共に拓く、明日への道 作:単独行動 EX
お待たせいたしました。
■
「以上が我々、カルデアの事情です。現在は立香がマスターとして現地調査を行っています。確認しますが、貴方はこの街で起きた聖杯戦争のサーヴァントであり、唯一の生存者なのですね?」
「負けてない、と言う意味ならな。オレたちの聖杯戦争はいつの間にか違うモノにすり替わっていた。経緯はオレにも分からねぇ。街は一夜で炎に覆われ、人間は居なくなり、残ったのはサーヴァントだけだった。真っ先に聖杯戦争を再開したのはセイバーのヤツだな。奴さん、水を得た魚みてえに暴れ出してよ」
セイバー……まだ見てないな。
「セイバーの手でアーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカー、アサシンが倒された」
1人で5騎をも倒した、ってのか……先のウィッカーマンで実感したが、サーヴァントは知識以上に人間離れしてるんだよな。こう話してると同じような人間に思えるけど、扱う力の土台が俺たちとは違う、ってのをひしひしと感じるよ。
「7騎のサーヴァントによるサバイバル……それがこの街で起きた聖杯戦争のルールだったわね」
「キャスターであるクー・フーリンさんはその中で勝ち残った……いえ、生き残ったサーヴァントというわけですね」
所長とマシュが確認をとってくれているが、敵意は感じないから信用もある程度して良いとは思う。聖杯から与えられる知識もあるはずだし、現代の通信に馴染みがないってのは違和感ではあるが、だから何という話もない。
「ああ。そしてセイバーに倒されたサーヴァントはさっきの二人よろしく、真っ黒い泥に汚染された。連中はボウフラみてぇに湧いてきやがった怪物どもと一緒に何かを探し始めやがったんだ。厄介なのは探し物の中にはオレも含まれてるってトコだぁな。オレを仕留めない限り、聖杯戦争は終わらない。余程叶えたい願いでもあるんだろうよ」
セイバー陣営の探し物、か。キャスター……クー・フーリン以外に何か探すようなものがあるか?
「ふむ。残ったサーヴァントはセイバーと貴方だけ。ではあなたがセイバーを倒せば聖杯戦争は終わる、と?」
ロマニが確認を取るが、それはそうなのだろう。現状の謎である、アサシンやランサーを汚染したという泥の正体に関して何もわかっていないまま、聖杯戦争を次の段階に進めてしまっていいのか、という点は不明瞭だが、それ以外に思い付くことが特にないというのはあるからな……
「なんだ。わたしたちを助けてくれたとはいえ、結局は自分のためだったのね。貴方はセイバーを倒したいけど、最優とも評されるセイバーを倒すには戦力が心もとないから如何にも困っていそうなわたしたちに目を付けた……違って?」
「ああ、その通りだ。その通りだが別に、悪い話じゃアねぇだろう。こっちとしちゃ、セイバーの大質量攻撃さえなんとかなるなら骸骨兵は宝具でどうせ一掃だし、セイバーだって一方的に殴られるんじゃなきゃ戦いにはなる。その点どうにかできそうな盾の嬢ちゃんが居りゃ、攻略の道筋もいくらかは見えるってもんだろ。利害は一致してるんだ、お互い容器に手を組むってわけにはいかんかね?」
現状疑う理由は無い……というか、こちらとしても手詰まりだ。口振りからするに、セイバーと戦ったことはあるだろうというのもそうだし、情報が無さ過ぎる現状で特異点を解決するには難がある、という問題はあまりにも大きい。
「……それが合理的な判断だけど、その場合、貴方のマスターは誰が務めることになるの?」
俺か立香、になるのか?
「個人的には椋にも興味が無いわけじゃないが、盾の嬢ちゃんと契約元を同じにした方が指揮の管理もしやすいんでな。戦略的な面から立香のがやりやすいだろ、って話だ。あとはまぁ、アンタにマスター適性がないってのもある。……いやホントに珍しいな。魔術回路の量も質も一流なのに、マスター適性だけ無いなんて何かの呪いにでもかかったのか?」
サーヴァントから見ても一流の魔術回路か……そりゃプレッシャーにも拍車がかかるよな。結果にも期待されて、生まれ持ったもので勝手にハードルが上がるってのは、流石に苦しいものがある。
「うるさいわね、どうでもいいでしょうそんなコト。こっちだってこういうデリカシーの無い英霊との契約は願い下げよ。立香、そいつの扱いは任せるわ、上手く使ってやりなさい」
俺は所長を守ってやらなきゃいけないのもあるし、な。一流の魔術回路で自衛くらいしてくれないかって思ったけど、テンパったときの所長を考えるとそうも言ってられないな。
「じゃ、決まりだな。セイバーを倒すまでの契約だが、よろしく頼むぜ立香。じゃ、早速目的の確認と行こう。アンタらが捜してるのは間違いなく大聖杯だ。この時代で一番大きな歪み、となりゃ狂った聖杯戦争の原因、この土地の心臓と言っても良い。が、ここで出て来るのがセイバーだ。アーチャーのバカはオレがなんとでもするが、問題はバーサーカーだ。近寄らなきゃ襲ってくることもない、無視するのも手だぜ」
各陣営の戦力を把握してる、ってのは本当にありがたいな。避けられる戦闘なら避けたいが、どうなることやら。
「状況は分かりました、改めて、我々はMr.キャスターと共に大聖杯を目指します。案内をしていただけますか?」
こうして方針を固めて再確認してくれるドクターは正直ありがたいな、場の空気が引き締まるし、船頭多くして船山に上る、なんてことにもならない。所長もドクターの方針に異論がないってのがありがたいね。
「ミスターは要らねぇよ。道筋は教える、いつ突入するかはマスターに任せるぜ」
「助かります。では探索を再開しましょうか。よろしく頼むよ、立香くん。」
◆
「ちょっと、ねぇ。藤丸。キリエライト、割と落ち込んでるわよ。アナタ、一応マスターなんでしょ。何かケアしてあげなさいよ」
とは、言っても。心当たりと言えば何かあるだろうか。
「その、先輩は気にしないでください。自分から言ってしまうのは恥ずかしい事この上ないのですが、いくらか戦闘をした上で、私は未だに宝具を使うことができません。使うどころか、概要すら掴めない欠陥サーヴァントなのです」
「ああ、そこを気にしていたのか。マシュは責任感が強いからなぁ。でも、そこは一朝一夕で行かないのも不思議じゃないとは思うよ。宝具って言うのは、そのサーヴァントの代名詞、むしろその存在そのものとさえ言ってもいい。そんな奥の手を一日や二日で使えちゃったら、それこそサーヴァント達の面目が立たないというか」
それは確かにそう、か。
「あ?ンなモンすぐに使えて当然だろうが」
ドクター!?
「英霊と宝具は同じ、ってアンタがいう正にそれだよ。お嬢ちゃんがサーヴァントとしての能力を行使できる時点で、宝具は扱えるってのは間違いない。なのに使えないってコトぁ。単に魔力が詰まってるだけだ。なんつーかその、やる気っつーかはじけ具合っつーかさ。とにかくあれだよ。大声をあげる練習をしてねえだけだぞ?」
だぞ?って言われても……
「つまりクー・フーリンが言うのはさ、鍵はあるけどどの鍵穴に挿すかわからない、みたいなそういう話だよ。もう持ってるし自由に扱えるけど、有効に扱えないから起動しないってだけだ。実際やらなきゃいけないことは難しいけど、理屈そのものはそう難しくはないさ」
あーなるほど。つまり無線のイヤホンが混線してて自分のがどれかわからない、みたいなことね。
「んー、そしたら嬢ちゃん、やる気はあるかい?」
「その、よくわかりませんが、はい!宝具は使えませんし真名はわかりませんが、やる気だけはあります!」
こればっかりはマシュ自身の問題な部分が大きいし、如何にマスターとは言っても力になるには限度があるからな……
「ってわけだ。少しばかり寄り道して構わねぇな?」
「うん、オレは問題ないよ。椋も、それでいい?」
「勿論。それがマシュのためになるなら、応援でも協力でもバッチコイだ」
良かった。椋が良いって言った以上、所長も了承せざるを得ないだろう。反対するとは思ってないけど、安心感はちょっとあるかも。
「待ちなさい。行くのは良いわ。どうせ一番安全なのは貴方達から離れないことだし、私もついていくわよ。でもその前に、どこに何をしに行くのかを具体的に教えなさい」
「なに、ちょっとした特訓も兼ねて大聖杯の前準備にアーチャーでも叩きに行くか、ってな。この町の骸骨兵はもう使えねえ、残ってないわけじゃないだろうがそれも時間の問題だ。だったらまだなんとでもなるアーチャーを使い倒してやるのが良いだろう、ってな。アレはもう便利に使ってやるくらいが丁度いいさ」
「ま、どうせ聖杯戦争のサーヴァントだし、こっちから行かなきゃ問題ないバーサーカーと違って脅威になり得るって考えたら、先に叩くのはある種正解。それも踏まえて、これで良いですかね?所長」
椋の言う通り、だね。キャスターがアーチャーの知り合いっぽいのが少し気がかりじゃないでもないけど、まずは何よりマシュの成長が優先だ。
「ま、それでいいわよ。でもキャスター、もし貴方の言うより危険が大きいと判断したらタダじゃおかないから。さ、案内しなさい」