体が生えたディ〇ダみたいな鬼   作:南亭骨帯

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無慈悲だなコイツ

 

 

 現状を整理しよう。

 

 

 まず戦場は産屋敷家跡地。爆発の痕跡が未だに燻っているものの、粉々に砕けた木々はほとんどが燃え尽きている。

 

 次に時間。夜明けまではまだ三時間という短いようで途方もなく長い時間を必要としている。

 

 最後に互いの戦力。片や万全の鬼殺隊と泥管を筆頭に寝返った鬼達。片や腹から雪崩の如き音を鳴らして脂汗に塗れながら急速に老けていく鬼舞辻無惨独り。*1

 

 

 それでもやはりラスボス。散々に掻き回された肉体と成り果てようとも足掻きに足掻く。

 

 艶を失った長い白髪を振り乱し、衣服を脱ぎ捨てた下には無数の口と思われる部位が見られた。別に漏らしたから脱いだわけではない。

 

 更に背中から刃が付いた触手を九本伸ばし、その中に猛毒となる無惨の血を含ませて振り回し始めた。え?血鬼術?ンなもんなくても鬼の始祖は強いんだぞ。ホントだぞ。

 

 

「ふざけるなっ……!ふざけるなふざけるなふざけるなァァアアア!!?」

 

「ふざけてんのはどっちだ!!さっさと死にやがれェ!!」

「ああもう!ほんっとうにしぶとい……!!」

「怯むな!攻撃を続けろ!!」

 

 

 現にほら。力任せに触手を振り回すだけでこの戦力差に食らいついている。まあまだ一人も倒せてないんですが。

 

 別に無惨がクソザコナメクジなわけではない。尊厳は死んだがこれでもやはり鬼の始祖、当たりさえすれば大量の血によって全てが致命傷になりうる。

 

 では何故人間の一人も殺せずにいるのかというと。

 

 

「───!!」

「このっ……!化け物がァ!!?」

 

 

 ──日の呼吸 陸の型 日暈の龍・頭舞い

 

 

 鬼殺隊の中に微塵もダメージが通らないナマモノがいるからである。まーたガキンガキンいってるよ。

 

 人間どころか妓夫太郎や童磨でさえ回避せざるを得ない攻撃に対し、泥管はそれをガン無視して攻撃を続けられる。当たっても刃が通らないから毒も入らないし、入ったところでコイツに効くはずもない。

 

 故に輝きを増したゲーミング日輪刀が止まることはなく、無惨が生やして振り回した触手はすぐに断ち切られているのだ。

 

 そうするとそもそも攻撃自体が鬼殺隊に届かなくなり、結果として無惨だけが一方的に削られていく。徹頭徹尾泥管がいなければこうはならなかったのに案件である。

 

 

 

「どこで間違えた……!」

 

 

 泥管を生んだあたりですね。

 

 

「何を間違えた……!」

 

 

 泥管を鬼にした事ですね。

 

 

「何故こうなった……っ!?」

 

 

 自業自得ですね。

 

 

 隠し札の追加の触手も凄まじい衝撃波も、泥管という鬼札の前では全くもって無意味。ちょっと痒みを覚えさせるのがやっと。やっぱアイツおかしいって。

 

 

 ──風の呼吸 捌の型 初烈風斬り

 

 ──霞の呼吸 肆の型 移流斬り

 

 

「……っ!?再生が、遅いっ……!」

「今更気づいたのか?間抜けだな」

「ちぃっ!」

 

 

 ──蛇の呼吸 参の型 塒締め

 

 ──炎の呼吸 弐の型 昇り炎天

 

 

「ぐ、おおおおおっ!?」

「まだトドメにはならんようだな……!」

 

 

 少し泥管に意識を向けた瞬間にこれだ。攻撃をしても防がれると分かっているけれど、攻撃の手を緩めると日輪刀が飛んでくる。

 

 何たる理不尽。何たる屈辱。しかし現状を覆す手段などどこにもない。だって味方がいないのだから。

 

 

「合わせろカス!」

「カスって言うのやめてくれる!?」

 

 

 ──雷の呼吸 漆の型

 

 ──火雷神!!

 ──裂雷神!!

 

 

「な───!?」

 

 

 目にも止まらぬ二筋の雷が無惨の両足を斬り崩す。これまでならば瞬く間に治っていた足が生え揃わない。

 

 無惨が最も恐れていた死がすぐそこまで来ている。

 

 

「随分と苦しそうですね」

「っ……この匂い……!貴様か!この薬を作ったのは───!?」

「私だけじゃありませんよ?珠世さんの、鬼の方々の協力がなければ不可能でしたから、ねっ!」

 

 

 ──蟲の呼吸 蜂牙の舞 真靡き

 

 

 先程の雷よりも更に早く重い突き。細身の刀身からは考えられないほどの破壊力が無惨の右肩を爆ぜさせた。当然再生の兆しは見られない。

 

 このままでは残る左腕も吹き飛ばされる。ダルマになることを恐れた無惨はなりふり構わず触手を展開し、全力で薙ぎ払った。

 

 

 ──水の呼吸 拾壱の型 凪

 

 

 が、届かない。割って入った義勇によって全てが叩き落とされる。本来ならば受けきれないはずの防御が無惨の弱体によって成立する。

 

 痣も出ていなければ日の呼吸使いでもない。薄らと赫くなっただけの日輪刀によって切り払われたことに呆然としてしまう無惨。

 

 

「お前だけはっ……!絶対に許さない!!」

「耳飾りの……!?」

 

 

 ──ヒノカミ神楽 陽華突

 

 

 破壊力も速度も先の攻撃に劣る一突き。驚異と呼ぶにはあまりに脆弱な一撃……だというのに、その脆弱な攻撃はもっと貧弱な左腕を落とした。

 

 両腕両脚を失い、触手を展開しても泥管か柱に防がれる。正しく自分が詰みの状態にある事を否が応でも理解させられる。

 

 

「ぐ……!治れ!治れ!?何故治らない!?私はっ……鬼の始祖だぞ!?」

「───」

「ひぃっ……!?」

 

 

 配下の鬼どころか己の身体すら己の言うことを聞かない。必死に目を逸らし続けてきた絶望(泥管)を前に無惨はとうとう恐怖さえしていた。

 

 見上げた泥管の顔に感情は見えない。何度も見てきた親指のような頭に黒豆のようなつぶらな瞳。桜色の鼻の下に口は見られず、ただじっと鬼舞辻無惨を見つめている。

 

 

「ま、待て泥管……話を、話をしようじゃないか……」

「───」

 

 

 それをできなくしたのはお前やろがい。反論に何も言い返せない無惨の鳩尾を泥管のつま先が蹴り抜いた。蹴鞠しようぜ、鞠お前な。

 

 

「がはっ……!?」

 

 

 打撃が致命傷にならないはずの鬼の肉体が吐血する。時間経過と共に無惨の身体は頭のてっぺんからつま先どころか括約筋までズタボロだ。

 

 蹴り飛ばされた先にいたのは零余子。急にこっちに飛んできた死にかけの元上司に仰天し。

 

 

「ひっ!?こっちくんな!?」

「貴様ァ!?」

 

 

 思わず蹴り返した。おっ、やっぱり蹴鞠の時間じゃねえか。

 

 反射的とはいえ威力は折り紙付き。ダルマ状態の無惨を更に別の方へと蹴り飛ばした。

 

 で、その先にいたのは派手好きな男宇髄天元。これまで二回連続で蹴り飛ばされた無惨が彼の元に飛んでいけばどうなるのか。

 

 

「よっしゃ次そっちな!」

「ちょやめげぶぅっ!?」

 

 

 そうだね、蹴鞠続行だね。蹴りにくいだろうに滅茶苦茶綺麗な弧線を描いて不死川の方へと飛んでいった。ナイスパス。

 

 

「ンなもん寄越すんじゃねェ!」

「まず蹴るのをやめボェッ!?」

 

 

 さっきまで絶対ぶっ殺してやる!と意気込んでいた不死川もいきなりこんなものを渡されても困る。悪態をつきながらもしっかり柱がいる方へ蹴るあたりちょっと楽しんでるかもしれない。

 

 次のパス相手は甘露寺蜜璃。悲鳴嶼は勿論のこと男の隊士と比べても華奢に見えた甘露寺を前に無惨はひとつの光明を見出した。

 

 

(あの柱を食えば少しは回復するはずだ!あのような足で私を蹴り飛ばすなど──)

 

 

「えっ……きゃあっ!?」

「ちょ強い゙っ!?」

 

 

 残念だったな無惨。その子は常人の八倍の筋肉だ。威力的には不死川より上かもしれんぞ。

 

 想定外の蹴りの威力は崩れかけていた無惨の肉体にトドメを刺した。首から下に亀裂が走り、頭部だけが残された。鞠に近くなったな。

 

 地面をバウンドし、土や灰に塗れながら転がって停止する。とうとう手足どころか胴体さえも失ったというのに、ないはずの腹が痛い。どうなってんだ。

 

 

「───」

「ひっ!?」

 

 

 そして残酷なことに、パスを回した果てについたのは泥管の足元。全員に回したわけじゃないが一周して戻ってきたらしい。

 

 230cmの身長を地面から見上げた光景はあまりにも恐ろしい。すぐ側にいていい筋肉量じゃない。

 

 悲鳴を漏らす無惨の頭を片手でわし掴みにし、自分の頭と同じ高さまで持ち上げる。無惨の顔が物凄い勢いで青ざめていく。

 

 

「こ、これ以上何をする気だ……!?」

「───」

「まさか私を食う気か!?」

 

 

 ンなわけあるか。普通にトドメを刺すんだよ。

 

 というわけで零余子ちゃんカモン。

 

 

「あ、了解です。それじゃあ……【爆血】!」

「ぎゃあああああああ!!?」

 

 

 珠世と蟲柱共同制作の毒に加え、禰豆子から分けてもらった血をも混ぜた殺意マシマシの炎が無惨を焼いていく。産屋敷家に仕込まれた爆発物には程遠い規模の火炎は無惨にとって致命的なまでに相性が良すぎた。

 

 悲鳴を上げていられたのはほんの一瞬。泥管も引くくらいの速度で無惨の頭を焼き焦がし、次の瞬間には完全に真っ黒焦げとなっていた。

 

 

「…………やったか?」

「油断するな。あの状態から再生してもおかしくない」

「いや流石にそれは……」

 

 

 警戒心が強いのはいいことだけど流石に無理があると思う。固唾を飲んで見守る中、炭と化した無惨の頭を下に落とすとグシャリと砕けてしまった。

 

 

 一分経過。再生の兆しはない。

 

 三分経過。動く気配はない。

 

 五分経過。ようやく残骸が朽ち始めた。

 

 

 その瞬間、全鬼殺隊が湧き上がった。

 

 

「っ……!死んだ!無惨が死んだ!!」

「やったあああああ!!」

「終わった……!全部終わったんだ……!」

 

 

 涙を流して勝利を、生存を喜ぶ。もう鬼は生まれない悲劇も生まれない。長きに亘る戦いにとうとう終止符を打つことができたのだ。

 

 全てが終わった。鬼舞辻無惨と鬼殺隊の戦いはこれで幕を下ろすのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの状態でしばらく消えなかったってことは……まだ生きてたの?あの状態で?やっぱ無惨って滅茶苦茶化け物だったのでは?)

 

 

 尚、一人だけとある真実に気づいた零余子はほんの少しだけ背筋が寒くなっていた。

 

 

*1
not誤字





【大正コソコソ話】
 頭部だけの状態(ゆっくり無惨)になって焼かれた後、四分くらいは生きてた。朽ちる寸前まで打開策を探していたが流石に無理だった。

 この戦いを一番楽しんでたのは珠世。無惨のお労しい姿を見てラスボスのような高笑いをしていたとか。愈史郎以外はドン引きしていた。

ほぼ原作沿い部分は大幅カットしてもいい?

  • ええんやで
  • 駄目、全部書け
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