ようこそ個人主義上等の教室へ   作:名無しの権左衛門

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3:ようこそ、夢心地の学校生活へ 2

 一限目と言っても、すぐに授業が始まるわけではない。

一通りの施設を地図をもらって確認し、昼前に解散となる。

殆どの生徒は寮へ帰っていき、残りの外出組はグループを作って行動した。

 カラオケへ行ったり、ショッピングセンターへ足を運んだり。

各々今持つ大金を、有意義に使おうと行動し始めたようだ。

 

「さて、どうしようか」

 

 誰も一緒に帰るやつはいない。

あ、いや、いたわ。

 

「おいっす、コージ!」

「よお、シェフ」

 

 隣の席の男子生徒、四位府 チカラ。初対面のオレに、チョコチップクッキーをくれたいいやつだ。

この後どうしようか、と自由にされて戸惑うオレたち。

だがオレは一つだけ、興味が湧いたものがあった。

 

「へー、ここのコンビニってこうなってんだね」

 

 コンビニの中に入り、物を買うために闊歩する。

しかし、これら商品が割高なのか妥当なのか判断がつかない。

とにかく必要そうなものだけでも、このポイントで購入しよう。

 

「コージ! これ見てみなよ」

「『無料』……?」

「きっと先生が言ってた、浪費しまくって食うに困った生徒が買う奴なんじゃね?」

 

 不自然に設けられた無料コーナー。

消費期限が間近になった半額シールでべたついている食パンの隣に、

結構な数が陳列されている。

 電池。一つ498円。それなのに、無料とは。今ここで考察できる要素は少ない。

本当に浪費してしまい、うっかり0ポイントになった生徒への措置なのか。

そもそも、電池を使うものは懐中電灯以外にあるのだろうか。

 

「なあシェフ」

「ん?」

「このコーナーの真意はなんだろうな」

「さあ? 少なくとも、毎月お金が振り込まれているなら、問題ないんじゃない?」

 

 シェフ。お前は何を言っているんだ。

いや、本当にそういうことでいいのか。確証がないだろう。

 

「ところで、このコンビニの値段は妥当なのか?」

「そうだね。東京基準の物価だよ」

 

 シェフの言い方、やけに意味深でオレも疑心暗鬼になってきたぞ。って、何ニヤついてんだ。

こちとら初めてのお小遣いに、内心ウッキウキやぞ。

 

「Gカップ……食える気がしない」

「塩分量どう?」

「15gか。殺す気だな」

「食後の運動必須だね」

 

 そういう問題では、ないんじゃないか?

 

 周囲の生徒達は、食べ切れない量の食料を調達していた。

だが俺達は食べきる事が可能な量だけ購入することに。

特にシェフに至って言えば、ほとんど購入していなかった。

 

「僕は手作り派だからね。自炊がメインだよ」

 

 食料品売り場は、ここから離れたケヤキモールにあるらしい。まだ地図をもらったばかりだから、そこまで深く見ていない。

 

 買い物が終わってコンビニの外に出ると、長身の赤髪の男子生徒が店の前でカップ麺を食べていた。

あまりの非常識さに、シェフが早く行こうと言いせっつかれる。

オレも他クラスの、とりわけ素行不良と付き合う理由もない。

 

 少しした後怒号が聞こえたが、オレは聞こえないふりをして広場に出た。

 

 

 この後寮に戻ろうと思って、シェフに告げて歩いてきた。

途中パンフレットを見ながら右往左往している安藤や井上たち、オリジナルが龍園を肩車して他男子生徒二人といっしょに騒いでいたのを確認する。

 

 そして1階フロントにある管理室から、自室となるであろう部屋のカードキーやマニュアルをもらう。

エレベーターで上がるほどではないため、階段を登っていく傍ら説明書を見る。

そこにはゴミ出しやガス・電気の使用、公序良俗に基づいた生活を送るようにとたしなめられた文章がある。

 いくら国立といっても、水道代・電気・光熱費等が完全無料なのはめずらしい。

また風呂・冷凍機能付き冷蔵庫・テレビ・クーラー・キッチンと、各種生活インフラが整っている。

もちろん水道・電気・ガス・ネット通信・テレビ番組の契約、とぜんぶ融通してもらっているようだ。

 

 本当に心地が良い。

しかも、毎月10万入金されるんだろう? 飴がすごくて、オレ一生ここから卒業したくねぇよ。それにどんな理由であろうと、肉親を含めた部外者が在校生に接触することは禁じられている。

本当にありがたいことだ。感謝するしかない制度なんだよな。

 

 

 オレは自由。社会から分断されている籠の中の鳥。

束縛感は一切ない。これがオレが求めていた本当の自由なんだ。

 この學校に受かる前は、どうでもいいと諦観していた。だけど、実感を持って知り得たんだ。

好きなときに飲み食いでき、寝たり遊んだりできる。最高じゃん──ってな。

 

 

 もう誰にも邪魔されない。オレは新しく人生をやり直すんだ、この学校で。

だから、目立たずそこそこ頑張って過ごしてみようと思う。

 制服のまま、整えられた大きめのベッドでダイビングする。

そのままねつくかと思いきや、興奮で目が冴えてしまうのだった、

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