TS銀髪美少女に感情ぐちゃぐちゃにされる結束バンド   作:ガテル

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第7話

 

初バイトの日になり、私達はSTARRY入口前までやって参りました。しかし、先ほどから後藤さんが無言で私の背中に張り付いたままお体を動かしてくれず入る事が出来ない状態となっています……昨日の氷風呂もどうやらバイトが嫌な故に行った行動だそうです。私も緊張しているのでお気持ちはとても分かりますが、それ以上に伊地知さんや山田さんとの約束を破るわけにはいきません。ここは何とか後藤さんを説得する必要がありそうですね。

 

私は後ろにいる後藤さんに声を掛けようとしたそのとき。

 

 

「チケットの販売は五時からですよ、まだ準備中……マジかよこの子めちゃくちゃ可愛いな

 

 

―――私達、いえ私を鋭い目つきで睨んでこられる金髪の女性が現れました。発言からしてスタッフさんですかね?顔が赤いのは怒っているからでしょうか……後藤さんもブルブルと震えておられてその振動が背中に伝わってきますし、この人にちゃんと事情を説明して誤解を解かなければ。

 

 

「私達は、その……本日からSTARRYでバイトを務めさせていただく事になっています。誤解を招いてしまい、誠に申し訳ございません」

 

もはやお人形さんだろ、くっ……私は可愛いものが好きなんだ。こんなんド直球で刺さるじゃねぇか」

 

「え、えっと」

 

 

その後も10秒ほどこちらを睨んできたのですが、どうやら我に返られたらしいのかコホンと咳払いをされて。

 

 

「……悪い、何でもない。そうか、新しいバイトの子達か。なっ、なら入りなよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

未だに顔が赤いように見えるのは気のせいですかね?

 

 

 

 

 

「―――私、ここの店長だからよろしく」

 

 

金髪で鋭い目つきの女性、何と彼女は店長さんだそうで驚きました。見た目からしてまだお若いのに凄いです、後藤さんも最初は店長さんに怯えてしまわれていましたが「マンゴー仮面」とあだ名を付けられて嬉しいらしく頬を緩ませておりました。

 

そのタイミングで伊地知さんと山田さんも来たのですが、店長さんが伊地知さんのお姉様という更なる驚きの事実も判明いたしました……そういえば公園からSTARRYへ向かう最中でそんなお話をされていましたね。雰囲気こそ違いますが、確かにお2人は似ていらっしゃってちゃんと姉妹であられるのが分かります。

 

そんなやり取りがあり、ついにバイトが始まりま「ちょっと、こっち来て」

 

店長さんが私を呼んでいらっしゃって、何のお話なのかと疑問に思いつつ小走りで店長さんの元へ向かいました。

 

 

「トコトコしてて、小動物みたいで可愛いな……」

 

「?」

 

「何でもない、それより名前聞いてなかっただろ。教えてくれない?」

 

「……それは」

 

 

私の名乗りはこの前何故か伊地知さんに禁止にされてしまい、今後は代わりに彼女が説明すると決まったのですが……チラリと横目で見れば現在伊地知さんはテーブルの下に隠れた後藤さんを対処している最中なようです。黙り込んでしまった私を店長さんが訝し気に見てきておられますし、そもそも働く身としても自らで名乗れないなど完全に無礼でございますね。伊地知さんとの約束を破る事になってしまいますが、ここは仕方ありません。

 

やるならば半端な態度ではダメだと思います、なので公園や山田さんのときよりも更に表情や声の出し方を和らげられるよう私の全力を尽くして頑張りましょう。

 

 

「―――私は琴寄花音と申します、店長さん。これからよろしくお願いいたします」

 

 

私の名乗りを聞いた後、何故か店長さんは固まってしまわれました。そしてそこから少しの沈黙が続いた後、キラキラと瞳を輝かせながら。

 

 

「花音ちゃん、そう呼んでもいいか?」

 

「か、構いませんよ」

 

「花音ちゃんは優しいな……初バイト頑張れよ、私はしっかり見てるからな?」

 

「……ありがとうございます」

 

 

店長さん、第1印象は少し怖かったのですが優しい方で安心しました。

 

 

 

 

 

―――私と後藤さんは、まずドリンクについて伊地知さんから教わる事に。ビールやカクテルなどドリンクの種類に置いてある位置、説明を聞きながらすぐに覚えるのは大変そうだと気落ちしてしまいました。しかし……後藤さんが唐突にギターを演奏し出したのです、どうやら彼女は弾きながらリズムに合わせて覚える作戦を取ったらしくそのロック魂に私は心の底から感動致しました。私も頑張らなければいけませんね。

 

 

「あっ、いつの間にかお客さん入ってきたねー!ぼっちちゃん、花音ちゃん、これから忙しくなるよ!」

 

「かか花音ちゃん、ややっぱり私にはむっ無理だよ……あっでも一緒にやれば大丈夫かも。具体的にはおててを重ねてドリンク渡しをウヘヘッ」

 

「つまり、協力プレイでございますね?」

 

「ダメに決まってるでしょ」

 

 

 

そもそもドリンク売り場に3人は立てないらしいので、まずは私が伊地知さんと一緒にする事となりました。少々、いえ……かなり緊張します。名乗りよりも遥かにハードルの高い接客業、上手くできる自信がありません。ですが、精一杯挑むしかないですね。

 

 

「すみません、コーラください」

 

「私はジンジャーエール」

 

「―――かしこまりました、少々お待ちください」

 

「「えっヤバ可愛すぎ、無表情なクール系美少女良い……」」

 

 

やはり緊張してしまい表情は硬く、それに手慣れていないせいでお出しするまで時間がかかるという怒らせてしまっても仕方のない接客だったのですが……お2人とも不機嫌どころかむしろニッコリ笑顔で受け取ってくださいました。お客様の優しさに感謝いたします、当然優しさに甘えてはいけません。私も問題点を改善できるように頑張れなければ。

 

 

「わわ私はあなたを注文しま……ウーロンハイで」

 

「か、かしこまりました?」

 

「花音ちゃん、私はりんごジュースで」

 

「いや何でお姉ちゃんこっち来てるの??てかりんごジュースはないよ???」

 

 

初日なのもあり到底手際が良いとは言えないものでしたが、何とか頑張りました。そして私は後藤さんと交代を―――

 

 

「ぼっちちゃん、ウーロン茶……って何でまだ花音ちゃんが立ってるのかな?」

 

「それは……その」

 

「かか花音ちゃん!はい!」

 

「ウ、ウーロン茶でございます……」

 

「だから協力プレイはダメって言ったでしょ!」

 

 

下から小声で後藤さんが頼んでこられたのでつい……本当に申し訳ございません。

 

 

 

 

その後、意気消沈状態と化してしゃがみ込まれた後藤さんにどう接していいか分からず困っていたのですが「ぼっちちゃん、花音ちゃん、見て見て」と伊地知さんから声をかけられ立ち上がると……ステージ上のバンドの方達とその登場に歓喜する観客の光景が目に飛び込んできました。

 

始めての雰囲気に何だか不思議な気分でございます、そんな風に思っていると山田さんがやってこられて。

 

 

「お疲れ、花音はどれくらい稼げた?」

 

「リョウはもっと言い方ってやつを考えようよ……まぁ実際花音ちゃんの接客は凄かったけどね?クッ、クールな顔もすっごく可愛かったしさ」

 

「……そう」

 

 

伊地知さんと山田さんのお顔は少し赤くなられていました、私は見ていませんがそんなにクールで可愛い方がお客様の中にいらっしゃったのですね。

 

後藤さんが横から私を凄い目で見てきているのはどうしてでしょうか?

 

 

「あれっ、そういえば受付は?」

 

「店長が代わってくれた、今日のバンドはどれも人気あるし勉強になるから見とけって」

 

「うちのお姉ちゃんアレなの、ツンツンツンツンツンツン……デレ。みたいな?」

 

「そうなのですか?店長さんは優しい方でしたよ、私のバイトを頑張れと笑って応援してくださいました」

 

「えっ何そのお姉ちゃん……」

 

 

まるで自分の知るイメージと噛み合わないというように、伊地知さんは首を傾げながら頭に?マークを浮かべておりました。嘘ではないのですが……新たな謎が生まれる中、後藤さんが私の服の袖を掴んでいる事に気が付きました。彼女の方を向くと、とても辛そうな表情を浮かべておられて。

 

 

「す、すみません……戦力にならないどころか目も合わせられなくて」

 

「大丈夫!今日は初日なんだし、すぐ慣れるって!」

 

「そうです、私も不愛想で手際も悪くダメダメでございましたからね」

 

「わっ、私みたいなミジンコ以下にどうしてそこまで優しくしてくれるんですか?」

 

 

そこから伊地知さんは優しく語られました、このライブハウスが好きだと。そしてスタッフさんがお客様と関わるのはドリンク売り場と受付ぐらいなもので、いい箱だったって思ってもらいたい気持ちがいつもある。「私、ぼっちちゃんにも良い箱だったって思ってほしいんだ。楽しくバイトして楽しくバンドしたいの、一緒に。もちろん花音ちゃんに対しても同じ気持ちだよ?立派なSTARRYの一員であり、結束バンドにも必要な存在なんだから!」

 

 

演奏が始まり、ライブハウスが熱気に包まれていきました。そんな中で後藤さんの手が私の服の袖から離れていくのを感じ―――もう大丈夫でございますね。

 

 

「すみません、オレンジジュース」

 

「は、はい」

 

 

ドリンクを渡すときの後藤さんの笑顔はぎこちないものでしたが、笑顔すら作れなかった私と比べて……流石後藤さんでございますね。

 

 

 

帰り道。

 

 

 

「かか花音ちゃん、私意外とバイトやっていけそうな気がする。さっ最後の笑顔は酷いものだったけどね……」

 

「きっと余裕です、それに私はあの笑顔……嫌いじゃありませんよ?ふふっ」

 

「ヴァ!??」

 

 

お友達の後藤さんの努力の証なのですから、嫌いな訳がございません。

 

 

 

 

 

 

 

「花音ちゃん……」

 

「店長??」

 

「な、何だよ」

 

「……いえ、何でも」(琴寄さん、どうか頑張ってくださいね)

 

 

 

 





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