ふたりはプリキュア BraveHeart 作:おかーちゃんサーナイト
ふたりはプリキュアを観ていたあの頃を思い出しながら、文才は殆どないので今流行りのAIに手伝って貰いながら書いてみました
あと最近のプリキュアは全然まったく観れてないので、設定が被ってたりした場合はご容赦下さい
放課後の喧騒が、まるで厚いガラスを一枚隔てた別世界のように、遠く、そして微かに聞こえる。
柊このかは、西日が差し込む図書室の窓際の席で、静かに文庫本のページをめくっていた。
古びた紙の匂いと、太陽に暖められた埃が混じり合った、独特の空気が彼女を包む。
射し込む光の筋が、室内に舞う微細な塵をきらきらと照らし出し、まるで時が止まったかのような幻想的な光景を描き出していた。
聞こえるのは、乾いた紙が擦れる微かな音と、自分の規則正しい呼吸だけ。
この絶対的な静寂こそが、彼女にとっての日常であり、何物にも代えがたい安らぎだった。
ふと、物語の世界から顔を上げたこのかは、窓の外へと視線を移した。
すぐ隣の体育館からは、けたたましいボールの反響音と、幾多ものシューズが床を擦る鋭い摩擦音が、まるで命の爆発のように響き渡っていた。
バスケットボール部だ。
熱気と汗、そして勝利への渇望が渦巻くその空間の中心に、一際高く、そしてしなやかに跳躍し、ボールをゴールネットに叩き込む少女の姿があった。
雨津アリサ。
夕日に照らされて黄金色に輝く長い髪をポニーテールに揺らし、その一つ一つの動きは、獲物を狩る猛禽類を思わせるほどに鋭く、そして攻撃的だった。
相手を抜き去るフェイント、空中で体勢を整える驚異的なバランス感覚、そしてゴールを射抜く正確無比なシュート。
そのどれもが、常人離れした身体能力の証明だった。
整ったモデルのような顔立ちとは裏腹に、チームメイトに檄を飛ばすその口調は荒々しく、まるで昭和のスケバンのようだと、校内ではもっぱらの噂だった。
文化部の、それもインクの匂いと静寂を愛する文芸部に所属するこのかにとって、彼女は最も縁遠い世界の住人。
交わることのない平行線上に存在する、眩しすぎる光だった。
(……すごいな)
それは憧れではない。ましてや畏怖でもない。
ただ純粋に、自分とは構造からして全く違う生命体を見るような、そんな種類の感嘆だった。
このかは小さく、誰にも聞こえないため息をつくと、再び活字が作り出す静謐な海へと意識を沈めていった。
二人の少女の日常は、まだ交わることを知らず、それぞれの軌道を静かに回り続けていた。
空が燃えるような茜色に染まった帰り道。
活気のあった商店街の喧騒も今は遠く、住宅街にかかる小さな橋を渡っていたこのかの足が、ふと止まった。
橋の真ん中で、見慣れた金色のポニーテールが、古びた欄干に気だるそうに寄りかかり、自動販売機で買ったらしい缶ジュースを煽っていた。
雨津アリサだった。
部活を終えてまだ間もないその肩は、まだ熱を帯びているように見えた。
気まずさに心臓が小さく跳ねる。
このかは気づかれないよう、そっと息を潜めて通り過ぎようとした。
その、時だった。
「あ?」
先に沈黙を破ったのは、アリサだった。
獲物を見つけた肉食獣のごとく鋭い視線が、真正面からこのかを射抜く。
その視線に射竦められ、このかの足は縫い付けられたように動かなくなった。
「……アンタ、確か……図書室によくいる、文芸部の」
「ひ、柊……このか、です」
かろうじて絞り出した声は、自分でも情けないほどに小さく震えていた。
このかは反射的に小さく頭を下げる。
アリサは「ふぅん」と興味なさそうに鼻を鳴らすと、飲み干した缶を無造作に握り潰し、再び表情の読めない顔で空を見上げた。
気まずい沈黙が、二人の間に重くのしかかる。
川のせせらぎだけが、やけに大きく聞こえた。
このかが、今度こそ足早にその場を去ろうと一歩を踏み出した、まさにその瞬間だった。
世界から、あらゆる音が消えた。
いや、違う。全ての音が、耳を劈くような不快なノイズに塗り潰されたのだ。
キーンという金属的な高周波と、地の底から響くような重低音が混じり合い、立っていることすら困難なほどの不快感を煽る。
目の前の空は急速に色彩を失い、どす黒い灰色の雲が巨大な渦を巻き始めていた。
「な、なんだよ、これ……」
アリサの呟きが、驚きと恐怖に震えている。
先程までの獰猛な雰囲気は影を潜めていた。
異変は空だけではなかった。
橋の向こうの住宅街から、悲鳴ともうめき声ともつかない声が聞こえ始め、家路を急いでいた人々が次々と膝から崩れ落ちていく。
その体からは、まるで魂が抜き取られるように、黒いオーラのようなものがゆらりと立ち上っていた。
希望や活力、生きる気力そのものが根こそぎ奪われているのだと、直感的に理解した。
「たすけて……」
「もうやだ……疲れた……」
人々の口から漏れる絶望の言葉が、黒いオーラとなって渦の中心へと吸い込まれていく。
そして、集まった負の感情が、一つの巨大な影を形作った。
それは、粘りつくような絶望と憎悪を周囲に撒き散らす、異形の怪物──ハテンナーだった。
「ケケケ……ココロ、ヨコセ……ニンゲンノ、イキルチカラ……」
歪な腕を伸ばし、ハテンナーが最も近くにいた標的──このかとアリサに狙いを定める。
「しまっ……!」
「きゃっ!」
絶体絶命。二人が恐怖に目を固く瞑った、その時。
閃光が迸り、二人の間を稲妻のように走り抜けた。
「見つけたッピ!」
甲高い声とともに現れたのは、手のひらサイズの、およそこの世の生き物とは思えない不思議な生物だった。
ふわふわとした純白の毛並みで、頭よりも大きな耳を持つ、小動物のような姿。
その妖精は、二人の前にふわりと浮かぶと、小さな両手で二つの物体を恭しく差し出した。
それは、時代錯誤なほどにゴツい、一昔前の携帯電話──ガラパゴスケータイだった。
「これを早く! 君たちなら、伝説の戦士プリキュアになれるッピ!」
妖精が必死の形相で叫ぶ。
しかし、あまりに非現実的な状況の連続に、このかの思考は完全に停止していた。
プリキュア? 伝説の戦士? まるで出来の悪い夢を見ているかのようだった。
一方、アリサは違った。
彼女の瞳には好戦的な、獰猛な光が宿る。
「プリキュア……? 面白ぇじゃねぇか!」
彼女はためらいなく、白い筐体のシャープなデザインのガラケーをひったくった。
その手には、確かな覚悟が込められていた。
そして、黒い筐体の武骨なガラケーを、未だ呆然とするこのかの手に乱暴に押し付ける。
「おい、柊! ぐずぐずしてんじゃねぇ! やるぞ!」
「え、えぇ!? む、無理だよ、私なんかが戦士だなんて……!」
「無理かどうかはな、やってから決めんだよ!」
ハテンナーの攻撃が、唸りを上げてすぐそこまで迫る。
アリサは鋭く舌打ちすると、このかの華奢な手を取り、その指を無理やりガラケーに絡ませた。
「いいか! 私に合わせろ! 一緒に叫ぶぞ!」
頷く時間さえ与えられず、アリサの力強い声が夕暮れの空に響き渡る。
それに引きずられるように、ほとんど無意識に、このかの唇も動いた。
「「デュアル・ブレイヴ・アーーーップ!!」」
二人の声が重なった瞬間、世界がまばゆい光に包まれた。
カシャッ、と小気味良い音を立てて、二つのガラケーが開く。
アリサの親指が、まるで長年使い慣れたかのように、流れるような手つきでダイヤルボタンをプッシュする。
このかも、その動きを必死に目で追い、見様見真似でボタンを押した。
その瞬間、二人のガラケーの小さな液晶画面から、天を突くほどの眩い光の柱が立ち上った。
純白の光がアリサを包み込み、夕日に輝いていた長い金髪は、より一層神々しいまでの輝きを増す。
その身を包んだのは、白銀を基調とした、騎士の甲冑を思わせる気品と、優美なドレスの柔らかさを兼ね備えたコスチューム。
瞳は、どこまでも澄み切った天空のようなサファイアブルーに変わる。
一方、このかを包んだのは、全てを吸い込むような漆黒の光。
彼女の短い黒髪は濡れたような艶を帯びた漆黒に染め上げられ、瞳は地獄の業火のごとく燃えるようなルビーレッドに変化した。
身に纏うのは、闇夜をそのまま切り取って仕立てたかのような、シックで洗練された黒いドレス。
光が収まる時、そこに立っていたのは、対照的な色を纏った二人の伝説の戦士だった。
「闇を切り裂く聖なる刃! キュアスルーズ!」
「夜を照らす気高き魂! キュアオルト!」
堂々たる名乗りを上げたスルーズが、口の端を吊り上げて不敵な笑みを浮かべる。
対照的に、オルトは自分の体の劇的な変化に戸惑い、震える自身の華奢な手を見つめていた。
「ヒャッホウ! なんだこれ! 力がみなぎってきやがるぜ!」
キュアスルーズは歓喜の声を上げると、地面を強く蹴った。
その体は砲弾のように射出され、常人では考えられない跳躍力で一気にハテンナーの懐に潜り込むと、一切の躊躇なく、その鋼鉄の拳を叩き込んだ。
ドゴォッ!と、骨まで響くような鈍い打撃音が炸裂する。
それは、可憐な魔法少女の戦いと呼ぶにはあまりに無骨で、あまりに暴力的だった。
コンプライアンスという言葉など、彼女の辞書には最初から存在しないかのようだった。
ハテンナーが苦悶の声を上げ、巨大な腕を滅茶苦茶に振り回す。
しかし、スルーズはその大雑把な攻撃を、まるで流れる水のように滑らかな動きで全て回避し、次の瞬間には剃刀のような鋭い回し蹴りを脇腹に叩き込む。
まさに、ステゴロ。
洗練された技術と、むき出しの闘争本能が融合した、純粋な肉弾戦だった。
「お、おい! 柊! いつまで突っ立って見てるだけかよ!」
スルーズの怒声に、キュアオルトははっと我に返る。
「ご、ごめんなさい!」
見様見真似で地面を蹴って駆け出すが、その動きはあまりにぎこちなく、体に宿った規格外の力に、自分の意識が全くついていかない。
それでも、スルーズの援護をしなければと必死に小さな拳を振るう。
その一撃は、か細くとも、確かにハテンナーを怯ませるだけの威力を持っていた。
初めて感じた、硬質な手応えにオルトは息を呑む。
「上等だ、オラァッ!」
スルーズがハテンナーの巨体を殴り飛ばし、大きく体勢を崩させる。
絶好の好機。
しかし、オルトはどうすればトドメを刺せるのか、皆目見当もつかない。
「トドメだ、コラァ!」
スルーズが叫ぶ。
彼女は一度殴りつけた拳をぐっと腰だめに引き、天と地を掴むかのような「天地魔闘の構え」で、全身のエネルギーを右腕に集中させる。
そして、まるで地面を滑るかのように不可視の速度で距離を詰める「縮地」から、渾身の一撃を放った。
「ブレイヴ・パンチ!」
凝縮された光を纏った強烈な一撃が、ハテンナーの胸部にある核を寸分違わず撃ち抜く。
怪物は絶叫ともいえる断末魔の叫びを上げ、その巨体は内側から崩壊するように光の粒子となって消滅していった。
辺りに、再び静寂が戻る。
ハテンナーが消滅すると同時に、光の粒子が周囲に拡散し、倒れていた人々に吸い込まれていく。
人々はゆっくりと意識を取り戻し、何事もなかったかのように立ち上がって、再び家路についた。
「へへっ、楽勝じゃねぇか!」
変身が解けたアリサは、額の汗を手の甲で拭いながら、心の底から晴れやかな笑顔を見せた。
自分の拳をじっと見つめ、先程までの凄まじい威力と、全身を駆け巡った高揚感に酔いしれているようだった。
一方、同じく変身が解けたこのかは、俯いたままだった。
彼女の脳裏には、ハテンナーが断末魔の叫びと共に消えゆく光景が、鮮明に焼き付いている。
たとえ相手が邪悪な怪物だったとしても、一つの「存在」を、この手で消滅させたという行為の重さが、ずしりと心にのしかかっていた。
(楽しかった……?)
アリサの屈託のない笑顔が、このかには到底信じられなかった。
あれは紛れもない暴力だ。痛みを伴う、破壊の行為だ。
なぜ、あんなにも楽しそうに、あんなにも嬉しそうに戦えるのだろう。
「……」
「……」
高揚感に満ちた表情のアリサと、罪悪感に曇る表情のこのか。
二人の間を、夕暮れの気まずい風が吹き抜けていく。
「じゃあな」
アリサは短くそう言うと、このかに背を向けて、何も言わずに歩き出した。
その背中は、どこか誇らしげに見えた。
このかは、彼女を呼び止める言葉を何一つ見つけられない。
ただ、去っていく後ろ姿を呆然と見送ることしかできなかった。
こうして、光と影、動と静、あまりにも正反対な二人の少女は「プリキュア」になった。
黒と白のドレスを身に纏い、二人でなければ変身することすらできない、運命のパートナーとして。
だが、その心はまだ、決して交わることはない。
二人の本当の戦いは、まだ始まったばかりだ。