月が昇る夜の空、崩れそうな崖、下には巨大な大鍋。
それを覗き込む黒いローブの少女が3人。ローブの裾が捲れ上がり裏地がしっかり見えるほどの強い風が吹いている。
「キャッホー!ここが人間界の入り口かあ!」
青い炎に包まれた大鍋の前で赤い裏地のローブの少女が笑い
「本当に行くの?ショコラちゃん、シャンティちゃん…」
青い裏地のローブの少女は心配そうに2人に問い
「ここまでやったからね、もう行くしかないよ」
紫の裏地のローブの少女は冷静に答える。
『さあ3人の小さな魔女よ飛び込むが良い!
マグマのように煮立った大鍋の中へ!』
3人を急かすように大鍋は言う。
「っダーーイブ!」
「ショコラちゃん、早い!…まってよー!」
「わぁ、頭から行ったかぁ…私も行かなきゃ」
赤、青、紫の順で3人は20mほど下にある大鍋に飛び込んでいく。大鍋の中は液体で満たされていて煮立っているのに熱くはない。微かにチョコレートの味がする液体にかき回されて、登ってるような落ちているような感覚を抜けて、
「「キャアアアア!」」
大鍋に飛び込み体感時間で30秒後。少女たちの悲鳴が重なる。上空に放り出されて3人は人間界の空を猛スピードで落下中。
「バニラ、シャンティ、魔法!空飛ぶ魔法!」
「できないよ!何も持ってきてないもん!」
「私も何もない!」
赤い少女は青と紫の少女に問うが解決策は得られず
「しょうがない、なんでもいいから…」
魔法発動の準備に入る。
「シュガシュガルーン!」
周りがパァッと光り
「ショコラちゃん!お花が咲いた!たくさん咲いたよ…」
「…ごめん、これしかできない!何の役にも立たない魔法しか…」
呪文詠唱と同時に現れた花と共になす術もなく落ちていく。
少し離れた上空でバイオレットの影が揺らめいた。
「さてと…そろそろお迎えに上がりますか」
一部始終を見ていたその男は1人呟いた後、ふわりと空に飛び上がり3人を空中で抱き止めた。
「おまたせ、マドモアゼルたち
ようこそ、欲望渦巻く人間界へ♡」
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そのまま見知らぬ男に抱えられて私たち3人はその街で1番高いビルの屋上に連れてこられた。そこがビルの上とは思えないような素敵な別荘風の一軒家が建っている。中に入りソファに腰掛けて
「今日からここが君たちの家だ。じゃあ改めて、クイーン候補の3人に乾杯しようか」
指を鳴らしシャンパンとグラスを出し男は飲み物を注ぐ。
「現クイーン陛下 キャンディの娘、バニラ=ミュー」
「ハ…ハイ…」
短いふわふわの栗色の髪、優しい紫色の目、青色ローブの少女が返事をする。
「波の街出身、シャンティ=レヴェリー」
「はい」
前下がりボブにしたパープルグレーの髪、ダークグレーの目、紫ローブ。…つまり私が返事をする。
「そして魔女シナモンの娘、ショコラ=メイユール…あれ、いない」
「バニラ!シャンティ!ここバスルームが3つもあるよ!それぞれのベッドルームにくっついてるの、すっごい贅沢!それにビルの屋上にあるから眺めもサイコー♡」
別の部屋から勢いよく扉を開けて、男には目もくれず私たちに話しかけるのは腰まであるレンガ色の長い髪、勝ち気な緑色の目をした赤いローブのショコラ。一緒にソファに座ったはずなのに気づいたら勝手に家の探索をしていた。その行動を咎めるような紫色の男の冷めた目にも一切動じることなく
「人間界なんて犬小屋みたいなへぼい建物しかないって聞いてたけど、ここなら住んでやってもいい!」
次の言葉を続け
「なるほど…いい度胸をしているな」
男が少し笑った。
「ところで私が誰だか知ってるな?魔界の貴公子、人間界でもスーパースター、ロッキンロビン様だ!」
ようやく名乗った男。めちゃくちゃカッコつけて自己紹介をしたがショコラとバニラは無反応。
「…あれ?君たちもしかしてオレのこと知らないの?…あの、ほら。テレビとか出て歌うたって「さっぱりしらないよ」「ショコラちゃん!」
男に被せてショコラが容赦のない一言。バニラが止める。
「人間たちに人気でもあたしたち魔女は落とせない、そんなにカンタンに恋しないもん」
「確かに『ハート』というのは奪うもので決して奪われてはならない、魔界の掟だ。オッケー、じゃあ奪ったハートはどうするんだ?バニラ」
「えっ…あのっ…えっと…」
いきなり名指しされて言葉が出なくなったバニラに
「カンタン!魔法で結晶にしていっぱい集めるんでしょ!?」
ショコラが声を被せる。
「楽しみーーー!魔界じゃそうそうハートなんて手に入んないもん、ね!!2人とも!」
「…う、うん…」
「そうだねぇ」
「奪ったハートの収納具は持ってきたな?」
紫色の宝石がついた指輪を私たちに見せながらロビンが言う。彼の収納具は指輪タイプらしい。
「持ってきた!あたしのはハートのペンダント、バニラはダイヤのペンダント、シャンティはシールドの形した腕時計」
それぞれ存在を確かめるように自分のハートホルダーに触れる。
「オーケー。今から君たちはライバルとなり、より多くのハートを手にした者が魔界の女王となる!君たち3人の甘く険しい愛の戦いが始まるのだ!」
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ロビンは明日から私たちが通う学校と制服の説明を軽くして帰った。同じ年頃の男の子たちが集まる環境でハートを取れ、ということらしい。それぞれお風呂に入り明日の準備を終わらせて
「思ったより変な教官だったね…ナルシストっていうのかな…」
ショコラの部屋に集まった私たち。
「そんなことよりあたし、男の子なんて怖くて嫌いなのに…ハートなんて取れっこないよー…」
まだ始まってもないハート集めを心配するバニラ。
「ショコラちゃんは魔界でもモテモテだったし、シャンティちゃんも男の子としっかりおしゃべりできるからいいけど…」
「喋れるだけでモテたら苦労しないって」
苦笑いで突っ込む。それだけでハートが取れたらどんなに楽か。
「もーいい!2人のどっちかがクイーンになりなよ、あたしは魔界でケーキ屋さんになるの…このマシュマロすごくおいしい…」
マシュマロを頬張りながらバニラは言う。
バニラは王女様で代々名門の一族、ショコラは伝説の魔女シナモンの娘。2人の母は元クイーン候補、娘である2人も華やかで優秀なイメージが強い。そこと比べると私は特に目立った功績も血筋も持ってない一般市民だ。周りと比べて何か秀でているかと聞かれても答えられず、正直なぜクイーン候補に選ばれたのか全く分からない。明日からの心配をする2人の会話を聞きながらふと周りに目を向けると一冊の手帳が目に入った。
「ショコラ、これは?」
「あ、ママの形見。秘密の手帳みたい。おじいが言うには魔法についてとか恋のテクニックが書いてあるらしいんだけど肝心の鍵がなくて読めないっていう…」
「大丈夫だよそんなのなくても、ショコラちゃんは上手くやりそうだもん」
「というか2人とも!」
ショコラが声を張り
「約束だよ!誰が勝っても、誰がクイーンになっても」
「私たちはずっと友達」
バニラが続けて言い
「明日から頑張ろうね」
私は2人を励ました。
ベースは原作(マンガ)に沿った展開にしていく予定です。
1度目のアニメ化の時のような子供向けの展開は避けたい。
✧補足✧
シャンティとは砂糖を加えて泡立てた生クリームの事(本来はクレームシャンティと言う) ショコラとバニラと並ばせるならお菓子系統の名前にしたいなと思いこの名前に。
シャンティのハートホルダーの形は「ハミルトン ベンチュラ」や「ゲラン シャリマー」で調べるとイメージが湧きやすいと思います。