ホビアニ系TCG世界にTS転生したので、いっちょラスボスを目指してみる 作:どくいも
さて、ギルナちゃんとの楽しい楽しい真剣
結果は危なげのない私の勝ちで終わったが、最後まで双方勝利を諦めず、気迫もばっちりであった。
それなりの充実感がある、いい真剣
できれば、もう100度やりたい。
が、問題はギルナちゃんの方だ。
彼女は事前にこの真剣
しかも、事前に【今までの負けを全部取り戻せるように】重めに
その上で、お互いにエース札神を召喚済み。
さらには、此方の半具現化したエース札神のダイレクトアタックによって、ライフをゼロにされたのだ。
ともすれば、どれか一つでも並の札神使いでは病院行き、それを3つも4つも条件を重ねてるのだ。
いくらか、事前に壊さないように自分の
「……きゅう」
「うん!大丈夫そうだね!」
壁にめり込み気絶しているギルナちゃんを見つつ、安堵のため息を漏らす。
まぁ、それでも石の壁にめり込んだまま放置すれば、後々彼女がひどいことになるのは明白。
なので、未だ半実体化しているミミクリウスに命じて彼女を壁から引っこ抜いてもらった。
「……きゃん!!
くそおおぉぉぉ!!!!また負けた!!!なぜ勝てないんだぁあああ!!!!!」
救出されたギルナちゃんは目を覚ますと同時に、悔しさで喚き始めていた。
うんうん、相も変わらずこの娘(元男)は優秀だ。
私が今まで戦った普通の札使いだと、2~3回真剣勝負に負けただけで心が折れてしまうし、強い者でも5回も真剣
が、この娘はすでに20戦以上連続で負けているのに、いまだ元気にこちらに挑み続けてくれるのだ。
しかも、恐怖によりプレイが臆病になるとか、雑になるとか、そういうことがない。
ド級のリトライ、正にドリトライの申し子といえるだろう。
心がつえぇやつなのだ。
「もう一度だ!
今度こそ、全てを取り戻す!」
もっとも、20回以上負けているのに、プレイングもデッキもあまり上達していないのは少し残念だが……。
それは後々といった所だろう。
「もちろんそれは構わないわ。
……そのまえに、罰ゲームを受けてもらうけど」
「……っ!!!」
本当は私も今すぐにでも再戦をしたい。
が、今回も真剣勝負故、彼女にはペナルティーを与えなければならないのだ。
個人的にはこんなものどうでもいいのだが、この世界において真剣
しかも、今回の真剣
世界のルールとしても、これから先の彼女の真剣
さもなければ、世界のルールが勝手に彼女の運やら命やら、やばい物を徴収し始めてしまうし。
(……でもなぁ、取るべきものは大体全部取ってるんだよなぁ)
しかしながら、対戦回数数十回以上ともなると、彼女から取れる物は大体取ってしまっていた。
それこそ、家や名前から、呼吸する権利や排泄する権利。
かつての奴隷に対して裸土下座謝罪も済ませたし、性別や常識といった本来改変不可能な部分まで、徴収済みだ。
一応通常の重いペナルティーと言えば、エースカードだが、今回もそれはなしだ。
理由は簡単、それをすると相手が弱くなってしまうからだ。
この世界において、相手のデッキのエースを奪うのは最大のペナルティでもあり、同時にデッキの共鳴率が下がるという意味では永続デバフともいえるのだ。
だからこそ、これからも快適にギルナちゃんと遊ぶには、エースカード以外からペナルティを選ぶ必要がある。
大丈夫!ギルナちゃんの
でも、それ以外は全部奪うつもりだけど……まぁ、それぐらいは仕方がないか。
「でも、エースカード奪取以外となるとな……そうだ!
あれをしよう!」
いくつかの案を考えた末、いい案がひらめき、それを実行することにする。
すると、まず自分のエース札神であるミミクリウスの身から、触手が複数伸びた。
その黒くも透き通った触手は、敗者であるギルナの体に絡みつく。
「お、おい!何をする気だ!!!
ま、まさか……やめろぉ!!!」
何を想像したのか、ギルナちゃんが顔を真っ赤にしながら、太ももを固く閉じ、体を捩った。
が、抵抗しようとするも、真剣勝負のペナルティなので口以外はまともに対抗する事はできない。
それに、おそらくこのペナルティは彼女の想像とは違うだろう。
「いや!やめ……ぎゃん!!
……って、あ!!私のカードが!!」
ギルナに巻きついていた触手が、彼女のデッキから一枚のカードを抜き出し、彼女を解放した。
抜き出されたカードは、彼女のデッキのエースカードである【叛逆古竜ヴェルニグレイブ】である。
「な!貴様……やめろ!!!
それは、それは、俺の相棒なんだ!
貴様のような、下賎な女が触っていいようなカードではない!!」
触手に無効化されながらも、ギルナは強く反発する。
おそらく彼女はとうとう自分のエースカードが奪われるのだと思ったのだろう。
だが、当然そんな単純なペナルティで済ませるわけがない。
それに、此方としてはこんなカード、36枚……いや、もっと持っているわ。
「安心しなさい。このカードはきちんとあなたの元に返してあげるわ。
尤も、完全に同じものとは言わないけどね。
と言うわけで……罰ゲ~~ム!!!!!」
不安そうなギルナの目の前で、それは実行された。
札に宿っていた札神【叛逆古竜ヴェルニグレイブ】が具現化し、そのまま全身を触手で貫かれた。
竜から苦悶の声が上がり、辺りに灼熱の血がこぼれる。
しかしその龍は使い手共々試合で負けているため、まともに抵抗することもできず、そのまま全身をからめとられてしまった。
「……!!!や、やめろ!!やめてくれ!!!
俺ならどうなってもいい!!だがそいつは!!我が誇りは!!
相棒には手を出すな!!!出さないでくれ!!!」
う~~ん、流石ギルナちゃん、いいリアクションをしてくれる。
この世界でもカードを大事にしている人ほど、
ギルナちゃんの強さなら、エースカードとも良い関係を築けていると予想していたが、やはりビンゴだったようだ。
「安心して、貴方の相棒の命や性能までは奪わないよ。
……そう、カード性能は、ね」
触手の先から、竜の喉にぬるりと冷たいものが侵入した。
熱と力を誇った竜の鱗は剥ぎ取られ、骨が軋み、肉が捻じ曲げられていく。
炎を孕んだ体はどんどん縮んでいく。
「奇跡【魔改造の夜】発動、奇跡【偶像化】発動……」
ミミクリウスによる改造だけではなく、それを自分の持ち札でサポートする。
いくら罰ゲーム補正があるとはいえ、ミミクリウスの施術は少々荒っぽいので万が一がないようにだ。
その結果、竜の体から粘液が剥がれ落ちたとき、そこに立っていたのは紅蓮の翼と角を持つ何かであった。
かつての威容は消え、鎧のような鱗は部分的に残るだけ。
四肢には錠が掛けられており、その先には重々しい鉄球が添えられている。
腰のくびれや脚の曲線はあまりにも人間的で、しかし瞳の奥には僅かに竜の炎が揺らめいていた。
『あ……あぁ……!!』
口を開いてもまともな咆哮は出さず、出るのは熱を帯びた息と震えた悲鳴のみ。
膝をつき、肩は小刻みに震え、屈辱と怒り、さらには圧倒的恐怖を押し殺しているのが一目でわかった。
「よし、これで完成っと!
ふふふ、これでなかなか可愛くなれたんじゃないか?
そう、使い手共々……ね♪」
「相棒ぉぉおお!!!!!」
何と、そこにはすっかり可愛いドラゴン娘の姿となった
一応カードとしての性能こそ変わってないが、カードイラストは当然変化済。
フレーバーテキストも相応しい物に変わってる上、名前も【叛逆古竜ヴェルニグレイブ】から【囚獄姫竜ヴェルニグレイブ】へと変わっていた。
今回やったのはいわゆる【カードのイラスト違い化】というものだ。
雄々しい竜の姿から、弱弱しい竜娘の姿へ。
前の世界ならそれなりに需要がありそうな姿へ変えてあげたのだ
カードの効果やスタッツ自体は変わっていないものの、使っているカードの見た目やテキストによって、人格を見るという風習のあるこの世界では、それなりに重い罰ゲームになるのじゃなかろうか?
特に、カードやデッキに対して強いこだわりやプライドを持ってる彼女ならば、だ。
「よかったじゃないか!レアカードのイラスト違いとか中々に珍しいぞ?
それこそ唯一無二なんだ、大事にしてくれよ?
……そう、負け犬の証として……ね♪」
軽い挑発とともに、元叛逆古竜ヴェルニグレイブこと【囚獄姫竜ヴェルニグレイブ】を投げ返してやる。
ギルナは、転がるようにそのカードを受け取り、札神である竜娘も割れ物を扱うかのように抱きとめた。
そして、彼女の目に映ったのは、弱弱しく声を漏らし、縋るような、謝るかのような瞳をした元相棒の姿であった。
「……ああああぁぁぁぁ!!!!
殺す殺す!!!!ぜったい、お前を倒してやるううぅぅぅぅ!!!!」
予想通りの反応に、思わずこちらの口角が上がる。
内心少しだけ、姿が変わったエースカードの姿に失望し、デッキ自体を変える可能性も考えていたが、どうやら彼女のカード愛は本物だったらしい。
殺す殺す言うのは少々下品だが、それでも相棒カードの仇を取らんと奮起する彼には、一定の敬意を抱かざるを得ない。
「ふふふ、それじゃぁ再び真剣
もっとも、あなた程度だと、後何千回やっても負けることはないでしょうけど」
「うるせぇぇぇぇぇ!!!!
今度こそ、絶対にかぁぁぁぁぁつ!!!!
お前を倒す!!覚悟しろぉぉぉぉぉ!!!」
此方の軽口に、ギルナが本気の殺意をぶつけてくる。
その熱すぎる視線を浴びながら、私は自分の企みが成功したことを確信。
こうして、私はうまくアンティをごまかしつつ、再びギルナと真剣
――なお、その後の
「……え?土地事故?
う、うん、そういうこともあるよね。
次いこう!!」
「……」
「はぁぁ!?今度は札神カードがないの!!??
いやいや、2連続事故とか、どうしたのギルナちゃん!??」
「うるせぇ!!!次だ次!!!
今度こそ、勝つ!!!」
「……うん、ギルナちゃん、君はもう無理だね。
デッキ自体が負けたがってるよ、うん」
「……!!!うううぅ~~~」
自分の手厚い介護もむなしく、先ほどの罰ゲームを皮切りに、ギルナちゃんはまともに
理由としては、彼女のデッキ、すなわち札神達の心が折れてしまったから。
いくらギルナが私に再戦しようとしても、カード自体が逃げ惑い、まともにデッキからドローされない様にしているのだ。
それゆえに、今の彼女は初手事故はほぼ毎回、むしろ強い札神が宿っているカードほど、彼女の手札に来ず、デッキ自体が、いかに被害少なく負けるか考えて動いてしまっている。
実際にいくらかの札神は、場に出た時点で惨めに土下座しているほどだ。
お前らに、恥という概念はないのか?
「おいおまえら!!
このままだと負け犬で終わるんだぞ!!
それでもいいのか!!!」
ギルナちゃんもデッキの札神達に向かって叱咤激励するも、声は届かず。
むしろ、デッキから脱出しようと四苦八苦する根性なしばかりだ。
「……とりあえず、我が国に養成所があるから。
そこで一からカード集めをやり直してこい」
「ちくしょおおおぉぉぉぉ!!!!!」
かくして、彼女自身の戦意は折れてないのに、デッキ自体が負け犬になってしまった彼女は一から再起させることに。
私の第一次侵略戦争の対戦相手は、これにていなくなってしまったとさ。
めでたくなし、めでたくなし。