TS女剣士は刀を振る   作:砕け竹光

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画面の向こうの悪鬼羅刹 その3(終)

 

 

 睨み合う千鶴どのとモンスター。

 

 微笑ましくも緊張感に満ちたその様子を、某はデジタルカメラで生配信する。画面の中では、その様子を目の当たりにした鬼畜外道どもが打ちこんだコメントが流れていく。

 

 

 

<げっ、あれってブルラッシュじゃん>

 

<まじかよこんなスタート地点に近い所にも出てくるのかよ>

 

<なんかやばいの、あれ?>

 

<初心者が大怪我して療養する事になる原因の3割を占めてるモンスター。通称、“配信事故お届け猪”>

 

<はえー。強い奴なのか>

 

 

 

 状況を理解しているものも居れば、相手モンスターの事を知らない無知な者もいる。様々な反応を示す彼らだが、共通しているのはあくまで千鶴どのの苦境を娯楽として楽しんでいる、という事だ。

 

 悪漢どもめ。

 

 ただ、流石にモンスターについては一定の知識をおさめている者が多いようだ。奴らの言う通り、あの猪モンスターはわりかし、初心者が事故る事が多い相手である。

 

 奴らの行動は単純明快、野生の猪さながらに猪突猛進、突っ込んでくるだけ。だがそれだけに厄介だ。

 

 有無を言わさず繰り返される突進は、攻防一体の強力な行動でもある。

 

 茶色い猛進を回避している限りなかなか反撃はできず、かといって生半可な武器や防具でその突進を受け止める事は難しい。装備の整っていない初心者では、返り討ちに合うのが関の山だ。

 

 

 

<やばいよやばいよ、センちゃんでどうにかなる相手?>

 

<駄目だって、これまでの配信を見る限り、彼女一般人に毛が生えた程度の実力だぞ!?>

 

<おししょうさまみてないでたすけてあげて>

 

 

 

 だが、それはあくまで何も知らない素人の話。

 

 当然ながら、某とて何も考えずに千鶴どのに素振りをさせていた訳ではない。彼女が初心者である事を考慮し、恐らく対面するであろう苦境を想定して太刀裁き、体裁きを教え込んだ。

 

 あとは、千鶴どのがどれだけそれを血肉に出来ているか、という話。

 

 ことここにあっては口を挟むのも野暮。某は黙って見守るのみである。

 

 ざっ、ざっ、と土をかいていた猪の足の動きが一瞬止まる。

 

 来る。

 

 直後、まるで指ではじかれたかのように、茶色い体躯が残像と化した。弾丸のように、放たれた質量が千鶴どのに迫りくる。

 

「てやぁっ!」

 

 そしてそれを、千鶴どのは紙一重で回避した。

 

 相手の獣からは、突然標的が消失したように見えただろう。彼女はサイドステップで見事に獣の突進を回避しつつ、手にした剣で堂に入った一撃をその無防備な側面に加えた。

 

「ぷぎぃ!?」

 

 自慢の突進を回避されたばかりかすれ違い様に一撃を食らい、けだものが困惑と苦痛の悲鳴を上げる。そのままよたよたと走り抜けたモンスターは十分な距離を取った所で停止し、ちょこちょことふらついた足取りで旋回する。その目が千鶴どのの姿を捕らえると、ふんす、と鼻息も荒く再び突進する。

 

「ふがふがっ!」

 

「おおっと!」

 

 先ほどよりも長い助走距離を取った一撃。今度はそれを、千鶴どのは余裕をもって回避する。

 

 無理に反撃をしないのは及第点だ。今のはさっきよりも早かった、同じようにカウンターを狙えばひっかけられていた恐れがある。

 

 大胆に、かつ、深追いはしない。

 

 やはり彼女には一角の才覚があるようだ。

 

 

 

<え、ええ?!>

 

<何今の?! 初心者の動きじゃないぞ!?>

 

<修行の成果という奴?!>

 

 

 

 コメント欄も盛り上がっている。その内容は千鶴どのの体裁きに驚愕するものばかりで、ふふん、師匠としてはしてやったりという気分だ。

 

 そして、くくく、今の動きの詳細を見切れるような者は画面の向こうには居ないらしい。まあその程度だろうな。

 

 今の一連の動き、千鶴どのはただ横跳びで回避しただけではない。その程度で避けきれるなら、あの猪が初心者殺しの名を頂いてはいない。

 

 ああいった獣の突進で直撃の次に気を付けなければならないのは、爪や牙による引っかけだ。特に剣のように大きく肥大化した牙が特徴的なあのモンスターの場合、突っ込んでくる茶色いシルエットをギリギリで回避しようとした所をそれに引っかけられる事故が多い。

 

 だから千鶴どのはただ横に飛ぶのではなく、その過程で体を反転させた。狭い所で相手に道を譲るように体を横にしたのだ。それによって牙によるひっかけを回避しつつ、側面へカウンターを加えられる体制を整えた。

 

 素晴らしいのは、その動きの全てを、某が教え込んだ訳ではないという事だ。

 

 カウンターの一撃こそ、素振りで教え込んだ一撃ではあるが、そこまで繋いだ回避からの流れるような動きは、彼女が自分で編み出したものだろう。

 

 軽く説明した技の概念を自分なりに解釈し、漠然と素振りをするのではなくその動きをどう使うかを自分で考えた。

 

 まさに1を聞いて10を知るという奴である。素晴らしい。

 

 

 

<凄い、連続突進を全部綺麗にかわしてるぞ!>

 

<傷つけられて猛り狂ってるけど、なんか段々動きが遅くなってきてない?>

 

<出血だ! 最初に受けた一撃が、動き回ってるせいでどんどん開いてる!>

 

<そうか、そこまで考えて回避に専念を……!>

 

 

 

 あ、さすがにそのあたりは連中も理解しているか。

 

 先ほどから、千鶴どのは突進の回避に専念している。それは反撃する余裕がないからではない。

 

 ギリギリを狙うカウンターなど、多用するものではない。一撃を与えた以上、あとは避けていれば相手が勝手に弱ってくれる。頭に血が上った獣など、勝手に自ら自滅するだけだ。

 

 奴の突進の後に、まるでインクを零したように血の滴がたれて地面を汚していく。今や、静かな森の小道は一面、モンスターの流した血で真っ赤に染まっていた。

 

 そうこうするうちに、明らかに突進の勢いが弱くなっていく獣。

 

 そして、千鶴どのは力の無い突進をなんなく回避して……。

 

「終わりです!」

 

「ぷぎぃ!?」

 

 力を込めた、正眼からの振り下ろしをその首筋に叩き込んだ。

 

 流れるような見事な一撃。全身を使って繰り出されたその一撃は、数打ちの鈍らであれど、毛皮を断ち肉を断ち、そして。

 

 ぱづん、と音を立ててモンスターの首が宙に舞った。

 

「え゛っ」

 

「見事!」

 

 

 

<首がすっ飛んだ!?>

 

<すげえ、弱っていたとはいえ一撃だぜ!>

 

<センちゃん様の最強伝説の幕開けだ!!>

 

 

 

 わっとコメントも沸く。

 

 今回ばかりは某も同意である。まさに、練習した通りの見事な一撃だった。

 

 デジタルカメラを構えながら、某は勝者を称えるべく、千鶴どのに歩み寄った。

 

「よくやった千鶴どの。素晴らしい太刀筋……ん?」

 

「……」

 

「どうした? どこか怪我をしたのか?」

 

 どうにも、勝者である彼女の様子がおかしい。力なく剣の切っ先を垂らし、ぼうぜんと佇む千鶴どの。

 

 まさか気が付いていなかっただけでどこか掠めていたのか。心配して正面に回り込む。

 

 すると。

 

「……うぷ」

 

「あ゛」

 

 咄嗟にデジタルカメラのレンズを手で押さえるも遅く。

 

 えろえろえー、と虹の滝が彼女の口から迸った。

 

 

 

<あっ>

 

<配信事故>

 

<えんがちょ>

 

 

 

 ええいやかましいわコメントども。ちょっと黙っておれ。

 

 パタン、と画面を閉じてデジタルカメラを鞄に突っ込む。今頃向こうはブラックアウトしているだろうが知った事か。

 

「ち、千鶴どの、しっかりっ」

 

「え、えぅ……えぅ……おろろろろ……」

 

「び、びっくりしたんだな? そうだよな、うん。首を刎ねる感触なんてしりたくないもんな……」

 

 優しい声をかけて宥めつつ、ひたすら背中を撫でさする。

 

 探索に行くという事で、朝、しっかり食べてきたのが仇になったか。

 

 やがて胃の中のものを全部吐き出し終えて、ようやく千鶴どのはひと心地つけたようだった。口元に垂れる胃液と有機物の混合物をハンカチで拭いてやる。

 

「ほら、ここは血の匂いが強い。ちょっとあっちで休んでいるんだ。ほら、水も」

 

「はあ゛~い……」

 

 少し道を戻った所にある切り株に千鶴どのを座らせ、水筒の水を飲ませる。一度口をゆすいでうがいをさせてから、少しずつ飲ませる。

 

 それでようやく、真っ青だった彼女の顔に血の気が戻ってきた。

 

「すいまぜん、じじょ……」

 

「いいから。こっちもちょっと配慮が足りなかった、うん。大丈夫、お前は強い子だ。いまはとにかく気持ちを落ち着かせなさい」

 

「あ゛い……」

 

 しばらく休ませないとこれは駄目だな。

 

 とりあえずある程度持ち直した所で、某は彼女から距離を取った。こういう時、あまり付きっ切りで対応されると逆に気に病む。

 

「某は、仕留めたモンスターから換金素材をはぎ取ってくる。お前はそこで待っていなさい」

 

 言い含めて、モンスターの死骸の所に向かう。連中は強力な自己消化酵素を持っているのか、遺体の劣化が爆速だ。早い所、はぎ取ってしまおう。

 

 と、そこで某はある事を思いついて、デジタルカメラを鞄から取り出した。画面を開くと、案の定、画面の向こうの連中は、しょうもない話に華を咲かせている所だった。

 

 

 

<いやあ綺麗な虹の橋だったな>

 

<普通は悪戦苦闘していく内に慣れるんだが、彼女はお師匠様とやらのおかげで駆け足で強くなったからな。流血の経験もなしに首ちょんぱはきつかったろう>

 

<まあ、大怪我もなくて何より……お、画面が戻ってきたぞ?>

 

 

 

「楽しそうだな吸血鬼ども。弟子の不祥事がそんなに愉快か?」

 

 

 

<めっちゃ怒ってる~けど可愛い声>

 

<センちゃんは無事?>

 

<大丈夫? センちゃんは大丈夫?>

 

 

 

「心配には及ばん、ちょっと気分を害しただけだ。それよりも、せっかくだ。画面の前の貴様らに、ちょっとお得な情報を提供して存じ上げよう」

 

 デジタルカメラを構えたまま、某はモンスターの死骸の前にたった。

 

 なかなか綺麗な死体である。太刀傷は、最初にカウンターで受けた胴体側面のそれと、首を刎ねた一撃のみである。しかし見れば見るほど、素人とは思えぬ綺麗な首の太刀傷である。上手い事頸椎の間に刃が入ったらしく、綺麗にすとん、と首が落ちたのが見て取れる。

 

 

 

<うお、首無し死体ぐろっ>

 

<戦闘のあとの遺体ってもうちょっと損壊してるからなぁ。原型留めてるのなかなかきついぞ>

 

<はぎ取りするのか? でもブルラッシュといえば牙だろ? なんで胴体に?>

 

 

 

 ほぅ。生配信なんぞを好んで見ているからには、この程度の映像には耐性があるか?

 

 では、これならどうだ?

 

 某は小刀を取り出すと、撮影したままモンスターの腹に刃を立てた。す、と毛皮を切り裂き、腹を裂いてモツを取り出す。

 

 たちまちコメントが阿鼻叫喚になった。

 

 

 

<ぎゃああああああああ>

 

<え、なんで腹さいてんの内臓ぐろっ>

 

<あばばばばばば?!>

 

<肝でも持って帰るつもり!?>

 

 

 

「モンスターどもはな、内臓に時折石を持っている事がある。人間でいうと結石とか胆石にあたるのか? それが、実は割と高く売れるのだ。新鮮な死体じゃないとすぐに溶けてなくなってしまうし、戦闘が激しいと体の中で割れて売り物にならないんだが、今回は千鶴どのが綺麗に仕留めたからな。あれば残っている筈……」

 

 左手を腹の中につっこみ、ぐちゃぐちゃと弄る。

 

 現実の獣なんぞは、大体哺乳類であるからして内臓のつくりとか位置は大体一緒だが、モンスターというだけあってこいつらは種類ごとに大きく違う。当然、石のできやすい部位にも違いがあって……確かこいつらは、このあたりに……。

 

 指先に、骨とは違う硬い感触。

 

 これか。

 

「見つけた」

 

 内臓の中から腕を引き抜く。血と肉片と内臓に塗れた指先に、確かに楕円形の、赤黒く輝く結晶体が握られていた。

 

 獣玉だ。

 

「お、なかなかのサイズだ。どうだ? この知識はあまり一般的じゃないだろう、せっかくだから覚えていけ。何かの役には立つ」

 

 新鮮な内蔵をかき回すグロ映像と一緒にな?

 

 想定通り、コメント欄はいつもに比べると大分静かだった。

 

 

 

<え、えぐい映像を見せられてしまった……>

 

<あらためて、セーフティ無い映像配信なんだって思い知らされたな……ちょっと気分悪くなってきた……>

 

<いや貴重な情報は情報なんだろうけどさ……>

 

 

 

 流れてくるコメントはどれも引き気味だ。

 

 まあ、熟練探索者でも、こうやってモツを漁って石を探す事は少ないだろう。適正レベルの狩場での戦いは、どうしても接戦になる。そういう戦いの後では、だいたい石は砕けているものだ。良い値段で売れるとはいえ、武器や防具の原料になる訳でもないし、危険な探索に赴けるほど余裕のある探索者にはあまり興味のあるようなものでもない。

 

 おまけに死体の内臓漁るのなんて気持ち悪いしな、好んでやる奴はいないだろう。

 

 探索者やモンスターの流血や傷を見慣れている連中でも、これは耐性が無いだろうと踏んだがドンピシャだったか。

 

 くくく。せいぜい千鶴どのの万分の一でも苦痛を味わうがいいわ。

 

 と、手にする獣玉をデジカメにまじまじと写していると、急に手を汚す血肉が黒ずみ始めた。

 

 腐敗を通り越して一気に真っ黒になったそれらは、忽ちの内に湿気た墨のように崩れて崩壊していく。見下ろせば、首無し猪の亡骸も同じように急速に朽ち果て、黄ばんだ骨を露にする。血肉が崩れ去った後も骨はしばらく残っていたが、数秒と持たずにがしゃんと崩れ、同じようにぼそぼそと崩壊して消滅してしまった。

 

 跡には、もう何も残っていない。

 

 

 

<あ、死体が消えた>

 

<こうやってあらためてマジマジとみると不思議な消え方だよな。時間を数百倍で早回しした、なんていわれる事もあるけどなんか違うっていうか>

 

<やっぱこの世の生き物じゃねーんだな、って感じ>

 

 

 

「ふむ。まあ、諸行無常の響きあり、という奴だな。まあ、所詮獣どもが、そんな風にわびさびを感じる事もありはしまい。なぁ?」

 

 

 

<辛辣なコメント頂きました>

 

<えっ、まって俺らの事も暗喩されてない?>

 

<お師匠様、最初っから俺らに辛口だったけど、流石に厳しすぎて草ぁ>

 

<動画閲覧者に親か身内でも殺されたのってレベル>

 

<いや……冷静に考えると割とあたらずとも遠からずかもな……>

 

 

 

 ふん。多少は自覚がある、か。

 

 認めるつもりは微塵もないが、千鶴どのも少しは人を見る目があるという事か。少なくとも、恥を知る生き物ではあるようだ。

 

 ぽんぽん、と獣玉を手の中で投げて弄びつつ、千鶴どのの所へ戻る。多少休んで、彼女も元気が戻ってきたようだ。

 

「すいません、師匠。御迷惑を……」

 

「気にする事はない。ただ、今日はこれまでだな。収入もあったし、これで切り上げだ。異論はないな?」

 

「はいぃ……」

 

 しょんぼりしつつも、まあ自分がベストコンディションではない事に自覚はあるのだろう、彼女は素直に従った。

 

 それでいい。

 

 探索なんて、慎重なぐらいでちょうどいいのだ。帰れる時に帰る、これが大事。

 

「そういう訳ですので、皆さん、申し訳ありませんが今日の配信はこれまでにさせていただきますー……。また、次の配信も、どうかよろしくお願いしますね!」

 

 

 

<しかたないね>

 

<おつおつ。お大事に>

 

<次は師匠さんもうつしてほしい>

 

<次回も楽しみにしてるね>

 

 

 

「某は別に見て欲しいとは思わないがな」

 

「も、もう、師匠っ」

 

 むくれる千鶴どの。悪いが、このスタンスだけは譲らない。

 

 

 

 こうして、某にとっての初めての生配信は終了した。

 

 やれやれ。

 

 しばらくは、千鶴どのから目を離せそうにない。手のかかる弟子である。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 なお、その後日の事。

 

「……ふむ」

 

 某は、千鶴どのの家のテレビで、動画配信サービスを視聴していた。

 

 そこでは当然、ダンジョン探索の配信番組も見る事が出来るが、一応こちらは中央の検閲が入っているため、生配信は禁止、録画配信も適切な編集が必須となっている。

 

 まあつまり子供が見ても問題ないような動画だけが配信を許可されているのだが……ここ数日で、爆発的に再生数を伸ばしつつある、一つの動画があった。

 

 所謂、MAD動画と言われる、音楽などにあわせて映像を切り貼りしたものなのだが……その素材が、まあ問題だった。

 

『えろえろえー♪ えろえろえー♪ えろろ、えろろ、えろえろえー♪』

 

「ふむ。無残な」

 

 軽快なリズムにのって流れてくる、なんか聞き覚えのある嘔吐音。

 

 まあ、あれである。

 

 何故か、千鶴どのの虹の滝動画が、MAD素材として大流行。軽快なリズムにのせて、千鶴どのが嘔吐するという、この世の終わりみたいな動画が何故か、動画再配信サービスでブームになっていた。

 

 いやまあ、ほんと。酷い話である。

 

 なお、当の本人は某の横で撃沈している。耳を抑えて俯せになり、ぴくぴくと痙攣中。

 

「だから生配信なんてやめておけといったのだ」

 

「まあまあ。さ、流石に、こういう流行り方は想定の外だったから……」

 

 某が言葉で死体蹴りをしていると、刹那どのが宥めに入ってくる。そういう彼女も、ちらりとテレビ画面に目を向けて、ぷっと噴き出しそうになるのを必死にこらえている。

 

「しかしなんでまたこのような事に」

 

「最初は千鶴も、配信が伸びたー、って喜んでたのにねえ」

 

 そうなのである。

 

 配信終了後、改めて編集した録画配信は、実の所それなりに公表だった。嗚咽シーンをカット、某がモツを弄るシーンは濃いモザイクで対処した動画は、どうやら純粋に情報源として視聴者の注目を集めたらしい。再生数のピークを見るに、どうやら皆、某が獣玉を取り出すところを見に来ていたようだ。

 

 某が思っていたより、玉の情報はレアだったようだ。まあまっとうに戦っていたら、大抵割れてしまって残らないからな、あれ。

 

 まあそんなこんなで動画再生数が増えるうちに、大本の生配信に注目がいったのは当然の話で……どうやら視聴者の中に、生配信を全部録画していたもの好きがいたらしい。そいつが、今回の探索の面白シーンとして嘔吐シーンを放出し……結果、ご覧の有様である。

 

 勿論、素材元の動画については異議申し立てで速攻消したが、ネットに一度拡散された素材が消える事は残念ながら、無い。

 

 消せば増える。

 

 デジタルタトゥーというものは、げに恐ろしきもの也。

 

「あばばば……ばばば……あばばばば……」

 

「哀れな」

 

 床でびくびく痙攣する愚かな生き物に、某は心の底からの溜息をついたのだった。




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