アグロデッキから始まるカードゲーム学園生活 作:レッドゾーンX
「ぐあああああああっ!! 何故だっ!? どいつもこいつも、どうして俺の勧誘を断る!?」
「あ~……やっぱりそうなっちゃったかぁ……」
初契約から数時間後、デュエル・アカデミーの周辺にあるカードショップを巡った後で学生寮に帰ってきた俺は、あまりにも予想通りな展開に苦笑を浮かべるしかなかった。
テーブルを挟んだ反対側の席には猛烈に悔しがっているオウガがいて、とりあえず俺は相棒を宥める。
「落ち着きなよ、オウガ。暴れても何も状況は変わらないって」
「これが暴れられずにいられるか! 誰一人として俺の配下になるクリーチャーが現れなかったんだぞ!? この牙王オウガが直々に勧誘しているというのにだ!」
「そりゃあ、しょうがないよ。オウガはパワー1000のお世辞にも強いとはいえないリーダーなんだし、そもそもあんなに偉そうな態度で接してたら、相手も嫌になるって」
「ぐぬぬぬぬぬぬ……!!」
俺に正論を叩きつけられたオウガは、顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
正直、こうなる気しかしなかった俺としては相棒を傷付けてしまったことを申し訳なく思っている部分もあるが、それにしたってちょっとオウガの態度はひどい。
前にも説明したが、CDというのはユニットカードたちがリーダーを認めてくれないと力を貸してくれない超特殊なカードゲームだ。
強いリーダーの前には強いユニットも首を垂れるが、弱いリーダーについていく者なんて誰もいないということである。
ただ、別に弱くとも心意気や将来性を認められたり、人望があって強いユニットが仲間になってくれるリーダーもいたりはする。
問題は、今のオウガがそのどちらにも適合していないという部分だ。
(下手に出る必要はないと思うけど、上から目線が過ぎるんだよな……パワーの低さを指摘されたらすぐにブチギレるし……)
カードショップを巡り、そこでいい感じのカードを見つけたらまずその精霊と交渉をさせてもらったのだが、その全部が再放送かと思ってしまうくらいに同じことの繰り返しだった。
パワーが低いせいで舐められ、リーダーとして認められないという相手の意見にすぐに怒りを露わにしたオウガのせいで、交渉は全敗という結果に終わっている。
まあ、そこを上手くフォローできなかった俺にも責任はあるのだから、オウガだけが悪いわけじゃないよなと考える中、そのオウガが小さな声で質問してきた。
「……どうするんだ、アギト? 配下がいなければ、デッキは組めないんだろう? デッキが組めなければ戦うこともできないじゃないか」
「ああ、そこは大丈夫。方法はあるからさ」
「なに……?」
驚くオーガの前へ、俺はカードショップで購入したカードたちを置く。
アカデミーから支給されている機械を使ってそのカードの精霊たちを立体映像として出現させれば、カードの中から様々な色と形をした石たちが飛び出してきた。
「なっ、なんだ? この石は……?」
「【ニュートラル】のカードだよ。リーダーの色や能力に関係なくデッキに入れられるカードたちのことね」
カードショップのストレージの中に大量に入っていた【ニュートラル】のカードたちを紹介しながら、俺は次々とカードをテーブルに広げていく。
自分の周囲を飛び回る石たちを目で追うオウガが困惑する中、俺は相棒へと言った。
「アカデミーに入る前まではこいつらに随分とお世話になったからね、能力は大体把握してる。今はこのカードたちを使って、デッキを組もう」
「ぬぅぅ……! 致し方ないか。しかし、この俺が、こんな石ころどもを配下として率いて戦わなければならないとは……!!」
無機質で機械的な石にしか見えない【ニュートラル】のカードたちは、確かに他の精霊と比べると力強さも華やかさも見劣りするかもしれない。
しかし、今のオウガの発言を耳にした俺は、相棒にきちんと話しておくべきだと判断すると、カードを置き、言う。
「オウガ、一つ約束してくれ。これから先、一緒に戦う仲間を馬鹿にしないって」
「何だと? お前、この牙王オウガ様に――」
「お前が王様だったことはわかった。誇り高い性格をしてることもな。でも、今のお前は俺の相棒……対等な関係なはずだ。だったら、お互いに敬意を払おう。それが相棒のルールだ」
「ぬっ……」
話を遮っての俺の言葉に、オウガが口を閉ざす。
一つ一つの言葉を選びながらも、しっかりと自分の意見を伝えるために、俺は相棒になったクリーチャーに話を続けていく。
「どんなにパワーが低くても、値段が安くても、無価値なカードなんて存在しないって俺は思ってる。オウガだって昼間、雑魚だって笑われて悔しかっただろ? だったら、それと同じことをするのはダメだ。それを仲間として一緒に戦ってくれる相手にするなんて論外だよ」
「………」
視線を逸らしたオウガの口元が、わずかに強張った。
昼間、契約会の時にマサルに馬鹿にされた時の屈辱を思い返したのだろう。
「……腹立たしいが、お前の言うことは正しい。いいだろう。今は対等な相棒として、お前の望みを聞いてやる」
俺の話を聞き、自分が味わった屈辱を振り返ったオウガは、渋々といった様子ではあったが俺の約束を受け入れてくれた。
意外と素直な相棒に笑みを向けつつ、再度カードをテーブルの上に並べた俺は対面のオウガへと言う。
「よし! じゃあ明日の授業で使うデッキを組もうか!」
「……悪いが俺はゲームの知識がない。役に立てるとは思えんぞ?」
「そこはちゃんと俺が説明するよ。一緒に戦う相棒なんだ、オウガの意見も聞かせてよ」
「……わかった」
少しだけ嬉しそうに声を弾ませたオウガと一緒に、並べられたカードたちを見る。
使えるカードの種類は少ないし、レアカードなんて一枚もなかったけれど……待ち望んだデッキビルドの時間は、前世と変わらないくらいに俺の心を弾ませる、最高の時間だった。
思う存分に悩み、考え、一枚一枚のカードを確認して……そうして出来上がったデッキをケースに納めた俺は、落ち着かない気持ちを抱えながらベッドに入る。
明日はついに自分で作ったデッキで、初めてのデュエルができる……その期待を胸に天井を見上げる俺は、口元に笑みを浮かべながらその時を今か今かと待ち侘びるのであった。