TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド 作:ガテル
溶けてしまわれた後藤さんをナデナデで何とか復活させた後、ライブハウスを出た帰り道に後藤さんは「かっ花音ちゃん、ぜぜ絶対コミュ障直してギターヒーローとしての私の力を発揮してみせるからね。虹夏ちゃん、リョウさん、そして結束バンドのために……!」と宣言されて……私はその決意に心の底から打ち震えました。何故なら彼女は自らが不得意とするものでも誰かのために立ち向かおうとされてるのです。
しかし、その宣言をされた後にとても嬉しそうなお顔で「そっ、それに力を発揮して演奏しライブハウスの観客達を沸かせるカッコいい私を見ればきっと惚れちゃうに違いないよね……そそそしていつかプロポーズもされるウヘヘッ」とおっしゃっていたのは一体……いえ深く考える事ではございませんね。どうやら後藤さんは恋愛ドラマにハマっていられる様子でしたし、プロポーズというのもそれ関係でしょう。ええ、間違いありません。
そして今日はというと。
「―――という事で、第1回!結束バンドメンバーミーティングを開催しまーす!拍手!」
「味付けとして花音も入れます」
「リョウは花音ちゃんを料理の食材みたいに言うのやめて??」
「パ、パチパチでございます」
昨日に私の元へ伊地知さんからロインが届き、今後のバンド活動についての話し合いに私も来ていいよと誘ってくださいました。最初のライブの時といい、後藤さんのお友達とはいえ実質部外者に等しい私でもOKしてくださるのは本当に優しいですね……ですがいつまでもこのご厚意に甘えるわけにはいきません。後藤さんの傍にいるという誓いが私にはあるのですが、それを違和感のないように行う方法を考えなければ。
「ええと……思えば全然仲良くないから何話したらいいか分かんないや」
「伊地知さん、私に案がございます。やってもよろしいでしょうか?」
「うん?全然いいよー!それじゃあ花音ちゃんからね!」
困ったように苦笑いされておられた伊地知さん、私は彼女に恩があるのでそれを少しでも返すためにここは先陣を切らせて頂きました。当たり前ではありますが、人が仲を深める上で大切なのはお互いを知る。つまりその場合自己紹介は必要不可欠なのです、前回スターリーに訪れたときは山田さんへの名乗りをお2人に止められてしまい出来ませんでした。
山田さんはもう私の名前を知っておられますが、自分で伝える事に意味があると思っています。
「山田さん」
「何?」
私は山田さんの方へしっかりと全身を向けました、公園のときは伊地知さんと後藤さんの反応があまりよろしくなかったようなので表情や声の出し方などを更に柔らかく……そして優しくさせるよう自分に言い聞かせ。
「―――秀華高校1年、琴寄花音と申します。山田さん、改めてよろしくお願いいたしますね?ふふっ」
「……!?」
山田さんはよほど驚かれたらしく、目を丸くされ固まってしまわれました。そんなに私の名乗りが上手かったのですかね?ならばとても嬉しいです、それにしてもお顔が随分赤いですがどうされたのでしょうか。
「リョウ!?ねぇリョウ!?ダメだ反応がない……ぼっちちゃん、悪いけどちょっと助けてくれないかな?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛か゛わ゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛」
「こっちは正気を失っちゃってる!」
「伊地知さん、私の案はどうだったでしょうか?」
山田さんと一緒で何故か顔を赤くされている伊地知さんは頭を抱えながら。
「……ごめんね、花音ちゃんが名乗るのは今後禁止にさせてもらうよ。誰かに聞かれたときは私が代わりに説明するからさ」
……やはりコミュニケーションというのは難しいですね。
あれから少ししてバンドミーティングは再開され、山田さんが持ってこられたバラエティ番組で見た事のあるようなサイコロを回されると出たのは学校の話。略してガコバナでした。
山田さんと伊地知さん、どうやらお2人は同じ下北沢高校の生徒らしく住まいも下北だそうです。
「あれっ、ぼっちちゃんと花音ちゃん秀華高でしょ。家ここら辺じゃないの?」
「いいえ、県外の片道2時間の遠距離通学でございます」
「な、何で?」
「……過去を知らない所に行きたくて」
「私は後藤さんにお供するために秀華高校を選びました、例え彼女が日本を飛び出して海外の高校に通うとされても着いて行く覚悟はあります」
アメリカのハイスクールなど楽しそうでございますね、私は外国の映画が好きでそういったものに多少憧れを抱いているものですから。最も英語を話せないと大変そうですが。
「じゃあ南高でも行く?南極高校」
「……い、行きます」
「そんな高校あるか」
私と後藤さんはクラスが違うので昼休みなどを除きお互いに基本1人です、なので残念ながら学校の話が何かあるわけでもなく。それに後藤さんが落ち込まれてしまったのもあり、このままガコバナは終了かと思ったのですが……伊地知さんがこちらをチラチラと見てきておられる事に気が付きました。その瞳からはまるで何かが気になって仕方がないというような強い思いを感じます。
「あ、あのさ?こういうの聞いちゃって悪いと思うんだけど、花音ちゃんって本当にクラスの子達とは関わりがないの?」
「伊地知さんが悪く思われる必要などございません、私がクラスで1人なのは事実ですからね。ええ、関わりはないですよ」
「……こんなに可愛いんだから女子も男子もほっとかないと思うんだけどね」
伊地知さんは私の返答がイマイチ腑に落ちないらしく首を傾げています、嘘偽りはないのですが……クラスでの私をお話すれば納得してもらえるでしょうか?そう聞くと興味深々そうに頷いてこられました。
山田さんも会話にこそ参加はしていませんが、どうやら少し気になられているご様子。後藤さんは自分の学校生活で色々思う所があったらしく、今は完全に機能停止状態であられます。この話が終わったら復活させなければいけませんね。
私の話に面白い要素など無いのに、お2人が興味を示されている理由が分かりません。ですが、納得してもらえるためには話す必要があるようです。
「―――そうですね、まず登校して私が教室に入ると皆さんの視線がこちらに向くのはいつもの事でございます。理由は私の容姿が悪いせいです」
「リョウ、私もう頭痛くなってきちゃったよ」
「私は始まる前に思考を捨てておいたから大丈夫」
入った時だけでなく授業中も視線を感じます、それもどこからかではなく様々な所から……これも昔からでもはや慣れているのですが。
「次に、私は誰かから話しかけられるというのが全くないのです。席に近づいてもくれませんし、何度か勇気を出して話しかけた経験もございますが男子も女子も揃って顔を赤くされながら逃げられてしまわれて……恐らく声をかけたタイミングが悪かったのでしょうね。怒らせてしまいました」
逃げていかれた男子生徒が、クラスの端の席で「お、俺声かけられちゃったよ!」「お前マジでうらやまー!」なんて友達と話されてた気がしましたが100%気のせいでしょう。
視線、話さない、この二つで私の学園生活に説明が付きますが個人的に話しておきたいものがもう一つございます。
「これは数日前に起きた事なのです」
「あっ、うん……」
「虹夏、この話にはツッコミどころが多すぎる」
「それ思ってても言っちゃダメ」
授業中、私の足元に消しゴムが転がってきました。どうやらそれは斜め後ろの席の女子生徒の物だったそうで、拾って渡して差し上げたときにお互いに手が触れたのですが……そのとき「花音様の美しい手に私なんかが触れてしまって申し訳ありません、責任を取ってこの手はもう二度と洗いませんから……へへへ」
そう周りに聞こえないレベルの小声でおっしゃっていて、クラスの端で話されていた男子生徒と違い距離も近く流石に聞き間違いではないと思うのでございます。色々考えた結果、私はある答えに到達しました。
「―――もしかして一般女子高校生の間では、お互いを様付けして呼び合うのが流行っているのかもしれません。お2人は何か知っていますか?」
私の話を聞いた伊地知さん、そして無表情の山田さんまでもがどこか疲れた雰囲気を漂わせておられて。
「……私は一般女子高校生じゃないから分からない」
「何て言うか、花音ちゃんは色んな意味で凄いね……ガコバナトークが思ったよりも濃かったなぁ」
私のお話も終わり、後藤さんを復活させましたのでバンドミーティングはまだまだ続きます。
「なな何この空気、あっ私が1つもガコバナ出来ないからシラけさせたんだ陰キャでごめんなさい……」