TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド   作:ガテル

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第14話

 

「―――仮想世界に入って、敵であるエージェント達と戦いながら主人公が覚醒していく過程がとても面白いのです」

 

「花音ちゃんはホントに映画好きなんだね~!」

 

「私は覚醒した琴寄さんに振り回されて、大気圏突破して宇宙空間までぶっ飛ばされたいわ!」

 

「喜多ちゃんは何でそんなにぶっ飛ばされたいの??」

 

 

アー写撮影、そして後藤さんが歌詞を完成させられてから1週間程経ちました。私は彼女が作詞で悩んでいらっしゃったのを知っていましたから、本当に完成して良かったです。これも山田さんのおかげですね……しかし、その山田さんに関する件で一つ気になる所がございます。それは。

 

 

「山田さんはこの映画を知っておりますか?」

 

「し、知らない」

 

「名作なのでオススメでございますよ」

 

「そ、そう」

 

 

カフェの日以降、山田さんが私に対してどこかぎこちない態度で接してこられるのです。お話するときは必ずと言っていいほど、顔を赤くし目も逸らされてしまいます……一体どうしたのでしょうか?

 

考えても理由が分からず、首を傾げていたそのとき。

 

 

「―――諸君、お待ちかねの給料だぞ」

 

 

私達5人分の給料袋を持った店長さんが入ってきました。

 

 

 

 

 

「はい」

 

「ありがとー!」

 

「はい」

 

「ありがとうございます!」

 

「花音ちゃん、よく頑張ったな。私はその姿を……しっかり見てたから」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「……お姉ちゃんさぁ」

 

 

始めてのお給料でございます、これもドリンクや掃除や受付にメイド(??)というバイト業務を頑張った成果なのですね。横で後藤さんがキラキラと瞳を輝かせながら1万円を眺めておられて、私も彼女と同じ気持ちで本当に嬉しいです。

 

「こっ、この調子でバイトを続けてお金を貯めていけばいつか結婚指輪を買えるよね。どど、どうも私は琴寄ひとりです……」

 

何に使うか興味はありますが、自らで稼いだお金なのですからそれを聞くのは野暮です。後藤さん、良かったですね。

 

 

「じゃあ、せっかくの所悪いんだけどライブ代徴収するよー」

 

「―――聞いてください、新曲。さよなら私の幸せな結婚」

 

 

……そのまま後藤さんはゴミ箱へと入られてしまいました。

 

 

 

 

「かか花音ちゃん、安くてもいいのでどうか私を買って……」

 

「じ、人身売買はおやめください」

 

 

どうやらライブ代だけでなく、アルバム作りやミュージックビデオ撮影にもお金がかかるらしいです。そこで伊地知さんと喜多さんの2人が夏休みに海の家や遊園地でバイトするのはどうかとお話されていて、それを聞いた後藤さんが現在修羅の道に行きかけています。私も気が進みませんね……少しは接客にも慣れてきたつもりですが、まだまだ私の表情や態度は固くそういった場所でバイトをこなせる自信はありません。

 

とりあえず後藤さんを落ち着かせる策を考えていた私の元に、何故か全身から光があふれ出している喜多さんがやってこられました。

 

 

「琴寄さんは海の家バイトどうかしら?琴寄さんがやったらお客さんも沢山来ると思うの!」

 

「……申し訳ありませんが、私には向かないと思いますよ?」

 

「絶対大丈夫よ!それでバイトが終わった後はみんなでビーチで遊びましょう!私、琴寄さんの水着姿見たい!!」キターン

 

 

眩しいでございます……どうして喜多さんは私の水着姿など見たいのでしょうか?認識の影響からか肌を露出させ人に見せる事が嫌、そんな私が水着を無理に着れば表情はきっと酷い仏頂面となってしまうでしょう。それに加えて容姿の悪さもございます、よって需要など微塵も存在しません。

 

 

「水着、海の家、水着、海の家、水着、海の家、ヴァァァァァァァァ……」

 

「……花音の水着姿」

 

「かっ、花音ちゃんのね……」

 

「?」

 

 

 

何かを想像して、アワアワとされていた3人も少しして落ち着かれると話題は山田さんが作ってきた曲の話になりました。どうやら後藤さんの歌詞を見たら浮かんできたそうです、流石後藤さんですね。

 

今は後藤さんをよしよしして褒めている山田さんですが、何やら横目で私をチラチラと見てきていらっしゃっています。この感じは……後藤さんが私にナデナデして欲しいときに向けてくる眼差しと似ているような?

 

 

「山田さん、よしよしです」

 

「……」

 

 

後藤さんへのよしよしが終わられたので、どう思われるのかは分かりませんが山田さんの頭を撫でてみる事にいたしました。黙り込んでしまったので失敗だと思い、私は彼女に謝ろうとしたのですが……

 

 

「もっと」

 

「山田さん?」

 

「……いいよ、続けて」

 

 

無表情で小声ですが、確かにそうおっしゃって……私は思わず自分の頬が緩むのを感じながら。

 

 

「―――ふふ、それではやらせていただきますね」

 

 

私は山田さんの頭を撫で続けました。

 

 

「ま、また脳破壊がッ!?」

 

「キャー!この光景は眼福すぎるわ!私もギター頑張ったので後で2人一緒に私をよしよししてください!」

 

「2人同時よしよしは無理じゃないかなぁ……」

 

 

ライブ代ノルマのお給料に作詞と作曲も完成し、結束バンドは順調にライブへの道に進んでいる。そう思ったのですが。

 

 

「―――ライブ、出す気ないけど」

 

 

試練は突然降りかかってきました。

 

 

 

 

 

「未だにぬいぐるみ抱かないと寝れないくせにー!」

 

「何だ今の捨てセリフは……」

 

 

店長さんの就寝事情を暴露された伊地知さん、そんな彼女は走ってライブハウスから出て行ってしまいました。その理由は結束バンドをライブに出せないと告げられたからでございます、店長さん曰く「お金の問題ではなく実力の問題」だそうです。後藤さんが完熟マンゴーに入って行った5月のライブのときのクオリティならば出せない。

 

ライブハウスが遊びではないのは、私自身バイトをしながら様々なバンドを見てきているので分かります。ですがそれでも4人は本当に頑張っていて、それに後藤さんは実力を上手く発揮できないだけで本当はギターヒーローでございます……

 

 

「ぬいぐるみってこのパンダとヨレヨレのウサギの事?」

 

「まぁ今は花音ちゃんぬいぐるみも欲し―――何でもない、忘れろ」

 

「店長、今の発言は普通にアウトですよ」

 

 

何か話されてるようですが、伊地知さんに対する心配で頭がいっぱいで内容が耳に入ってきません。入れてはいけない会話に思える気もしますが……いいえ、今はそれよりも彼女の元へ行かなければ。

 

 

「―――私、ちょっと行ってきます」

 

「かか、花音ちゃん……!?」

 

 

こうして私も伊地知さんに続き、ライブハウスを飛び出しました。

 

 

 

 

 

 

「あっ、あの……」

 

「花音ちゃん……って顔真っ青だけど大丈夫!?」

 

 

運動不足な自分が恥ずかしくなります、息を切らし汗だくな私を見て伊地知さんは驚きながらもポケットからハンカチを出されて私の顔を丁寧に拭いてくださりました。本当にありがたいですね……拭くときにお互いかなりの至近距離だったのですが、伊地知さんが何だか目線をキョロキョロと動かされていました。

 

 

「近くで見る花音ちゃんが可愛すぎて、何だか緊張しちゃったよ」

 

「伊地知さん?」

 

「な、何でもないからね……それより花音ちゃんはどうしてここに来たの?」

 

「理由など一つしかございません、伊地知さんが心配だったからです」

 

「……あはは、心配かけてごめんね」

 

 

伊地知さんはそう言って、気まずそうに苦笑いを浮かべておられます。つい勢いで出てきてしまいましたが、バンドメンバーではない私が言える事は限られているのです。詳しくは分かりませんが、伊地知さんはどうやらバンドに並々ならぬ想いを抱いているのが言葉の端々から伝わってきて……それにすぐに3人も追いかけてくるでしょう。

 

ならば、ここで私がやれるのは―――彼女の不安を少しでも和らげてあげる事です。

 

 

「花音ちゃん?」

 

 

伊地知さんに近づき、右手はドリンクを持っているので彼女の左手を私の両手で優しく包み込むように握りました。

 

 

「えっ!?どっ、どうしたの!?」

 

「―――いきなり申し訳ございません、前に人の体温は落ち着き安心感を与える。そう聞いた事がございますので手を握らせていただきました……嫌、でしょうか?」

 

 

私は伊地知さんよりも身長が低いので、目線を少し上げて彼女を見る形となります。もし少しでも和らいでくだされば……そう思っていると、伊地知さんの表情が糸がほどけるように緩まれて。

 

 

「ううん、全然嫌じゃないよ。花音ちゃんの手……あったかいね」

 

 

心の底から安心したように、ニコッと笑ってくださいました。

 

 

 

 

 

この後、山田さんと喜多さんに私と同じように顔を真っ青にされた後藤さんも来られました。後藤さんは店長さんから伝言を受け取られたらしく「ライブに出たいならまずオーディション、1週間後に演奏見て決めるから」と……最初からそのつもりだったのですね、でも一安心です。

 

 

「後藤さん、大丈夫ですか?」

 

「う、うん……もう流石に落ち着いたから大丈夫だよ」

 

「虹夏も大丈夫?」

 

「―――全然平気だよ!よーし、オーディションに向けて頑張ろう!!」

 

「おお、何かいつにも増して元気」

 

 

伊地知さんが元気になってくださってよかったです……それにしても、お顔が随分と赤いような気がするのは気のせいでしょうか?

 

 

 

 

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