体が生えたディ〇ダみたいな鬼   作:南亭骨帯

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本当になんだコイツ

 

 

 ナマモノの朝は早い。鬼のクセに早い。

 

 日の出と共に起床し、井戸水を汲み上げる事から始まる。鬼ならそのまま死んでるんだけどもこのナマモノは日光に照らされながら井戸の滑車を黙々と動かしている。

 

 桶に汲んだ水を手のひらで掬って何度か喉を潤し、そのまま顔をバシャバシャと乱雑に洗う。膨れた風船のような面にどんな汚れが付くと言うのだろうか。

 

 喉と顔を水で流した後は朝食だ。これでも鬼なのだから当然人間の肉……ではなく雑炊と漬物である。健康的ですね。

 

 綺麗な箸使いで米も麦も一粒残さず食べ終えると、再び外へ出る。ああ、今度こそ人間を……と思ったら、畑へと向かっていった。これが令和の時代でよく聞くヴィーガンという奴だろうか。肉食え肉。

 

 

 ナマモノが向かった畑はとても大きい。何せ1haというトラクター等が無い時代では、個人で管理しきれるはずのない規模。

 

 しかし、コイツが鬼であるお陰で農作業にはこれっぽっちも困らない。無駄な足の速さと力強さで二時間もあれば作業を終えてしまう。

 

 どうやらいいきゅうりが採れたらしく、ナマモノもご満悦。その場でひとつ水で洗い流したきゅうりをポキリと齧った。何度か頷いているので多分美味しいと思われる。

 

 

 

 

 

「……よもやよもやだ。不死川の話が本当だったとは」

 

 

 

 

 すると背後から何者かの声。人里から離れたこの畑に日が昇るうちに来る者など自分と行商人と森で迷った人間と近隣の村の猟師くらい……結構いるな。

 ともかく、今しがた耳に届いた声はそのどれでもない。不死川と似たような、しかし別物と分かる独特の呼吸音がしている。

 

 振り返った先にいたのは先日の不死川同様に帯刀した男だった。鮮やかな髪色はホクホクのサツマイモのような黄色と、芋を焼く時の炎のような赤を持っていた。

 

 

 鬼殺隊の柱が一人、炎柱煉獄杏寿郎だ。

 

 

 すわ、今度こそ仕留めに来たかとナマモノは警戒態勢に入る。しかしきゅうりは手放さない。もう口の中に放り込めよ。

 

 

「待ってくれ!今君と戦うつもりはない!」

「…………」

「というか不死川が何度切りつけても首を切れなかった時点で俺一人では難しいだろう!だから話を聞いて欲しい!」

「……」

 

 

 半ば『私では貴方を殺せません』と宣言したも同然なのだが、屈辱よりも困惑が強過ぎてどうしようもない。なのでこうして対話できないかと炎柱直々に足を運んだようだ。

 

 嘘はない、と思ったのかナマモノはとりあえず構えを解いた。こいつさらっと嘘ついたかどうか分かるんかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(鬼かどうか……で言えば鬼であることは間違いない。少なくとも気配は鬼そのものだ)

 

 

 ナマモノについて行った先にあったのは一件の家だった。それも鬼殺隊がよく世話になる藤の家くらいの規模の。

 

 何で鬼が家を持っているんだ?と疑問も湧いたが、それ以上のツッコミどころがそこら中にある事を思い出して口を閉じた。

 室内に入ると思ったよりも綺麗にされており、家具やら何やらも生活感満載であった。血の匂い等が漂っていたりはせず、むしろ藤の花のいい香りが……藤の花?

 

 

(……鬼は藤の花を嫌うのではなかったか?)

 

 

 ツッコミどころが増えた。

 

 

 一々ツッコミを入れていてはキリがない。ここもどうにかグッと堪えて、家具が何一つない畳の部屋に着くとお互いに腰を下ろした。

 

 ナマモノの手には数枚の紙と筆があった。どうも言葉による意思疎通ができないので、代わりにこれで返事をするつもりでいるようだ。

 

 

「それで、君に色々と尋ねたいのだが……いいだろうか?」

「──」

「うむ、助かる」

 

 

 鬼を前にしているとは思えない態度だが、こうでもしなければ分からないことが多すぎる。一つ一つ確認していかなければならない。

 

 

「まず、君に名前はあるのか?」

「──?」

「君の事は鬼殺隊でも疑問が尽きないのだが……その度に何とかして君を説明しようとするものだから無駄に時間がかかっている」

 

 

 まず最初の質問は名前だ。このナマモノ、見た目も行動も情報量が多すぎて説明する度にそこそこの時間がかかってしまっている。

 なので固有名詞があるのならそれを聞き出し、説明の手間を簡略化したいのだ。

 

 だってコイツ、一から説明しようとすると頭部の形状やら体格やら全身像やらで言葉選びに時間がかかるんだもん。何だそのふざけた頭は。

 

 ナマモノは少し考えるような素振りを見せた後、筆を紙の上に走らせた。

 

 

「……泥管(どろくだ)?」

「──」

「それは……鬼舞辻無惨からつけられた名前か?」

「……」

「違うのか」

 

 

 ナマモノ、改め泥管。泥管という名は鬼舞辻無惨……鬼の首魁から与えられたものではないらしい。

 

 ということは自分で自分の名前を付けたという事になるし、同時に彼が鬼舞辻無惨の事を認識しているという証拠でもある。

 ……つまり鬼舞辻無惨はこの泥管の存在をちゃんと把握している事になるのだが。

 

 じゃあこの陽の光を克服した鬼を放置しているのは何故だろうか。

 

 

「──」

「うん?どれどれ…………」

 

 

 スラスラと進む筆。そのまま手渡された紙に書かれていた内容を読み上げる。

 

 

「『何かお前を取り込んでも克服出来る気がしない、と言われた』……何故だろうか?」

「……?」

「ううむ、君も分からないのか」

 

 

 顔を見合せて首を傾げた。理由は分からないが無惨は泥管で陽光を克服できないと判断したらしい。

 

 ならばこの不確定要素の塊を見逃しているのは何故なのだろうか。どう考えてもコレを放置する方がヤバそうなのだが。

 それを尋ねても泥管も首を傾げるばかり。ちなみにこの間にも彼の表情は何一つ変わらない。ずっとすっとぼけたニヤケ面のままである。

 

 

 疑問が解決するより増えた数の方が多い気もするが、それよりも何よりも最も知りたいことがある。

 

 

「君は……我々の敵なのか?」

「……」

「先程はきゅうりを齧っていたようだが、君もやはり鬼だろう」

 

 

 一番知りたい事。それは泥管が本当に人間を食わないのか、ということ。

 

 不死川の話によれば、目の前の鬼は睡眠を取る事で人間を食わずにいられるようだ。

 しかしそれが嘘か本当かなんて分からない。もっと言えば巧妙に隠しているだけで実は人間を食べているかもしれないと、疑わざるを得ないのだ。

 

 何故なら鬼とはそういう生き物だから。人間が食事を取らなければ飢えてしまうように、鬼も人間を食わなければ飢えてしまう。

 

 だからこそ、人を食わない鬼という存在を信用できないのだ。

 

 個人の感性だとか鬼への憎しみだとかを抜きにしても、飯を食わずに生きていけるはずがないという当たり前の理由があるのだから。

 

 

 真っ直ぐに見つめながらの質問に対し、泥管は筆を取った。

 

 

 

 

 

「『人間より野菜のが美味しそうだし』……それはそれでどうなんだ!!?」

「──!?」

「あ、ああ……驚かせてすまない」

 

 

 

 

 好き嫌いかよ。

 

 

 

 泥管曰く、人間が美味しそうに見えた事はないのだとか。コイツマジでヴィーガンだったんかい。

 

 ならばと試しに煉獄が自分の腕を軽く斬って見せてみたが、キョトンとした態度の後に別の部屋から包帯を持ってきた。優しいね。

 

 

「……むぅ、分からない事が増えただけのような気がしてきたぞ」

「──」

「君は一体……何なんだ?」

 

 

 後は何を尋ねれば答えが出るのだろうか。

 山ほどの疑問符で脳内を埋め尽くされていた煉獄だったが、鎹鴉に呼びつけられてしまった。

 

 どうやら今回はここまでらしい。手に入れた情報を御館様と他の柱に共有する為にも戻らなければならない。

 

 泥管に見送られてまた鬼狩りの任務へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……以上になります!」

「そうか……彼は、泥管は人間を食べないんだね」

「はい!それらしき匂いも気配もありませんでした!」

 

 

 

「……ところで、その籠いっぱいの野菜は?」

「泥管が持っていけというので持ってきました!瑞々しくて毒もなく!御館様も如何か!?」

 

 

(((野菜を育てる鬼って何……!?)))

 

 

 






【大正コソコソ話】
 泥管が持たせた野菜はきゅうりや赤茄子(トマト)といった夏野菜だった。
 ついでに漬物も幾つか持たされたのだが、白米とよく合う大層美味しい漬物だったので少し取り合いになったとか。

 
 お陰で蟲柱が少し太……健康的になった。


ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?

  • ええんやで
  • 駄目、全部書け
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