TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド 作:ガテル
伊地知さんに山田さん、そしてサポートギターである後藤さん、あくまで仮ではありますがバンドメンバーの3人が揃われたのでスタジオに移動し本日のライブの練習を始める事となりました。私は後藤さんのお友達として一緒に来ましたが、音楽に関しては知識も何かを演奏できる力も残念ながら持ち合わせておりません。なので3人の邪魔をしてはいけないと思い、スタジオ外で待っているつもりだったのですが……後藤さんが私の制服の袖を掴まれて「おっお願い一緒に来て!?」と頼んでこられたので私も一緒という流れに。
彼女からの信頼を無碍になど出来ません、私が―――必ずやお力になってみせます。
「これ、今日のセットリストとスコア!」
「わわっ、私は寛容だから将来の結婚相手の花音ちゃんが別の子の手を握ったとしてもダメージなんて受けないんだ……アッやっぱり嘘です普通に辛い」
「……ごめんね花音ちゃん、さっきからひとりちゃんが全然話聞いてくれないんだけど助けてくれないかな?」
「有識者が言っていた、脳破壊は危険だと」
「リョウもちょっと顔赤くしながら言うのやめて、明らかにさっきの出来事引きずってるでしょ」
山田さんの手を握ってから後藤さんの様子が何だかおかしくなられてしまい、スタジオに移動してからもずっとこの状態にあられます。ここは私の出番にございますね。
普段ならばナデナデで落ち着いてくださるのですが、この感じを見るに……恥ずかしいですがアレをするしかないようです。私は後藤さんの隣に行き、つま先立ちをして彼女の耳元へそっと口を近づけて。
「ご、後藤さん……げっ元気出してー」
「―――わ、私は武道館を埋める女です!!」
高らかに武道館ライブを宣言されました、口調を崩すという行為は本当に恥ずかしいですね?ですがこれをすると後藤さんに効果抜群なのです……よく分かりませんがフランクな感じがお友達として嬉しいのでしょうか?
「……あの2人はいつもあんな感じなの?」
「花音、やっぱりおもしれー女」
ついにバンド練習が始まります、それにしても私はとても楽しみでございますよ?何故ならお2人はきっとギターヒーローとしての彼女の実力に驚かれるからです。その光景を想像して自然と自分の頬が緩むのを感じました。
「……どうも、プランクトン後藤です」
「売れないお笑い芸人みたいなの出てきた!?」
後藤さんは私の背中に張り付き、完全に意気消沈なご様子。その理由はというと、彼女の演奏がいつも押し入れで弾いているものとはもはや別物レベルな完成度になってしまわれたからです。私も隣でよく聞いていましたから分かります、直球で申し訳ありませんが今の後藤さんは実力を全く出せていないように思え……どうしてでしょうか?
疑問に対し頭を悩ませていると。
「かか花音ちゃん、さっきの演奏なんだけどね?たっ、多分私は」
後藤さんが2人には聞こえないような小声で私に話しかけてこられました、やはり何か理由があられるのですね。もし体調が優れないとかならば無茶など当然させられません、その場合は残念ですが「だ、誰かと目を合わせる事が出来ないコミュ障だから上手く出来なかったんだと思う……」
数秒ほどお互いに沈黙し合った後。
「……よしよし、大丈夫でございますよ後藤さん」
「アッ、かか花音ちゃんの優しさが刺さる結婚したい……ってもっもう決まってるんだけどねプロポーズもされたし」
「?」
そんな私達のやり取りを見ていた伊地知さんと偶然視線が合ったのですが、その瞳からはまるでとんでもない勘違いに気づいたけれど気まずくて絶対言えない。そんな複雑な感情が伝わってきました。
気になりますが今は後藤さんの演奏の件が優先でございます、ですが……私に何が出来るというのでしょうか?
「無理強いするものじゃない」
「……だよね、無理なお願いしてごめん!」
考えてる間にも話が終わってしまいそうになっておられて、私は未だ発する言葉が出てきません。
「ほっ、本当に声かけられて嬉しかったんです、バンドはずっと組みたいと思ってたから。ででもメンバー集まらなくて、だから普段はカバー曲ネットにあげたり……ここ数年の売れ線バンドは大体」
「売れ線のカバーばっか、何かギターヒーローさんみたいだね?多分私らとそんなに歳変わんないと思うんだけど。花音ちゃん知ってる?」
「いえ、知らないでございまする」
「ま、まする?」
「……ます」
つい動揺からか言葉がおかしくなってしまいました、それにしても伊地知さんがギターヒーローをご存じだったとは驚きにございます。しかもファンであられるらしくいつか一緒に演奏したいとまでおっしゃっていて、今一緒に弾いたのが本人というのが何だか不思議に感じるのと同時に改めて私は思いました。
「えっとね、何が言いたいかっていうと。上手くて話題な人もね?私達が見てない所で沢山、たっくさんギター弾いてきたんだろうなって!」
―――そう、後藤さんは本当に凄いのです。私が出会った時から既にギターの練習を毎日沢山されていると話を聞き、友好を深め家で演奏を見せてもらう頃にはもう腕前は凄まじいものになっておりました。
この場で何を言っていいか分からなかったのですが、私だから言える事がございます。後藤さんを知ってるからこそ……後ろを見ればいつの間にか私の背中から彼女は離れておられて。
ふふ、流石後藤さんですね。
「後藤さん」
「かっ、花音ちゃん?」
「―――頑張ってください、あなたを応援しております」
そんな私の言葉を聞いて、後藤さんは嬉しそうに笑ってくださいました。
「みなさーん!下北盛り上げていきましょう!!」
「……さっきの花音ちゃんとのやり取りの後で、完熟マンゴーなのはどうなんだろうね?」
「いいんじゃない、花音は嬉しそう」
「マジかぁ」
山田さんのアイデアでダンボール箱に入られた後藤さん、その大きいお姿はまるで変身したようでとてもカッコいいと私は思います。
この後は後藤さんのあだ名が「ぼっち」に決まられたり、バンド名が結束バンドであるのが判明したり致しまして。私は最初から「後藤さん」と呼んでいたので初めてあだ名が付いて嬉しそうでございました……そんなやり取りをしていると、どうやらそろそろ出番だそうです。
「でっ出番がくるんだ、かか花音ちゃんも完熟マンゴーの中に入って一緒に出て……」
「ふ、2人入れるでしょうか?」
「……待って、花音をライブに出すなら顔出しさせよう。そうすれば絶対リピーターがついて儲かる」
「いや普通に2人はダメだよ??後リョウは花音ちゃんを客寄せに使おうとするのやめろ」
私達に呆れ顔を向ける伊地知さんでしたが、次第にその表情を柔らかくしていかれて。
「大丈夫!下手でも楽しく弾く事だけは心がけよう、音って物凄く感情が現れやすいから。技術を求めていくのは次からで全然いいよ、それじゃあ……行こう!」
ついにライブでございます、ですが後藤さんなら大丈夫。そう確信している私はダンボールから顔出ししている彼女と顔を合わせ……表情作りは苦手でございますが、それでも精一杯優しく微笑み。
「―――後藤さん、行ってらっしゃいませ」
そう言うと、何故かお顔を真っ赤にされた後藤さんは段ボール箱に入った状態でありながら見た事のないスピードで走り去って(??)行きました。
「じゃあステージ上がるよ……ってぼっちちゃんすげぇ顔してるけど大丈夫?」
「いいい行ってらっしゃいませとかまだ結婚してないのに、あっでもプロポーズ済みだからもう実質結婚してるようなものだよね」
「あ、あのさ?さっきも何回か言ってたけどその結婚とかプロポーズされたとかってどういう意味なの」
「えっ、あっそれは言葉の通り花音ちゃんが前に押し入れの中で私にプロポーズしてくれたからです」
「……よーし!お客さん待ってる事だし行こ「ぼっち、それ多分だけど勘違い」おいこらリョウ!!ぼっ、ぼっちちゃん?い、今のはリョウの軽い冗談だから気にしないでね!?」
「……ヴァァァァァァ!???」
ライブ終了後。
「後藤さんの勇姿、しかとこの目に焼きつけまし「かかか花音ちゃん!ここっ、この前押し入れの中で私にプロポーズしてくれたよね!?」
「……プロポーズ、ですか?」
いきなりで面を食らってしまいました、プロポーズとはドラマの話でもされてるのですかね?申し訳ありませんが私はそういったものは見ないので分かりません……ですが後藤さんも恋愛ドラマなど見ないとおっしゃっていたような。もしかして最近ハマったりしたのでしょうか?
「後藤さんが面白いというのなら私も興味があります、そのドラマは何てタイトルでございますか?」
後藤さんは全てを察したように呆然とされた後。
「―――ア゛ッ゛」
「ご、後藤さん!?」
一瞬で溶けてしまわれました。
「ぼっち、成仏して」
「いや勝手に殺すな」