「ショコラ、どうだった?あの子のハート取れた?」
「ううん、タイミングなくて取れなかった…」
「明日取れるといいね、ショコラちゃん」
学校からの帰り道、3人で歩きながら話す。
「2人はどう?ハート取れた?」
「ううん、取れたのは初日だけで今は誰のハートも光らない、今は授業受けるのとクラスメイトの名前と顔を覚えるので精一杯!」
「あたしもまだ…」
「そっかー…ママたちはモテモテだったって聞いてたけど2人はどうやってハートを取ってたんだろう…」
2人曰く元クイーン候補であるショコラのママ シナモンと、バニラのママ クイーンキャンディは歴代トップのエクル獲得量らしい。
「本人たちに聞けたらいいんだろうけど…どうなんだろうね」
ショコラのママは既に亡くなっていて聞く術がないし、バニラのママもクイーンの仕事で忙しいだろうし、そもそも私たちは気軽に聞ける立場でもない。
「とにかくあたしは早く西谷のハートを取ることに集中するよ」
半分独り言のようにショコラが言った。
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「加藤さん、この本読んだ?」
「初めてなんだ、こんなに自分のやりたいことに熱中できたの!」
「加藤さん、この前の写真!」
「新聞部じゃいつもまとめ役でみんなのやりたいことばっかりだったんだよ」
「どこ行くの!?加藤さん!」
あれから数日、ショコラはもはやストーカーのようになっている西谷から無意識に逃げてしまう日々を過ごしていた。
「うーん…ショコラ大変そうだね…」
「ショコラちゃん、大丈夫?」
「逃げ回る必要なんてないのにハートを取るタイミングが掴めない!」
毎日昼休みは友達作りとコミュニケーションの為になるべく柚葉ちゃんと桃花ちゃん、その他のクラスメイトといるようにしていたが今日は作戦会議も兼ねてショコラとバニラと3人で食堂でご飯を食べている。クラスは別なのに聞こえてくる2人の声でショコラが西谷の対応に苦戦しているのが分かるからだ。
「人間の感情って強いね、しかもあれオレンジのハートなんでしょ?一目惚れ程度であんなになるならピンクとか赤のハート取るってなったら私たちどうなっちゃうんだろう…」
素朴な疑問。300エクルのエネルギーがあれなら最上級の5000エクルってなんなんだという恐怖。
「西谷が異常なんだよ、きっと」
「それならいいんだけど…」
「いや、よくないでしょ」
思わず突っ込む。ショコラがカレーの残りを掻っ込みながら
「早いとこカタをつけよう!」
気合いを入れたタイミングで
「あっ!いたいた、加藤さん!」
西谷の登場。
「ご飯食べ終わった?見せたいものがあるんだ!着いてきて!」
食べ終わったタイミングで偶然来たのか、終わるのを待っていたのかは分からないがとにかくショコラに着いてこいと言っている。
「…わかった!」
「トレーは片付けておくからショコラ、行ってらっしゃい!」
私の声に頷いて西谷と2人で走り出した。
「大丈夫かな、ショコラちゃん」
「今日で終わるといいね、ちゃんと」
残された私たちは紅茶を飲みながらショコラの身を案じた。
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人通りの多い廊下に人が集まっている。2週間に1回掲示板に新聞部が校内のことを新聞にして貼っていて、集まったみんなはそれを見ているようだ。そこに貼ってあったのは
「…あたし!?」
ショコラのことを書いた新聞で
「全部ボク1人で作ったんだよ」
ショコラの反応に少し得意げな西谷。
「あ、あの子だ」
新聞を見に来ていた他の生徒は新聞とその場にいるショコラを交互に見る。
(好きって一言言えばいいのにこんなの作っちゃうの?)
ショコラは人間のラブの力を目の当たりにして呆然としている…が
「ふざけんなよ、西谷!」
その場に来ていたアキラの一言で我に返った。アキラだけではない、新聞部の部員たちが集まっていて西谷を取り囲んでいる。
「こんなのお前の趣味だけじゃん」
「部長いつも言ってましたよね?新聞はみんなのものだって!」
「そーだよ!オレがスクープした「捕えられた宇宙人」の写真没にしたくせに!」
アキラがそう言いながら出してきた写真はどう見ても小型犬に宇宙人っぽいマスクを被せた物だ。
「いや…これはどう見てもおまえんちの犬だったから…」
「とにかくいい加減にしろ!」
「そーだ!こんなくだらねー新聞作りやがって!」
「オレらもう新聞部やめるからな」
「え…」
言いたいことを個々に言って、全員去って行った。その場に残されたのはショコラと
「なんだよ…ちくしょう」
少しの怒りを滲ませて半泣きの西谷。
(こんなに友達に文句言われてたなんて…それなのに1人でやってそのままひとりぼっちになっちゃって)
「バカ!なんで友達と喧嘩してまであたしの新聞なんて!」
「…なんでか分からないよ…ただそうしないといられなかったんだ…」
じわりと西谷の目に涙が浮かぶ。
「自分でも分からないんだ…」
ショコラはのぞきメガネを通して西谷を見る。胸に光っていたハートの色が少し変わった。
(西谷のハートがピンクに変わった!)
「ねぇ、こっち見て」
顔を上げた西谷とショコラの目が合う。
(あたしへの想いの結晶、奪い取ってあげる)
「アグランディスマン!
シュガシュガルーン ショコルーン
あなたのハートを ピックアップ!」
「あれ?ボクどうしてたんだっけ…」
結界が解ける直前に西谷の目の前から消えたショコラ。吹き抜けのようになっている1つ上の階の踊り場から西谷を見つめる。
「あ、そうだ部室…」
その場を去り部室に向かう西谷を見送りながら
(これで全て元通り、ラブのせいで色んなことが狂っちゃったけど西谷のハートはあたしの元へ、西谷は友達の元へ…)
ショコラは一仕事終えてホッとする。
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「ショコラちゃん!」
バニラと私はショコラを見つけて近寄る。
「新聞見たよ、西谷はあれを作ってたんだね」
「特集なんてすごいねーどうしたの?」
少し元気がないのか何かを考えているのか、反応の薄いショコラにバニラは問う。
「ううん、なんでもない!ハートちゃんと取れたよ!」
「ようやく取れたんだね、よかった」
「ねー 今日クレープ作ろ♡」
「うん♡作ろー」
「ホイップクリームたくさんのにしようよ!」
「チョコレートソースも!」
(恋をして友達と離れても、きっと戻れる
恋みたいに消えちゃったりしないから)
3人でおやつの話をしながらショコラはそう思った。
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放課後、新聞部の部室から騒ぐ声が聞こえる。
「宇宙人特集!」
「バニラちゃん特集だ!」
「テーマはオレが決めるんだ!」
さっきやめたはずの部員たちが集まってああでもないこうでもないと主張し合っている。
「もう…みんな自分の主張ばっかり…」
「こういう時っていつも西谷がまとめてくれてたんだよね…」
平行線で何も決まらない、ヒートアップしてきたその時部室の扉が開いて皆そっちを見る。入ってきたのは西谷でそれぞれ目が合って、誰もが気まずくて口を開けない中
「…おっせえよ!タコ!」
アキラが照れたように口を開いた。
「うるせーな!部員でもないのになんでいつもいるんだよ!」
西谷の少しおどけた口調で張り詰めていた空気が解けて、
「次の新聞どうします?部長」
「そうだなー、みんなは何をやりたい?」
穏やかな雰囲気で話し合いが進み始めた。