泥管は基本的に理不尽を振りかざす側である。それも鬼舞辻無惨の胃に穴を開けるくらいに。日の呼吸の剣士の次にダメージ与えてんな。
逆に泥管が理不尽な目に遭う、ということは少ない。とても少ない。無惨が配下の鬼に優しくする回数くらい少ない。
最近は鬼殺隊の柱から襲われるという事もあったが、それは鬼として生きている以上理不尽でもなんでもない事象。こいつが本当に鬼かどうかはさておき、文句は言えないくらいに当たり前の事だ。
今回はそれにあたらない、珍しく本当にただただ理不尽な目に遭っていると言っていいだろう。
「あなっ、貴方のせいですからね!」
「…………」
「よくも……!貴方のせいで隊服を作り直す羽目になったんですよ!?」
おそらく今回ばかりは皆泥管の言葉が分かるだろう。せーの。
し ら ん が な
泥管はただ作るだけである。人にも鬼にも美味いと思わせる為に飯を作るだけである。
それを口にして美味い不味いと感想を言うならともかく、味とはほぼ無関係な贅肉がついたことに文句を言われてもどうしようもない。自己管理してもろて。
というかこの柱、わざわざそんな事を言うために泥管に会いに来たのだろうか。本当に柱は暇なんじゃないかと思い始めた。
「…………!?」
「な、なんですかその『この短期間でそんなに……!?』みたいな態度は!?」
いやそれもだけども。どちらかというと泥管は元の体重の軽さに驚いていたりする。元が痩せすぎだっただけでは?
確かに泥管は柱と会う度に土産を押し付けた。農作物や漬物は勿論のこと、物々交換で得た甘味だとか畑を狙っていた獣だとかもお裾分けしていた。
しかしその期間はせいぜい一年もない程度であり、よく働く柱の体重を四貫も増やすほどではないはずだ。
やっぱ泥管悪くないだろこれ。
そんな事は知らぬ存ぜぬと蟲柱──胡蝶しのぶは泥管に食ってかかる。お前のせいで太っただの同僚からの視線が痛いだの……自業自得という言葉を知らんのかこの柱。
一応鬼殺隊の面子の為に言い訳をしてやると、皆の視線が向くようになったのは健康的になった事を喜ばしく思っているからこそつい視線が向く、という者がほとんどである。特に彼女の姉は涙を流して喜んでいた。
それを彼女が太ったことを咎められているように思い込んでいるだけである。
「この前なんか冨岡さんにまで『肉付きが良くなった』と言われましたし……!」
「───?」
(特別意訳:安心した的な意味では?)
「あれぜーったい私のことをバカにして笑ってるんですよ!自己管理もできない間抜けな剣士だって、見下してるんです!」
「───?」
(特別意訳:事実では?)
なんてこった、泥管が人見知り極まりきった水柱の意思を又聞きの上で的確に汲み取ってしまった。これもう生来の親友だろ。ついでに蟲柱が鬼に論破されてしまった。これもう酒の席で笑い話にするしかないだろ。
散々喚いて少し冷静になったのか、荒くなっていた呼吸を落ち着かせる。常中こんな事で途切れさすなよ。
既に
何故そんなに柱が泥管に会いに来るのかというと、信用できないから確かめようとする者と信じているからこそ情報が欲しい者がいるからだ。しのぶは……どっちでもないね。例外が生まれるのが早すぎる。
「こほんっ……失礼しました」
「…………」
「改めて自己紹介を。鬼殺隊で蟲柱をやっております、胡蝶しのぶです」
「──」
「貴方は泥管さん……ですよね?他の柱からも聞いております 」
ええ、ちょっと頭の形が変わりましたが泥管です。
しのぶが泥管に会いに来たのはただ文句を言う為ではなく、とある実験に協力して欲しくて頼みに来たらしい。
そのとある実験とは、鬼に効く毒をより強くしたいというもの。
しのぶは少なくとも現時点では鬼の頸を切れない。ちょっとやそっと体重が増えたところで切れるようにはならない。
それじゃあ鬼殺隊として話にならないので、しのぶは頸を切らずとも鬼を殺せるように毒の研究をしているのだ。
だが、これまで通用していた毒がこれからも通用するとは限らない。もしかしたら鬼を通じて無惨が毒耐性をつけている可能性もあるのだ。
そこで泥管だ。
見た目こそアレだが鬼としては最上位。泥管に通用すれば無惨にも通用するんじゃないか?としのぶは考えたわけだ。
「貴方の血を少々頂きたいのですが……その、まず血を採れるのかどうか……」
「───」
「協力して頂けるのですか?でしたら──」
「──」
「え、ちょ」
頼まれたら断れない鬼、泥管。頷いてから次の瞬間には手首から先をもぎ取りました。判断が早い。
しかもどういうわけか断面から血が溢れない。ちゃんと生物通りの断面をしているというのに、制御されているのか一滴たりとも溢れてこない。
鬼殺隊として惨憺たる光景を見てきたしのぶもこれにはびっくり。というか気前が良すぎる。
しのぶが呆然としているうちに泥管の手はもう生えていた。しのぶの目が確かなら瞬きよりも早かったように見えたが気のせいだろう。気のせいであってくれ。
「……あ、ありがとうございます。でも、いいんですか……?」
「──」
「…………すいません、何を言ってるのか分からないです」
やや引きつった顔で礼を述べると、文字通り手を貸してくれた理由を教えてくれているのだろうが何一つ伝わらない。身振り手振りで伝えるには限度があるんだって。
しばらくヤキモキしながらワタワタしていた二人だったが、これ以上続けても埒が明かないと思ったのか気まずそうに頭を下げ合って終わった。微笑ましいね。
【大正コソコソ話】
泥管の血で実験を繰り返したけど、結局ほとんど成果は得られなかった。ブチ切れてヤケクソみたいな量を突っ込んだのに爪にヒビを入れることすら出来なくて滅茶苦茶凹んだ。
もし泥管を仕留めるほどの毒が出来たら無惨を3回くらい殺せるという事実は黙っておく。
ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?
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ええんやで
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駄目、全部書け