アニポケ世界で全国図鑑完成の旅(全1025)(ただしパッチールのフォルム違いは除く) 作:ビビリダマ
全てのポケモンを捕まえる。
誰もが一度は夢に見るが、出来ない理由があまりにも多すぎる。そんな夢。
不幸にも、私はそんな願いを元の"彼"から引き継いでしまった。
ゴウ
それが、今の私。
ポケモン"GO"の名を冠する、このキャラクターは全てのポケモンのゲットし、ミュウに出会うという目標をアニポケ世界で掲げている少年だ。
理由は分からないが、気が付いたら私は彼になっていて私の自我が彼の自我を飲み干していた。
自我の破壊とは、ある種の殺人行為。私は私が有るという為に、意図の有無は別として彼の自我を殺したのだ。
当時は、罪悪感、混乱、嘆き、様々なものが頭を過ったが、最後に残ったのは彼の残滓であった。
ミュウへの憧れ、ポケモンへの強い関心。そして、記憶が混じった今際の際に生じたであろう全てのポケモンをゲットするという願い。
かくして、私の為すべき事は決定した。
彼の遺志に従い、何が何でも全てのポケモンを集め、それを以て贖罪とする。
無論、尋常な手段では叶わないだろう。しかし、私はこの世界にてある種の運命力を持った存在を知っている。
マサラタウンの少年と黄色い相棒の旅路。多くの出会いと別れに彩られた彼の旅は一般人の一生がどれだけあっても及ばない程の奇跡に溢れているのだから。
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父と母、そして祖母に対してゴウの記憶を用いて取り繕う生活をこなしながら、計画を詰める。
今は9歳の冬。サトシの旅が始まる三ヶ月前だ。この世界、アニポケの時間の進行に関しては正直ブラックボックスがすぎる。
放送期間にして25年の彼の旅路は、設定上は一年でしかない事は知っている。が、正直、その設定を崩した所で何が変わるという訳でも無いので、時間の進行は通常通り行われる可能性もまたあるのだ。
兎に角、一番避けなければならないのは「新無印」編の話の流れにそのまま乗っかる事。時間の不可思議な挙動により、四月なのに気がついたらアローラ編まで終わっていました、なんていう事態は何が何でも避けなければならない。
無印編の出発に同行する事が、マストだ。と、すればさっさと学校を辞めてオーキド研究所から春先に旅に出る手続きを進めなくては。
幸い、彼の家庭環境は可もなく不可もなく。愛はあるが、仕事が忙しく、それを注ぐ時間の絶対量が足りなかったといった具合だ。ゴウ自身も物分かりが良い人物であったため、その孤独を自分なりに飲み干していた、飲み干せてしまった事が最大の不幸、そんな幼少期だったと推察される。
さて、そんな彼らは自立性を重んじていたため、説得は比較的容易である。まぁ、許可されなかった場合は家出かましてマサラタウンに密航するだけだが。彼の孤独の残滓を鑑みても、いざとなればこれくらいの果敢な判断を行った方が両親も現状を見直す良い機会になるだろう。
あとは、……ああ、コハルさんか。新無印編のヒロインであり、ゴウの幼馴染であり、サクラギ博士の娘であるこの少女に私はどのように接すれば良いか、分からない。ゴウの両親は、ゴウの事をよく見ているが、その絶対的な時間が足りない為、変化の察知に弱い。故に、ゴウから私に変化したときも取り繕いが成功したが、彼女相手に通用するか。まぁ違和感は隠しきれないのなら、じわじわと疎遠になっていくのだろうか。
捕獲ポケモンの管理という原作のサクラギ博士のポジションは、オーキド博士が十分以上にこなしてくれる筈だ。残り時間が三ヶ月程しか無い現状、細やかな解決は旅に出てから考えよう。
次に必要なのは、レギュレーションとフローチャート、計画遂行時の難所の把握か。
全てのポケモンを捕まえる。と、一口に言っても恐らく株式会社ポケモンが倒産しない限り、この世界には無限に地方があり、その都度ポケモンも増えて行くため、賽の河原状態になる事だけは避けなくてはならない。
よって、全てのポケモンの定義をまずは明確にすることから始めよう。
原作において彼の冒険が一先ず終わった時点、すなわちガラル図鑑までにするか、私の知識に於ける全てのポケモン、リージョンフォームも含めた図鑑番号1025番までにするか少し迷った末に、後者を選択することに。理由は単純で、ゴウの無垢な残滓が未知のポケモンに強く反応したからだ。
そして、何を持って捕まえたとするか。
これは、ポケモンバトルに使用可能な状態でモンスターボールに入れ、本体を所定の場所(今の所はオーキド研究所)に収容する事。原作のスイクンのようにボールだけは残してほぼ野生だとか、デオキシスやジラーチ、ゼクロムレシラムのようにコア状態での捕縛は私の前世の感覚的にゲットしたという感覚がしないため、このようなルールになった。まぁ、細かいレギュレーションはケースバイケースで考えて行けば良いだろう。
さて、後はフローチャートと難所の把握だ。
研究所にて、顔合わせ。
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ピカチュウとのイベントを発生させたのち、サトシ君との旅にカスミさんと同タイミングで同行を開始する。
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後はこのままアローラまで粘着する。
これだけである。逆に私が動きすぎる事により、フラグを折る事を避けないといけないため、合流する所までしか、私の意思を強く出さない。
対して、難所は驚く程沢山ある。
先ずは登場人物の好感度管理。全ポケモン捕縛の為にはTPOも何もかもをかなぐり捨てて捕縛に動かなければならないケースが多々あると予想される。なので、私は一流の詐欺師の様に程の良い方便を並べ、善側に立ち続けなければならないのだ。ミスったら犯罪者コース一直線である。
次に、活動期間が限定的なポケモンの恒常的な捕縛、ジラーチ、グラードン、カイオーガなんかがいい例だろう。これの解決手段は残念ながら旅の中で見つけるしか無い。
最後に地区、集団において信仰対象となっているポケモンの捕縛。
アルセウス系譜のシンオウの神々、アローラの守護神、一部の幻のポケモンなどだ。人の身で神を捕縛することがどれだけ恐ろしい結果を招くのかは、まだわからない。しかし、それでもやるしかないのだ。
逆に過去や未来のポケモン、人造ポケモンやパルデア地方のポケモンをなんとかする事自体は比較的容易な可能性が高い。時間移動の機会は割と多いし、悪徳研究所をしばき回す機会はもっと多い。パルデアはいい感じにサトシを操れば、シーズンの合間合間で訪問する事は叶うだろう。
兎に角、大事なのは理由付け。私はあまり口が上手い方じゃ無いが、相手は10歳の少年。少し悪いが、多少の誘導はさせて貰おう。
……悪しき心を読み取れるポケモンに誅されそうな気がする。
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旅立ちの春。私は予定通りカントーのマサラタウン、オーキド研究所を尋ねていた。無論、サトシ君と顔を合わせる為、少しばかり遅刻しつつ。
「これが君の分の図鑑じゃ。それとこちらの不手際とはいえ、本当にポケモンを連れていかんでも大丈夫なのかのう」
「いえいえ、ご心配なく。この辺の地域でしたらコラッタでも適当に捕まえますので。それに全てのポケモンを捕獲を志す以上、ポケモン無しでのポケモンゲットくらいは出来なければ」
サトシ君より遅く到着した私には無論、ポケモンは残されていない。もしかしたらオーキド博士が気を使って5匹目を用意してくれているかも、と期待した事もあったが初心者にボールに入らないピカチュウを渡す判断をする人にそれを要求するのは無理があったのだろう。
まぁ、相棒なんて柄じゃ無い。活動の継続の為、様々なポケモンを使う必要がある以上、一枠固定で取られる事を避けるのは長期的に見たら合理的だ。
じゃあ、物語を始めよう。
最初のセリフは何にしよう、どう言ったキャラになろう、長い付き合いにしたいからこそ初めが肝心だ。
否、だからこそあまり深く考えてはならない。だったら───
「やあ、俺はゴウ!全てのポケモンを捕獲し、図鑑を完成させる事が夢だ。よろしくな!」
「俺、マサラタウンのサトシ!夢はポケモンマスター!こっちこそ、よろしくな」
これでいい。それっぽい口調で嘘偽りなくポケモン蒐集が目的である事を伝えるのみだ。この世界の住人は何というか、よく言えばおおらか、悪く言えばかなり適当であることは2、3ヶ月の生活でも感じる事が出来たため、策や言い回しを捏ねくり回す意味はあまり無いのだ。
「……ピッ」
彼の傍にいる黄色いネズミは、未だご機嫌ナナメ。会釈をすると私にまで電気が飛んできそうなのでここはノータッチ。あとはサトシ君、オーキド博士それぞれに最低限の社交辞令をかわし、さっさとトキワシティに向けて歩み出す。
春風が吹く1番どうろ。
最初で最後のひとり旅だ。