共に拓く、明日への道 作:単独行動 EX
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「───以上です。私たちはレイシフトに巻き込まれ、ここ冬木に転移してしまいました。他に転移したマスター適性者は居ません。所長たちがこちらで合流できた初めての人間です」
なるほど……いや、むしろ奇跡なんだろうな。
「でも希望が見えました。所長達がいらっしゃるのなら、他に転移が成功している適性者も……」
「いないわよ。それはここまでで確認しているわ。認めたくないけど、どうして私とこいつ、そして貴方達がこうしてシフトしたのか分かったわ」
……ふむ。そもそも俺はコフィンに入っていないわけだし、レイシフトするとは思っていなかったわけだが。
「生き残った理由に説明が付くのですか?」
「消去法、いえ……共通項ね。私も含めてこの場に居る全員、コフィンに入っていなかったことよ。生身のままではレイシフトの成功率は大きく下がるものの、ゼロにはならない。一方、コフィンにはセーフティがかかっている。シフトの成功率が95%を下回った場合中止されることになっているのよ」
……なるほど。レイシフト先が少しばかり過去とはいえ、現代日本であったことが幸いしたんだな。俺と立香の存在証明も、ある程度されやすかっただろう。
「だから彼等はレイシフトの可否でなくそのものを行なっておらずここに居るのは私たちだけよ」
その理論だとドクターもシフトしているハズなんだが……システムに登録されていなかった、のか?それならまぁ納得は行くが、逆に所長は登録されていたんだな。
「なるほど……さすがです所長」
「落ち着けば頼りになる人なんですね」
立香それは思っても言わなかったことを……
「それどういう意味!?普段は頼りにならないって言いたいわけ!?」
「まーまー所長、立香は今日来たばっかだし、今日は色々あったばっかですし。取り敢えず所長の指示に従うから、方針をこれ、とひとつ決めてくれませんかね」
「指示に従うのは当然でしょう!?……まずはベースキャンプの作成ね。こういう時は霊脈のターミナル、魔力の収束する点を探すのよ。そこならカルデアとも連絡が取れるハズだから、この街の場合は───」
「このポイントです、所長。レイポイントは所長の足元であると報告します。」
「ま、所長抱えて跳び回ってたのも霊脈探しだからな。言ってなかったっけ?」
「───そ、そうね。分かってる、分かってたわよ言われてないけどね!報連相はちゃんとしなさいよね。」
「マシュ、貴方の盾を地面に置きなさい。宝具を触媒にして召喚サークルを設置するわ。」
英霊の召喚、か。英霊召喚、英霊召喚……あ、ちょっと思い出してきた。普段なら触媒ありきでも成功率は低いハズだけど大丈夫なのかな?
「……だ、そうです。構いませんか?先輩」
飽くまでマシュはマスターである立香の方針に従うってコトかな?
「いいよ、大丈夫。武器を手放すのは怖いけど、一応さっきの倍は人数居るしね。」
「了解。召喚陣、敷設します!」
「もしもーし、もしもーし!お、繋がったみたいだね。2人とも、お疲れ様。これで通信もできるようになったし、霊脈を介して補給物資もいくらかは確保できるハズだ」
魔力を介して補給、なるほど。……2人?
「はあ!?なんで貴方が仕切っているのロマニ!レフは?レフはどこ?レフを出しなさい!」
「所長!……所長!?生きていらしたんですか!?あの爆発の中で!?しかも無傷って、どんだけ!?」
「どんだけ何よ!?いいからレフは!?医療セクションのトップがいる席じゃないでしょ、そこは!」
あの部屋にレフ教授もいたのか。……オルガマリーはここに居るから生きていたとして、あちらのロマニが言わない、俺たちも見ていない。それなら……
「でも他に人材がいないんですよ、オルガマリー。ボクが作戦指揮を執っているのは、ボクより上の階級の生存者がいないためです。レフ教授は管制室でレイシフトの指揮を執っていた。あの爆発の中心にいた以上、生存は絶望的だ。むしろ、何故キミがそこに居るのか、が気になっている程ですよ」
まぁ、そうだよな……数分話した程度とはいえ、知り合いの命が失われたって話は気分のいいものじゃないな。
「そんな──レフが……?いえ、それより待って、待ちなさい、待ってよね。生き残ったのが20人に満たない!?ならマスター適性者は!?コフィンはどうなったの!?」
「46人、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何名かは助かったとしても、全員は───」
生きてはいても、か。
「ふざけないで、すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生方法は後回し、死なせないのが最優先よ!」
「ああ、そうか!コフィンにはその機能がありました!至急手配します!」
「……驚きました。凍結保存を本人の許諾なく行うことは犯罪行為です。なのに即座に決断するとは。所長として責任を負うことより、人命を優先したのですね。」
責任の問題はいい、問題は現状だ。この先について考えなければいけない。……そもそもの特異点Fとはなんなんだ。なぜAチームはここに来る必要があった?冬木、冬木……絶対に知っているワードだ。レイシフトで欠落した記憶の中にはあったんだろう、惜しいな。
「───ということで、現在のカルデアは機能の八割を失っています、残されたスタッフにできることは限られています。こちらの判断で人材はレイシフト機能の修復、カルデアスとシバの維持に割いています。外部との通信が戻り次第、補給を要請して全体の立て直しを、という状況ですね。」
所長よりドクターの方がギャップ凄いな……サボってたアレと同一人物か怪しいよ。
「結構。私がそちらにいても同じ方針を取ったでしょう。ロマニ・アーキマン、納得はいかないけれど、わたしが戻るまでの間、カルデアを任せます。レイシフトの修理を最優先で行いなさい。わたしたちはこちらでこの街、特異点Fの調査を続行します」
それしかない、って奴なんだろう。
「うぇ!?そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか!?チキンのクセに!?」
立香もドクターも、似た者同士だな……
「……ほんっとう、一言多いわね貴方達は。今すぐ戻りたいのはその通りだけど、レイシフトの修理に時間がかかるのは分かっているし、居るのは低級のものばかり。デミとはいえサーヴァントになったマシュがいる以上無理に戻るより安全という判断よ。事故というトラブルは起きてしまったものとして、与えられた状況でベストを尽くすのはアニムスフィアの名を継ぐものとして当然です。これより、藤丸立香、マシュ・キリエライト、室伏椋の3名を探索員として特異点Fの調査を開始します。」
……本当に落ち着いていれば、だな。
「解析、排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでから。理由は当然、現状マシュはデミサーヴァント化の直後で立香は当然マスターとしての訓練すら受けていない、そしてこの室伏も何かしら問題は抱えていそう……まぁよく分かっていないんだけれども。とはいえ、それでいいわね?」
ちゃんと適切な判断はしているし、俺の不調というか不具合も見抜いている。信頼しても問題ないかな。
「これからはある程度通信も可能です。緊急時には遠慮なく通信を……所長?」
「───いえ、なんでもないわ。そろそろ切って、修理に戻りなさい。私たちが戻るにはそちらの修理が最優先なのよ」
それは、そうだが。
「……所長、よろしいのですか?ここで救助を待つという案もあったと思うのですが。」
「そういうわけにも行かないでしょう。……カルデアに戻っても、次のチーム選抜にどれほどの時間がかかるか。人材集めも資金繰りも短期間じゃ足りないわ。その間、魔術協会からの抗議がどれほどのものになるか。最悪カルデアが 持っていかれる ことすら考えられるわ。そんなことになったら破滅よ。手ぶらでは帰れない。連中を黙らせる成果がなければ、帰るわけにはいかないのよ。」
……人材集め、人材集め?待てよレフ教授の発言を思い出せ。
アイツは───
「とにかく!この街を探索しましょう。この狂った歴史の原因が何処かにはあるハズよ!」
特異点、ってのがあんまよく分かってないけど、少なくともこの家事の原因を探すくらいの気持ちで良いのかな。……あ、そういえば。
「探索行く前に、英霊の召喚しないんですか?せっかく召喚陣作ったのに。」
「……ロマニからの報告で気が動転していたわ。ええ、そうね。」
英霊召喚、か。仕組みがよく分かっていないのだけれど。
「よくわかっていない、という顔ね。いいわ。説明してあげる。カルデアにおける召喚システム、私達はフェイト、と呼んでいるけれど。これはマシュが今持っている盾……すなわちアーサー王伝説における円卓の騎士が集まる円卓ね。コレを触媒にして、英霊を召喚する、というものよ。」
英霊……は、わかる。英雄だったり神様だったり、そう言った歴史に名を残したもの、くらいの認識だけど多分大丈夫。
「でも所長、それだと円卓にまつわる英霊しか来ないんじゃないですか?」
確かに。
円卓を触媒としている……つまり、円卓と縁がないといけないってことか?
「良いところに目を付けたわね。素人にしては良い視点よ、藤丸。」
あ、聞いて欲しかったところみたい。
「いい?円卓というのは、そもそもの概念……定義からして、“円卓の騎士が集まる場所”なのよ。それを、“英雄の集まる場所”として拡大解釈し、定義し直すことで幅広い英霊の召喚を可能にしている、というわけ」
なるほど、定義を利用して概念魔術の糧にしている、みたいな話か。
やけに理解しやすいし……カルデアの訓練でも魔術は使っていたのは覚えているし、カルデアに来る以前は、魔術師とかだったんだろうか。
「というわけで、貴方には今から英霊を召喚してもらうわ、藤丸。とは言っても貴方はそもそもが素人だし、マシュも居るから必ずしも成長しなくても大丈夫よ。増やせるなら戦力は増やしましょう、程度ね」
へー……立香が終わったら、俺もやってみようかな。
「わかったんですけど、魔術ってどうやったら良いのか……」
「……そうだったわね。いいわ、魔術を流すのはマシュが貴方の身体を介して代わりに行って。普通ならできないけれど、ずぶの素人なら抵抗もできないハズだし、サーヴァントとマスターという関係なら上手く行くかもしれません」
「それでできるなら、それで良いですよ。」
……他人が体外から血液の流れをコントロールするようなもんじゃないか?あー、Aチームは伊達じゃないってか?
「先輩は、それで良いのですか?私がもし、先輩の魔術回路を害してしまうようなことがあるとは思わないのでしょうか……」
「まぁ、この命も拾ったようなものだし。そもそもマシュはそんなことしないでしょ?」
「その信頼は、喜んで良いのかちょっと分かりませんね……そ、それではマスター、肩に触れさせていただきますね。早速始めましょう」
……これ、結局魔術の行使はマシュなのか?立香なのか?
「やるならなんだって良いわ。藤丸、円卓の前に立ちなさい。マシュは藤丸に触れたままを維持して」
「こう、でしょうか……」
や、普通に嫉妬とかではないんですけど。
隅におけないな、って奴?
「それでいいわ。そうしたら藤丸、私の後に続きなさい。詠唱を行うわよ。マシュはそれに合わせて魔力を回しなさい」
立香とマシュの前に置かれた盾を中心に、大きく魔法陣が広がる。マシュが魔力を回し始めたのだろう。
「始めるわよ。右手を前に突き出しなさい。……そう、令呪───手の甲にあるその赤い模様に意識を向けなさい。」
「は、はい……!」
「力入れ過ぎんなよ、立香〜」
がっちがちになってら。そりゃ初めての魔術なんて、緊張もするよなー。常識の外の物事だろうし。
「汝の身は我が下に」 「汝の身は我が下に」
「我が命運は汝の剣に」 「我が命運は汝の剣に」
「聖杯の寄る辺に従い、」 「聖杯の寄る辺に従い、」
「この意、この理に従うならば応えよ」 「この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いをここに」 「誓いをここに」
「我は常世総ての善となる者」 「我は常世総ての善となる者」
「我はこの世総ての悪を敷く者」 「我はこの世総ての悪を敷く者」
「汝三大の言霊を纏う七天」 「汝、三大の言霊を纏う七天」
「抑止の輪より来れ」 「抑止の輪より来れ」
「天秤の守り手よ」 「天秤の、守り手よ───」
紡がれるそれは、奇跡を引き摺り出す言葉。
人理に刻まれし武勇を、叡智を求めて紡ぐ詠唱。
───フェイトシステム。人理保障機関フィニス・カルデアが作り出した、英霊召喚の秘蹟である。
「……なんて、仰々しい感じではあったけど」
「失敗、かな?」
「気にしないでください先輩。ここは特異点ですし、人理へのアクセスがしづらく、英霊の召喚自体が難しい可能性もありますし、そもそもカルデアの研究室ですら失敗続きだったのですから。」
失敗、失敗か。魔術なんて素人だし、全然ありうることだよな……
「本当に気にしなくても良いわよ、藤丸。素人に期待する程馬鹿じゃないわ。それになにより、うちにはマシュが居るんだから」
「……まぁ、そんなもんですよね。ええ、気にしてもしょうがないですし、自分の足で情報は稼ぎますよ!」
それでいい、それで良いさ。
「それでなんだけど……俺も試して良いかな。立香が既に令呪を持っているのと違ってマスターとして認められてはいないから、応えてくれるかは分からないけど。」
「別に良いわよ、室伏。マシュと立香も、いいわね?」
お、お許しが出たな。
「椋、なんかこう、頑張ってな。失敗した奴が言うのもアレだけど」
「室伏さんもマスターになっていただければ先輩の安全性も高まりますし、試してみる価値はありますよね!よろしくお願いします!」
……よし。
───魔力を流しても、魔法陣は出ない。
その時点でわかっていることではあるが、やるだけタダだ。
「汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いをここに。我は常世総ての善となる者。我はこの世総ての悪を敷く者。汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来れ。天秤の、守り手よ───」
詠唱を終えた瞬間、莫大な量の魔法陣が触媒になった盾から溢れ出し───
晴れた視界には、何も映らなかった。
失敗、か……?
「椋、大丈夫か!?椋!」
いや違う、コレ……は────
別に毎日投稿のつもりはなかったんですけど、間に合わなかったのちょっと悔しいですね