TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド 作:ガテル
「―――いっ、1時間足らずで万バズ!?この勢いでいけば琴寄さんが世界のKOTOYOSEになる日も近いのね~!」
「あ、あの喜多さん」
「バズってるこのときこそ次の写真を投稿して更に盛り上げる必要があるわ、琴寄さん!このモール内で今話題のファッションを沢山取り扱ってるお店。今すぐそこへ行きましょう!」
喜多さんは左目にイソ、右目にスタ、両目でイソスタの文字を浮かべながら私を引っ張り目的の服屋さんへ全力ダッシュを初めてしまいました。彼女に身を任せて私は微塵も力を入れていないにも関わらず凄まじいスピードです、廣井さんのときもそうですがこのパワーは一体どこから来るのでしょうか?いえ―――今はそこを気にしている場合ではありませんね。
現在イソスタで私の写真が万バズしているという事実、最初はそんなのあり得ないと思いアカウントをこの目で確認したのですがバズっているのは確かに私でございました。容姿の悪い私がです、一瞬どこかの魔術師さんのようにマルチバースへ迷い込んでしまったのかと思いましたが……ここは同じ世界です。
猛スピードの喜多さんに引っ張られてブラブラと揺られながら私は必死に考えました、どうしてこうなったのか?そうして辿り着いた結論は。
「ネットというのは残酷でございますね―――容姿の悪い私を盛り上げておもちゃにしてしまうなんて」
ですが私は挫けませんよ、強い心を持って立ち向かって行きます。目を閉じると大切なお友達である後藤さんが私を応援してくれる姿が浮かんで……後藤さんがそれは違うと言わんばかりに必死に首を横へ振っているのは何故でしょう?
「まずはオーバーサイズのカットソーとショートパンツの組み合わせ、琴寄さんの普段のファッションとかなり真逆ね。でもこういうのも……絶対似合うと思うわ!私見たい!」キターン
眩しいでございます……目的の服屋さんへ到着したのですが、そのお店は喜多さんのようなオシャレ女子御用達と言ったキラキラの雰囲気で私のような者はこの空間にいる事自体が気まずいですね。
それにしても、上はまだいいですが下はショートパンツなのでかなり足を露出する形になり―――メイド服もそうだったのですがこういったタイプにはやはり抵抗があります。名前すら憶えてない程の曖昧な前世であるのに、16年生きてきても性別の認識で未だ境界線にいるのは複雑としか表現できません。強い拒否反応からか表情にもそれが出てしまっていたらしく。
「ご、ごめんなさい、嫌だったかしら?」
「そういう訳では……そのすみません」
喜多さんは輝くほど見たそうにしていたのに、私は申し訳なさから謝罪の言葉しか出ませんでした。ですがそんな私に対して……喜多さんは優しく笑いながら。
「―――ふふっ、琴寄さんって本当に真面目なのね」
「……えっ?」
「別にそんな悪い事をしたような顔しなくていいのよ?着たくない服の一つや二つあって当たり前なんだから、むしろ私の方こそ琴寄さんが嫌がるようなものを選んで申し訳ないわ。ファッションセンスには結構自信あるのに悔しいわね!」
「喜多さんが謝る必要など……これは私自身の問題です、本当に申し訳ございません」
「また謝ってる、でも……そういう優しい所が琴寄さんの良さだと思うわ。それなら一緒に着る服を選びましょ!琴寄さんの好きなファッション―――教えてくれないかしら!」
昔、後藤さんと出会う前の小学生時代の話です。クラスで目立つグループにいる女子から「わ、私がすっごい時間かけて着る服選んだっていうのに何でそんな地味な服で私より注目集めてるのよ……ズルいズルいズルい!ダサいくせに!」と言われてしまい……注目を集めているというのはよく分からなかったものの、自分の曖昧な認識で悩んでいたせいで女の子らしい服を着れなかった私にとってその言葉はとてもショックでした。
あのときはただ謝るしかなくて、今も同様な反応を示した私。しかし、喜多さんはそれを良さだと肯定してくれた上に一緒に考えようとまで言ってくださり……そんな彼女に対して私の中でとある思いが生まれました。それは。
「喜多さん、そのカットソーとショートパンツを戻す必要はありませんよ」
「そ、それって」
「はい、喜多さんのチョイスなのですから―――喜んで試着させていただきます」
「……ええ、楽しみにしてるわね!!」
正直に言うと似合う自信など微塵もありません、ですが純粋に……私が着た姿を喜多さんに見てもらいたい。そう思うのです。
「き、喜多さん、少々時間がかかってしまいましたが……もう大丈夫です」
「キャー!もう透視使って中を覗きたくなってました!」
「それは流石にまずいのでは??」
……喜多さんからの反応に不安を抱きながらも私は試着室のカーテンを勢いよく開けました。
「どう、でしょうか……」
喜多さんは驚かれたように固まりましたが、次第に頬を赤く染めながら。
「―――琴寄さん!すっごく似合ってるわ!」
そう満面の笑みでおっしゃってくださいました、私にもこういった女の子の服が似合っている。本当に嬉しいでございま、す……?
今まで生きてきて始めて、自身の性別と認識の噛み合いが取れたような感覚―――ただの気のせいでしょうか?