これは遠い昔の記憶、俺は幼い時期にある夢を幾度と見たんだ。
それは普通の一軒家、何処にでも居そうな普通の家庭、そんな普通の家に普通の家族に、一人庭でずっと泣いてる同い年くらいの男の子が居た
その子は犬を抱きかかえながら
ずっと、
ずっと、
ただただ座り込みながら泣いていた。
俺は『その男の子に手を伸ばした』
何故かは、当時の俺には分からない
助けたかったのか、
気になったのか、
それとも、無意識でそうしたのか
恐らく、無意識に近いのだと思う。
でも今思い返してみれば、こう考える事も出来る
『自分に似てると思ったから、手を伸ばしたんだと思う』
環境がとかじゃない。
泣いてるからとかが似てる‥とかでもない
まるで、過去の自分を見ているかのような感覚だったんだ
禪院家に非ずんば呪術師に非ず
呪術師に非ずんば人に非ず
これは、幼い頃からずっと言われ続けた言葉だ。
呪術が扱えぬ禪院家は
『人間扱いすらされない』
幼い頃からそう教えられればそれが『当たり前』の世界になる
それが常識であり、『そうあるべきなんだ』と思うようになるはずだ
実際、歳が近い産まれの兄弟や親戚達も同じような思想をもっていた
勿論、そんな環境に居た幼い俺も『それが当たり前』と思っていた‥‥
『自然な事』
『気にする必要のない常識』
そのはずなのに、
違和感
『外の世界の倫理観』なんてものを学んでいない筈の幼い頃の俺は、物心を付いた頃には『違和感』を感じるようになった。
「お前呪霊が見えないんやってな?救えへんなァ〜‥‥‥顔もそんな良くないし女としても最底辺、とことん駄目駄目や。
ほな来世に期待の人生リセマラしてみよか?」
今僕の目の前で直哉が真希をボコボコにしている
その光景を見て胸の中で何かがどよめきはじめた
この正体はよくわからない。
でも、目の前で起きてることは何も気にする必要の無い日常の風景
禪院家の普通。
この家のルール。
何も気にする必要の無い日常の風景
通り過ぎる様々な禪院家の人達はその光景をまるで何もないかのように無視していく
僕はその後ろを付いていくしか出来ないはずなのに、どうしても見てしまう
考えを振り払い、その場を去ろうとした時
真希が僕の方を見てきた。
その目はまるで人に助けを求めるかのような目だった。
普通の禪院家の人間ならば何も見てないかのようにしてその場を去るんだろう
それが普通であり、この家のルールでもある。
彼女は人間扱いしてはいけない。
そのはずなのに
直哉がもう一発、真希に拳を叩き込もうとするのを観た俺は
『何かを考えるよりも先に、禪院直哉を殴り掛かっていた。』
「ッ!?何のつもりや転孤ォッ!?」
自分でもよくわからない
何故飛び出したのか、
何故殴り掛かったのか。
何故、考えるよりも先に身体が動いてしまったのか。
_____________気に入らなかったんだろ。こいつが
「‥‥‥多分‥‥‥‥うん、そうだね。多分、直哉が気に入らなかったんだと思う。」
「‥‥‥転孤ォ‥!!‥‥‥まだ術式すらないガキの癖して‥‥ッ!!」
「‥‥‥‥でもそれだけじゃない気がする‥‥‥他にも‥‥‥‥何か‥‥‥」
________なら、壊そう。気に入らないもの一旦全部。
「‥‥‥壊す。‥‥‥壊すか‥‥‥出来るかな‥‥僕に」
「おい‥!!聞いてんのか転孤‥‥!!」
___出来るさ。お前にはそれを出来るだけの力がある。
「シカトしてんちゃうぞ‥!!あーもう‥‥アカンわ‥‥ブッ殺す‥ッ!!!」
「うん‥‥‥そうだね。そうだ。それがいい。
じゃあもう壊そう。一旦全部。」
僕は再び『あの男の子』へと手を伸ばし、
『彼の手を握った』
そして、彼にこう言われた気がする
________次はお前の番だ。禪院転孤。
「どういう事だ直毘人!?『次期当主が新たに決まったって!?』」
「言った通りだ。お前も『奴の術式』を見れば分かる」
「‥‥まさか‥十種か!?」
「いや違う。術式の名は」
「『崩壊』またの名を投壊呪法だ。」
禪院転孤 (ぜんいん てんこ)
六歳という歳で遅くなりながらも術式に覚醒する
彼の術式は『崩壊』またの名を『投壊呪法』
その力は、触れたありとあらゆるものものを崩壊させる力‥‥‥
それが例え、物であろうと、人であろうと、『術式』であろうと。
そんな最凶とまで言える力を得たことが判明した彼は禪院家の次期当主候補となった。
彼を否定する者は一定数居れど、それは少数派ではあった
時間さえ経てば次期当主になるのも時間の問題だろう
しかし
『違和感』
禪院家の人間なのであれば、その幼かろうともトップ候補。というだけでとても嬉しくなり舞い上がりそうなものだが
『違和感』
喜びは確かにある。
だが、『何かが違う。』
‥‥‥‥何が違う‥??
この違和感は、物心付いたときからずっと、ずっと、心のどこかで存在していた。
何が違う‥‥‥‥?
何が違うんだ‥‥??
‥‥‥あの日、直哉を殴りに飛び出した時
考えるよりも先に身体が動いた。
それはきっと‥‥『自分の本能に従った』‥‥ということ
禪院転孤は考える。
しかし、幼い彼にその答えを出す事はまだ
難しいだろう
遠くない未来、彼はその答えを見つける事になる。
『天内理子』との出会いによって
pixiv時代に上げてたものに改めて手を加えて投稿しました
気分転換に書いただけなので続くかは気分次第です