アグロデッキから始まるカードゲーム学園生活 作:レッドゾーンX
転生&入学!デュエル・アカデミー!!
コントラクターズデュエル……通称CD。それが、この世界で流行しているカードゲームの名前だ。
正しくは流行どころの話じゃなく、社会を支配してると言っても過言じゃない。
ホビーアニメで見たような、様々なことをカードバトルで決めることが当たり前の世界だからだ。
腕力より知力より財力より、CDの強さが重視される世界。
一見狂ってるように見えるけど、実は割と納得できる理由があったりする。
この世界では、クリーチャー世界と呼ばれる現実世界とは別の異世界がいくつも発見され、常識として周知されていた。
ドラゴンたちが住まう異世界から悪魔と天使がしのぎを削り合う世界、ファンタジー世界にSF世界に終末世界など、十近い異世界が存在している。
コントラクターズデュエルとは、その異世界に生きる生物……クリーチャーと
この世界の人間たちは、高校入学初日にクリーチャーと契約を結び、リーダーカードと呼ばれるCDに必要なカードを手に入れる。
それがCDプレイヤーとして本格的に活動し始めた合図となり、それぞれが手に入れたリーダーカードに合わせたデッキを組み、カードバトルの世界に飛び込むのだ。
それまでは学校やカードショップで用意されているスターターデッキ的なものしか使えないから、デッキを組みたい俺としては物足りない日々を過ごしていたわけなんだけど……ここは一旦割愛しよう。
話を戻すと、さっき言った通り、この世界ではCDプレイヤーになるのが当たり前。
つまりは誰もがクリーチャーとの契約を経験するわけなんだけど、ここに大きな意味がある。
数多く存在するクリーチャーたちはパワーも能力も千差万別。当然、強い奴もいれば弱い奴だっているわけだ。
そしてこの世界は給食のデザートの奪い合いから会社の契約の奪い合いまで、ほとんどのことがCDで決まる世界。当然、強いリーダーカードを求めて、人々は強いクリーチャーと契約を結ぼうとする。
クリーチャーたちも契約を望む人間全ての手を取るわけじゃない。自分で見て、これは! と思った相手とだけ契約する。
つまりは強いクリーチャーに認められるだけの何かを持った人間じゃないと、強いリーダーカードは手に入らないってわけ。
そこで誰もが思うのが、リーダーが弱くったって、他のカードが強ければどうにかなるんじゃないかってことだ。
確かに俺もそう思った。でも、コントラクターズデュエルにはもう一つ、大きな特徴がある。
それが、戦いの主役を務めるユニットカードたちもまた、リーダーを認めてくれないと力を貸してくれないって部分。
要するに、強いクリーチャーを召喚するためには、それ以上の強さを持つリーダーがいなくちゃダメだってこと。
他にも条件があったりするけど、基本的に強いクリーチャーが使えないと強いデッキは組めない。だから、リーダー選びは非常に大きな意味を持っている。
つまり、強いCDプレイヤーっていうのは強いリーダーと契約を交わした人間ってことで、強力なクリーチャーに腕力、知力、財力を含む総合的な能力を認められた優秀な人間だと評価されるということだ。正直、ホビーアニメらしさとリアリティが混ざってて、若干困惑する。
でもまあ、俺はそういうのは気にしない。なにせ俺は、別世界から転生してきた男だから。
行きつけのカドショの大会で優勝した帰り道、車に轢かれそうになっていた子供を助けて死んだことだけは覚えてる。
気が付いたらこの世界の赤ん坊として転生していて、新しい両親の下でCDに触れながら育っていった。
死んじゃったことも、元の世界で両親が悲しんでることもわかってたし、それに苦悩することもあったけど……それでも、十五年も経つと前向きになれるものだ。
何より、ここは俺が大好きなカードゲームが大流行してる世界。オカルト的な能力もカード絡みの事件も存在しているけど、それでもやっぱり楽しい。
唯一の不満だったデッキビルドができないことも、今日、このデュエル・アカデミーに入学して、精霊と契約すれば解決される。
本当に本当に……この日が楽しみで仕方がなかった。前日もどんな精霊と契約して、どんなデッキを作ろうか考えまくっていたくらいだ。
無限の可能性を想像し、期待に胸を膨らませて、そうやって続いた構想はベッドの中でも続けられたわけで、文字通り眠れない夜を過ごした俺は……ものの見事に寝坊という特大プレミをかましてしまった。
「まったく……入学式当日、しかも精霊との初めての契約を交わす記念すべき日に遅刻するだなんて、前代未聞ですよ」
「本当に申し訳ありません……」
というわけで同級生たちから少し遅れてデュエル・アカデミーへと初登校した俺は、担任の先生からのお説教を受けながら生徒たちが集まる会場に向かっていた。
大きなホールの前で立ち止まった先生は、俺に一枚のカードを差し出しながら言う。
「まあ、今回は大目に見ましょう。あなたのお友達は既に精霊たちとの契約に臨んでいます。急いであなたも参加しなさい」
「はい!」
差し出されたカード……もとい、学生証を受け取りながら、俺は大きく頷く。
近くにある機械にそれを読み込ませれば、ホールの扉が開き、別世界に向かうためのワープホールが出現した。
「これから始まるあなたのCDプレイヤーとしての人生が充実したものになることを祈っているわ。頑張ってね、
その中に足を踏み入れる寸前、ここまで案内してくれた先生が大きな声で言う。
俺がお礼を言うのと、光の中に飲み込まれるのはほぼ同時だった。