さて精算が済んだ後、ケヤキモールへやってくる。
一ノ瀬が化粧品エリアで頭を悩ましているのを尻目に、休憩室でしばらく待ちぼうけを食らう。
シェフは献立表を作っているようなので、今のうちに一昨日にあった部室会議で話し合ったことを整理しよう。
「第2回、【さんぽ部】定例会議~!」
「「いぇ~い!!」」
「どんぱふどんぱふ~!」
「「おー!」」
「わ、わ~」
「ふん」
「……」
シェフが音頭をとり、安藤・井上・井村・一ノ瀬が乗り、オリジナルが謎の掛け声をし、オレと石崎が声をあげ、坂柳が引き気味に乗り、龍園と鬼頭がぶす腐れている。
「龍園くん、ノリ悪いよ! ほらほら、もっと乗ろうよ!」
「腕掴むな、勝手にあげるな!?」
「わお、ぼくの両腕を掴むなんて、大胆だね!」
「違うって言ってんだろう!?」
まーた茶化されてる。いい加減諦めようぜ、龍園。
男同士できゃっきゃしているのところを、シェフが新聞紙を丸めた筒で頭をひっぱたく。
あ、オリジナルが撃沈した。
「さて、静かになったね。今回の議題は、中間テスト・監視カメラ・査定についてだよ」
いつの間にか復活したオリジナルは、カバンから學校の全体マップを取り出して黒板へ貼り付けた。
オレはそのマップの完成度に驚かされる。
この學校には無数の監視カメラがある。しかし、その正確な数字や稼働期間・被射角など判明させられるようなものじゃなかったはずだ。
だというのに、すでに2000近い監視カメラの稼働期間・時間・被射角を見切っている。
「やっば」
石崎がそう発言するが、オレもそう思う。
改めて思った。この學校は異常だ。そして、あからさまな死角。まるで、ここで取引してくださいと言わんばかりだ。
「今回、安藤、オリジナル、トム(外村)くんと井村にお願いして作ってもらったよ。
意外にも、特別棟に監視カメラがないね。ここは化学薬品や學校で使ういろんな資材が、安置されている場所。
それに全面ガラス張りでも、ここに向けて映すカメラはないよね」
シェフは淡々と事実だけを告げてくる。手元に3M定規を持ち、どういう場所かどんな状況に出くわすかを説明した。流石にぜんぶを覚えることは難しい。
だとしても、今後なにかが起こる時、ここを舞台にすればいいと分かる。
「次に中間テストだけど。こっちはタッくん(龍園)・シザーくん(石崎)・キトーくん(鬼頭)に、任せたよ。すごく助かった、ありがとね~」
「ハッ、まさかと思うが、こうなることを見越してたか?」
龍園がシェフににらみを効かせる。一触即発とかそういう雰囲気じゃなく、探るような眼差しだ。
シェフはというと、驚きもなくただ笑顔で言う。
「僕らの學校ってゆとり教育の影響で、結構授業がぬるかったんだよ。
で、国立のこの學校だと、どんな内容で出されるか知りたいじゃん?
だから、駄目で元々ってことで、交渉をお願いしたんだよ」
「まさか、二束三文で売ってくれるとは思わなかったぜ」
龍園がそう言ったとき、シェフがコピーしたであろう中間テストや期末テストの問題を配ってくる。
中間テストだけじゃなかったのか。鬼頭や石崎が、少し口角を上げている。
ということは、通常の中間テストだけでなく、期末テストを含めてのものだったということだ。
交渉がうまいと言うより、武力をうまく使ったということだろう。
「念の為、これを使って復習しておいてほしいんだ。妙に難しいのもあるからね」
難しいってレベルじゃないんだが?
各種テストの最後の三問。高校一年生で合格できるなんて、全く思えない。
それほど難しい。特に数学の、角運動量保存則は全くわからない。
オレもいけるか? というほどだ。
「なんだこれ」
「いや、これ、めちゃくちゃむずいじゃんかよ!?」
「これはちょっとどころではありませんね」
安藤、石崎、坂柳がそう呟く。
特に石崎は絶望している。あー、安藤も中々気を落としているな。
阿鼻叫喚だったが、分かるであろうシェフや井上・オレが、皆のテスト勉強の面倒を見ることになった。
完全にテストの範囲外だろうに。學校側は、どうするつもりなんだ。意図が全く不明。
「次ね。次は査定について! じゃあ、ヤナちゃんと井上お願い」
「わかりました」
「うん、先生に確認を取ったから聞いてほしいな」
坂柳は座ったまま資料を配る。井上は、説明のために壇上へ上がる。
「最初に言っておくね。まず、査定だけど、来月のポイントは0」
「なんで!?」
「はあ!?」
「マジかよ」
「だろうな」
「知 っ て た」
「うっそだろ、オイ」
井村、石﨑、鬼頭、龍園、オリジナル、安藤がいろんな反応をする。
思い返すと心当たりがありすぎる。
4バカのやつらでまとめるが、セクハラ・おしゃべり・ゲーム・居眠り。
女子は携帯をいじくったり、遅刻なんて当たり前。
なんなら高校生だというのに、社会の通念をしつこく言われ続けているという理由で授業に参加しない生徒もでてきている。
「内約なんだけどね、クラスポイントっていうのがあるんだ。これは授業中の態度やテストの点数、クラスメイトが所属している部活動の成績で決まるんだって。そこで先生に来月の給料がない理由が、遅刻や授業態度によるものなんだって。確認してる中でも、携帯を触ったり授業を聞かない生徒がいるね? しかも、ちゃんと先生が3度注意してるのに、全く聞かなかった。つまり、上司の言い分を聞かなかったということになるよね」
進学校である高度育成學校だが、社会へ出るための用意として基本的態度を矯正する狙いもあるのか。
さすがは未来の日本の担い手を育成する機関だ。言い分を聞かなかった者は、給料なし。
給料が欲しければ、最低限の実績と態度を示せ、か。普通だな。
そしてそれを、部署レベルの連帯責任ということになるのか。
なるほど、クラスメイトをオレたちで面倒をみないと、給料さえ満足に手に入れられる
ことがなくなるというわけだ。
「減点方式なら、マイナス分もあるのかなぁ?」
「次のテストは高得点を取らねぇと、マイナス分をかき消せないというわけか」
「じゃ、皆でテストを100点満点にすればいいってことじゃん」
「水戸のセクハラはどうなるんだ?」
「皆に、テストは頑張って満点目指そうねって伝えなきゃ」
井村、龍園、オリジナル、石﨑、一ノ瀬が個々に反応を返す。
オレの考えだが、もしもマイナスがアレば今後どうしようもなくなる。
他のクラスのことはまだ良くわからない。だが、オレたちのクラスは、
いい意味と悪い意味の極端なヤバい奴らが集まっている。
このままだと良貨が悪貨に潰されるだろう。
どうにかして、悪貨を良貨へ上げなければならない。
ただ、その道はとても険しいだろう。
なにせ悠々自適の学校生活の実情が、現実的な社会適合性を見抜くための試金石でしかなかったわけだ。
いや、今までもそれは目にしてきた。
あらゆる【無料】の救済措置。人は金というわかりやすい欲に目がくらんで、
足元にある罠へ注意が向かなかった。
幸いにしてオレ達は、あまりポイントを消費していない。
流石に表に出せないため、池や山内・他の女子に絡まれた時大量消費していると告げている。
Over All Ability
四位府 力
SHI-FU CHIKARA
誕生日:----(第一種管理権限により閲覧不可)
学力: B+
身体能力: B
起点思考力: C
社会貢献性: B
総合力: B
・担任のコメント:
お菓子をくれる優しい子です。
孤立気味だった綾小路くんや他の男子を巻き込んで友だちになっていきました。
真面目な授業態度と裏腹に、色々暗躍しているようです。
スマートカードのGPS反応が、時々消えます。
ちゃんと見ておくべき生徒でしょう。