TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド   作:ガテル

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第6話

 

「初ライブはインストだったんだけど、次はボーカル入れたいんだ。本当は逃げたギターの子が歌うはずだったんだけど……どこ行ったのかなぁ?」

 

 

ガコバナ、次にオトバナ(音楽の話)、そして3つ目はライブの話となりました。私は音楽に関して詳しいわけではございませんが、バンドにとってボーカルがどれほど重要な存在なのかは理解できます。それにしてもギターの人はどうして逃げてしまったのでしょうか?事情があられたにせよ、何も言わずに消えるというのは少々おかしい気が致します。

 

伊地知さんは困ったようにため息をつかれており……何とか出来ないものですかね。

 

 

「ボーカルまた探さなきゃ、私は歌下手だし」

 

「……ボーカル探し、ですか」

 

「花音ちゃん?」

 

 

―――伊地知さんの言葉で私は閃きました、自分で言うのもアレですがこれは素晴らしい案だと思います。何故なら、伊地知さんへの恩返しと後藤さんのお傍にいるという私の誓いの2つを叶えられる一石二鳥なものだからでございます。その案というのは。

 

 

「お歌には多少の自信がございます、ですから私が結束バンドのボーカルを務めるというのは「かか花音ちゃん、そっそれはやめた方がいいと思う……」

 

「めっちゃ被せてきたね」

 

「花音がボーカルするの私はいいと思う、それでブロマイドやアクキーとかの花音グッズを販売すれば絶対儲かる。ジャブジャブ」

 

「おいリョウ」

 

 

何故か顔を青白くした後藤さんに否定されてしまいました、今も彼女は必死に頭を横にブンブンと振られておる事からよほど反対だそうで……お傍にいられる良きチャンスなのにどうしてでしょうか?

 

 

「リョウの発言の後半部分は置いとくとしてさ、花音ちゃんは歌えるんだよね?それなら私もボーカル案には賛成だよ。ぼっちちゃん的にはどこかダメな所があるの?」

 

「そっ、それはその」

 

「まぁ一度花音に歌わせてみれば?それで判断すればいいんじゃない」

 

「……そうだね!花音ちゃん、今歌えるかな?」

 

「はい、喉の調子も万全にございます」

 

「アッ終わった……」

 

 

すなわち加入オーディションにございますね、この機会を無駄にしないよう頑張らなければ。私は後藤さんのお部屋の押し入れの中で、彼女のギター演奏に合わせて何度も歌ってきました。そのたびに「ウウッ……かっ、花音ちゃんは天才、デビューすれば速攻キャパ1万埋められる逸材だよ」と褒めてくださったので、自分ではあまり実感などないですが私にはきっと才能があるのかもしれません。

 

 

「それでは、歌わせていただきます」

 

 

後藤さん、必ずや受かってみせますからね。

 

 

 

 

 

「……天使の虹夏が見える、財布ごと私にくれる虹夏が」

 

「……ライブハウスが人でいっぱい、やったよお姉ちゃん」

 

「にに虹夏ちゃん、リョウさん、めっ目を覚ましてください……!」

 

 

どうしてこうなってしまったのでしょう。

 

私は歌に集中し精一杯だったのですが、1曲歌い終えて周りを見渡してみればそこは地獄と化していました。意識が混濁し幻覚を見ておられる伊地知さんと山田さん、どこから出したのか完熟マンゴーの中に避難しておられる後藤さん……その後後藤さんと協力し、お2人を何とか現実へと引き戻す事に成功したしました。

 

 

「普段の花音ちゃんの透明感溢れる声から、どうやってあのデスボイスが出るんだろ……あっ!?いや悪いって意味じゃなくてね!?ちょっと独創的というか、あはは!」

 

「花音、恐るべき」

 

かか花音ちゃんにしょ、正直に伝える勇気がなくて……」

 

 

自信があっただけにまさか自分が歌下手だとは普通にショックでございます……私のボーカル案は無しになり、ライブの話は後藤さんが結束バンドの作詞を務める事が決まって終了いたしました。逃げたギターの人がボーカルをする予定だったらしいのですが、他の人を探すというのは中々に大変そうなので難しいでしょうが戻ってきてほしいと思ってしまいます。

 

……いえ、自分の心配もするべきですね。ボーカルの話が消えてしまったので、私はお友達として後藤さんの近くに違和感のないよういられる別の方法を探さなければなりません。しかしどうすればいいのでしょうか?

 

 

「次はノルマの話ー!」

 

「説明を省いて結論を述べると、売れるまでめちゃくちゃお金がいる」

 

「いや何で説明省いた!?そこだけ言われても全く意味分かんないよ!?」

 

「私に財布ごとくれる理解のある虹夏がいないと思うと、何か現実が辛くなってダルい」

 

「こいつ……」

 

 

伊地知さんの説明によると、バンド側にはライブハウス側から集客を保証するためのチケットノルマというのが課せられているらしいです。そして、ノルマ以上売れた分はライブハウスとバンド側で分け合われるのですが……ノルマ分集客できない場合はその分を自腹で支払われなければならないそうでございます。

 

昨日のライブは伊地知さんの友達がこられたおかげで達成できたそうです、しかし山田さん曰く「あの出来では2回目は来ない」。後藤さんと山田さん、後私にも友達はおりません。結束バンドも色々と大変な状況であられ……それに私自身がここに居るための方法も見つからない、そんなWパンチに落ち込んでしまっていたのですが。

 

 

「という訳で!当分ライブのたびに数万円必要だからノルマ代、機材代諸々稼ぐためにバイトしよう!」

 

 

バイト、バイト……

 

 

「バイトォ!?」

 

「バイトでございますか!?」

 

「2人とも今日イチ声出たね……」

 

 

―――これです、これなら後藤さんのお傍にいるのと伊地知さんへの借りを返す事。その両方を叶えられます。ちょうど今、伊地知さんと山田さんは優しく(??)後藤さんをバイトに勧誘されている最中ですね。チャンスはここしかありません。

 

 

「頑張りましゅ……」

 

「私も頑張らせていただきます」

 

「ありが……ん???」

 

 

 

 

 

 

「―――それじゃあ明日から花音ちゃんはひとりちゃんと一緒にバイトするのね!」

 

「はい、これで誓いを守れます」

 

「ホント、花音ちゃんのおかけでひとりちゃん(の将来)は安泰だわー」

 

「そう、ですね?」

 

 

私は今、後藤さん家のリビングでお母様と明日から始まるスターリーでのバイトについてのお話をしています。お家には何度も訪れていて、ふたりさんはもちろんお母様やお父様とも親しい間柄にございます。夫婦揃ってとても優しく、私にも明るく接してきてくださって本当に感謝しかありません。

 

それにしても私もバイトをやれる事になって良かったです、山田さんは「負担軽減!」と即OKしてくださり伊地知さんも「いきなりでビックリしたけど、ぼっちちゃんにとってもそっちの方がいいんだろうなぁ。それに当然だけどバンドメンバーではないんだからノルマ代を負担する必要なんてないからね?負担軽減とかほざいてるリョウは後でしばいておくとして……それじゃあこれからよろしくね!花音ちゃんいい子だしバイトしてくれる事になって私も嬉しいよ!」

 

そう笑顔で言ってくださって嬉しかったです、バイトは初めてで緊張致しますが頑張らなければ……心の中で自分に言い聞かせていたそのとき。

 

 

「お母さーん!かのちゃーん!お姉ちゃんが風呂で沈んでる!」

 

「後藤さん!?」

 

「まぁ!それは大変、ここは花音ちゃんに助けに行ってもらいましょうか~服はちゃんと脱いでね?」

 

「……その、脱ぐ必要はあるのでしょうか?」

 

「当然!だって服のままだと濡れちゃうわ、でもそんなときはタオルを体に巻けば裸じゃないし問題ないのよ!」

 

 

お母様はニッコリ笑顔のまま、浴室に向かう私を見送られました。

 

勢いに全くついていけません、しかし後藤さんが沈んでおられるピンチなのは確かにございます。早く助けなければ……私は前世の記憶が影響してか性別認識が未だに曖昧で、自分の肌を見るのも見せるのも嫌なのですがここは腹を括るしかないですね。

 

急いで服を脱ぎ、タオルを巻いて私は浴室のドアを開けました。

 

 

「後藤さん、大丈夫でございますか!?」

 

「えっ?かっ花音ちゃ……ってななな何でそんな姿!??」

 

「それより今は助け」

 

 

目の前の光景を見て、言葉が途中で止まってしまいました。沢山の氷が浮かんでいるお風呂、何故こんな状況になっているのでしょうか?

 

 

「これは一体……」

 

 

私が戸惑っている中、後藤さんの様子が何だかおかしくなられ始めました。氷風呂という冷たさにも関わらず、何故かお顔が真っ赤に染まり。

 

 

「かか花音ちゃんの白く陶器のように滑らかな肌、ほっ細く美しい手足。それに鎖骨のラインがあまりにエ゛ロ゛い゛……後藤ひとり高校1年生、人間国宝にはなれなかったけど人生に悔いはありません」

 

 

……満足げなお顔で沈んでいかれる後藤さんを何とか救出する事が出来ました。

 

 

 

 

 

 

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