人間の治療ヨシ!な泥管。そのポーズは百年くらい先の話なので通じませんよ。
痛みに暴れていた怪我人を捩じ伏せながらの治療は大得意。今は疲れてグッタリしているけれどまず死ぬことはない状態まで治せた。
屋敷の中の鬼も一人残らず仕留められてしまったようだし、これ以上ここにいてもやることはないだろう。泥管は治療を終えてひっそりと立ち去るつもりだったのだが。
「───?」
どういうわけか同類の、鬼の気配がする。それも屋敷の中ではなく、木陰に置かれた木の箱の中から。
もし身を隠して不意打ちを狙っているのならば危険極まりない。しかしそれを伝えれば箱の中の鬼は殺されてしまう。どうしたものか。
木箱を眺めていると、誰かが後ろから思い切り突っ込んできた。悪質なタックルはやめてもろて。
「ままま、待って!泥管さんそれ駄目!」
「──?」
「それは炭治郎の……鬼殺隊の仲間のなんだ!」
鬼殺隊の荷物の中に鬼?しかも、善逸は中身が何か分かった上で泥管を止めようとしている。これはどういう事だろうか?
というかそんなに必死に止めようとしなくても手を出すつもりは無い。何か理由でもない限りは鬼にも人間にも加勢するつもりはないのだ。
それでもやっぱり鬼の事が気になる。鬼の存在が、というよりは鬼の気配が、だ。
箱の中にいる鬼は自分と同じで、きっと人を食べたことの無い鬼だ。人を食っていれば血の匂いがするからすぐにわかる。
でもあの箱の鬼からそんな匂いはしないし、それどころか穏やかで暖かな雰囲気を感じ取れる。それこそお日様のような気配を。
「猪突猛進猪突猛進!!鬼の気配が……お前かよ!」
「……あ、最終選別の時のせっかち野郎」
考え事をしている泥管の元に伊之助がログインしました。今日のログインボーナスは泥管だぞ。
屋敷から勢いよく飛び出した伊之助。やはり彼も木箱の中の鬼の気配を感じ取っているようだ。その手前に泥管がいるから首を傾げているだけで。
「……そん中、鬼いるよな?」
「──」
「じゃあ寄越せ!俺が切ってやる!」
「やめろ!」
なので確認を取る。鬼?よし、切るか。伊之助も判断が早い。だから駄目だって言ってんだろ。
意気揚々と刀を構える伊之助に対し、善逸が声を張り上げて止める。中身が鬼だと分かっていても、炭治郎が大事なものと言っていたのだ。おいそれと渡すわけにはいかない。
伊之助からすれば理解し難い。だってそこにいるのが鬼なら殺すべきだろう。屋敷の中でも鬼を殺してきたのに、何故その鬼だけは駄目なのか。
いっそ善逸ごと切ってやろうかとも思った伊之助だが、善逸の横に化け物がいるせいでそうもいかない。アレはヤバい。
「善逸!大丈夫、か…………?」
「あっ、炭治郎!コイツやばいよ!」
「どっちのことだ!?」
ごもっとも。
炭治郎も無事に屋敷の中の鬼を討伐し、連れていかれた者を助け出すことに成功したようだ。
それで帰ってきてみれば屋敷の中でも遭遇したイノシシ頭が刀を構え、善逸と変な頭の化け物が箱の前に立ち塞がっている。何これ?どういう状況?
「こいつが炭治郎の箱を寄越せって言うんだ!俺と泥管さんが止めてるんだけど……」
「どかねぇってんなら、お前ごと箱を串刺しにしてやらぁ!!」
「しまっ──」
善逸が炭治郎に事情を話し始めた瞬間、意識が自分から逸れた事を理解した伊之助が思い切り踏み込んだ。
如何に強くなろうとも生身の人間では鋼鉄の刃を受け止めきれない。一瞬後の痛みを覚悟し、目を閉じてぐっと歯を食いしばる善逸だったが。
「やめろ!!!」
ゴギャッ!!!と、およそ人体から聞こえていいはずのない音が響いた。泥管……は動いていない。じゃあ誰が?
音の正体は炭治郎の頭突き。危ない、と思った時には足が動いていたお陰で割り込むことができた。
刀を構えようとしていた伊之助のこめかみ辺りに、いっそ芸術的なまでに見事な一撃が炸裂。イノシシ頭がグラりとよろめき、たたらを踏んで後ずさりをする。
「隊員同士で徒に刀を抜くのは御法度だ!それに、無抵抗の相手に刀を抜くなんて何を考えているんだ!?」
「ぐっ……そりゃ悪かったな!じゃあ素手でやるぜ!!」
「いや全く分かっていない気がする!?そもそも刀がどうこうじゃなく、隊員同士でやり合うこと自体がっ……!?」
痛いだろうに、伊之助は怯むことなく徒手空拳での戦いに移行した。
話が通じない相手の経験が少ない炭治郎は困惑しつつも、襲ってくるのならば反撃せざるを得ない。こちらも無手は素人ながら構えを取った。
「───」
「うおっ!?」
「うわあっ!?」
「ちょ、泥管さん!」
「──」
「そうだけども!いやそうじゃなくて!」
二度目の激突──の寸前、二人の間を泥管の手刀が叩き割った。地面も割れた。
突然動いた泥管に炭治郎はギョッとし、伊之助は先日の得体の知れなさを思い出している。善逸にはいつも通りの光景なのでそんなでもない。
「イノシシ頭!お前頭のそれ取れ!」
「あ゙!?何でだ、よぉ……?」
「ああ、やっぱり……」
とにかく泥管の意図を汲み取れた以上、伊之助を止めなければならない。しかし慌てて声をかけた伊之助は急にふらついたかと思えば、背中からドデーンと倒れてしまった。
泥管が二人を止めた理由は、伊之助が既に気絶寸前だと分かっていたから。頭突きがいい所に入り過ぎていたのだ。
脳を思い切り揺さぶられてしまった以上、そう長くは続かないとは思っていた。しかしそのまま徒手空拳で殴り合えばもっとまずい事になるかもしれないと思い、割って入ったのだ。
案の定、伊之助は気絶。せめて呼吸を楽にしてやろうとイノシシ頭をひっぺがしてみると。
「うわっ……なんだコイツ。ムキムキの身体に女の子みたいな顔してる」
「……今のうちに君達も行くんだ。目を覚ますと何をするか分からない」
「は、はい!」
なんということでしょう。やや不気味だったイノシシの被り物の中にはまつ毛ファッサーの可愛らしい顔があったではありませんか。だが男だ。
こんな見た目をしておいて中身はアレなので、目を覚ました時に矛先が子供に向いてもおかしくない。炭治郎は今のうちに兄弟らと怪我人を行かせてやる事にした。
これでようやく鬼狩りの任務が一つ完了。これまでで最も濃い戦いとなった。
「……ところで善逸。この人……人?がどろくださんか?」
「…………どうせコイツにも話さなきゃいけないし、コイツが起きたら話すよ。炭治郎のその木箱についても教えてくれよ」
「ああ」
「──」
「はい、ありがとうございます」
「………………泥管さんの意思分かんの!!?もう!?早くね!!?」
「え、いや、何となく……匂いで」
「匂いで……?」
【大正コソコソ話】
泥管は喋れない代わりに意思表示をしようとしてくれるので、少し観察すれば何が言いたいのか、何を伝えたいのかが分かるようになる……かもしれない。
五感だったり洞察力だったりでそれなりにコミュニケーションは取れるけど、一番確実なのは筆談。お前そんな口調なの?という文体で会話に応じてくれる。
ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?
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ええんやで
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駄目、全部書け