共に拓く、明日への道   作:単独行動 EX

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2話

 

 

 

と、そうして雑談に興じること30分程度。

 

「あ、そうそう椋くんはアレ知ってるかな、今回の集められた候補生の話……」

 

なんて話していると、シュー……と音を立て、突然部屋の扉が開く。

 

「はーい、入ってまーす……ってうえぇぇぇ!?誰だ君は!」

 

あ、立香じゃん。顔に手なんかあてて。

 

「や、さっきぶり。もしかして俺探しにきた?サボったのバレてる?」

 

「え、むしろなんでここに?オレの部屋って聞かされてここ来たんだけど……」

 

「ここは空き部屋だぞ、ボクのサボり場だぞ!誰のことわりがあって入ってく、る……あ、48人目の?」

 

おそらくその話をしようとしていたドクターは、その可能性に思い至り、果たしてそれは正解であった。

 

「椋はいいとして、いや良くないけど。あんたがそもそも何者というかそもそも椋もじゃん。あんたらなんでオレの部屋に居るの?」

 

空き部屋って話は……あ、なるほど。

 

「いやあ、初めまして藤丸立香くん。予期せぬ出会いだったけど、改めて自己紹介をしよう。ボクは医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン。みんなからはDr.ロマンと呼ばれている。理由はわからないが言いやすいし、君もそう呼んでくれて構わない」

 

「なるほど、つまり医療部門のトップともあろうお方が、サボり魔連れて空き部屋で駄弁ってた……と」

 

事実とはいえ人聞きが悪過ぎるな……

 

「あれ?もしかして君の足元から顔を覗かせているその子、噂の怪生物かい?マシュから聞いてはいたが、実在したとは……どれ、ちょっと手懐けてみるかな。……はい、お手。上手くできたらお菓子でもあげようか」

 

「……フォゥ」

 

これってどう見ても……

 

「呆れられてますね……」

 

「立香もそう思う?」

 

まぁ、うん。ああも分かりやすいとは……

 

「まぁとにかく、とにかくだ。その様子……というか片頬だけ赤くなった頬を摩っている様子と、それに至る可能性。ずばり、所長のカミナリでも受けて来たんだろ?」

 

あー、顔に手を、というか頬を摩ってたのか。おおかた居眠りだろ。

 

「ま、ボクも同類みたいなもんだしね。もうすぐレイシフトの実験が始まるのは知ってる?スタッフは総出で現場に駆り出されているんだけど、健康管理が仕事のボクとしてはやることもなくてね。機械の方がバイタルチェックなんかも正確だし。」

 

世知辛い世の中だな……こうやって機械に仕事を奪われていくのか。

 

「でも、そんな時に彼が来てくれてね。これ幸いと暇を潰していたところに現れたのが彼ってわけだ。君も同じぼっち同士、親交でも深めようじゃないか」

 

え、何俺がぼっちみたいな。

 

「や、そもそもオレぼっちじゃないですよ」

 

俺のことだよな。俺が目の前にいるのにマシュとか言われたら俺までちょっと悲しい気分になるぞ。

 

「な……来たばかりの新人なのにもう友人が居るなんて、なんてコミュ力なんだ!?あやかりたい!」

 

ダメ人間か?ダメ人間か。ここでサボってたし。

 

「あ、そういやドクター。立香にカルデアの話してやったら?良くわからんまま連れてこられたみたいな話してたし、多分わかってないだろ」

 

「はぁ!?何も分からん若い子南極まで連れて来たってのかい!?そりゃ適性の問題だし、何もなきゃ1ヶ月もせず帰れるはずだけどさぁ……」

 

俺はまたちょっと別口だけど、とはいえだよなぁ。

 

「じゃ、簡単に説明するとしようか。さっきも言ったし、来る時に聞いたと思うけど、ここカルデアは南極にある。その中でも、標高6000メートルの雪山の中に作られた地下工房、って奴でね。魔術的な防御と物理的な防御を兼ね備えるにはこれが1番ってね」

 

あれ、そういえばこいつって……

 

「魔、術?」

 

やっぱ立香、魔術には馴染みないよなー。

 

「いいよ立香、そこはまたちょっと別で説明する……っていうか知りたいか。知りたいよな。」

 

「え、いやその……信憑性に欠けると言うかそういう感じのバイトですかこれ」

 

「あー、シミュレートの内容覚えてる?」

 

 

「ってなわけで、ここでは割とカジュアルに魔術みたいなその……科学の範疇からは若干外れてると言えなくもない概念が使われるのを前提にして、それら(魔術)と科学のいいとこ取りをしてるのよ。そこに追加で過去の英霊たちから力を借りたりしつつ人理、つまりは人類を強く長く、あるいはより良く発展させていく働きを守っていこうね。みたいな……そんな感じ?」

 

魔術って何?の段階の人に説明するのって案外難しいんだな……

 

「うん、それで大体合ってるよ。椋くんもなかなかに詳しいね、訓練中の割に、良く勉強しているものだ」

 

これ以上詳しく説明しても理解出来るかから怪しいからなー……

 

「ありがと、椋。大体、理解はできた。納得というかその、実感は湧いてないけど」

 

「まぁ立香は完全に一般の出だしな。知ったからには……!みたいなのもないし、訓練の流れで実感して、ついでに身につけて。なんならバイトついでに魔術覚えて来ましたー、みたいなノリでいいよ」

 

俺も最初はそんな感じだったしなー。

 

「適性とかはあるけど、あんまり気にしなくて良いよ。1つあれば儲け物だし、適性の有無に関係なく扱えるものもある。椋くんはいいとこ取りって言ったけど、魔術も長いとこ研究されてるお陰でかなり体系化されてるし、科学みたいなものだから」

 

『ロマニ、あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれないか?Aチームは万全だが、Bチーム以下、慣れていない者に若干の変調が見られる』

 

流石だな、Aチームは。……まてBチーム以下って言った?サボってるのもしかしてバレてるかこれ。

 

『おそらく彼らの不調は不安からくるものだろう。コフィンの中はコクピット同然だ。』

 

「や、レフ。それは気の毒だ。ちょっと麻酔をかけにいこうか。」

 

『ああ、急いでくれ。今は医務室だろ?そこからなら2分で到着できるはずだ。』

 

「ここ、医務室じゃないですよね」

 

「立香の部屋でサボってたのが裏目ったねぇ、ドクター」

 

まぁ問題は、俺がこれからどうするかって話ではあるんですけれども。

 

「あわわ……それは言わないでくれ……ここからじゃどうあっても5分はかかるぞ……」

 

あ、そうだ良い事思いついた。

 

「レフ教授、ただいまドクターの手伝いをさせられていました室伏です。今ですね、ちょうどまさにその麻酔の準備をしてるんですよ。

コフィン用の麻酔がAチームの分に加えて予備があるくらいで、ファーストミッションに備えたい、って言われまして……」

 

「あぁ、居ないと思ったらロマニに捕まっていたか。君らが仲良くしていたとは知らなかったが、まぁ了解だ。なんにせよ、可能な限り急いでくれたまえ」

 

一旦よし、と。

 

「これで一旦時間は稼いだんで、ドクターのせいにしたのは許してくださいね。それじゃ医務室寄って、行きますよ」

 

「余罪増えたのは釈然としないけど、サボってたよりは軽いかなぁ……仕方ない、行くか!おしゃべりに付き合ってくれてありがとう、立香くん。落ち着いたら医務室に遊びに来てくれれば、美味しいケーキくらいならご馳走するとも」

 

「じゃ、俺らは管制室行くわ。立香、また暇な時遊びに来るよ。俺の部屋からも近いしなココ。」

 

そうして別れを告げていると、不意に視覚が奪われた。

 

「なんだ?明かりが消えるなんて、何か───」

 

 

《緊急事態発生、緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから退避してください。》

 

続いて轟音が響き、完成室から離れたこの部屋も揺れた。

 

「……爆弾か!?ドクター、大丈夫なの、これ!管制室、大事な機械とかあるんじゃないの!?」

 

「待ってくれ、ボクにだって把握できちゃいない!まずは管制室の様子だけでも!」

そう言って懐から出した端末を開き、管制室のカメラを選択するドクター。そこに映っていたものは。

 

「なんだ、これ────」

 

赤々と燃え広がり続ける炎に覆われる管制室であった。

 

「2人とも、すぐに避難してくれ。ボクは管制室に行く。もうじき隔壁が閉鎖するから、その前に君達だけでも外に出て!」

 

「待って、管制室……あの娘、マシュ!」

 

外、って言っても南極だしなー。熱くて死ぬか寒くて死ぬかなら変わんないか。

 

「立香、どうするよ。素直に外に出て生き延びるかそれとも……バカ正直に助けに行くか」

 

「勿論、助けに!」

 

そういう顔、してたもんな。1人より2人、2人より3人だ。

 

「おいなんでこっちに来てるんだよキミらは!方向が逆だ、第2ゲートは反対側だろ!ってまさかボクに付いてくる気!?言い争ってる時間も惜しい、ボクがマズいと判断したらすぐにでも逃げてもらうからな!」

 

それができるタマなら来てないとも思うが、それこそ時間の無駄だろうよ。

 

 

「……生存者は、いない。無事なのはカルデアスだけだ。」

 

幸い火の手は収まりつつある、立香くんと椋くんがこの場で死ぬことがなさそうなのは不幸中の幸い、か。

 

「人工的な破壊工作だ。爆発の起点はここで、間違いなく事故ではない。……椋くん、カルデアス以外に無事なものを探してくれるかい。立香くんは、椋くんの手伝いでも」

 

《動力部の停止を確認。発電量が不足しています。予備電源の切り替えに異常を確認。職員は手動で切り替えてください》

 

「あーもう!手動で切り替えようにも火の海だよ!椋くんなんとかできたりしない!?」

「生憎だけど俺は五大元素に適性がない!一応身を守るくらいならできるが、火に手を突っ込む覚悟はあるか!?」

 

《隔壁閉鎖まであと40秒。中央区画に残っている職員は速やかに───》

 

隔壁は良い、立香くんさえ無事なら訓練生の椋くんくらいは守れる、あとからこじ開けるでもなんとかなる!

 

「こうなったら仕方ない!椋くんは訓練も受けてる、多少は残っても大丈夫だろう、でも立香くんは来た道を戻れ!寄り道はするな、外部からの救助を待て!」

 

《システム レイシフト最終段階へ移行 座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木》

 

待て、まさか……さっき進行中だったレイシフトが、動いてる?

 

《ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠 確保。》

 

《アンサモンプログラム セット。マスターは最終調整に入ってください》

 

「立香、走れ!巻き込まれるぞ!」

 

「……っ、うん。ごめん椋!助けに来る、絶対!」

 

行ってくれた、か。それじゃ椋くんに手伝ってもらってとりあえず電源を切り替えることからだ。

 

 

 

それが見えたのは、偶然だったのだろう。

 

 

「……………………、あ」

 

見えた時には、駆け寄っていた。

 

「……しっかり、今助ける……っ!」

 

助かるか否かは定かではない。自分の命も危うい状況で、今日会って、10と数分話したかどうかの他人に過ぎない人物。

 

「……いい、です……助かりません、から。それより、はやく、逃げないと」

 

《観測スタッフへ警告。カルデアスの状態が変化しました。シバによる近未来観測データの書き換えを実行。近未来100年間の未来において、人類の痕跡は 発見 できません。》

 

「カルデアスが……真っ赤に、なっちゃいました……いえ、そんな、こと、より───」

 

カルデアスがどうとか、未来の話はわからない、わからない、けど……!

 

「でも、今助けなきゃ!君が助かる可能性まで、捨てるつもりは!」

 

《中央隔壁 封鎖します。館内洗浄開始まで あと 180秒です。》

 

「隔壁、しまっちゃいました。……もう、外に、は」

 

《コフィン内マスターのバイタル 基準値に 達していません。 レイシフト 定員に 達していません。 該当マスターを検索中・・・・発見しました。適応番号48 藤丸立香 を マスターとして 追加設定 します。》

 

アナウンスだって今はどうでも良い。ドクターだって椋くんがなんとかしてくれるんだろう。今は何より、この娘を……!

 

《アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始 します。》

 

「手を、握ってもらって、良いですか。」

 

「それで君の心が、少しでも楽になるのなら……!」

 

手を伸ばし、掴む。

 

《全工程 完了。 ファーストオーダー 実証を 開始します。》

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