TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド 作:ガテル
―――突然ではありますが私、琴寄花音には前世の記憶がございます。ただそうは言っても覚えているのは性別は男性、年齢は恐らく成人に達していないぐらい。死因は交通事故。これだけなのです、元の見た目や性格や名前すら覚えていない曖昧さには私自身何度も思い悩みました。
それに内向的な性格で人と喋るのも得意ではないせいか、幼い頃から中々友達が出来ずいつも1人で抱え込むばかりでした。しかし、中学1年生の時にとある女の子と出会い……私は彼女とお友達になったのです。彼女も私と同じように友達がおらずそこに苦しんでいらっしゃって、お互いに心を開き合えるまで時間はかかってしまいましたが中学卒業間近の今となっては。
「かっ、花音ちゃんの背中はやっぱり落ち着く……良い匂いもするし、ウェヘヘヘ」
狭い押し入れの中でピッタリと私の背中に密着する後藤さん―――心の距離だけでなく体の距離まで埋まりました、私の背中に鼻息を荒くしながら顔を擦り付けてる理由は分かりませんが。元々友達のいなかった私にとっては、彼女とこうやってお友達の関係性を続けられているのは本当に喜ばしい事です。
「もも、もう中学終わっちゃう!?せっかく毎日ギター練習頑張って文化祭出ようと思ってたのに勇気がなくて、あっでもバンドメンバーすら集められなかったんだからそもそも意味ないよね。やっ、やっぱりこんな雑魚陰キャには無理だったんだ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
後藤さんはよくおかしな叫び声を上げており、こうなってしまわれると誰かの言葉は耳に入らず最後には溶けてスライム化してしまい戻すのは一苦労です。なので。
「よしよし、でございます」
「アッ、小さく白く柔らかなおてての感触が」
こうして優しく頭を撫でて差し上げると収まってくださると私は気づきました、お友達になって約2年経ち後藤さんについて沢山知る事が出来て嬉しく思います。
そのまましばらく撫でていたのですが、突然後藤さんが私の方へ振り返ってこられて。
「かか花音ちゃんが私と一緒の高校に行くって聞いたとき凄く嬉しかったんだけどね……で、でもどうして?」
聞いてこられる後藤さんの表情はとても不安そうに見えます、しかしそれが何の事を指すのか分からない私は首を傾げてしまいました。
「だ、だって通う高校ってここから片道2時間もかかるぐらい遠い場所なんだよ。わわ私は自分を知ってる人がいるのが嫌だったからそこを選んだだけで、花音ちゃんには理由が……」
「……私を心配してくださったのですか?」
「う、うん」
そう言って頷く後藤さんを見て、私は心の底から温かな感情が浮かんでくるのを感じ思わず。
「―――ふふ、本当にあなたは優しい人でございますね」
「ヴッ!???」
笑みが零れてしまいました、私は表情の変化が乏しく笑うという行為があまり出来ないので自分でも驚きを隠せません……それよりもとりあえず今はちゃんと後藤さんに理由を説明するのを優先と致します。
何故かお顔を真っ赤にされている後藤さんの手を優しく握り。
「わわっ、私達まだ中学生で!?」
「私が後藤さんと一緒の学校を選んだ、その理由を知りたいのですよね?」
「えっ?あっ、そうです……」
「私はお友達と呼べる存在が幼い頃からおりませんでした、それは性格や……この容姿の悪さも関係しているのでしょう」
銀髪に赤い瞳、真っ白な肌。私の見た目は人とは違います、小学生の頃に男子からよく「ここっ、このブス女!お前なんか可愛すぎ……い、いや全然可愛くねーからな!?」と言われたので自分ではよく分からないのですが私の容姿はきっとかなり悪いものなのでしょう。
後藤さんが私の発言を聞き、まるで宇宙の真理にでも触れたかのように呆然としておられるのはどうしてでしょうか?
「そんな中で出会えたのが後藤さんなのです、私にとっての唯一のお友達。もうこのような出会いが今後あるかも分かりません、それほどまでに奇跡であり運命だと思います」
「……ど、どうも奇跡であり運命の女です!」
「だからどんなに遠い所でも一緒に行くのは当然の事、私はこれからもずっと……あなたの傍におります」
押し入れの中で互いに至近距離で座り込み、私は背が小さいので後藤さんを見上げる形になってしまいながらも紛れもない本心を伝える事が出来ました。
「いいい今のってプ、プロポーズ……お父さん、お母さん、ふたり、ジミヘン、私の将来は安定だよ花音ちゃんと幸せな家庭を築くからねウヘヘヘッ」
小声で何かをおっしゃった後もしばらく後藤さんはプルプルと震えておられたので心配になりましたが、お顔は笑顔そのものだったので問題はないでしょう。