体が生えたディ〇ダみたいな鬼   作:南亭骨帯

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嵌めやがったなコイツ

 

 

 夜の帳が降りる。月は中天、大きく欠けた有明月が薄らと地を照らす頃。

 

 最早生きているのか死んでいるのかもわからない、全身を包帯に包まれた男が横たわっている。呼吸は間の抜けた笛の如く弱々しく、肌の色は死人どころか妖に見紛うほど。

 

 彼の傍には誰一人として付いてはいない。掠れた呼吸が途絶えようとも駆けつける者はおらず、口の端から溢れる血を拭き取る者もいない。

 

 

 生命の灯火が吹き消される寸前。死体も同然の男の元を、この世で二番目に死から程遠い存在が訪れていた。

 

 

 

「……何とも醜悪な姿だな産屋敷」

 

 

 

 千年の時を生きる鬼の始祖、鬼舞辻無惨。

 

 喜色を滲ませながら、しかし失望に染まりきった声色で語りかける。

 

 

「身の程も弁えず、千年にも亘り……私の邪魔ばかりしてきた一族の長がこのようなザマとはな」

「…………」

 

 

 喋ることもままならないのか、男は口をパクパクとさせるばかり。上体を起こすことも叶わないようで、腕で支えようとした身体が崩れ落ちる。

 

 ベシャリと沈む男を見て鬼舞辻無惨は口の端を吊り上げた。

 

 あれだけ己に執着してきた一族の末路がこれか、と。死の淵に立たされておきながら、鬼殺隊の誰もが傍にいない。何と惨めな姿か。

 

 

「何人もの鬼狩りを無為に死なせ、最期はこのザマ……私は心底興醒めしたよ」

「…………!」

「千年の夢も今宵潰える。お前はこれから、私が殺す」

 

 

 何とも呆気ない幕切れ。組織の頭を潰し、残る鬼狩りも既に手のひらの上。鬼狩りの歴史はここで終わり、永遠を生きる無惨を阻む者はいなくなる。

 

 命を刈り取る鬼の爪が男へと伸ばされ───

 

 

 

 

 バキバキィッ!!!

 

 

「げぇーっ!!泥管!!!?」

 

「─────!!!」

 

 

 

 ジャーンジャーンジャーン!!

 

 

 ──意外ッ!それは泥管!!

 

 

 布団の下の畳を突き破って現れる見覚えしかない筋骨隆々の肉体!の、首元から上でブラブラしている産屋敷耀哉の身体!つまり今まで無惨が産屋敷だと思って話しかけていたのは泥管の頭部が変形したもの!!キッッッショ!!

 

 

 先手を取ったつもりが罠にかけられていた。優勢だと思っていた状況は仕組まれた策だった。思考する間を与えず泥管の剛腕が無惨の頭を鷲掴みにした。

 

 よーいドンならいざ知らず、不意をつかれた無惨ではマトモな抵抗などできるはずもなく。そのまま跳躍する泥管に逆らうことはできなかった。

 

 

「う、おおおおお!?何をする気だ泥管!?」

「───!」

 

 

 重力に逆らい、屋敷全体を見回せるほどの高さまで跳ぶ。月と星、それ以外の何者も介在しない夜空まで連行される。

 

 その間にブラブラと揺れていた産屋敷モドキの頭が戻っていく。あっという間にいつもの形状……を通り越し、人の姿へと変化する。

 

 鬼舞辻無惨でさえ一度見たきりの、他の誰でもない顔。触れてはならぬ者に触れてしまったあの日から見ることのなかった、鬼の形相。

 

 

「待て……待て待て待て!?考え直せ!私が消えたとしても、人間の世にお前の居場所など───!!」

 

 

「お前を殺す」

 

 

「キェェェェェェェェェェェェェアァァァァァァァァァァァ!!?シャ、シャァベッタァァァァァァァ!!!?」

 

 

 お前喋れたんか泥管。無惨も把握してなかったのか、今自分がおかれている状況を全て置き去りにしてクソデカ悲鳴を上げた。うるさい。

 

 しかし泥管はそれきりまた口を噤んだ。何故なら今から無惨を思い切り投げるから。

 

 

 さあこの瞬間をどれほど待ち侘びたことか。ずっと研ぎ澄ませていた牙を剥く時が来た。

 

 空気の壁を突き破り、音を置き去りにして。鬼舞辻無惨という隕石が屋敷に仕込まれた大量の爆薬へと着弾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぶっ……やしキィ…………!!どロクだァアアアアア!!」

 

 

 隕石、じゃなかった無惨が着弾した瞬間の爆発は凄まじい規模だった。

 

 致命傷にはならずとも無惨の四肢を、頭の半分ほどを吹き飛ばした。コンプラの加護によって守られたズボン以外の全身を灼かれ、無事なところがないくらいの大火傷を負った。

 

 それだけではない。爆薬の中に混ぜこまれていたのか、無惨の身体には無数の撒菱が食いこんでいた。撒菱を巻き込んだ肉体は動作を阻害され、再生そのものさえ妨害する。

 

 

 まだだ。産屋敷も泥管もこの程度(・・・・)で無惨を殺せるなんてこれっぽっちも考えていない。必ず二の矢、三の矢を持ち出してくる。

 

 誰よりも生き汚い無惨にはわかる。次の手があるはずだと。問題はそれが何なのか。

 

 

「っ、肉の種子……血鬼術!?」

 

 

 全身から撒菱を吐き出しきった瞬間、それが畳み掛ける。肉の塊が無惨の周囲に現れたかと思うと、抵抗する間もなく発芽した。

 

 解き放たれたのは無数の棘。太く、細かく、幾多にも枝分かれした極悪の拘束。再生したばかりの無惨の身体へと突き刺さり、体内で枝分かれしてその場へと縫い留める。

 

 

 誰の血鬼術だ、と必死に記憶を辿る無惨。だがこれほど強力な血鬼術に心当たりがないということ自体がおかしい。知らないはずがない。

 

 そして戸惑う時間すら与えない存在が降りてくる。ぶっちゃけ縁壱の次どころか、現時点で縁壱に並び立つくらい怖くて仕方ないナマモノ。

 

 

「ひっ……!?な、何をする気だ貴様!」

 

 

「お前を殺す」

 

 

「わっ、私のそばに近寄るなああーッ!!?」

 

 

 勿論泥管。彼の手にあるのは先程発芽した肉の芽に近しい見た目のナニカ。微かに脈打ってるようにさえ見えるソレはあまりにも悍ましく見えた。

 

 必死の懇願も聞く耳持たず。泥管はポップコーンエスケープをさせてなるものかと勢いよく無惨の口目掛けてシュゥゥゥーッ!超!エキサイティン!

 

 吐き出すなんて許されない。口内に捩じ込まれた肉塊は強制的に嚥下され、命の危機を感じた肉体が凄まじい速度で消化、及び吸収を開始した。

 

 

「お゙え゙っ……ぐ……!私に何を飲ませた!?」

 

 

「お前を殺す」

 

 

「喋れるなら会話をしろ会話を!?ええい、鳴女ェ!全員、飛ばせ!!」

 

 

 何にせよこのままだと殺される。恐怖のあまり逃走という手段を選んだ無惨の命令を受け、鳴女の血鬼術が発動する。

 

 べべんという聞きなれた琵琶の音。泥管の足元に障子が開く。おそらく他の鬼殺隊の面々にも開いているだろう。

 

 

 

「これで私に勝ったつもりか!?貴様らがこれから行くのは地獄だ!!」

 

 

「お前を殺す」

 

 

「ひっ……!?や、やってみろ!できるものならなぁ!!」

 

 

 

 もうどっちがラスボスかわかんねぇなこれ。

 

 





【大正コソコソ話】
 泥管の素顔は半天狗の記憶にあるお奉行ソックリ。巌のような低くて太いよく通る声で喋る。多分喋るのはこれっきり。

 お館様達は当然避難済。愈史郎の血鬼術越しに見ていた産屋敷一家は全員「いいぞもっとやれ」と泥管を応援していた。屋敷?無惨を殺せるなら別に構わんよ。

ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?

  • ええんやで
  • 駄目、全部書け
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