

レアちゃん自体は攻め込まなくても、レーゲスは複数の国と敵対しているのだ。

そんな状態で、国家最高防衛力の自分が弱体化してしまうのは、下手すればそのまま国家滅亡に繋がりかねないのだ。

 

(つまりは、何とかして、彼女との直接真剣勝負(セレドミ)を避けなければならないのか)

 

それゆえに彼女は考える。

なんとか、レアちゃんとの真剣勝負(セレドミ)を回避して、カードベンダーを手に入れる方法を。

或いはそれが手に入らなくても、国民や貴族に納得させる方法を。

 

……そうして、彼女は口を開いた。

 

「……うん、わかったよ。

 君との真剣勝負(セレドミ)を受けてあげてもいいよ。

 でもその代わり、いくつか条件があるんだけど……いいかな?」

 

自分の言った言葉に対し、目を輝かせるレアを見て、彼女は自分の思惑がうまくいったことを確信したのであった。

 

 




訂正・次回は9/20(土)になります。
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