共に拓く、明日への道 作:単独行動 EX
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「何処まで行っても焼け野原……住人の痕跡もないし、一体何があったのかしら……いえ、そもそもカルデアスを灰色にする異変って何なのよ……未来が見えない、ひいては人類は存在しない未来であるということ。───前提を変えなさい。特異点では抑止力が働かないとしたら?そう考えれば、やっぱりボルトのような物なのね。人類史に点在する致命的な滅亡の選択。それを悪い方に間違えちゃったのがこの結果、だなんて……」
独り言を聞いているようで申し訳ないが、落ち着いているとちゃんと有能なのかもしれないな……明確な理由こそ分からないのは変わらないけど、多分所長自身の持つ知識と符号したのだろう。現状の整理ができている、というだけでも現地調査員としては十分だろ。マスター適性が無くても、こうやって現地で動くには十分な能力があるように見える。
「おや、所長の独り言が始まったね。そうなると彼女は長いよ。立香くん、椋くん。辺りに敵性反応は相変わらず無いし、少しは休んだらどうだい?」
休めるのはありがたいけど、こうも敵がいないものだろうか。俺自身所長を抱えて飛び回った感覚的にはもう3〜4戦してもおかしく無いくらいには移動してるんだけども。
「ドクターに賛成です。おふたり、レーション食べますか?」
「うん、貰おうかな。ありがとねマシュ。椋も食べときな?多分1番動き回ってたでしょ」
気遣いのできるヤツめ。
「もちろん。ありがとな、マシュ。立香も大変だろ、主に精神面というか心というか。とんだ巻き込まれ体質だこって……」
「いやいや、オレは後ろで喋ってたくらいだし。それより、マシュは身体とか疲れとか大丈夫?」
「体、疲れ……もしかして、サーヴァントになって問題はないのか、という質問ですか?───それは、なんとか。戦うことが怖いくらいで,体は万全です」
そういえば、そもそもマシュは無事だったんだな。あの部屋に生き残りがいたとは思わなかった。
「というか。自分がマスターで良いのか?」
それこの流れで聞くんだ……
「もちろんです。わたしに不満はありません。先輩はこのカルデアにおいてNo.1のベストマスターではないかと。」
めっちゃ高評価、って思ったけど立香と俺以外は生死すら怪しいんだったな……
「───休憩はそこまで、周囲に敵性反応!すぐに逃げてくれ!所長も反省会とか諸々一旦中断!サーヴァント反応だ、君たちにサーヴァント戦はまだ早い!」
サーヴァント……混ざり物じゃない、純粋なサーヴァント。
「マシュ、戦いなさい!同じサーヴァントよ、なんとかなるでしょう!?」
「………はい。最善を尽くします……!」
同じでもなんでもない、けど。
「無理するな、なんて言える状況じゃない。無理しなきゃいけない場面だ。俺は所長を守るから、立香を守ることと敵サーヴァントへの対応だけ頼むよ」
「っ、はい!」
「所長、したら俺から離れんでくださいね。立香はマシュと一緒に戦ってやってくれ」
「もちろん。所長のこと、よろしくね」
「アンタはまぁ、一応信頼できるわね……えぇ、それで良いわ」
任せてくれるなら何よりだ。じゃ、任せますかね。
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「えーっと、右斜め前の方から足音!椋が後ろにいる以上、骸骨兵とかが来ても気にせず、サーヴァント反応にだけ注意しよう」
とはいったものの、盾は良くも悪くも視界を遮る。オレからの視点も含めて、情報は多いに越したことがない。気付いたことは伝えていこう。
「先輩!敵、確認できましたがその……モヤのような物がかかっていて、輪郭が掴めません!」
オレから見てもそう、ってことはあのサーヴァントはそういうものとして戦うしかない。マシュには苦労を掛けるけど、少しでもオレからの情報でサポートしないと……!
「マシュ!キミから見ても分かる通り、敵は鞭のようなものを持ってる!見る限りでは遠距離攻撃はしてこないと思うけど、注意は最低限で大丈夫。後ろは気にせず、敵をしっかり見てね!」
「はい!戦闘開始します!」
敵サーヴァントは未だ仕掛けてくる様子もない。互いに見合っているなら、身を守る手段が明確にあるこちらから打って出るのは悪い手ではないはず。
「盾で身を守りながら接近、そのまま右側から当身で体制を崩して!」
「……っ。右から、はい!」
相手が鞭を持っているのは右手。それもリーチはそう長くないし、左側から仕掛ければ大盾で身を守っているこちらが有利なはず。
「ハァアアアっ!これで、倒れて……ッ!」
よし、体勢を崩した!反撃しようとしているけど、盾で無理矢理なら!
「いいぞ、そのまま!盾の重みとその勢いで圧し潰しちゃって!」
「はい!このまま……押し切ります!!!」
「…………」
何か今、こちらを見て───
「ハァ───ハ、ァ……勝てた、絶対に無理だと思ったのに、勝てた───」
マシュは本当に凄い、それは間違いないんだが、このまま勝ってしまって良かったのだろうか……
「マシュ、お疲れ様と言いたいんだが、申し訳ないが、休んでいる場合じゃなさそうだ。今の反応と同じものがそちらに向かっている。……どうするべきか、言わなくても分かるね?」
敵性サーヴァント反応……!?
「え───同じ反応って、そんな───」
「夜!椋!撤退よ!急ぎなさい!とにかくここから離れるの!マシュは夜を、椋は私を抱えなさい。人の足じゃあ逃げ切れないわ!」
「マシュと夜の戦闘もひとまずは問題無さそうだし、体勢さえ立て直せるなら十分そうだ!俺も別に人ではあるんで人外みたいな扱いやめてくださいね!パワハラ反対ですよ!」
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「ハァ、ハァ、ハ───ああもう、どういう事よ!?なんでサーヴァントがいるの!?」
サーヴァントが居る理由、サーヴァントの本来の用途……?
「そうか……聖杯戦争だ!その街では聖杯戦争が行われていた!マスターのいないサーヴァントが居ても不思議じゃない。そもそも、サーヴァントの敵はサーヴァントだ!」
「マシュは聖杯とは無関係でしょう!?それに、アレはただの理性を無くした亡霊よ!」
理性を無くした。本当に、そうか?
「サーヴァント反応確認!おそらく、アサシンのサーヴァントだ!」
さっきのに続いて、次はアサシンか……後ろから見ていたからこそはっきりと分かる。あのサーヴァントは味方でこそなかったが敵対はしていなかった。意思の疎通ができない以上倒すに越したことはないけどな。
「応戦します!先輩、わたしを使ってください……!椋さんは引き続き、所長をお願いします!」
もちろん、と返すより早く駆け出すマシュを見て、俺は危うさを感じてしまった。おそらく責任によるものだろうが、何処か向こう見ずに見えてしまう。
「所長は任せろ、マシュについてやれ立香!気負ってるぞ、相当!」
アサシンと見られるサーヴァントへと駆け出し、先程同様に盾で身を隠しながら接近し、叩き付けようとしている。
「ハァ───これで、どうだっ……!」
「────ドウ モ 何モ、話ニナラン。コレデハ 私一人デ 十分ダッタカ」
二人目……奇襲!?
「そんな……一体でも厳しいというのに、増援だなんて!」
所長も嘆いているが、正直同意見だ。所長の護衛を放棄すればなんとかはなるだろうが、所長を死なせるのは前提からして無しだ。
「───ハ。ハハハハハハハハハハハハハ!」
アサシンの後ろから聞こえるこの笑い声、2騎目か。……流石に厳しいな。
「霊基はおそらくランサーのものだ、椋くん、最悪所長を守るより優先する必要があるかもだ。マシュの盾を貫かれる訳にはいかない、それだけは避けてくれ……!」
くそ、やっぱり呑まれている……なんて言葉を漏らすドクターを横目に、マシュの様子を見る。防戦一方だが、問題なく耐えることはできている。ランサー霊基のアイツはまだ向かってくる様子はないが、どちらにせよジリ貧って奴だろう。
「立香、どうする!方針を決めるならお前だ、この場で唯一のマスター!」
所長は正直あてにならん、焦りがどうしたって先に出る!
「この場は、逃げるしか……!マシュ、ここは一旦立て直しを!」
「面白イ!面白イ!面白イ───殺シタイ!逃ゲル背中ホド美シイ!」
ランサーは背中の槍を握って……まさか。
「く、つぁ……」
槍を、投げやがった……ランサーとは言え飛び道具も使って来るのか。
当たってはいない、と言うよりあえて掠めるように投げたんだな……とはいえ、サーヴァントの投げる槍を受ける弾くなんてそう簡単にできたら苦労は……
「モット、モット ダ!逃ゲテ 見ロ!マダマダ ナ、ゲ───」
不自然に途切れた言葉に疑問を持ち、マシュから視線を離してランサーを見た、が……なんだ?鉄の棒、じゃない。赤い柄の両刃の獲物が何本か、ランサーの心臓を背中から貫いていた。
「何者、ダ………!?」
「何、って見ればわかんだろご同輩。なんだ、泥に呑まれて目玉まで腐ったか?」
誰だ?青い髪に赤い眼、フード付きのローブに木の杖。こちらに害意があるようには見えないが、彼もサーヴァントなのか?
少なくとも、所長の後ろから現れたように見えたから、所長が無事なことを見れば敵ではなさそうだが……
「貴様、キャスター!ナゼ 漂流者ノ 肩ヲ持ツ!?」
息も絶え絶え、死に掛けのランサーに代わり、アサシンが問い掛ける。
「そら、構えなそこのお嬢ちゃん、腕前じゃあアンタはヤツに劣ったもんじゃねぇ。気を張ればなんとかなるさ。……魔力のパスは、っと。あー、マスターはそっちか。じゃ、指示は任せるぜ、坊主」
「アンタは一体何者なんだ、信頼して良いのか?」
「椋、良いよ。どうせこのままなら勝ち目もないからさ」
つっても知らない相手だ、信用できない相手が戦場にいるってのも……
「敵の敵は味方って訳じゃないが、今は信用してもらっていい。信頼しろとは言わないさ。その意識は大事にしろよ、後ろの。」
……まぁ、それなら。
「立香、頼む!」
「……わかった、よろしく、キャスター!」
「おう!オレの真名はクー・フーリン。改めて頼むぜ、マスター!」
◆
頼む、なんて言われてもオレはどうすれば良いのかもわからない。というかそもそも、クー・フーリンは何ができるんだ?そもそも槍使いか何かじゃなかったっけか!?
「マシュ、申し訳ないけどまずは耐えて!その間に何をするか決める!クー・フーリン、貴方は一体、何ができる?」
どうにか打開できるようなものなら良いんだけど。椋みたいに自分が動く訳にはいかないけど、それでもマスターとしてできること、最低限指示くらいは出せないと。
「オレはアレだ、生贄の儀式に準えた炎の人形を操る、ってのが宝具だよ。それ以外はルーン魔術……そうだな、簡単に言えば古臭い魔術を扱える、そんくらいさ」
「その炎の人形、どれくらいの大きさ?敵を両方巻き込むとか、できる?」
マシュに耐えてもらえれば、なんとかなるかもしれない。
「あぁ、任せな。がっかりさせるつもりは無いぜ。じゃ、オレは準備が出来次第、宝具解放でいいか?」
マシュに重荷を背負わせるのは気が引けるけど、1番間違いないのはこれだ……!
「マシュ、もう少しだけ耐えて!ランサーはまだ起き上がる様子もないし、アサシンだけに集中して大丈夫!」
「ああは言ったがよ、そう待たせるつもりもねぇさ。せいぜいが泥に飲まれたサーヴァントの影もどき。本来の威力だって必要ないさ」
となれば───
「マシュ!ライダーの時と同じ要領で、隙だけ作って少しでも離脱!」
「おう、それで良い───焼き尽くせ、木々の巨人。炎の檻となりて、人の業を災厄とともに灰と化せ!『灼き尽くす炎の檻』ッ!」
マシュが退がったことを確認した事を確認したクー・フーリンが視線を遣ると、地面から燃え盛る巨人が起き上がる。火に包まれたこの冬木にあってなお、別格の熱量を持つ炎の檻。大きな足を上げ、体勢を立て直さんとするアサシンを踏み潰した。
「終わっ、た……?」
「そうみたい。お疲れ、マシュ。耐えてくれてありがとう、お陰で乗り切れたよ」
マシュが体勢を崩してくれていなかったらクー・フーリンの宝具がちゃんと当たっていたかも怪しいし、ね。
「おう、おつかれさん。この程度貸しにもならねぇ、気にすんな」
正直本当に助かった、オレの指揮には限界があるし、マシュだけだと耐えられても倒す手段が足りないように思う。
「それにしても嬢ちゃんは何のクラスなんだ?その頑丈さからして……セイバー、か?いや剣を持ってねぇから違うのか……」
オレが未熟なばっかりに、それが把握できてないっていうのはなんとも恥ずかしいことだ。
「……ちょっと、室伏に藤丸。アレ、実際どうなのよ。信じていいわけ?」
信じて良いと思うけど。こちらと戦う気ならもうとっくに殺されているだろうし。
「今んとこは良いんじゃないですかね、立香も大丈夫そうなんでしょ?あとはアレよ。所長の後ろから来たのに所長が無事な時点でこっちに手を出す気はないんじゃない?」
「そういえばそうじゃない!私のことちゃんと守っておきなさいよ。次同じようなことがあったらタダじゃおかないから」
……ドクターの感知にも引っ掛からなかった、ってこと……?
「取り敢えず話を聞こう、どうやら彼はまともな英雄のようだ」
「お、話の早いヤツがいるじゃねぇか。なんだ、ソイツは魔術での連絡手段か?ルーンの系譜、じゃねぇな。」
まぁ魔術じゃないからね。……ん、ちょっと違和感。
「はじめましてキャスターのサーヴァント。御身がどこの英霊かは存じませんが、我々は尊敬と畏怖を以て───」
「ああ、そういう挨拶だの前口上だのは結構、聞き飽きた。手っ取り早く要件だけ話せよ軟弱男。そういうの得意だろ?」
軟弱……
「うっ……そ、そうですか……では早速……軟弱男とか、また初対面でこんな……」