TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド 作:ガテル
「よし、動画はしっかり撮れてるな。花音ちゃんのメイド姿、ホント可愛すぎんだろ……」
「お姉ちゃん??今ヤバい事言わなかった???」
「成人女性が未成年を可愛がる、それもロック」
「いや絶対ロックじゃないからね……」
撮影会が終了し、ようやく通常のバイトが始まってくださいました。メイド服は継続なので通常と言えるかは分かりませんが……とりあえずこの件について考えるのはやめにしましょう、それよりも喜多さんです。彼女は今日1日ライブハウスのお手伝いをする事になられて、先ほど伊地知さんが掃除や受付について教えたのですが手際も良く愛想も良い素晴らしいバイトさんですね。私は表情を作るのが苦手なものですから、喜多さんのコミュニケーション力には尊敬の念を抱きます。
私も見習って頑張りましょう、そう思い掃除を始めようとしたのですが。
「なな名前呼ばれた事ないのに、そして私の任されていない仕事まで。アッ、アイデンティティが喪失しちゃう……」
ゴミ箱に入られながら落ち込む後藤さんが目に入ってきました、喜多さんの凄さには私も驚いたのでそうなってしまうお気持ちも分かります……ですが落ち込まれたままではいけません。ここはお友達として何とかしなければ、後藤さんは倒れた状態にあられるので私も目線を合わせるためにしゃがみ込みました。
私の言葉で元気を出してくださるとよいのですが。
「後藤さん、大丈夫でございますか」
「ア、アイデンティティは喪失したままだけど、メイド姿の花音ちゃんが可愛すぎて見たらちょっと元気出てき……あっこの角度だとパッパンツが見え!???」
「ご、後藤さん?」
「―――も、もう大丈夫です!100%げげ元気出ました!!」
後藤さんは顔を真っ赤にされながらも笑顔……いえ、ニヤケ顔?を浮かべています。よく分からないですが元気になってくださってよかったです。
「ぼっちちゃん、喜多ちゃんにドリンク教えてあげてよ」
「ま、任せてください、天才バイトな私にかかれば喜多さんも1日でドリンクマスターですよ……」
「いきなり凄い自信に満ち溢れてるね!?」
この後、私も一緒にという形になったのですが後藤さんが熱々のコーヒーを手にこぼしてしまわれました。「天才バイトとかイキってすみません……」とおっしゃっていましたが、本当にやけどにならなくてよかったです。本当にお怪我なく……手当は喜多さんと一緒にしたのですが、彼女の手が触れているときに後藤さんが不思議そうにその指先を見ていたのは一体何だったのでしょうか?
少しの疑問は残りつつ、17時となりライブハウスOPENの時間になりました。分かっていましたが本当にメイド服のまま接客するのですね?それに今日は喜多さんがいらっしゃる事から3人はダメという理由で、私は初の受付担当になります。とても気が重いです。
「―――こちらチケットになります、ライブをお楽しみくださいませ」
「受付にメイド姿のお人形さん!?私は不思議の国にでも迷い込んじゃったの!?」
「いえ、ライブハウスでございますよ?」
「不思議のライブハウス!?」
「よく見たら蝶が歌ってる~♪」と子供のようにウキウキでステップされながら、そのお客様は入っていかれて。初の受付は大変ですが、何とかこなせますね。そう安心していた所……伊地知さんがまるで超常現象でも目撃したかのような驚き顔を浮かべている事に気が付きました。
「……花音ちゃんとメイド服、その組み合わせがここまで危険だとは思わなかったよ」
「幻覚を生み出す、寝入る寸前だった私も思わずビックリして眠気が吹き飛んだ」
「リョウはサラっと寝ようとするのやめろ?」
「受付には花音がいるし、私はいいかなって」
「ダメに決まってるでしょ、寝たらその分時給から減らすからねー」
山田さんは減給宣告を受けたにも関わらず、余裕そうに口元に笑みを浮かべております。それを見た伊地知さんは、またもや驚き顔になってしまいました。
「金に対してその態度だなんておかしいよね……」
「私、今月はいつもより少し余裕ある。何故なら節約したから」
「節約!?あのリョウが!?」
勝ち誇る山田さんと頭を抱える伊地知さん、本当に仲良しで微笑ましいですね。しかし伊地知さんがそこまで驚かれるのにも理由があります、山田さんは前にお金がないとき昼食は草を食べるとおっしゃっていましたから。私はそんな彼女が心配になり、勝手ながらに注意してしまいましたが……それにしても山田さんのお顔が随分赤いような気がします。後チラチラとこちらを見てきておられるような?
「リョウ、どうしていきなり節約なんてしようと思ったの?」
「……何となく」
「少し前に花音ちゃんから健康について注意されてたけど、もしかして「……たまたま」
山田さんは目を逸らしてしまわれました、本当の理由は分かりません。ですが、もし私の言葉が響いてくださったのなら……私は彼女の元へ近づきその手を優しく握りました。
「な、何」
「―――山田さん、これからもお体には気を付けてくださいね」
「……」
「約束、ですよ?」
「まぁ、その……出来るだけ注意する。欲しいものとか見つかったら分からないけど」
ふふ、良かったです。
(リョウが少しだけ真人間に近づいてる、何だか感慨深いよ……でもいつまで持つかな?不安だなぁ)
ライブが終わりSTARRYもCLOSE、初の受付は大変でしたがやり遂げられました。そんな小さな達成感に浸っていたのですが……隣の後藤さんが何やら苦しそうな表情をされておられて、心配になった私は彼女に声を掛けようとしたそのとき。
「……今日はありがとうございました、これからもバンド活動頑張ってください。陰ながら応援してます」
喜多さんが帰ろうとしていました、バンド活動を陰ながら応援してます。その言葉の意味を理解する前に、後藤さんが駆け出し―――勢い余って転びそうになっています。
「後藤さんっ!」
「えっ……!?」
私は焦って後藤さんへ手を伸ばし、間一髪で転ぶのを防ぐ事ができました……反動で後ろへ倒れて私が下敷きとなる形になりましたが助けられてよかったです。
「かか花音ちゃん大丈夫!?」
「問題ないです、それより後藤さんはお怪我ありませんか?」
「う、うん」
心配そうに私を見てくる後藤さん、本当に大丈夫ですのに……お優しいですね。私はそんな彼女を安心させるため。
「大丈夫でございますよ、あなたが無事ならそれで私は良いですから。よしよし、です」
「……けっ、結婚したい」
後藤さんが飛び出した理由、それは喜多さんが結束バンドを辞めようとしているのを止めるためだったそうです。私は受付にいましたからお考えを知らず、ですが後藤さんはこうおっしゃりました。「きっ、喜多さんの左手……指の先の皮が固くて」と、山田さん曰く相当練習していないとその状態にはならないそうです。先ほど……後藤さんが喜多さんの指先を不思議そうに見ていた訳がようやく分かりました。
頑張っていたのですね、それなら尚更です。私は山田さんに伊地知さんのお2人と顔を合わせて……どうやら一緒のようで安心いたしました。
「喜多ちゃんもこれから結束バンドを一緒に盛り上げてほしいな!」
「な、何で私にそんな」
「だって喜多ちゃんが逃げ出してなかったら、ぼっちちゃんと花音ちゃんに出会えてなかったんだよ?」
「私はバンドメンバーではございませんが、STARRYで伊地知さんや山田さんと知り合えてよかったと思っています。こんな機会をくださって感謝していますよ」
……それに、後藤さんがバンドに入りたがってるのをずっと知っていたのですから。
山田さん、そして後藤さんも誰よりも大きなお声で喜多さんが結束バンドに残る事に同意されました。後は喜多さんがギターを弾けないという件についてですが、問題ありません。何故なら後藤さんは。
「ぼっちちゃんが先生してくれるよ!」
「うんうん」
「えっ」(か、花音ちゃんはどう思ってるんだろ)
「後藤さんなら大丈夫でございますね、絶対です」
「は、はい!」(この流れ断れるわけない、というか花音ちゃんは2人よりも肯定してきた……ででもそれって信頼されてるって事だよね嬉しいウヘヘッ)
―――ギターヒーローなのですから。
「ありがとう……私、頑張る!結束バンドのギターとして!」
無事に解決し、そして今日1番の功労者である後藤さんをみんなで褒めて本人もとても嬉しそうにしていました。これで終了……
「お父さんにお年玉2年分前借りしたのに……!」
「ま、まさか多弦ベースと間違えるなんてね?」
「よ、よしよしでございます」
「琴寄さんのナデナデ、すっごく気持ちいいわ……お金払います」
「それ以上お金を失うのやめた方がいいよ!?」
間違えてベースを購入した喜多さん、ですがそのベースを山田さんが買い取ってくださりました。そのときに「これで私は所持金が……ギリギリ、節約のおかげで少しは残った。何とかやっていけるかも」
そうおっしゃっていましたが、大丈夫でしょうか……心配です。
現在、結束バンドメンバーの中では山田リョウの攻略が進行中です(なお最初から攻略済みな後藤ひとり)