散りゆく陰への鎮魂歌 陰の実力者の狂想曲   作:妄想の樹木

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序曲・・・

 野生動物も眠る深夜の森の中。

静寂に包まれているはずのその場所で、似つかわしくない笑い声をあげる幾つもの人影が、森の一角に存在していた。

 

盗賊ボス「ギャハハハハ! お前たち、もっとだ! もっともっと、呑みやがれ!」

盗賊ボス「今日の戦利品はお宝揃いだ! 街で売りさばけばいい値段になるぜぇ!」

 

 その笑い声をあげているのは盗賊だった、何処の誰からか強奪した物を囲んで騒いでいる。

 

盗賊A「へへっ、特に香辛料の類いは高く売れそうですね。なかにはよく分からない、不気味な時計もありますが。」

 

 戦利品を確認していた盗賊がそう言った。

 

盗賊ボス「時計? そんなもんあったかあ? 手当たり次第強奪したからなあ、よくわからねぇや。」

 

盗賊たち「「「ギャハハハハ!」」」

 

 酒に酔い始めているのか、もとからこのような性格と頭なのかは定かではないが、静かな森の中では彼らの声以外は聞こえるはずもない・・・

 

 

 

「ギャハハハハ! ヒャッハァー!!!!」

 

 ・・・・・はずだった。

 盗賊たちとは異なる若い男の声が、盗賊たちよりも楽しそうな笑い声で森の中に響いた。

 

盗賊ボス「なんだてめぇ!? いつからそこに!?」

 

 今の今まで気づくことのなかった盗賊たちは学生服を着ている青年、シド・カゲノーを見て驚愕の声を上げた。

 

シド「いやあ、実は訳ありなんだ。金庫に貯めた金貨を盗まれちゃってねえ。」

 

 シドは盗賊などなんてことのないように、恐れなどなく雑談のように話をしている。その姿は、見た目以外はただの少年とは思えない異様な雰囲気だ。

 

シド「怒られるの怖いからさ、君たち盗賊からはした金でも回収して、少しは誠意を見せようと思って。」

 

 

盗賊ボス「わけのわからねぇことを・・・・・。おいお前ら、やっちまえ!」

 

シド「お、その台詞モブっぽくていいね。僕も今度使わせてもらおうかな。」

 

盗賊B「死ねぇぇぇ!」

 

 しかし盗賊はそんな異様な雰囲気に気づくことなどなく、盗賊の1人がただ平凡そうな学生を斬り殺そうと襲いかかる。

 

 

ズバァッ!

 

 

盗賊B「ガハッ!?」

 

シド「うーん、脆い。ちゃんとカルシウム摂った方がいいよ。」

 

 盗賊はシドの一撃に反応できることなく、悲鳴をあげて倒れた。

攻撃をしたシドは返り血もなくまったくの自然体で、何事もなかったような様子である。

 

盗賊ボス「てめえ・・・・・ぶっ殺す! おりゃあああああああ!」

 

 盗賊のボスの声と同時に、盗賊たちが一斉にシドに襲いかかる。どの盗賊も武器を持ち、当然殺す気だ。

 

 

ズバアァァッ!

 

 

「「「うぎゃあああああああ!?」」」

 

 しかし全員、一太刀もシドにあたえることなく斬られて全滅したのだった。

 

 シドはそんな盗賊を特に気にすることもなく、盗賊たちの戦利品を乗せていた積荷を確認しようとした。

 しかし、直後にシドは少しだけ顔色を悪くした、まるで会いたくなかった人物と出会ったように。

 

シド「あっ・・・・・・マズイ。この魔力は・・・・・・。」

 

 

 

 シドがそう言って少しすると、黒いスライムスーツを着ている金髪のエルフの少女、アルファが現れた。

 彼女はシャドウガーデンの7陰の第一席だ。

 

ちなみにシャドウガーデンとは、シドもといシャドウが作った組織であり、世界を支配しているディアボロス教団を倒そうとして作られた組織である。

(※シドはディアボロス教団を架空の存在だと思って話しているが、実際は確かに存在している。

なお、シドはディアボロス教団が存在していることを知らない、陰の実力者プレイを楽しんでいるだけである。)

 

 また7陰とは、シドが最初に《悪魔憑き》から助けた7人の少女たちのことだ。シドが《悪魔憑き》を解呪したためか、どの少女たちも個性があるがとても強い。

 

 

 

 色々と割愛するがアルファがシドと再会したその後、ディアボロス教団のチルドレン1stのナニガーシが出てきた。何かを企んでいるようであり、アルファたちの敵である。

 

 アルファが追っていた人物でそこらの盗賊よりもはるかに強いが、交戦してすぐアルファが一撃で倒したのだった。

 

 

 

シド「うーん、あっけない。このおっさん、何がしたかったんだ?」

 

 シドは特別なイベントを期待する気持ちが少しだけあったが、こうもあっけないとそれもなさそうで拍子抜けしていた。

 

 

 

 そしてシドとアルファは盗賊たちの積荷を確認する、特別なモノは無さそうに思われたその時、強力な魔力を2人は感じ取った。

 積荷をさらに調べてみると、そこからは懐中時計が見つかった。

 

シド「(な、なんだ急に・・・・・・。いままで何も感じなかったのに)」

 

 シドは唐突に発生したような魔力に、目を丸くした。

 

 

 アルファの話から考えると、先ほどのナニガーシはどうやらこの懐中時計を探していたらしい。そしてこの懐中時計はアーティファクトらしい。

 

『・・・・・・来て。』

 

シド「えっ?」

 

『・・・・・・お願い、来て。あなたの力が・・・・・・必要なの。』

 

シド「・・・・・・喋ってるの、この時計かな?」

 

 

 シドは聞こえた謎の声の主は、アーティファクトであるこの時計だと察した。

しばらく色々と考えて、シドは時計に全力で魔力を流し込んだ。ちなみにその割には涼しそうな顔をしている。

 

アルファ「シャドウ、何を!?」

 

 アルファはシドの行動に驚く。

そして魔力を流し込まれた時計は、不可思議な音を鳴らしていく。

 

 

キイィィィィン カチカチカチカチカチッ

 

 

 時計の針が逆回転していくかのような音が、シドたちを不思議な現象に巻き込んでいく・・・・・

 

 

 

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シド「ん? ここは・・・・・・。」

 

 シドは気がつくと、先程までいた夜の森ではなく荒野に1人立っていた。

 

シド「なるほど・・・面白くなってきた!」

 

 シドはこの状況で、なんらかの大きなイベントの気配を感じテンションが上がっていた。周囲の魔力を探ったり、魔力で強化した目で探索してみる。

 

 するとシドはある2つのことに気づいた。

 

シド「この魔力の感じ・・・・・それに、結構先にあるかなりの魔力の塊!」

シド「いいね、いかにも主人公ポジションのキャラがいそうだ・・・!」

 

 そう言った後、シドは魔力を使った全力ダッシュで魔力の塊の方へ向かっていくのだった。

 

 

 

=========================================

 

 

シド「うおぉぉぉっ!! 何アレ、明らかにラスボスっぽい感じの見た目! それと戦う主人公のパーティみたいな彼女達!

これはモブとしても、陰の実力者としても見過ごせないシチュエーション・・・!」

 

 シドは魔力を隠しながら、戦いの場を観察していた。

 するとシドにとって見覚えのある人物たちが、戦場に現れた。

 

 

クレア「ここは・・・・・・? 学園の敷地には見えないけど・・・・・・。」

 

アレクシア「状況を整理するのはあとにして。今はそんなことをしている場合じゃなさそうよ。」

 

 

シド「姉さんに、アレクシアもいるのか。おっ、アルファ達も来たみたい・・・。」

 

 そうシドが考えた矢先、巨大な魔力の塊が動きを見せた。

 

巨大な魔力の塊

「・・・・・・なんでもいい。まとめて消えろ。」

 

 溢れんばかりの凄まじい魔力を溜め込み、放とうとしていた。直撃でもすれば、くらったものは跡形もなく消え去ってしまうだろう。

 

 

 

それを見て、シドは動いた。頭の中で完璧な作戦を組み立てて。

 

シド「(キタ〜!! 乗るしかない、このビッグウェーブに!!!)」

 

 シドはなんてこともなさそうな、普段通りのような軽やかな足取りでクレアたちの集まる場所に飛び出していった。

 

 

 

 何かを放とうとする魔力の塊に向かって止めようとする過去の人物の1人、ドゥーエが走り出した。

それを見て巨大な魔力の塊は呟く。

 

巨大な魔力の塊

「我が前に立ちはだかる資格もない弱者よ。」

 

シド「あれ、姉さんたち? 良かった、ひとりかと思ったよ〜。」

 

クレア「シド!?」

 

 巨大な魔力の塊はシドを見た瞬間先程までと変わって、その声からは驚愕と動揺が感じられた。

 

巨大な魔力の塊

「・・・・・・すさまじい魔力量。 貴様、何者だ?」

「今すぐ散れぇ!!!!」

 

 その言葉と共に周囲は目を開けていられないほどの、恐ろしい魔力の光に包まれた。

放たれた魔力の向かう先は・・・・・

 

シド「あ。」

 

 

ドゴオォォォォォォン

 

 

 光の先で、何かが消え去る音がした。それはどれだけのものが聴き取れたのであろうか。

 

ドゥーエ「きゃああっ!?」

 

アルファ「な、なんて威力!?」

 

アレクシア「吹き飛ばされる・・・・・・!」

 

クレア「し・・・・・・シドぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 魔力の光と衝撃の影響が晴れた先には、シド・カゲノーの姿は跡形もなく消え去っていた・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シド「ふうぅ〜、完璧〜!! いや、ちょっとだけ危なかったかな?」

 

 絶大な魔力の攻撃をその身に受けたはずの男、シド・カゲノーはなんて事ないようにそう呟いた。

 シドは先程からかなり離れて魔力を探知されない、かつギリギリ先程の場所が魔力で強化した目で見える距離にいた。少なくとも8キロは離れている。

 

シド「いや〜、さすがラスボスっぽいだけあって少しヒヤッとしたなぁ。

今まで見てきた攻撃と比較しても、1・2を争う威力だったかも?」

 

 アレでも本気じゃなさそうだし、とシドは呟いた。

そう言うシドの身体は、服も含めて無傷であった。

 

シド「いや〜、モブムーブでやってみたかった事その77!

『唐突に戦いの場に出てきて、あっさりとやられるモブ』

まさかこんな最高のシチュエーションでやれるとはね。

 アルファたちも消え去ったところを、ちゃんと見たはずだから・・・・・・!」

 

 シドは感無量、と言った風に余韻に浸っていた。

 

 

シド「モブ式奥義・改 《跡形もなく消え去るモブ(ロスト・イグシステンス)》が完全に成功したことも喜ばしい!

モブ式奥義の一つ、《十分間の臨死体験(ハート・ブレイク・モブ)》を応用して心臓の鼓動を完全に停止した状態で活動することができることを可能とした新技だ!

これなら実際に死にながら、さらに状況に応じて柔軟に対応することができる。」

「さらに魔力を爆発させることで演出と、吹き飛びながらの離脱を可能とさせた画期的な技。くうーっ! リスクも存在したが、まさかここまでうまくいくとは!!!」

 

 

 説明口調で、楽しそうに技の解説をするシドだが向こうに見える状況はそれどころではなさそうだった。

 

シド「うーん、みんな驚いてるな。大成功だ!

・・・・・・それにしても僕の魔力を吸収、ね。どおりでなんか引っ張られたわけだ。さすがラスボスっぽいだけある。」

 

 さて、先程の巨大な魔力の塊はシドの絶大な魔力を取り込んでいた、そのため先ほどより動きが鈍い様子である。

 

 しかしシド本人はこの離れた場所でなんてことはなさそうにしている。

 

シド「いや〜、流石にちょっとビックリして

[アイ・アム・オールレンジアトミック》からの、《アイ・アム・アトミック》をしたのは失敗だったなぁ。

 下手したらアルファたちも吹っ飛ばしてたかもだし・・・・・・。反省反省。」

 

 陰の実力者としてはありえないしね、とシドは続けた。

 

 つまりシドは、技としての魔力のみでアレをパンクさせたのだ。

 

・・・・・・うわぁ(ドン引き)

 

 

 

 ふとシドが見ていた向こう側の状況が変わった。

 なんと7陰たちが、あの巨大な魔力の塊に特攻していったのだ。

 

シド「・・・・・・いやいやいや、流石に無謀じゃない!? アルファたち総出でもアレには勝てないでしょ・・・・・・!」

 

 シドの予想は正しかった、7陰全員がそれぞれのやり方で攻撃をしてもまともなダメージを入れられることは叶わなかった。

 

 また別の方ではアルファたちと似た人物たちが、吸血鬼との戦闘を繰り広げているが、あの調子ではある程度力があっても多勢に無勢だろう。

 

 シドの考えではアルファたちの性格的に、誰かしらが撤退を選択するだろうと考えていたが、誰も撤退することはなかった。

 1人、また1人と7陰たちはやられていく。そして見えたかぎり最後まで立って戦い続けていたのはアルファだった。

 

シド「・・・・・・・。」

 

 

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アルファside

 

アルファ「(もう私も限界ね・・・・・・。)」

 

 7陰たち全員は全力を尽くして戦い、みんなやられていった。その自分以外の7陰たちを最後まで全員看取って、アルファは地面に倒れた。

自分ももうすぐに死ぬだろうと、アルファは悟っていた。

 

アルファ「(あなたに全く恩返しができなかった、ごめんなさいシャドウ・・・・・・ううん、シド・・・・・・)」

 

 最後までアルファの頭に浮かんでいたのは、自分を救い、みんなを助け、進むべき道を示してくれていた彼の姿。

もうシドは取り込まれてしまい、助け出すこともできないだろうと考えては、アルファは自分の無力を呪った。

 

アルファ「(し、ど・・・・・・)」

 

 アルファが最期に見えた気がした光景は、世界が青紫色の魔力で包まれていく世界だった・・・・・。

 

 

 

キイィィィィン カチカチカチカチカチッ

 

 

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シド「(・・・・・・ん?)」

 

 シドはふと気がつくと、先ほどまでいた筈の戦いの舞台がよく見える場所にいた。

シドはそのことと、最後に感じた魔力を不思議に思う。

 

シド「(あれ・・・・・・。)」

 

 向こうの景色を見てみれば、先ほどまで地面に倒れ伏していた7陰たちが怪我など無さそうにに、立って話している。

 

シド「(と、いうより・・・・・・同じことを話してない?

ん、もしかして・・・・・。)」

 

 先ほどまでの光景が嘘だったとは、さすがにシドでも思えない。そして先ほど感じた奇妙な魔力、そしてふと頭に浮かんだこの事態が起こる前に見た懐中時計(アーティファクト)

 

 

シド「時間が、巻き戻ってる?」

 

 そこまで考えてシドは、とある可能性の数々を頭に浮かべた。今までにないほど、澄み切った思考が過去最高速度で演算を行なっていた。

 

 

 

シド「・・・・・・・へぇ?」

 

 シドは未だかつての人生の中で最上級の楽しそうな笑顔を、浮かべていたのだった。

 

続く

 




シャドウならこのくらいのことを、普通に考えて実行してそう・・・。
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