共に拓く、明日への道 作:単独行動 EX
長い旅になると思いますが、よろしくお願いします。
■
……え、死んでる?
いや俺じゃなくて。そこに倒れてる俺と同じ黒髪の……日本人、たぶん。
「なぁ、大丈夫か?」
「ん……」
生きてはいる、か。ただまぁなんでこんな道端で?貧血とかか?重めだと簡単には目覚めないとかもあるのかね……詳しいところはよくわからないが。
「フォウ!フォーウ!」
鳴き声???鳴き声、か。それより後ろから走ってくるメガネの子は。
「……君、は」
「貴方は、マスター候補生の方、でしたね。成績が良いのにトレーニングへの参加率が低い点が印象に残っています。あ、いえその……全く悪い意味でなく、むしろ効率よく成績を出しているんだなという意味で」
確か、マシュ・キリエライト。あまり強い印象はなかったが、確かAチームのメンバーだったよな。
「あー、室伏椋だ。多分それで合ってる。人類代表に相応しいと目されるAチームの方に覚えていてもらえるとはね。サボってんのは事実だし、気にしなくて良い。で、この寝てる彼とは知り合い?」
知り合いなら話は早いんだけど。
「フォウ、フォフォーム……」
「ん、ぅん……もう、朝?」
違う、これ寝てるだけだ。
「朝でも夜でも無いですが起きて下さい、道の真ん中です」
あー、今は時期的に白夜か。朝も夜もないわな、それは。
「君は……?」
あ、会話はできるくらいには。
「いきなり難しい質問なので、返答に困ります。名乗るほどのものではない───とか?」
はい?
「や、待てよマシュ……さん。あんたはなんというか、こう言うのもアレだがやたらと立派な名前があるだろ」
「あ、いえ。あまり口にする機会がなかったので……印象的な自己紹介ができないというか……」
なんだよ、印象的な自己紹介って。ポーズでもキメるのか?
「……その、どうあれ質問よろしいでしょうか。先輩はその、おやすみでしたけど。」
そうだね。
「通路で眠る理由が、ちょっと。硬い床でないと眠れない性質なのですか?」
嫌過ぎるだろ、それ。体壊すぞ絶対。
「実はそうなんだ、畳じゃないと、ちょっと」
マシュ絶対畳に偏見持つよな?いやちゃんと知ってるのか?
「ジャパニーズカーペットですね。噂には聞いていました。なるほど……なるほど」
ほらやっぱりー。「まてよ、そこの寝てたアンタ。同郷だよな多分。畳に偏見持たせるのはやめてくれ。マシュさんも偏見やめてね。オレの故郷にも寝具はちゃんとあるよ」
「フォウ、キュフォーウ……」
あ、そういえば。
「……失念していました、貴方の紹介がまだでしたね。こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権生物です。私はフォウさんにここまで誘導され、お休み中の先輩を発見したのです」
誘導……ふむ。命を案じた感じはなかったし、なにか理由でもあるのかな、犬でも猫でも無いし、マシュの言うようにリス、とは思えないよなー。白くて紫でやたらもこもこしてて。
「またどこかへ行ってしまいました。あのように、特に法則性もなく散歩しています。」
「見たことのない動物だな……」
うん、わかる。なんなんだろう。
「はい。私以外にはあまり近寄らないのですが、先輩と室伏さんは気に入られたようです。おめでとうございます。カルデアでも3本の指にはいる、フォウのお世話係に就任ですね。」
それ、俺らだけってことじゃないか?
っ待て。マシュの後ろから、誰だ?
「あぁ、そこにいたのかマシュ。だめだぞ、断りもなしで移動するのは良くないと……おっと、先客が居たんだな。君は……そうか、今日から配属の新人さんと……室伏くん、だったかな?」
顔は何度か合わせたはずなのに、印象が薄いんだよな……認識阻害やらの気配は感じないんだが。確か名前は……
「私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の1人だ。新人くん、君の名前は?」
そういえば聞いていなかったな。日本人なのは間違いないだろうが。
「リツカ。藤丸立香です。」
「ふむ。藤丸くんと。召集された48人の適性者、その最後の1人と言うわけか。ようこそカルデアへ。歓迎するよ。」
見るからに一般人って顔というか表情だけど適性者なのか、これで。
「一般公募だったはずだけど、訓練期間はどのくらいだい?1年から3ヶ月まで幅はあるはずだし、知識の程度なんかは把握できると助かるのだけど」
「訓練?いえ、とくに。連れられてきたというか半分拉致みたいなもので。長期休みに予定もなかったので、泊まり込みでアルバイトみたいな話になって……」
半分どころか9割詐欺じゃないか。まぁ一般人ならどうせすぐに戻れるだろって考えれば結果的に見れば嘘でもない、のか?
「ほう?ということは全くの素人なのかい?……ああ、そういえば数合わせに採用した枠もあったな、確か。君はその1人だったか。申し訳ないね。配慮に欠けた質問だった」
謝意は見えない、がまぁ言葉だけでも謝罪するってのは大事だしな。別に文句言うほどでもないか。
「あぁ、でも安心して…‥とは言わないが、悲観はしないで欲しい。今回のミッションには君たち全員が必要なんだ」
数合わせ?衣食住を保証するのに減らすどころかむしろ増やす、しかも国家レベルじゃ済まない機密まみれのこのミッションで?
……おかしいだろ、
「魔術の名門から38人、才能ある一般人から10人。なんとか48人のマスター候補を集められた。これは喜ばしいことだ。この2015年において霊子ダイブが可能な適性者全てをカルデアに集められたのだから」
霊子ダイブの適性者、数合わせ……。
「何はともあれ、分からないことがあったら私やマシュ、そこに居る室伏くんに遠慮なく声を掛けて……ふむ、そういえばマシュ。君は彼等と、何を話していたんだい?らしくないな。以前から何か面識でも?」
…‥確かに、Aチームのメンバーと一緒に居るのは何度か目にしたが、話している様子はあまり見なかったな。
「いえ、先輩とは初対面です。この区画で熟睡していらしたので、つい。室伏さんとは何度か顔を合わせましたが、話したのは初めて、ですね」
「熟睡していた……?藤丸くんが、ここで?」
まぁ、そう言う反応になるよな。しかも相当深い眠りだったし。
「あぁ、さては入館時にシミュレートを受けたね?霊子ダイブは慣れていないと脳に来る。シミュレート後、表層意識の覚醒しないままゲートから解放され、ここまで歩いてきたんだろう。一種の夢遊状態だね。それで倒れたところに君達が居合わせた、と」
……入り口からここまで2分くらいあるよな?歩いてここまで来るの、ちょっと凄いな。
「とは言っても、異常はないし医務室に顔を出す程度で済ませて、と言いたいところではあるが……すまないね、その様子であればじき始まる所長の説明会に出席することを優先すべきだろう」
「……説明会?あぁ、自分みたいなのに対するオリエンテーションですね」
「はい。藤丸さんと同じく、本日付で配属されたマスター候補生の方達へのご挨拶です」
俺も一応対象者だしな。出たくなかったから抜け出して来たらこんなことになってるし、こりゃ回避とは行かない流れじゃん……
「ようは組織のボスから、浮ついた新人たちへの初めの挨拶ってヤツさ。所長は些細なミスも根に持つタイプだからね、遅刻でもしようものなら1年は睨まれるぞ」
まぁバレなきゃなー。一回あっちで顔も合わせてるし、抜け出したのは上手くやったと思ったんだけど。
「5分後には中央完成室で説明会が始まる。この通路をまっすぐ行けば良い。急ぎなさい」
送られ、はしなさそうだし藤丸には適当なこと言って抜け出せないかな……
「レフ教授。私も説明会への参加が許されるでしょうか」
「うん?まぁ、隅っこで立っているくらいなら大目に見てもらえるだろうが、君は何故だい?」
ちょっと雲行きが。
「先輩を管制室まで案内するべきだとおもったのです。途中でまた熟睡される可能性があるかと思いまして」
怪しいんじゃないか?
「君をひとりにすると所長に叱られるからなあ……結果的に私も同席する、ということか。まあ、マシュがそうしたいなら好きにしなさい。藤丸くんと室伏くんもそれでいいかな?」
「あー、俺お手洗いに行きたくて抜け出して来たんですよね。シミュレーションルームの方は良く使ってたんで分かるんですけど、こっちの分からなくて迷っちゃって。場所だけ教えてもらえたら後から行くんで、先に行ってもらっていいっすかね?」
頼むから通ってくれないかなー、面倒なのはちょっとなー。
「ふむ、まぁ良いだろう。私が来た方の通路に進んで、二つ目の角で右に曲がると見えるはずだよ。後5分だ。急ぎたまえよ?」
ひとまず、助かったか。
「ところで、なんで自分は先輩って呼ばれてるんですか」
……確かに。やっぱ知り合いとかなの?
「ああ、気にしないで。彼女にとって君くらいの、というか君らくらいの年頃の人間は皆先輩なのさ。ああでも、はっきりと口にするのは珍しい……というか、初めてじゃないかな」
「俺もちょっと気になるかも。良かったら教えて欲しいな」
「理由、ですか。その……難しいんですが、先輩は今まで最も、人間らしいので」
ふむ、それは。つまり?
「なんといいますか、全く脅威を感じないのです。ですから、敵対する理由が皆無です」
なんというかまた物騒だな。敵対とか。俺はまぁうん。良いけど。
「なるほど!そいつはまた重要だ!カルデアにいる人間は一癖も二癖もあるからね!私もマシュの意見には賛成だとも。立香くんとはなかなかに良い関係が築けそうだ」
俺はハブか?ハブなのか?
「そんな目してないで、椋。俺が友達になってあげるからさ」
立香……お前、良い奴だな……
「お前名前呼び、っつーかちょっと上からなのなんなんだよ……くっそもうなんでもいいや、よろしくな立香。」
「レフ教授が気にいるタイプ……つまり所長には嫌われるタイプですね。…………あの、このままトイレにこもって説明会をボイコットする、というのはどうでしょうか」
マシュさんあんたそれ俺がやるやつ
「ははは、それじゃますます嫌われてしまうだろう。ここは出たとこ勝負と行こうじゃないか。私たちはひと足先に虎口へ飛び込むとしよう。なに、慣れて仕舞えば愛嬌のある人さ。室伏くんも、もう残りは3分くらいだ。転ばないように焦らず、でも急いで来るんだよ。」
「はは、勿論。まさかボイコットだなんて。」
終わってしまえばこっちのもんだし50人近くもいるもんな。
「じゃ、またあとでな立香、マシュにレフ教授」
説明会後の再会が穏やかなものであることを祈りつつ、挨拶をしてひとまずお手洗いへ。別に用を足すわけではないが、ああ言った手前はな。
「ま、説明会が終わるまでは自室でゆっくりできるかなー。ファーストミッションみたいな話は昨日ないでも無かったが俺はAチームじゃないから対象外だし」
ま、ありがたき暇を謳歌する、か、な────
まずい、ロマニ・アーキマン!?
「あっ、君は確か……室伏くんだったか。君ずっと健康診断サボってるだろ。今日は別に良いけど、次回のレイシフトには間に合うように……って君!そういえば今、説明会じゃないのかい?逆方向だけどもしかして……」「待って下さいDr.ロマン!それを言うなら貴方も出席者名簿に名前があったはず、ここで俺を連れていけば貴方も同罪だ良いからここは2人で仲良くサボりの方があとあと丸いんじゃないですかそうに違いありませんよ」「……ま、いいか。どうせ挨拶程度のものだろうし、僕もサボってるのは同じだ。……何かの縁だろうし、僕は空き部屋で暇でも潰すつもりだったんだけど。君もくるかい?話し相手、欲しくてさ」
よしよしよしよし乗り切った俺の勝ちだ!これなら会話も多少は弾むだろう、正直印象薄かったけど見直したぞ。今後のためにもその話乗った!
「ええ、勿論。どうせやることもないですし」
ロマニとここで仲良くなっておけば、なんとか今後の健康診断もうまいとこやり過ごせる可能性が高くなるしな!