「おい、アキラ行こうぜ。あんま見てっと文句つけられるぞ」
「……」
ショコラが睨んでも怯まなかった男子が1人、何かを言いたそうにこっちを見ている。
「何だ?じろじろと失礼な奴だな!なんか用?あんた誰?」
「…ショコラちゃん!覗きメガネしてみなよ」
視線に気付き即臨戦体制のショコラにバニラが囁く。私も釣られて見てみるとその男子の胸にハートが1つ。
「小さいけどハート?やったあ♡」
ハートを確認したショコラは即呪文を唱えた。
「アグランディスマン!
シュガシュガルーン ショコルーン
あなたのハートを ピックアップ!」
黄色の小さなハートが結晶化してショコラのペンダントに吸い込まれた。
「やったあショコラちゃん!」
「ショコラ、やったね!」
「とれたー!」
ハートを初ゲットし喜ぶショコラ。
「…あれ?オレ今何してた?」
「しらねーよ、人が止めるのも聞かずに話しかけて」
「何話そうとしてたんだっけ…」
ハートを取られた男子は何をしようとしたのかすっかり忘れているようで友達と一緒に教室に戻っていく。予鈴が鳴ったので私も教室に戻ることにした。
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放課後。ショコラとバニラと帰り道を歩きながら話す。
「…その後先生に怒られて掃除当番1週間。ハート1コで散々な目に遭ったよ」
ハートを取ったあの後、例の男子(ショコラのクラスメイトで御門アキラというらしい)は何を私たちに聞こうとしたのか思い出し、その場に残っていたショコラに「お前たち3人、昨夜空飛んでただろ!なんとかっていう歌手も一緒に!」と迫ったらしい。びっくりしてハートを落としてそれをアキラに取られて返せと追いかけっこ、アキラにタックルしてハートを吹っ飛ばし他の人に拾われ、そんなこんなで授業が始まってしまい先生に怒られたらしい。
「大変だったね…あたしチャイム鳴ってすぐ教室入っちゃったから」
「そんなことになってたとは…」
バニラと私はそんな騒動に全く気づいてなかった。
「バニラは?あの後ハート取れた?…あ、まって乗りまーす!」
家に帰るにはビルの最上階までエレベーターで上らなければならない。エレベーターに先に乗った人を止めつつのショコラの質問。3人とも乗り込んで
「何階へ行くの?」
先に乗ってた男性に聞かれて
「あっ、ありがとうございます。54階です」
笑顔でバニラが返す。12階で男性が降りて3人になって
「あたしは…全然ダメ。ハートどころかみんなと喋るのが精一杯…しかも今みたいにすぐ謝ったりお礼言ったり…ショコラちゃんみたいに強くなりたい…自分が悪くてもゼッタイ謝らないし滅多なことでお礼言ったりしないもんね」
「ま…まぁね!それがあたしのチャームポイントだもん!」
「……」
エレベーターを降りて階段を上がり屋上へ。やっと家に帰ってきた。
今までの魔界での振る舞いそのままで1日学校に行って、今後1番ハートが順調に取れそうなのは明らかにバニラだ。魔界では気が強くてわがままで、ちょっと意地悪で怖いもの知らずな女の子が1番人気があった。
それが魔界でぶっちぎりでモテモテだったショコラは今日男子にかなり避けられて、散々いじめられ揶揄われていたバニラには男の子が寄ってくる。この学校が変なのではなくてそもそもの価値観がだいぶ違う。そんなことを考えながら家の中に入り
「ん?なんだなんだ?甘い匂いがするぞ!」
ショコラが戯けたように言う。
「えっあたしお菓子なんて食べてないよ…」
バニラが呟くと
「シュガシュガルーン
チョコよ降れー!いっぱい降れー!」
ショコラの呪文、チョコパーティの魔法だ。
ストロベリー、ミルク、ビター、バナナにミント、ナッツにレーズン。いろんな種類のチョコレートが降ってきた。
「うわーん!ありがとうショコラちゃん!チョコパーティの魔法してくれるなんて」
「元気出た?ほら、また泣いて…ダメだよお礼言っちゃ」
「うわーん、ありがとうショコラちゃん、もっと出して〜♡」
…ん?
「「キャーーーー!!」」
ショコラとバニラの絶叫。いつのまにかいたロビンが笑顔でショコラにチョコレートをねだっている。…ちなみに私は固まってしまい叫べなかった。さっきまで絶対居なかったのに音もなく出現した。普通にめちゃくちゃ怖い。
「なんでロビンがここにいるの!?」
「コンサートは終わらせた。マドモアゼルたちが心配でね、トンボ返りさ!」
ショコラの心からの叫びに巨大な袋を持ったロビンがそう答える。
「見よ!このハートの山を!」
袋をひっくり返すとピンクや紫、赤のハートが山ほど出てきた。
「すごい、何百…何千?」
「いろんな色がある…」
「真紅のハートは情熱の愛、ピンクのハートは甘い恋のときめき、そしてバイオレットは罪深き欲望!エロエロのセクシーな結晶だ!」
ハートの色で感情が異なるらしい。色が違ったのはそういうことか。
「ねぇ、私のオレンジは?どういう感情?」
自分のハートの意味が知りたくて聞く。
「オレンジはちょっとした一目惚れ、ざっと300エクルってところか」
「まって、色で価値が違うの?」
「強い感情の方が高価だ、オレンジは300エクル、ピンクは1000エクル、紫は2500エクル、そして赤は5000エクルだ」
となると私が今日稼いだのはオレンジ2つで600エクル、ロビンは…ハートの数は明らかに1000個以上で全てピンク、紫、赤のエクルだ。全てピンクとして単純計算でも合計100万エクルを超えている。桁が違う。
「ふんだ、あたしだって取ったもん、1コだけど」
数に圧倒されて呆けてたショコラが張り合うように言う。
「さっきロビンはあたしが取れないって決めつけてたけど、薄い黄色っていうかはちみつみたいな色のハート!あの後すぐ取れたんだから」
それを聞いたロビンが意地悪い笑顔でショコラに迫る。
「はちみつ色とはよく言ったもんだ、薄い黄色は「ピス」とも言ってな?」
「ピス?」
「おしっこのこと!」
「「「おしっこ!?」」」
予想してなかった単語に3人でつい復唱してしまう。
「そ!ラブじゃないの、びっくりすると出るらしいよ」
「あー!まあこれから!!明日はもっとすごいの取るもん!」
ロビンに目を合わせずそう言い残してショコラは部屋に戻った。
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学校に1日行ってまず思ったこと、人間界の勉強が分からない。ハートを取ることが第一優先とはいえあまりにも勉強ができないと私立の学園では退学になりかねない。出された宿題のプリントを目の前にして頭を抱える。最初のうちは「前の学校ではここまでやってません」で通るがずっとそうするわけにもいかない。意を決して教科書を開く。
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1時間ぐらいで宿題をなんとなく終わらせてお風呂へ。レモンの香りの泡風呂にゆっくり肩まで浸かりながら今後のことを考える。
今日誰からハートを取ったのかしっかり見ていなかった。第一印象で一目惚れをさせたならその子たちと仲良くなることで追加でハートが取れたかもしれない。クラスメイト達はなんとなく話しかけてくれるけど、正直正しい振る舞いがわからずどうしても当たり障りのない態度になってしまう。
これからの私のやるべきことはクラスメイトとのコミュニケーションと人間界の勉強、そしてもちろんエクルを稼ぐことだ。正直先が見えなくて全て手探りで気が遠くなる。でもこれはショコラとバニラも同じこと。みんな同じ状態でスタートしている。この場にいる以上は消極的になるわけにはいかない。
湯船から上がりバスローブを羽織りローズオイルで髪をケアして乾かす。ミントの香りの化粧水を顔につけてネグリジェに着替える。さっきまで着ていた制服一式は魔法のかかっている洗濯板と桶に勝手に回収され洗われ干されている。魔法というのはとても便利だ。家事の手間が減るのはとても良い。
暖かい珈琲を飲みながらベッドに座り窓から空を見る。今夜は曇っていて星が見えない。
「明日から頑張ろう…」
明日もハートが取れるように祈りながら眠りについた。
そんな感じで1日目が終了。
ショコラ、バニラとは少し違う視点で物事を見る主人公が書きたくて生まれたキャラクターなのでこれから彼女がどう動くのか作者は楽しみです。