体が生えたディ〇ダみたいな鬼   作:南亭骨帯

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昔っからこうなのかよコイツ

 

 

 縁壱が鬼殺隊に所属し、ならば家も近い方が良かろうと引っ越して間もない頃。

 

 

 ある日、泥管の頭の中に無惨の声が響いた。

 

 彼の呼び出しが突然なのはいつもの事。たまに『お前の言いなりにはならんぞ』と反骨精神を剥き出しにしているが、今はそんな気になれない。

 

 彼にしては珍しく、素直に無惨の呼び掛けに応じた。呼びつけた無惨本人が驚いていたのは何故だ。呼んだから来たんやろがい。

 

 

 二人に暫し離れることを伝えて無惨の元へ向かうと、そこには縁壱そっくりの、しかし明らかに人の道を外れた者が立っていた。

 

 

「ん?貴様か。一体何しに──へぶっ!?」

「なっ……!?」

 

 

 呼んだはいいけどどうせ来ないと思われていたのだろうか。何しに来た、と言われるよりも早く泥管の拳が無惨の頬を打ち抜いた。

 

 日の呼吸と泥管の肉体はとんでもなくベストマッチ。縁壱ほど練れておらずとも、強化された身体能力による一撃は無惨を悶えさせるには十分に過ぎた。

 

 痛がりながらも何やら文句を言っていたが知らない。聞く耳を持たない。よりにもよってとんでもない事しやがって。

 

 

 

 無惨の隣にいた鬼は、縁壱の兄だ。

 

 

 

 縁壱から何度も聞かされた、自分が最も尊敬しているという人物。継国厳勝だ。

 

 それが目を六つに増やし、自分達と同じ鬼となってこの場にいる。それが縁壱にとってどれほど残酷なことか、泥管は知っている。

 

 

 だからこうして無惨を蹴り倒してマウントポジションを取り、日の呼吸全開でパウンドを繰り返している。おらっ、少しは反省しろこの屑。

 

 

「や、やめんか!?というか貴様もコイツを止めろ!?」

「…………そ、の……呼吸……」

「おい!黒死牟!?」

 

 

 んでそっちの兄上ェ!!テメェもツラ貸せやオラァン!

 

 無惨を散々に叩きのめした泥管は、流れるようにターゲットを厳勝……もとい黒死牟へと変更。呆然としている黒死牟の顔面に思い切り膝蹴りを叩き込んだ。

 

 

「がっ……!?速……!」

「───!」

「ちっ!本当に何なんだお前は!?」

 

 

 こんなの、縁壱にどう話せばいいのか。普段無表情な男が、飯と並んで目を輝かせて語っていた兄が人の道を外れたことをどう伝えてやればいいのか。

 

 縁壱への申し訳なさと無惨達への怒りが胸の内でぐるぐると渦巻いている。やるせない気持ちは全部こいつらにぶつけるとして、どの面下げて会いに行けというのか。

 

 

 この事を伝えた後、縁壱と一緒にはいられない。あまりに申し訳ない。

 

 泥管は別れの時が来ることを惜しみながら、黒死牟にジャーマンスープレックスを叩き込んだ。侍の負け方か?これが……。

 

 

 

 

 

 

 散々に二人をタコ殴りにした泥管は、顔面がパンパンに腫れ上がった野郎どもにも目をくれず縁壱の元へと戻った。

 

 時が悪く縁壱は鬼狩りに出ていたようで、再会できたのは三日後だった。

 

 

「……兄上が、鬼になってしまった」

「────」

 

 

 遅かった。縁壱は無惨と遭遇してしまっていた。顔をパンパンに腫らしたあの男と。治らなかったか。

 

 

 無惨と遭遇した縁壱はあっという間に無惨を膾斬りにした。十二の型を全て叩き込み、両腕と下半身を切断したという。

 

 とどめを刺そうと近づいた瞬間、無惨は肉体を弾けさせたらしい。

 

 千八百に散らばった肉片のうち、千六百と少しをその場で斬った。え?斬ったの?マジで?

 

 

「……しかし、残りの肉片は小さすぎた。恐らく人間の頭の半分程の肉片を逃してしまった」

「──?」

 

 

 それ死んでね?と思ったが、自分の中にある無惨の血が静かなので多分生きているのだろう。無駄にしぶといなアイツ。

 

 

 その後鬼殺隊の仲間から黒死牟の事を……兄の事を聞かされ、諸々の責任を取る為に追放されてしまったという。

 

 泥管からすれば『鬼殺隊は馬鹿なの?』という案件なのだが、縁壱が何も言わないので泥管も何も言えなかった。

 

 

「恐らく、鬼舞辻無惨は私が生きている間は姿を見せないだろう」

「───」

「泥管殿ならば探せたりは……しないのか。すまない」

 

 

 普段なら無惨のどす黒い生気を辿って探すことができるのだが、死にかけた状態では辿れるだけの生気もないだろう。何より、先日の暴力沙汰で無惨からは警戒されているはずだ。

 

 

 泥管と縁壱。どちらも沈んだ顔色のまま会話はそれっきり。この後、縁壱が亡くなるその時まで鬼舞辻無惨と会うことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから六十年ほど経った頃、縁壱は厳勝と再会を果たした。

 

 

「お労しや、兄上……」

「…………っ!?」

 

 

 その場には泥管もいた。縁壱から、何があっても見届けて欲しいと言われたから。

 

 子供達も育ち、うたも寿命を迎えて死んだ。後はやり残したことが一つだけあったので、それを終わらせに来たのだ。

 

 

 縁壱の持つあの痣。あれを発現させた人間は二十五歳になる前に例外なく死んでいた。例外となったのは鬼になって寿命がないようなものになった厳勝と、彼の前に立ちはだかった縁壱のみ。

 

 黒死牟は酷く狼狽えていた。とうに死んでいるはずの人間が生きているから?合わせる顔がない身内と再会したから?

 

 否。齢八十を超えた人間の構えとは思えぬほど、凄まじい威圧を感じ取ったから。

 

 

 決着は一瞬だった。

 

 黒死牟が刀を抜くよりも早く、縁壱の刀が振り抜かれた。

 

 人間であれば致命傷。首を半ばほどまで切られた黒死牟は次の瞬間には死んでいたはずだった。

 

 

「……な、に?」

「───」

 

 

 勝ったのは──縁壱。しかし、生き残ったのは黒死牟だった。

 

 

 なんてことはない。ただの老衰(・・・・・)。病気でもなければ黒死牟によるものでもない、人として、生物として当たり前の自然の摂理によって死んでいた。

 

 

 泥管は見届けた。縁壱は人として生き、人として死んだ。厳勝は人としての道を外れ、今も尚鬼として生きている。

 

 これ以上この場にいるのは辛かったのか、泥管は黒死牟にも何も言わずにその場をひっそりと去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時から何百年経ったのか。こうして今も彼の呼吸を自分ではない人間が受け継ぎ、鬼舞辻無惨を討つ為に戦っている。

 

 縁壱との一件から泥管は学んだ。人間が人間であることの尊さを、人間として終われることの儚さを。

 

 だからこうして死に損ないとして生きていても、一人でも多くの人間を助けてやりたいと思うのだ。

 

 

「……お前さんもド派手に色々あったのな」

「───」

「まあ元気出せよ。俺達がド派手に無惨を仕留めてやっから」

「───」

 

 

 …………ん?

 

 

 

 

「─────!!?!?」

 

「お、やっと気づいたか」

 

 

 

 アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?

 

 

 





【戦国コソコソ話】
 この一件から黒死牟は縁壱同様、泥管のことも嫌いになっている。しかし縁壱と違って真っ向勝負をすると普通に殴り負けるのでなるべく視界に入れないようにしている。

 剣技の腕前は縁壱>>>黒死牟=泥管くらい。なので刀同士でやり合っても結局フィジカル差でボコボコにされる。

 上弦が泥管と戦った際の相性は以下の通り。

壱…勝てる要素がないのでボコボコにされる。
弐…血鬼術ほぼ無意味。勝てるわけねえだろ。
参…実は一番いい勝負になる。けど勝てない。
肆…何出しても勝てない。初手土下座。怖い。
伍…血鬼術が全くの無意味。勝てるわけない。
陸…そもそも妹が腰抜かして戦えない。怖い。

ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?

  • ええんやで
  • 駄目、全部書け
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