授業は今まで予習していたことを当てはめることで、簡単に過ごすことができた。
いや、それ以上に体験も合わせて、事実を立証できることに楽しみを覚えてしまっている。次は日本史の時間だ。
この時間割のときは、オレたちの教室で行われる。すぐに帰って用意しないとな。
すでに入学から1週間が経過している。
ある程度学校生活に慣れてきたオレたちは、いつもどおりの生活を楽しんでいた。
そして、それと同時にある程度先生たちも、顔と名前が一致してきたようで担任の先生が
全員の名前との照合率が8割を越えた。
ここらへんが頃合いなんだろう。
先週の初めて昼食を食べたとき、一緒に『さんぽ部』を作り上げその足でシェフの部屋に転がり込んだ。
その際一ノ瀬も呼んで、今後の動きについて話した。
【このまま終わるわけがない】
そうシェフが言って、とある計略を動かすとオリジナルが立案した。
このときの二人は、いたずら小僧みたいなえがおで笑っていたな。
龍園たちはドン引きしてたけど。一体なにをやらかしたら、あいつらにそんな顔をさせるんだか。
「やあ、コージ!」
「よっすー、シェフ」
席に到着したら、シェフが机の上に置いたカバンから小包を取り出す。
そして小さい方を渡してくる。
「はい、これ。コージにあげるよ!」
すこし大きな声で渡される。
「お、ありがとうっ」
オレもすこし大きな声を出して、仰々しく受け取る。
そして一ノ瀬の支配下にある白波千尋と井村が、シェフが取り出している袋について少々大げさな声で会話をする。
「またシェフくんが何かしようとしてる?」
「トトカルチョっていうか、ロシアンルーレットが好きなんだよね」
「え、じゃあアレって……」
「あの小さいやつ、見た目は地味だけど本物なんだ。
で、大きいのは見た目だけで中身は……。まあ、ちょっとした罠って感じだよ」
すこしして先生が入ってくる。
チャイムが鳴って起立、礼、着席をしたら、順当に日本史の勉強をする。
何故か連歌を作らされた。授業時間が足りないにも程がある。もう少し、時間がほしいところだ。
時間が来て礼が終わったら、シェフ・坂柳・水戸・池・外村・山内が先生のところへ詰め寄る。
「先生!」
「なんですかー?」
「先生、3つあるんですけど、どれがいいですか? 見た目で選んでください」
おいシェフ、めっちゃニヤけてるぞ。全員笑顔だけど、仕込み本人の笑顔が一番邪悪なのはどういう了見なんだ。
「えーと、それじゃーあー……んー、これ!」
「お、そのおっきいの選んだんですね」
「えー、先生。本当にそれにするんですかぁ?」
おっきいの。実はこれだが、3つの袋は大・中・小と浦島太郎方式になっている。
一番小さいものは、ケヤキモールで売っている高級クッキー。
中くらいのは、シェフが作ったクッキー。
大は、オリジナルがうっかりで作ったホワイトチョコをコーディングしたえびせんべいである。
やることがえげつなんだが。それをシェフ本人が楽しんでいるところが、こいつらの問題児っぷりを露呈させる。
「や、やっぱり、これにする」
「ファイナルアンサー?」
「ふぁ、ファイナルアンサー」
「大当たりだよ、先生!」
シェフは高級クッキーが入った小包の方を渡し、中くらいのを一ノ瀬たちに。
そして大きい方を池たちに渡した。
「あら、おいしい」
「シェフくんが作ったんですって」
「へぇそうなんだ!」
いつもお菓子や弁当を作っているシェフは、こんな美少女や美人に褒められても
ただ普通に喜んでいる。凄いな。しっかりしていそうな平田や鼻の下を伸ばしている山内でも、一の瀬達の称賛は照れるというものなのに。
「食ってみようぜ」
「でかいならうまいだろ」
あ、くった。
「ぐええええ!!?」
「変な味だああああ」
「殿中でござる! 殿中でござる!!」
「食感がきめええええ!!」
水戸や山内は水を飲んでごまかし、池は無理やり飲み込み、外村はトイレへ行った。
やっぱりオリジナルに料理を作らせてはダメだ。
というか、なんでえびせんべいなんだよ。
「ところで、坂柳」
「なんですか、綾小路くん」
途端に声を上ずらないでくれ、すこし調子が狂う。
すこし確認のために、立ち寄っただけに過ぎない。
「黒か?」
「黒ですね」
シェフの推察は当たっていたというわけだ。
隣ではにこやかにオリジナルの頭をグリグリして、ギブアップ宣告を無視してチョークスリーパーを決めていた。
それは、やばい。やめておいたほうがいい。
……落ちたな。
「食べ物で遊んではいけません、と。お母さんに言われたことないのかな?」
「おい、シェフ。もうオリジナルは落ちてる」
「え、ぷぷっ、最近なまってんじゃね~の~?」
「流石にまずいだろ、起こそうぜ?」
「仕方ないな」
そう言ってみぞおちを殴った。すると、盛大に呻いて起き上がる。とても体に悪そうな事をしているな、あいつら。安藤も平然と見ているが、いつものことなんだろうか。
そういう関係性は、羨ましい。
「ゴッホ!?」
「セザンヌ!」
「ゴーギャンって、何言わせんだよ!」
「オリジナルが発端だとおもうんだけど?」
「気絶させた張本人に言われたくないな!」
シュールレアリスムに似通った事してる。
ふざけ合っている。これが本当の友人のその先である、親友の姿とでもいうのか。
「気絶したと聞いたぞオリジナル!」
「判断が遅い!」
「くぅ、ワタシとしたことが、触診の機会が……!!」
「水戸、昼休みの後はプールだ。そこで色々見れるんじゃないか?」
オレはそう進言した。しかし、この発言は早計だったかもしれない。
なぜなら水戸も含め、何やら鼻息荒くしている。
「綾小路! 君はいいやつだな!」
「何が?」
「ワタシにプールの授業を通じて、脂肪と筋力のバランスBMIを目利きしろというのだね!?」
「あ、いや。そういうわけでは」
「いやいやいや、謙遜しないでくれ給え。ワタシはキミの無関心的興味に助けられている。特にその、<オレお前等と同類に見られたくねえ>といった、分離的心理はとても心が踊る! 後で触診させてくれないか!?」
「頼むから、会話をしてくれ」
ふんすふんすしていると、昼休みを5分も消費したといってオレに感謝をして外村や池たちと何処かへ行った。
疲れた。ここがこんな奴らばっかりだと、他のクラスも大概だろうな。