ホビアニ系TCG世界にTS転生したので、いっちょラスボスを目指してみる 作:どくいも
――端的に言えば、オオミヤ=リコードによる全国宣戦布告は、当初まともに受け取られていなかった。
各国の首脳陣や評議会が動揺しなかったわけではない。
だがそれ以上に、「オオミヤ?あの自称国家が?」という嘲笑まじりの空気が支配的だったのだ。
そもそも、オオミヤ=リコードは正式な国家と見なされていなかった。
確かにオオミヤ=リコードは国連評議との外交
しかし、それでも他国から見たオオミヤはその統治形態や文化レベルも不明であり、調べようにも彼の国が外交する機会も少なく、あっても一方的な物ばかり。
いわゆる未開の国であった。
わずかに知られている国家成立の経緯も、ヤマト国の内部抗争の末、現オオミヤ盟主が
それで勝ち取った小さな土地を「領土」として主張すると言うものであり、既存の国家秩序からすればほとんど海賊か、あるいは異端のテロ組織のようなものだった。
加えて、オオミヤの盟主が使役するカードの神たちは、他のカードの神からは忌み嫌われていた。
カードに神が宿るという事実は常識とまでは言えないが、それなり以上の地位にいる人達に知っていて当たり前の事実であった。
なので、札神の世界における評価は、そのまま国際的な信用に直結する。
札神曰く、オオミヤの盟主が使用するカード群は、忌々しく薄汚い上に弱いと聞く。
それゆえに、オオミヤの孤立は、札神世界においても明白だった。
だからこそ、実際に侵略戦争が起きたときも、各国の反応は鈍かった。
「また妙なことを言い出したな」「大仰な口だけで、どうせ本気ではあるまい」
そんなふうに高をくくっていたのである。
何せ、国連に無理やり加入しに来たくせに、大した要求もせず、不満だけを言って帰っていくような蛮国だ。
さらに言えば、侵攻先に挙げられた国はオオミヤよりも大きく、そもそも距離が大きく離れている。
実際に、侵攻を開始したと言っても何ができるのであろうか?
なので、各国の関心は、侵攻を開始したというオオミヤではなく、侵攻先の国である【ラルズ】の方が強かった。
聞けば、オオミヤがラルズに侵攻を開始するのは、国連の決議後もオオミヤを軽視し、侮辱し続けたとして反省を促すために攻め入るそうだ。
となれば、ラルズはどうするであろうか?
大人しく、謝罪をするだろうか?
それとも、何を馬鹿なと一蹴するのだろうか?
逆にこれを言い分として、オオミヤを侵攻できるのではないだろうか?
ならばこの一連の出来事は、ラルズの策謀?
いやいや、ラルズの宗主国であるレーゲスがこの一連の出来事を引き起こしたに違いない。
ならば、これはヤマトとレーゲスとの間の代理戦争なのでは?
などなど、あることないことを色々妄想。
それでも、まぁ事態が動いてから干渉すればいいかと思っていた。
……思っていたのだが……
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――ラルズ領、魔の三日間
「おい、
「後攻はもらった!ドロー!!」
「私は【ブルードラゴン】を招集!
そして、もう一体!さらにもう一体!!!」
「その奇跡に対して【やっぱ今のなし】を即応で。
え?いや、これはそういう名前のカードだから」
「罰ゲーム!!!!!」
「領土事故を言い訳にするな、それはお前のデッキ構築力が低いだけだ」
「立ち上がれ私の分身!!!」
「【喪札】を使用します。
……マジでハンド全部領土なの??」
「時間とか気にしないで。
いくらでも引き延ばせるから」
「罰ゲ―――――――――ム!!!!」
「領土事故した!!!クソゲー!!!」
「でも勝ちました。やっぱ神ゲー」
「交渉や発砲なんて野蛮な……。
ここは穏便に
「ドロー!【札神】カード!ドロー!【札神】カード!ドロー!【札神】カード!
……あ、デッキの【札神】カードひき切っちゃった」
「長考するふりして、別のこと考えるのやめろ。
〇すぞ」
「う~ん、せっかくだしここは正々堂々と1対2で。
いや、どうせなら1対10の魔王戦でもやっちゃいますか!」
「ファー!甘い甘い!即応奇跡、発動!!」
「罰ゲ~~~~~~~ム!!!!!!!!!!」
「ふふふ、貴方がこの国の支配者ですか。
恨みはありませんが……我が野望の糧になってもらいましょう」
「インチキ効果も大概にしろ!!!」
「模す者、写す者、全ての形を孕みし【真なる無】よ……。
今一度、その姿を借り、現界せよッ!」
「【終誕贋王ミミクリウス】、招集!!!」
「……さぁ、覚悟はいい?」
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「ラルズ軍が完全敗北、そして、ラルズ政府はオオミヤに完全降伏いたしました。
また、それにつき、ラルズの総督はオオミヤへと謝罪し、それを許諾。
現ラルズ政府は感銘を受け、ラルズがオオミヤへ従属することが決定しました」
「「「「は?」」」」
三日後に、この報告をされたとき、各国首脳の頭の中は真っ白になったそうな。
この時点になってようやく、各国は「自称国家」の脅威を理解できた。
しかし、まだこの時はその程度の認識であった、そう、あったのだ……。
★☆★☆
さて、前回周りの国が構ってくれないので侵略戦争を開始。
第一の犠牲国を秘書へと伝え、現地に赴き、無事降伏させることができた。
これを聞いた皆様方は、嘘つきだと言いたいのだろう。
たった数日で国を攻め落とすとか不可能やら、兵糧はどうしたなど、色々言いたいことがあるだろう。
が、それもこの
三日三晩飲まず食わずで
実際に、決闘へのやる気や情熱は、三日間戦う際に、体を保つ栄養や水代わりになってくれる上、それらをカードにこめれば現実の時間すら歪めてくれる。
今回も、三日三晩の間とは言ったが、それは実時間であり、体感時間なら、何十倍も経過しているのだ。
故に、この侵略戦は実に甘露な時間であった。
久々に多くの、そして、なかなか歯応えのある真剣
本当はもっともっと沢山の
が、残念ながらラルズ国内の札使い達の数が多くなかった上に、わずか3日(体感時間3年弱)で全員折れてしまった。
せめて後1か月だけでもとお願いしたのに、悲しい事だ。
「というわけでお疲れ様です、盟主様。
事前の予定通り、占領統治は順調に進んでおります」
なお、占拠後はリコがタオルと食事をもって出迎えてくれた。
彼女の背後には無数の部下がおり、すでに彼らは物資を運んだり、あるいは建物を再建させたりなどして、占拠作業を始めていてくれたらしい。
いや、事前に彼女は準備はできているといったが、まさかここまで準備万端とは聞いてない。
見たところ、彼女だけではなく部下の装備もちゃんとこの土地にあっているものだし、物資の量もそろっていると聞く。
本当に準備ができているとか、この娘化け物か?
思考盗聴とかしてない?
「ん、ありがとうリコ、お疲れ様。
……で、現地の状況はどう?
荒っぽい占拠の仕方だから、色々と一般市民から不満は出ていると思うんだけど」
しかしそんな言葉を口に出す前に、労いの言葉と疑問を口に出す。
疑問に関してはある意味当然のことだからね。
突然侵攻して、乗っ取りとか、現地の住民が許すわけがないのが普通だ。
それにより、レジスタンスとか、暴れ狂う一般市民とかがいてもおかしくないわけで、ならばそれを取り押さえるのも自分の役目だ。
個人的には、つんつんした髪の毛をして、地元とカードを愛している10代の少年ならうれしいが。
「もちろん、問題ありません。
そもそも、ここは封建体制が色濃くのこっており、属州制を名目とした植民地支配の構造が現役でした。
特に属州民の扱いは酷いもので……」
残念ながらこの国の民自体に奴隷根性が染みついているため、反乱してくれないらしい、くやしいのぅ。
リコは旧ラルズの国の歴史と国風、ついで奴隷問題について話してくれたが、個人的にはそこにはあまり興味がないため、8割聞き流すことにした。
しかし、それでも残り二割から少し奇妙なことが聞こえた。
「ん?つまり、この国の民のほとんどは、まともなデッキを持っていないの?」
「はい、その通りです盟主様。
ラルズでは国民の半分以上が同じデッキを使用しております。
しかも、そのデッキは【奴隷デッキ】と呼ばれるものであり、それ以外のカードは一般販売もされておりません。
奴隷が奴隷デッキ以外を使うと重い罰を受けるそうです」
う~ん、なんというディストピア。
詳しく聞けば、カード情報もできる限り秘匿され、奴隷同士がカードで
統治者としては反乱防止や個人資産所有防止など、いくつかの合理的な理由はあるのだろう。
が、それにしても何ともつまらない政策だ。
そんなんだから、この国は私一人に敗れるんだ。
「じゃ、とりあえず、配給は食料品医薬品だけじゃなく、ストラクチャーデッキも品目に加えておいて。
デッキは6属性の中から、好きなのを選ばせる感じで」
「……よろしいのですか?」
「あたりまえでしょう?
ああ、それと市場にカードのパックも流しなさい。
分かってるとは思うけど封入率操作はなしで、市販も高官用も公平にすること。
いいわね?」
リコが神妙な顔をして何度もうなずいている。
私個人としてはこれは当然のことだ。
いくらカードが資産な世界とは言え、カードプレーヤーならストラクチャーデッキを手に入れる権利、平等にパックからレアを引き当てられる機会を得る権利。
それらのカードでデッキを作る権利はTCGプレーヤーなら与えられてしかるべきものだ。
特にこの国の民は、それらの権利に飢えているみたいだからね。
是非自由にデッキを組んでTCGの楽しさをおもいだしてほしい。
そして、組んだデッキで私に挑んでほしい、できれば今すぐに。
あらかた聞きたいことは聞き終えた。
わかったことは多くはないが、すくなくともこの侵略により各国はもう少し私に対してまともな対応をしてくれるであろうこと。
そして、この地の統治に関する雑事のほとんどはリコを含めた部下がやってくれることがわかった。
非常にありがたいことだ。
「リコ、いつもありがとう。
感謝してるわ」
「いえいえ、秘書として当然のことをしたまでです」
リコがまぶしい笑顔でそう答えてくれる。
悪役の頭領としては、部下に任せっぱなしというのは明確な反乱フラグではある。
が、私としては反乱は大歓迎なのでどっちにしろ問題ない。
「ところで、彼の様子はどうなった?」
私が笑顔で問うと、リコの笑顔が崩れた。
「……ええ、忌々しいことに、あのゴミむ……いえ、反乱者は先ほど目を覚ましました。
なお、状況が分かってないのか、『このままでは済まさんぞ』などと妄言を吐いてるようです。
どう処分いたしますか?」
リコは苦々しげにそういってくる。
私としては、朗報であった。
「ふふふ、どうやら彼はまだ闘志が折れてないようね♪
いいじゃないいいじゃない、結構なことだわ」
「……盟主様がお手を煩わせる必要はありません。
私の方で処分いたします」
「ダメよ。あなたはまだあなたのすべき仕事が終わってないでしょう?
わかったら、とっとと仕事に戻りなさい」
「く……!わ、わかりました……!!
で、でも、無理だけはなさらないでください!」
リコが悔しそうな表情をしながら、後ろにいる部下の指揮へと戻っていく。
すまんの、部下の仕事を手伝わない系上司で。
でも、最低限自分の分はやったから、許してクレメンス。
かくして私は、この国最後のデザートでもある、ラルズ現地総督のところへと遊びに行くのでした。